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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延のセルフRECはプロRECを越えられるか? -第11回-

―――前回に引き続き『神聖かまってちゃん』などのエンジニアリングを手掛ける萩谷真紀夫氏との対談です。

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樫村(以下:樫)ただ個人的に、RECにおけるプロとアマの差はまだまだあるなあ、と気づく部分が何点かある。

真紀夫(以下:真)それは何ですかね?だいたい予想は出来るんですけど。

樫)まずは目の前でなっている音を「そのバンドの雰囲気を出しながら、曲調に合わせてどれだけリアルに収録出来るか」ということかな?

真)非常に当たり前のことですが、レコスタで録っても意外と簡単に出来そうで出来ない所ですね。

樫)そう、だからセルフRECではもっと難しくて。機材が使いこなせれば良く録れるはず、と思っている人が多い気がする。

真)僕なんかはProtoolsHD、HDX、高級アウトボードなんかをいろんなレコスタでふんだんに使って作業することも多いんですけど。バンドの理想形をとことん深読みして、ようやく彼らのストライクゾーンに入る感じです。逆にプライベートスタジオでは、樫村さんもおっしゃってたヤマハのAWシリーズを使って作業したりしますね。

樫)録り音と演奏の雰囲気をいい感じで収録するって、ハードルは決して低くないんだよね。ここをきちんとクリアしていかないとMIX、マスタリングなんかの後処理では対処しにくくなるから。

真)録り・MIX・マスタリングの全工程を一貫した流れとしてとらえるべきで、一つ一つを別作業と考えないほうがいいですね。

樫)その方がいい結果を生むことが多いね、基本的には。プラグイン100個差して、100時間MIXしても及ばない部分もあると思う。録り音がなんか違うなぁと思っていながらも、MIX・マスタリングで何とかなるだろうという発想は極力避けるべき。

真)そうです、録りは非常に重要です!

樫)プロレベルの録り音に近づけるには高級マイクプリアンプを最低一台、出来れば複数台用意したいところだね、MANLEY、VINTECH AUDIO、Millenia、TUBE-TECHクラスの。中古でも10万円以上することが多いけど。

真)ADコンバーターと同じくらい重要な「音の入り口」の部分ですもんね。それに加えてマイクケーブルや電源なんかも当然こだわりたい。予算は結構かかるけど妥協できない点です。

樫)あと、録る場所もとても重要だよね。セルフREC前提で考えると、リハスタ、学校の部室あたりが一番可能性として高いでしょう?どこでやるにしても、最低12〜13畳以上の広さと、2.5メートルの天井高は必要かな。反響も少なめの方が取り組みやすいことが多い。ドラムセットの下に吸音マットを敷いたりするのも試す価値はありだね。

真)僕もたまに、リハスタでインディーバンドのRECを手伝うことがあるんです。

樫)機材を持ち込んで録るから、こだわるポイントは決まってるよね。

真)ええ、その場合メインの機材は意外にシンプルで、ProtoolsLeか、ヤマハのAWだったり。電源やヘッドホン周りのモニターセクションは逆にいろいろこだわります。

樫)演奏の雰囲気を出すには、なんといってもミュージシャンが気持ちよくプレイできる環境づくりが第一だからね。プロとアマの差はこんな部分でも出るんだよね。

真)セルフRECだと、レイテンシーも含めて、モニターバランスが取れないで無理やり演奏しているってことも多そうですね。

樫)無理やり演奏してグルーヴとか雰囲気とか味が出るわけがない。オペレーションする人と、プレイヤー用のモニターは、それぞれ個別に取れたほうが良いね。ヤマハのAW2400は、まさに独立したモニターセクションが2つあって、レイテンシーもないし、電源やマイクケーブルにこだわれば音もなかなか良いし。PCよりも使いやすいというバンドマンもいるよ。

真)わかります、僕も2400ではないけどAWシリーズを2台持ってるんで。周辺機器を強化すれば本チャンでも十分通用すると思います。

樫)あと、出来ればモニターセクションにキューボックスも用意したいね。今、あんまり選択肢はないんだけど。

真)モニターの返り方一つで、演奏のダイナミクスも全然変わります。

樫)後処理では成し得ない「素晴らしいテイク」は、こういうことの積み重ねから生まれるんだと思う。

―――次号に続きます!

 

【今月の逸品】YAMAHA Subkick
yamaha-subkick
非常にユニークな形の、超低音収録用マイク。
バスドラはもとより、ウッドベース、ジャンベ、コンガ、ボンゴなどのパーカッション類の低音成分を収録するのにうってつけ。残念ながら最近生産終了になってしまいました。
個人的には是非、後継機種を出してほしい!

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。Whirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

 

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

たなま『はじめの一歩』
tanama
ルーツにYUIを感じさせるシンガーソングライター「たなま」満を持しての1stミニアルバム。バックにomoinotakeを従え、シティーポップやAOR、ギターポップ色もさりげなく感じられる好盤。Shakarabitsも所属するNEON RECORDSより首都圏を中心に発売。

after the greenroom『Like a Blanket』
afterthegreenroom
アシッドマンを輩出したNormadic Recordsが放つ、洋楽の匂いを感じるオルタナポップバンドのフルアルバム。Vo.のYAMAMIを中心に全パートがセンス良く、同じベクトルで絶妙に絡む名盤。全国発売中。

蒼鷺は死なない『幸か不幸か』
aosagi
いなせな女性Vo.を前面に打ち出した、エモ・オルタナ色を含んだロックバンドのミニアルバム。曲のバリエーションが実に様々で「蒼鷺ワールド」をしっかり形成している。椎名林檎や大森靖子あたりが好きな人にもおすすめ。

ムーファ『Syndrome×Syndrome』
mu-fa
曲によってVo.が変わる多面性をもった、神奈川在住のギターロックバンドのミニアルバム。ルーツに少し欧米のR6R、モッズが感じられ、類を見ないキャッチ―なポップテイストを真摯に取りこんだ自信作。

ARUKANATA『Alchera』
arukanata
ハイトーンボイスが非常に特徴的なエモギターロックバンドのマキシシングル。アンダーグラウンド系から四つ打ちポップまで幅広い内容が純粋に楽しめる。全パートの変幻自在なサウンドスケープも追い打ちをかける、緻密かつまとまりの良いプロダクションがすごい。

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