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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第15回

来たる4月8~20日、オーストラリアのロックバンド Bertie Page Clinicが日本ツアーを行います。バーレスク、キャバレーカルチャーと70~80年代Ozハードロック要素が融合された、オリジナリティー溢れる勢いのあるバンドです。直木賞作家である道尾秀介氏とも関わりが深く、この日本ツアーでは道尾氏がボーンズというアイルランドのパーカッションで参加するとの話も。
気になる方は是非 http://topmusic.jp/product_info.php?products_id=1212 をチェックしてみてください。

――さて、先月からの続きです。
機材を中心とした環境を、前回に比べ相当グレードアップさせたことに安心しきっていないで、今一度セルフRECの本質を確認すべし!と先輩から喝を入れられたバンドメンバーたち。
録音を「音楽的で有機的」にするためには、物理的な環境が整っているだけでなく的を得た下準備が重要。

•    プリプロダクション
普段の「ライブに向けての練習」とは異なり、「レコーディングのための」きめ細かな楽曲の練り上げ作業がプリプロ。バンドメンバー全員が、自分以外の全パートのアレンジを徹底して把握する。レコーディング当日が「曲アレンジの打ち合わせや練習」に化けないように、アレンジを煮詰め完成させ徹底的に練習しておく。

•    コーラスは身体に染みこむまで!
そして見落としがちな大きな落とし穴が「コーラス」である。主メロに対するユニゾン(同じ音程で歌うな
らまだしも別音程(ハモリ)が曲者で、REC当日大苦戦するバンドも少なくない。特に上下パートを3度音程でハモる3声コーラスは、曲中に占めるコーラス部分が多いと、とにかく時間がかかるもの。編集でなんとかしてほしい、と言われても、ピッチ直しの作業時間も当然多くかかる。ハモリの量によってレコーディングのトータル時間が左右されることも往々にしてあるので、コーラスパートは時間をかけて徹底的に練習を。各人の能力を見極め、理論にのっとったアレンジを考え、身体に染みこむまで練習する必要がある。簡単そうに思えて、実はハモリには大変な職人技が求められる。高望みはしないこと!

•    クリックをなめてかかるな
まともにクリックを攻略しようとすると、半年から一年以上の練習期間がかかると思ったほうが良い。セル
フRECでクリックを使おうと思うのであれば、ドラム、ベースのリズム隊だけでなく全パートが余裕でクリックに合わせられるレベルになるまでしっかりと練習する。

•    ヘッドフォンに慣れろ
REC本番ではヘッドフォンを多用するので、普段からヘッドフォン(イヤフォンではなく)で音楽を聴き、ヘ
ッドフォンの音質や装着感に耳を鳴らしておく。

•    楽器のメンテナンス
レコーディング前に、各自信頼できる業者に楽器メンテナンスをお願いしておく。また、一揃いしか自分の楽器類を持っていない場合は、可能であれば知り合いなどから楽器を借りておいたほうがよい。(ドラムの場合はスネアだけでも)メンテナンスをしておいても、当日楽器類にトラブルがないとは限らない。不測の事態でもすぐ差し替えて使えるというメリットの他に、楽器の音イメージが違ったという場合にも有効だ。例えばギターで、自分の持っているテレキャスでイメージが違うと思えば、友人に借りておいたレスポールを試すなどで良い方向に動くこともあるだろう。今回セルフRECで利用するスタジオでは、無料、有料含めたオプションでギター、ベース、スネアを始めアンプ類、エフェクター、ヘッドフォン、パワードモニター、電源タップもレンタル予約しておいた。

•    録っている段階から完成形を見越して作業を
録音していて音が細いと思えば、楽器・アンプ・エフェクターのチョイス、セッティングを疑ってみる。特
にギター、ベースは間にチューナーを挟むと音の情報量が減る=音が非常に細くなる。アンプのチューナーアウトやDIのパラアウトからチューナーにつなぐと、いつでもチューニングが出来るだけでなく音もさほど細くならずに済む。シールドの電流の向きを合わせることも重要。向きがわからない時は最初と逆方向につなぎピント
の合う方を探り、テーピングなど目印をつける。

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・・・シールドによっては、このように
アンプ側に差す目印がついているものもある

 

長すぎるシールドは音質が悪くなるので、長さは出来れば5メートル以内で。録音している段階で、仕上がりイメージの8割以上の音になるように心がける。

•    録りの状態が悪いものをMIXでなんとかしようとするのは厳禁。
「演奏で失敗しても、編集でなんとかなる」という考えで演奏していると、真剣みに欠けた間延びしたノリになり、結果リスナーに伝わりにくい音源になる傾向がある。達人のMIXは足し算ではなく引き算が基本になることも多い。アレンジも同様。参考にしたいプロの音源との徹底比較も、この段階で行うことをおすすめする。

•    普段出来ていないことは絶対にやらない
普段は難なく弾けるフレーズでも、REC本番となると緊張で思いの他弾けないということもある。普段ぎ
りぎりで弾いているフレーズなら尚更。レコーディングでマジック(編集)は使えても、ミラクル(弾けないフレーズでも何百回に一回くらいは出来るかもという考え)は起こりえない。

•    メンバー全員でRECに臨む
スタジオを借りず自宅で録音出来てしまうパート(キーボードなど)でも、なるべくメンバー全員が揃った
状態でRECしたほうが良い。一人で録音して自分自身はOKの気持ちでいたとしても、後から他のメンバーからNGが出る可能性もあるのだ。文句を言うほうも言われるほうも気まずい思いばかりが残り、その後のRECへのテンションが下がってしまう。その場で意見を交わしながら、全員が納得して録ったほうが良いものが出来る。また、自宅で録音すると家庭用電源を使用するため、音がフラットになりにくいという注意点もある。
さあ、実際のセルフRECまであと一か月。続きは次回で。

 

【今月のちょいレア】 Radial CRUSH GARD

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ユニークで非常に実用的な商品を作り続けている
Radialの自信作。写真のようにマイクとマイクスタンド
との間に設置して、音のかぶりをやわらげる。ドラムス
ティックで叩かれてもびくともしない、大変頼もしいア
イテム。

 

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

カイザーストロングバーツ「KAIZER STRONG BAHT」
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70年代、80年代を彷彿とさせるR&Rパワーポップバンドの初フルアルバム。クラッシュ、ストーンズ、ジェット、イギ―ポップあたりのエッセンスが自然ににじみ出ている。Vo.Keita氏の声質と歌詞が群を抜く個性を発揮。このバンドには聴き手をハッピーにさせる何かがある。

 

THE FREE MAN「拝啓ポンコツ人間様」
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ストーンズVSクラッシュ、meetsブルーハーツとでも言うべき、R&Rパンクバンドのミニアルバム。全体的にオールドスクール系のロックナンバーが多いが、歌メロやギターの音色にも注目してほしい。若手バンドとは思えない軽やかな渋さが良い。リズム隊も横ノリ感が出始めている。

 

BREAKER THE TV「START WRITER」
3_breaker the tv
まず何と言っても一番の特徴がVo.川井氏の声質だろう。ちょっとハスキーでブルージーな声質は一度聴いたら忘れられない存在感がある。等身大の楽曲を演奏しながら、さりげなく背伸びしているアレンジが心憎い期待のニューカマー。2016年4月全国発売。

 

GENE「All Ways」
4_gene
ヴァン・ヘイレンなどのアメリカンハードロックを基調とした、メロディアスロックバンドのシングル。客層選ばない卓越したステージングは必見。洋の東西を問わないユニークなギターリフを是非大音量で聴いてほしい。全国発売中。

 

PETZ STOMP「ビーフはどこだ」
5_pezstomp
かつてスネイル・ランプのレーベル“スクールバス”に在籍していた大御所ポップスカバンドの3rdアルバム。90年代から2010年代までの広きに渡るスカフレーバーが、バランスよく散りばめられており、初めて聞く人にも入っていきやすい充実した内容。全国発売中。

 

【今月のPV】 DUTCHDADDY 「Metrocity」

UK色プラス、少々オールドスクールを感じるギターロックバンド「DUTCH DADDY」初の全国流通アルバムの第一弾ミュージックビデオ。

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