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長田大行進曲2011

“長田大行進曲”がある限り、神戸の音楽は鳴り止まない!!

2011/9/24(土)・25(日)
神戸市立フルーツ・フラワーパーク 特設ステージ

Review

"神戸にバンドが残っていて欲しい"という願いのもと、デビュー10周年・結成15周年となるガガガSPによって開催された今回の"長田大行進曲"。このフェスの出演者は、彼らが本当に共演したいと思うアーティストだけを集め抜いた最強のラインナップだ。それはもう愛じゃないか。私が思うに"長田大行進曲"のキーワードはズバリ、愛。愛を感じるライブほど、観ていて幸せな気持ちになるものはない。そしてこれほど愛に溢れた暖かいフェスを私は知らない。バンドへの愛、神戸への愛、そして音楽への愛によって生まれたフェスの模様を、私なりの言葉でみなさんにお伝えしたいと思う。

9/24(土)
カラッとした秋晴れが清々しい昼時。和風なSEが流れた後、メインステージで先鋒の名が高らかに叫ばれた。ガガガSPと同じく結成15周年のTHEイナズマ戦隊がロックンロールの精神で勢いよく先陣を切ったのに続いて、かりゆし58はマイペースかつユーモラスなMCで長田に沖縄の風を吹かせる。途中でVo./Ba.の前川が"ガガガSPの好きなところ"について語り始めた時は、早くも涙腺が緩んでしまった。その後もグランドピアノの弾き語りで安らぎのひと時を与えてくれたKANや、お祭り騒ぎがこの上なく似合うソウル・フラワー・ユニオンなど、ジャンルを問わない多彩なアーティストがフリーダムな空間を作り上げる。

一方、比較的アグレッシブなバンドが多く出演したサブステージの盛り上がりも凄まじい。マイクスタンドを振り回しながら所狭しと暴れ回った黒猫チェルシー、ハイレベルな演奏とパフォーマンスでポテンシャルの高さを知らしめたTHE冠。その一挙一動が人を興奮させ、地元である神戸に幾多のダイバーを生み出したセックスマシーン…この場所は屋根の下にあるため熱気が凝縮されるうえに、会場の盛り上がりと比例してさらにアツさを増していった。

もちろんアコースティックエリアの存在も見逃せない。ガガガSPのVo.コザック前田&藤沼伸一の最強タッグは抜群のコンビネーションで観客の笑いを誘う。途中、コザック前田のギターが鳴らなくなるハプニングが起きた時の事。"どうせ俺らも欠陥品として生まれたんだ。欠陥品のギターでも、もしかしたら鳴るかもしれない"と言って、ハイボールを飲みながら鳴らないギターを弾き続けた。他の人が言えば嫌みに聞こえる言葉も、彼が言うと"あぁ、コザックさんらしいな"と納得してしまうから不思議だ。すかさず"飲み過ぎ"と藤沼が絶妙なツッコミをいれると、どっと笑いが巻き起こる。アクシデントさえプラスに変える、彼らの人徳と人間性につくづく感服した。 "リリック ソング フォーユー"とのシンガロングが爽快なガガガSPの「青春狂時代」や、藤沼の所属バンドANARCHYの「ノット・サティスファイド」など、生きている中で感じる不安や怒りをストレートに唄う彼らは、何と素朴で人間味があるのだろうか。

楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってしまうもので、早くも大トリ、ガガガSPの出番がやって来る。1曲目から代表曲「卒業」が飛び出ると、オーディエンスのボルテージは一瞬でMAXに。自然と腕を突き上げたくなるこの感覚…まるで青春時代の行き場のない衝動が溢れ出したかのように、私の中には制御できない強い力が駆け巡っていた。"今日はまだ1日目です。だから今は言わば祭りの準備中です!"このセリフを聞いてファンはすぐに察しがついたのだろう。どこからともなくざわめきが上がり、予想通りに「祭りの準備」が始まった瞬間、雄叫びのような歓声が湧き上がる。本編ラストの「弱男」が終わりメンバーが一旦ステージから去った後も、観客の熱が冷める事はなく熱烈なアンコールが響き渡っていた。"初日はアンコールがないんじゃないか"、一部のファンが少しばかり抱いていた不安を吹き飛ばし現れたメンバーに、割れんばかりの拍手が贈られる。そして「青春狂時代」を披露し、1日目は幕を閉じた。

9/25(日)
相変わらず日差しは強いが、心地良い爽やかな風が吹き抜ける2日目。この日も素晴らしい愛をいくつも体験した。本日のトップバッターは、日本一ガガガSPを愛しているバンドと公言する四星球。たぁじん(ガガガSPのDr.田嶋)のお面を作ってきたり、「晩秋」をカバーしたりと、ライブからもどれほどガガガSPをリスペクトしているのか伝わってくる。"ウソでもええから ワクワクさせてよ"そういって踊り倒す彼らのライブはウソでも誇張でもなく、本当にワクワクした。また、GOING UNDER GROUNDはステージに現れた第一声で"やっと呼ばれた!"と"長田大行進曲"参戦への喜びをあらわにする。終盤のサブステージではFUNKISTのPer.オガチがハーメルンの笛吹き男さながらの引率力で、観客をガガガSPの待つメイン会場へと導いた。多くのバンドがガガガSPへ想いを語る中、特にジェイムスのVo./G.清水が言った言葉は、今でも鮮明に残っている。"何で長田大行進曲のTシャツの文字が赤いか知ってる? これはガガガSPを象徴する色であって、愛の赤であって、赤字の赤やねん。どんなに赤字を出しても、ガガガSPはこのフェスを開催し続けたいんや"。ガガガSPの信念もさることながら、その気持ちを汲み取って参加している出演バンドにも感動した。
"FUNKISTのライブから来る人を待ってます"。祭りの終わりを全員で迎えるべく、コザック前田が静かに言葉を紡ぐ。駆け付けたお客さんが前列へ混ざりきったころを見計らって、ついにこの2日間を締めくくる最後のステージが始まった。"ライブは戦争! 曲は実弾!!"という合い言葉のもとに、開始直後から「青春狂時代」「神戸駅」「国道二号線」といったマグナム級の弾丸をもって次々と私たちの胸を打ち抜いていく。
中盤では"四星球の歌は重さがないんじゃ! …後でちゃんと謝りますけどね"と、バンド間の仲の良さを見せつつ「晩秋」を披露。アンコールは客席から「弱男」の大合唱。再びステージに舞い戻ったメンバーの目にはキラリと光るものが見えた気がした。アンコール1曲目、ここに来てついにフェスは「祭りの本番」を迎える。まだまだこれからとばかりに唄い、騒ぎ、飛び跳ねるオーディエンス。本当に楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうし、楽しかったからこそ終わった時に寂しくなる。だが「すばらしき人生」にて終幕を迎えた時も、帰路についた後も、この文章を書いている現在でも、未だ私のもとにその寂しさはやって来ない。来年も再来年も、また彼らの雄姿を目にする事ができると信じているからだ。

"当たり前の事を言うのは恥ずかしいけど…音楽って面白いよ"。目映いステージの上で、コザック前田は少し照れくさそうな声で言った。きっとこの言葉を聞いてバンドを始めた人達が、次世代、さらにその次の世代へと神戸の音楽を継承してくれる。心から音楽を愛する同志が集まるこの"長田大行進曲"がある限り、神戸から音楽が絶える事はない!!

TEXT:森下恭子

9/24(土)
ガガガSP / 泉谷しげる / THEイナズマ戦隊 / ORANGE RANGE / かりゆし58 / KAN / ソウル・フラワー・ユニオン / PUFFY / THE冠 / 黒猫チェルシー / STANCE PUNKS / セックスマシーン / ユウテラス / LINK / 0-REGINA / コザック前田&藤沼伸一 / 後藤雪絵 / 清水アツシ(ジェイムス) / タカダスマイル / HIROSHI ASAKUSA / メガマサヒデ

9/25(日)
ガガガSP / eastern youth / KING BROTHERS / GOING UNDER GROUND / 四星球 / TOMOVSKY / のあのわ / Theピーズ / I-RabBits / サンダーバーム / ジェイムス / DATSUN320 / 寺山リウジ / FUNKIST / 流血ブリザード / 川口カズヒロ(DATSUN320) / コザック前田 / 沢田ナオヤ / はせがわかおり / マグマ・ケンイチ・マグマ / ワタナベフラワー

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