音楽メディア・フリーマガジン

成底ゆう子

自分を愛して満たすことが 溢れる愛のはじまり

宮沢和史(THE BOOM)と小倉博和(ギタリスト・プロデューサー)を強力タッグに迎え、更に輝きを増す“成底ゆうこ”のピュアな歌声。石垣島から東京へ、約10年にも及ぶインディーズ活動を経て辿り着いた、「自分を満たす愛」からはじまる「大切な誰かへの愛」

 

 

 

●成底さんの出身は石垣島とのことですが、ルーツとなる音楽は何ですか?

成底:私たち石垣島の人間にとって島唄は生活の一部なので、一般的にいう“音楽”のルーツは、3歳の頃に始めたピアノと小学校の時に入った合唱団ですね。

●その頃から自分で曲を作り始めたんですよね。何かキッカケがあったんですか?

成底:もともとピアノの練習としてやっていたんですけど、感覚的には遊びの延長でした。そこからオペラ歌手になりたくて、音楽大学に入学したんです。

●初めからシンガーソングライターを目指していたわけではなかったんだ。

成底:そうですね。実は大学を卒業後に歌劇団に入って、研修の一環としてイタリアで公演をすることになった時、プレッシャーで公演の前日にまったく声が出なくなってしまって。逃げるように東京に戻ってからは、音楽から離れていたんです。だけど両親はずっと応援してくれていたし、簡単に帰るわけにはいかないし…何より歌えなくたったものの、歌いたいという気持ちはすごく強く残っていて。両親には「まだ音楽を続けているよ」って嘘をつきながら、“この先どうしよう”って気持ちで東京にいたんです。

●そうなんや。

成底:だけどある日、実家から手紙と小包が届いたので、久し振りに両親に電話をしたんですよ。離れていても、不思議と娘が悩んでいると何かしら気付くみたいで、父が「お前の痛みや悲しみは、父さんもわかっているから」と励ましてくれたのをキッカケに、もう一回音楽と向き合ってみて“私は自分で曲を作って歌うのが好きだったんだ”ってことに気付いたんです。

●だから、シンガーソングライターとしてもう一度やってみようと思ったんだ。今作の曲はすべて成底さんで、詩は島崎伸一さんという方が書かれているんですよね。

成底:島崎さんはもともと事務所の社長で私のプロデューサーだったんですけど、本業は構成作家をやっている文章のプロなんですよ。私の意見も入れつつ書いて頂いたので、今回は2人の合作という感じですね。

●セカンドシングル『溢れる愛のはじまり』はTHE BOOMの宮沢和史さんという大物プロデューサーを向かえていますが、お互いが信頼し合いわかり合っている印象を受けました。

成底:嬉しいですね。私は宮沢さんの大ファンで、ミュージシャンとしてもすごく尊敬しているんです。サウンドプロデューサーを決める時にダメもとで頼んでみたら、私がピアノの弾き語りで作ったデモテープを聴いて「何度も聴いてもらうことで、心に寄添うような曲になると思う」って引き受けてくださって。さらに「この曲の本当の優しさや繊細さを引き出すには、ピアノじゃなくて小倉博和さんのギターしかない」と思われたらしくて、小倉さんにギターアレンジをお願いしたんです。

●小倉さんは、日本を代表するギタリストですよね。

成底:優しいギターの音色で、素晴らしいアレンジにしてくださいました。でもずっとピアノの弾き語りで歌ってきたので、最初はギターの音色になって馴染めなくて。そしたら宮沢さんがそれを察して「本を読み聴かせるような形で歌ってみよう」というアドバイスをくださったんです。その瞬間から自分の歌の表現や声が180度変わって、録音した歌を聴いた時は“自分の中にこんなに優しい歌声があったんだ”って驚きました。だから私はこのシングルが、新しい成底ゆう子のはじまりでもあると思っているんです。

●そういうのってドラマチックやね。この曲の歌詞に“誰かに愛をそそぐ前に、自分だけを 愛して下さい”っていう表現があるけど、自分“だけ”っていう表現は珍しいなと思って。

成底:今回は“自分を満たす愛”というテーマでこの歌詞にしたんです。インディーズの頃“私は才能もないしダメだ”と思って、辞めたくなることが何度もあったんですけど…そんな私の歌をいつも聴きにきてくださるファンの方がいて、まるで「成底さんは成底さんのままで良いんだよ」って言ってくれている気がしたんです。その度に“もっと自分を愛してあげればいいんだ”と思えたんですよ。そう思うと人にも優しくなれるし、自分の将来にもすごくポジティブになれるじゃないですか。

●誤解を生む言葉かもしれないけど、自分を愛することによって人への愛が溢れてくるということなんですね。

成底:本当に辛い時って、肩がぶつかっただけでもイライラしたり、何でも人のせいにしてしまうことがあると思うんです。だけど自分が満たされている時って、人にぶつかっても自然と「ごめんなさい」って言えたりするし、“自分ってこんなに優しかったんだ”っていうのを感じられるんです。その優しさひとつで、その1日がすごく幸せに過ごせるじゃないですか。それってすごく大事だなと思っていて。毎日が幸せならみんな優しくなれますし、ひとりひとりが愛に満たされた世界なら、世界も優しくなれるんじゃないかって思うんです。

●それは石垣島から出てきて、長いインディーズ時代の中で培ってきた考え?

成底:そうですね。東京に来て“ひとりでやっていかなきゃいけない”という不安で“いっぱいいっぱい”になって、毎晩泣いて、だけど島には帰れなくて…でも見方を変えると“こんなに頑張っているから、今日はビールで乾杯しよう!”とか、そう思えるだけでも1日を幸せに終えることができるというのを伝えたかったんです。私も今はプレッシャーもないですし、本当に楽しくてしょうがないんですよ。

●表情から楽しさが溢れてるもんね。成底さんはどんなアーティストを目指しているんですか?

成底:私にしか出せない心温まる世界観を持って、イントロが流れただけで“成底さんの曲だ”って分かるようなミュージシャンになりたいです。要は世に出たいということですね。
一同:あはははは!

●そして、12月にはアルバムリリースも予定されているとか。構想はもう出来ているんですか。

成底:収録曲は決まっていて、もうすぐレコーディングも始まります。リード曲には、お客さんから音源化を望まれていた“あの曲”を入れる予定です。リリースに合わせて12月に大阪でワンマンライブも予定しているので、ぜひ遊びに来て欲しいですね。

Interview:PJ
Edit:森下恭子

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