東京ニューウェーブシーンの核として注目されていたバンド、CHICAGO BASSのメンバーが中心となり04年に結成された、UMIBACHI。彼らが1stアルバム『NO SCHOOL』以来、約5年ぶりとなる新作アルバム『BODY CONSCIOUS & JOYSTICK』を1/16にリリースする。初期ニューウェーブが持っていた、生身の人間とテクノロジーがぶつかり合いながら鳴らしている音の匂いを感じる今作。有機的なバンドサウンドとエレクトロニクスなどの無機質な手法が絶妙なバランスで融合した、新たなダンスミュージックの名盤だ。
●ホームページのプロフィールに“ノーウェーブサイケデリックグループ”と書かれていたんですが、ニューウェーブではないんですか?
ゲンタ(Genta Matsumura):元々、個人的にはノーウェーブっぽいバンドが好きなんですよね。ニューウェーブはそれより広い括りだと思っているから、そんなに違わないと個人的には思っていて。どっちかと言うと、今作はニューウェーブっぽいかなと思いますけど。
モロ(Eiji F. Morotomi):精神的には、ノーウェーブですね(笑)。
●ノーウェーブのスピリットを持ったニューウェーブ(笑)。
ゲンタ:例えばV.A.『NO NEW YORK』(※78年。Brian Enoプロデュースの、ノーウェーブを象徴するような伝説的アルバム)を聴いたりすると、“やっぱり根本的には、こっちに刺激を受けているな”と思うんです。でも今回はノーウェーブ感よりもバンドとしてまとまっている感じを出したかったので、ニューウェーブ寄りなモノになりました。
●根本にはノーウェーブがある。
ゲンタ:以前にやっていたCHICAGO BASSでは、ノーウェーブっぽさはあまり意識していなかったんです。元々、“何かっぽい”モノを作るというよりは、“これとこれを足したモノを自分がやったらどうなるかな?”っていう発想なので。ちょっとアートっぽいモノが元から好きで、それが何かと考えていった結果がノーウェーブなのかなと。
●発想がノーウェーブ的というか。
ゲンタ:RAMONESとかTELEVISION、TALKING HEADSもすごく好きだったんですけど、バンドをやるキッカケになったのは(『NO NEW YORK』にも参加している)Arto Lindsay(D.N.Aほか)やJames Chance(Contortions)なんですよ。普通に聴いたら“ただのパンク”なんですけど、“何かちょっと違うぞ”っていう感覚があるモノが好きで。ノーウェーブだけじゃなく、その前後にあったモノにも影響を受けていたんだなということを再確認して、今作を作ったんです。
●ノーウェーブが生まれた時代付近の音楽から影響を受けているんですね。
ゲンタ:バンドを始めたキッカケはノーウェーブなんですけど、その裏にあって僕らの血肉になっているモノはニューウェーブ的な要素が多くて。他にもオルタナとか色んな要素が入っているんですけど、ニューウェーブって言った方が色んなイメージで捉えやすいと思うから。
●ニューウェーブと言うことで、自分たちが持っている他の色んな要素も含められる。
モロ:今までのルールでは“混ざっちゃいけない”と考えていたモノも、今回は結果的に一緒にやっちゃった感覚はありますね。
ゲンタ:今回は感覚として“あまり考えずにやる”っていうか。ノーウェーブをマネしたんじゃなくて、自分の考え方がノーウェーブの人たちに近いだけだと思うんです。UMIBACHIを始めた当初も“こういう音を出して”っていうイメージをメンバーに伝えるわけじゃなく、“とりあえずスタジオに入って、やってみようよ”っていう感じで曲を作っていて。初期衝動はノーウェーブ的だったのが、やっていく内に変わってきた。
●変わるキッカケは何だったんですか?
ゲンタ:僕たちらしさとはどんなモノかと考えていくと、見えてきたモノがあって。ノーウェーブって、わかる人にはわかるけど、そうじゃない人にはすごくわかりにくいモノだと思うんですよ。元々はそういうモノがやりたかったんだけど、最近は“わかりにくいことをいかにわからせるか”っていうことを考えて作っていきたいと思っているから。
●UMIBACHIはニューウェーブと言っても、あまり機械化した音じゃなくて、生身の感じがします。
ゲンタ:元々、僕はJOY DIVISIONよりもNEW ORDERの方が好きだったので、昔は他人から“JOY DIVISIONっぽいね”とか言われてもピンとこなかったんです。だけど、なぜ彼らがあんな音楽をやっていたのかということが、最近はだんだんわかるようになってきて。ニューウェーブが完全に機械化する前の、テクノロジーと人間がぶつかりあっている感じが自分たちの音にも出ていると思うんですよね。
●バンド形態のJOY DIVISIONが、中心人物のIan Curtis(Vo.)が死んだ後、打ち込み主体のNEW ORDERへと変わっていく過程に近い。
ゲンタ:昔からTELEVISIONやLou Reedのアルバムを聴いていて、何がいいからなのかわからないけど、ギターの音とかがすごく好きだったんです。それは音についてすごく考えられているからだとわかって。打ち込みとかを使っていなくても、新しいことをしようとしている感じが音に出ているんです。僕もヒリヒリする感覚みたいなモノを昔から求めていたんだけど、当時はそういうモノが流行っていたから反発して、そうじゃないモノをあえて模索していたんです。すごく近くにあるモノを遠くに置いているような感覚でしたね。
●自分が好きな音楽を素直にやったのが今作?
ゲンタ:土臭くなり過ぎず、何かに対するアンチの気持ちがあって常にヒリヒリしているような雰囲気の音楽がずっと好きなんだろうなと思っていたけど、そういう雰囲気が最近の俺たちの音にもあって。この作品が出来て、今まで思っていたモノを外に吐き出すことが出来たという感覚はありますね。
●クラブに寄り過ぎることもなければ、ロックに寄っているわけでもない絶妙なバランスを感じます。
ゲンタ:自分たちは4人ともクラブにも行くし、ライブハウスも好きなんですよ。リズムで踊らせたいっていう気持ちもあるけど、ヒリヒリしたギターも聴かせたい気持ちがあって。その両方をすり合わせていく作業って、難しいんですよね。それを1つにまとめていく時に、自分はテクノロジー化が進む前の時代に活動していたバンドの音が好きだったんだなと気付いて。今作を作って、そのことに自分自身も気付かされたというか。
●今作の音質も、アナログ感がありますよね。
ゲンタ:“生”っていうことは意識していますね。今回、アナログっぽい音質になっているのは、デジタルっぽくなくやろうという意識があったからで。ニューウェーブでもやっぱり初期の、音にザラつきがあるバンドが好きなんです。TELEVISIONの1stアルバム『Marquee Moon』で、ジャケットの写真がちょっと粗い感じというか。ああいう雰囲気のモノがやりたい気持ちはありました。
●アナログ的な粗さは意識していた。
ゲンタ:でもレコーディングにいざ取りかかると、“もうちょっとクッキリさせたいな”とか、相反することを言い出すんですけど…。
モロ:水と油を混ぜようとするようなレコーディングをしていたよね(笑)。
●(笑)。M-11「City of Angels」の後半はフリークアウトしている感じで、サイケっぽいなと思ったんですが。
モロ:“サイケ”というモノをどう捉えるかが難しいんですけど、今回の水と油を混ぜるような作業自体が結局、サイケだったのかなと思う。初めて聴く人はそう思わないかもしれないですけど、この曲は僕らにとって“普通っぽい曲”なんですよ。僕ら的にはあんまりやらないことなので、偽のゴスペルみたいな感じで声を重ねたり、最後を必要以上に長くしたりしてバランスを取ったというか。ソフトなサイケというイメージはありましたね。
●サイケ的な感覚を意識した部分もあると。
ゲンタ:あの後半部分を拾ってもらえると、うれしいですね。自分たち的には、それだけ“どうかな?”っていう感じがあったから(笑)。言い出すと、色んなところに色んな要素が隠れているんですけど。
モロ:表向きには出していないだけで、ノーウェーブとサイケは実際、自分たちの芯にあるんだろうなと思っているんですよ。
●機械化され過ぎず、人間的な部分があるからUMIBACHIの音は聴いていて、トベるのかなと思います。
ゲンタ:“それを目指してやっていたのかな”っていう、不思議な感覚はありますね。“いかに踊りやすくするか”っていうことを考えてハウスみたいなフロア向けの音楽がどんどん出てきたと思うんですけど、その中で人間的な部分はなくなっていった。でも自分たちがバンドとして考えた時に、“人がやっている”っていうところがすごく重要になってきて。初期のニューウェーブとかを聴くと、ちゃんとそういう感覚があるんですよ。
●そういう音楽が理想形にある?
ゲンタ:でも下手にそれをやってしまうと、人がやっている感じだから中途半端にノれない音楽になる恐れもあって。人間臭いのに、ちゃんとカオスな感じがあって、リズムもちゃんとある。そんな危ういバランスで成立している感じがすごくスリリングでいいなと思っていた。感情みたいなモノが重要だったんですよね。周りはそれをなくす方向へと進んでいるのが、前から不思議で。
●特にクラブミュージックはそういう流れですよね。
ゲンタ:そういうモノに飲まれると、面白くなくなっちゃうんじゃないかなって。やっぱり初期のパンクやニューウェーブとかを聴いて育ってきたから擦り込みもあるんでしょうけど、そういう音楽を今改めて聴いても“すごいな”って思うんです。
モロ:世代もあるんじゃないかな。僕らはデジタル世代とアナログ世代の谷間にいる世代なので。
●世代的に聴いてきたモノが今作には出ている?
ゲンタ:原液はメチャクチャ濃いんだけど、最終的にはすごく大衆的なモノとして浸透していけるような音楽が僕らの目指すところなんですよ。そういう意味では、今作はその中間的な感覚があって。どちらかに寄るんじゃなくて、その間を流れていくようなモノを素直に出せた感覚がある。“これはきっと先に繋がっていく何かなのかな”っていう感じが自分たちではしています。
●今作でUMIBACHIの音が固まったというか。
ゲンタ:この4人でのやり方が固まったというのはあります。UMIBACHIを始めた時は僕自体がノーコンセプトで、“ノーコンセプトをコンセプトにしている”みたいな感覚があって。とりあえず、この4人が集まって出てくる音みたいなモノを模索していたんですけど、それがちょっとハッキリしてきたというか。やっぱりバンドの土台はノーウェーブ的なところだから、矛盾しているようだけど、“アンチ意識的”みたいなところは避けられない(笑)。だから、危うさみたいなモノが見え隠れしちゃうんでしょうね。
●前作の1stアルバム『NO SCHOOL』からは約5年かかったわけですが。
ゲンタ:遅いんですけど、今回4人でまとまって1つのコミュニケーションが取れるようになったという感覚がありますね。言ったり言わなかったりするモノをみんなが何となく肌で感じて作品が出来た。ノーウェーブって、音楽を作ろうっていう感覚じゃないと思うんです。もっと衝動的なモノをやろうとした結果が、音楽になっていたりする。“人生の中で1枚作れたらいいな”っていうようなモノが今回は作れたから、これからはいい意味でシンプルに音楽らしいモノや思い浮かんだモノを作っていけたらいいなって思えるようになりました。
●今作を作ったことが今後にも大きく影響している。
ゲンタ:僕の中ではCHICAGO BASS時代も前作も含めて全部つながっているんですけど、これからのUMIBACHIにとってすごく大きな意味を持つ作品が出来たなと思っていて。今作はバンドにとって、エポックメイキングなモノになっていると思うんですよ。
Interview:IMAI
Assistant:中路 亜紀
Dr./Pads/Cho.Eiji F. Morotomi
Vo./G./Bongo Genta Matsumura
Vo./Organ/Syn.Katsuhito Tateyama
Ba./Cho.Jotaro Miwa

New Album 『BODY CONSCIOUS & JOYSTICK』
COCO MAY MAY GRUPO
UMBC-001
¥2,000(税込)
2009.1.16 Release