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流田Project

謎の覆面アニソンカヴァーバンド・流田Projectの正体に迫る!

 ふざけた容姿に似合わぬ熱いサウンドとロックスピリッツを胸に、アニソンをエッヂィな音で鳴らす流田Project。

動画サイトを足がかりにして突如シーンに現われた彼らが、昨年12月にリリースした1stアルバム『流田P』に続き、待望の2ndアルバム『流田PP』を完成させた。人気アニメ『Angel Beats!』や『とある魔術の禁書目録II』などからチョイスしたアニソンをロック感溢れるアレンジで見事に表現した今作。我がJUNGLE★LIFEは、すべて謎に包まれた彼らの正体を暴くべく、4人を直撃した。

Interview

「ライブがいちばん好きなんですよ。僕らは好きな曲をカヴァーしてみんなとワイワイ騒ぎたいだけっていう感じなんです」

●手作りのお面を付けてアニソンをカヴァーして…流田Projectって何なんですか? プロフィールには「阪南大学のフォークソング部で出会った4人で結成」と書いてありますけど。

栗川:それぞれ色んなバンドをやっていたんですけど、アニソンをカヴァーした動画を遊び半分でYouTubeに流したことがきっかけで流田Projectが始まったんです。

●本気で始めたバンドではなかったと。

流田:そうですね。動画を最初にアップするときのノリは「あ~、おもしろそうやからやってみようか」っていう程度です。

●なぜアニソンのカヴァーをやろうということになったんですか?

流田:大学を卒業してメンバーそれぞれ別で音楽活動をしていたんですけど、あるときに僕の兄貴にフワッと「アニソンやってみたら?」と言われたんです。兄貴はアニソンとか動画サイトが好きで詳しいんです。で、僕らもフワッと「じゃあやってみよか」と。だからメジャーデビューなんてまったく考えてなかったんですよ。完全に遊びです。逆に本気じゃないからこそアニソンカヴァーをやれたっていう。

●軽いですね(笑)。

流田:軽いです。そんなに動画が再生されるとも思ってなかったし、やったからといって痛くも痒くもならないだろうなと。でもやってみたら動画がいっぱい再生されて「すげー!」ってびっくりして。じゃあ1回試しにライブをやってみようということになって。それまで流田Projectでライブをしたことがなかったので。

●え? ライブをやったことがなかったんですか? JUNGLE★LIFEに載ってる他のバンドに怒られますよ!

一同:アハハハハ(笑)。

流田:前にやっていたバンドではそれぞれいっぱいライブを経験していたんです。でもこのバンドでは1回もやったことがなくて。お客さんが入らへんかったらどうしよう? とも思ったんですけど、兄貴が「入らへんかったらハコ代出したる」と言ってくれてたのでええかと。

●ひどいな(笑)。

栗川:そしたらすぐにチケットがソールドアウトして。びっくりでした。

流田:ステージに出る前、客電が落ちて暗くなったらお客さんが「ウワーッ!」って。「どうしよう? もっと練習しとけばよかった!」って。

栗川:その後にメジャーデビューの話が来て、またまたびっくりして。

流田:で、「乗っかれ! 乗っかれ!」って(笑)。

●そこで怖気づくことはなかったんですか?

流田:なかったですね。そもそも"メジャーっぽくせなあかん"っていう考えがなかったし、"メジャーで出せるんやったらおもしろそうやしええんちゃう?"っていうノリで…今に至ります。

●何も考えてないというか、大胆というか。

流田:真面目な話をすると、前にやっていたバンドでそこまでお客さんがライブに来ることなんてなかったんですよ。僕ら全員、バンドで成功する難しさとかは散々知っていて。その上でこのバンドをやってみたらたくさんの人たちが共鳴してくれたので、だったら僕たちにやれることはこれなんじゃないかと。

●なるほど。苦労した経験があるからこその流田Projectだと。

流田:そうですね。逆にポッと出だったら怖気づいてメジャーデビューなんかしてないと思います。でもひと通り苦労はしてきたので、せっかくのチャンスだから思いっきり肩の力を抜いて遊び半分で楽しもうと。

栗川:このお面とかどう見てもふざけてますからね(と言ってお面を見せる)。

●確かに手作り感満載ですね。特に穴澤さんのお面なんて汗がにじんでボロボロですけど…。

穴澤:そうなんですよ。1個しかないからライブでは毎回これを使ってて。

流田:僕らはちぎれたときのためにもう1個スペアを持ってるんですけどね。

●なんで穴澤さんのは1個しかないんですか?

穴澤:出来が気に入らなくて捨てたんです。

●そうですか。

流田:こうやって直接ご覧になったらわかると思いますけど、僕ら全員めちゃめちゃイケメンじゃないですか。でもそれを売りにはしたくはなかったので、お面を付けたんです。

●そうですね。読者のみなさんには伝わらないですけど、素顔は4人ともめちゃめちゃイケメン…ですよ…ね。

一同:(苦笑)。

流田:僕らは音楽で勝負したかったんです。

●その音楽も基本的に人が作ったやつですけどね。

一同:(爆笑)。

●ところで今回2ndアルバム『流田PP』がリリースとなりますが、今作はどういうコンセプトだったんでしょうか?

流田:今回はより動画に近づけたかったというか、一発録りにこだわりたかったんです。1stはギターとか色々重ねたりして作ったんですよ。僕らアホやからちょっと背伸びして、"ちゃんと録らないと!"って思っちゃったんですよね。もちろん1stの出来には満足していていい作品になったと思うんですけど、流田Projectというバンドにみんなが望んでいるものは"上手さ"とかじゃなくて、"勢い"だったり"バンド感"だなと。だから今回はひとつの部屋に入ってお互い顔を見ながら一発演奏でバーン! と作りました。

●普通のバンドだったらよく「今作はライブ感を出したかったんです」とか言いますけど、流田Projectの場合は「動画感を出したかった」と(笑)。

流田:そうです。動画感が欲しかった。

栗川:意味合い的には同じなんですけどね(笑)。

●ちなみにカヴァーする曲はどういう基準で選ぶんですか?

流田:メンバーそれぞれがやりたい曲を挙げていくんです。「あれやりたい」「これやりたい」って。あとはブログでファンの人の意見を聞いたり、兄貴が「あれやってほしい」と言ってきたり。

●メンバーはもともとアニメオタクなんですか?

流田:いや、それが実は僕ら全然アニメに詳しくなかったんです。好きは好きなんですけど、いちばん最初の動画をアップするまではあまり知らなかった。

栗川:流田Projectをやり始めてから詳しくなりました。桃山はもともと詳しかったですけど。

●あ、そうなんだ。

桃山:でも前からある程度は知っていましたけど、広く浅くっていう感じで。ここまで濃いところに突っ込んだのは流田Projectを始めてからです。

●ところでさっきから気になっていたんですけど、ちょいちょい流田さんのお兄さんが話題に出てきますよね。何者なんですか?

流田:ただのサラリーマンなんですけど、影のキーマンではあります。アドバイザーでもあるし、困ったときにお金を借りる人でもあります。非常に重要な人物です。

●お金も借りるのか(笑)。

流田:兄貴はバンド経験者ではないんですけど、音楽にめっちゃ詳しいんですよ。全米ビルボードの順位も常に覚えているくらいだし、アニメにも詳しいし、動画にも詳しいんです。

●え? 何者なんですか?

流田:ただのサラリーマンです(笑)。でも変わった兄貴で、タモリ倶楽部の「空耳アワー」ってあるじゃないですか。あのコーナーでオンエアされた全部のデータが載っている辞典みたいな本を作ってコミケで売ったりしてます。webもやっていて『空耳アワー研究所』っていうんですけど、とにかくマニアックな兄貴なんです。困ったときに色々と助けてもらってます。

●よくわかんないですけど(笑)、とにかく重要人物っぽいことはわかりました。話を戻しますけど、今作『流田PP』を聴いて思ったんですが、基本的に歌が真ん中にあるキャッチーな楽曲ばかりですけど、アニソンは歌唱力がないとちゃんと表現できないんじゃないかなと。サウンド的にもハードロックやメタル的な要素が多くて、演奏面での技術もかなり必要だっただろうし。

流田:そうなんですよ。バンドってシンプルなコードで「ジャーン!」と演ることが気持ちよかったりしますけど、アニソンはそういう感じではなくて。中にはギターが入ってない曲もあるし、それをこの4人で表現するっていうのが難しい。だからといって、ライブで再現できないものにはしたくはなくて。僕らライブがいちばん好きなんですよ。レコード会社の人の前で言うのも何ですけど、"ライブをやるためにリリースする"くらいの勢いで活動をしていて。
レコード会社の人:(苦笑)。

流田:僕らは好きな曲をカヴァーしてみんなとワイワイ騒ぎたいだけっていう感じなんです。何枚売れたかとかはあまり興味がないというか、正味な話、ライブのことしか考えてないですね。

●最初はライブしたことなかったクセに…。

流田:だから今回も制作は難しかったですね。ギターでは使わないコード進行もたくさんあったし、転調とかもすごく多かったし。それに今回は全部女性ヴォーカルの曲ばかりでキーを下げる必要があったんですけど、そうするとギターのフレーズ的に無理が生じたりもして。色々と苦労しながら作りました。

穴澤:やっぱり聴いたときに原曲がわかるようにはしたいからな。

●あ、そうか。聴いてくれる人たちは原曲を知っているから、原曲のイメージも壊したくないと。

流田:そうなんです。だから新しい曲を演るたびに苦労するし、すごく勉強になりますね。

●今作はオリジナルが2曲入ってるじゃないですか。M-3「月ノの夜ニ」とM-11「奏でるチカラ」ですが、どういう経緯でオリジナルを入れようと?

流田:Twitterとかブログのコメントとかで「オリジナルを聴いてみたい」という意見が結構多かったんですよ。それで調子に乗り、このオリジナル2曲を作って入れてみたんです。

●この2曲はすごくストレートだし、特に「奏でるチカラ」はバンドの心境的なことをリアルに歌ってますよね。音楽に対する純粋な気持ちというか。ふざけたバンドかと思いきや、こういう熱い面も持っていたのかと知って、なんか新鮮でした。

流田:そうですね。例えば全然意味の無い歌詞でふざけた曲を作るという選択肢もあったんです。別にうんこの歌でもよかったし。

栗川:それはボツになるやろ。

流田:でも"自分たちがオリジナル曲で歌いたいことは何だ?"と考えたら、やっぱり真面目なことというか、バンドの心境的なことをストレートに歌いたかったんです。

●「遊び半分でフワッとここまできた」と言ってましたけど、「奏でるチカラ」を聴く限り、実は音楽にすごく助けられていて、自分たちにとって音楽はかけがえのないものだと考えているんですね。そういう熱いことを言うのは照れくさいんですか?

流田:そうですね。まさに仮面の下を見られた感じです。

●あっ! ちょっと上手いこと言った!
interview:Takeshi.Yamanaka

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