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HEY-SMITH

欠落を音楽にすればいい。その欠落を歌っていけばいい。 100点じゃなくても、100%でやる。

196_PHOTO_HEY-SMITH01昨年5月にアルバム『Now Album』をリリースし、全国47都道府県58本に及ぶツアーを大成功させたHEY-SMITH。このたび、同ツアーの模様がぎゅっと詰まったDVDが3/5にリリースされる。アルバムとツアーにかける彼らの想いはなみなみならぬものがあった。ツアー直前の2013年5月21日、猪狩は自身のブログで“決意表明”を行った。「欠落を音楽にすればいい。その欠落を歌っていけばいい。100点じゃなくっても、100%でやります」というその言葉は、彼らのライブで体現された。自分たちが信じる道を突き進み、楽しむことに対して恐れずに全力で音を鳴らす5人の姿はとても眩しく、そして生命力が溢れている。

 

 

 

INTERVIEW #1

「60本近いツアーを完遂できないっていう危機感がめっちゃあったんです。だからこのツアーだけはそのスタイルを崩さなあかんのちゃうかって」

●猪狩くんは今年の頭にベトナムに行ったらしいですね。

猪狩:はい。家族で行ったんです。

●あ、家族で?

猪狩:僕の家族はみんな旅行が好きで、みんな海外に行きまくってるんです。で、今年の正月は「あれ? みんな予定空いてるから数年ぶりにみんなで旅行行けるやん」となって、ベトナムに行こうと。

●家族はバンドのことをどう言ってるんですか?

猪狩:応援してくれてます。昔は「何歳までやるねん?」とか心配してたけど、いわゆる家族が知っているような有名な人と対バンするようになったりして、安心したんですかね。今はいちばんのサポーターです。めっちゃライブ来ますからね。特におかんと姉ちゃん。

●あっ、マジですか。

猪狩:おかんはめっちゃ来ます。関西ではめっちゃ来るし、九州や、北海道の“RISING SUN ROCK FESTIVAL”も来てました(笑)。

●すごいな(笑)。ベトナムではゆっくりできたんですか?

猪狩:ゆっくりできました。曲もできたし。僕は現実逃避しているときに結構曲ができるタイプなんですよね。

●そうですよね。確か前アルバム『Now Album』に収録されていた「Journey」とかは、アメリカに行ったときのことを思い出して作った曲だった。

猪狩:そうそう。そういうのもあって、最近できている曲は今までにない良さがあるものになっている手応えがあって。行く場所とか居る場所によってインスピレーションが変わってくるなってめっちゃ思いました。思っていた感じとは違う雰囲気の曲ができております。いい感じ。

●楽しみですね。今回のDVDは昨年5月にリリースしたアルバム『Now Album』のツアーファイナルやツアー絡みの映像が収録されていますよね。アルバム『Now Album』は、制作中にメンバー間で揉めたこともあったし、Mukkyの病気のこともあったし、“いつでも辞めてやる”くらいの気持ちだったと以前のインタビューでおっしゃっていましたが、想像するにこのツアーは過酷だったと思うんですが…。

猪狩:過酷でしたね。しんどかったです。スタートがいちばんしんどかった。

●スタートがいちばんしんどかった?

猪狩:はい。いつもは後半とかで体力的に疲れてきたりするんですけど、今回のツアーはスタートがいちばんしんどくて。映像にもなっているファイナルのなんばHatchのMCでも言いましたけど、アルバムの制作をしてツアーを組んでいる段階のときに「やっぱりアルバム出さんとこか」とか「ツアー辞めようか」っていうところくらいまで本気でいっていたんです。

●ああ〜。

猪狩:アルバムは2013年の1月に録り終わったんですけど、サキムキ(Mukky)の耳の病気もあって、ツアーが始まる前…3月とかの時点で「どうする?」みたいなところがありましたね。バンドを長いことやり続けていくためにはどの選択肢がいいのかがわからなくなって、「このまま続けてたら出来んくなるんちゃう?」みたいな。

●なるほど。

猪狩:そういうのもあって、ツアーを始めた最初の頃に「これいけるのかな?」っていう。やる気はめっちゃあったんですけど、自信がなかったんですよね。いつもは自信も後押ししてくれるんですけど、今回のツアーは自信がなくて、やる気しかなかったです。

●それは、本数を重ねたら解消できたんですか?

猪狩:そういう部分もありました。最初は本当に不安で“これでいけるのか?”っていうのが結構あったんですけど、途中からバンドが団結しだしたというか。

●ほう。

猪狩:今までやったら「何やねん!」で済ませていたようなところを、お互いがサポートするような形になってきた。

●それはツアー以後のつい最近のライブを観ても感じました。

猪狩:あ、ほんまですか(笑)。

●ひとつになろうとしているというか。

猪狩:精神的にいちばん参っていたのはやっぱりサキムキだったんですけど、「やるって決めたんやからごちゃごちゃ言うな!」と怒っていた部分も最初はあったんです。でも途中からは「怒ってもしゃあないんやからこっちがサポートするしかない」みたいな気持ちもみんなの中で出てきて。それでまとまった感じがありましたね。

●すごくいい話なんですけど、それはちょっと意外でもあるんですよね。というのは、猪狩くんは以前から「自分がいいと思ったらそれでよくて、メンバーそれぞれがこのバンドにメリットを感じていればそれでいい」と言っていて、ある意味ドライなバンドだという印象があって。そういうバンドが、1つのベクトルを共有してメンバー全員で進むっていう、今のようなマインドになること自体が意外というか。

猪狩:このツアーだけです(笑)。

●ハハハ(笑)。

猪狩:本当にこのツアーだけですね。ツアーを成功させるにはこれしかない、と思ったんです。本来は、今言ってくれたようにそれぞれのベクトルでいいんです。自分のやりたいことを、HEY-SMITHを使ってやればいい。そのスタンスは全然変わらなかったんですけど、それじゃあ60本近いツアーを完遂できないっていう危機感がめっちゃあったんです。だからこのツアーだけはそのスタイルを崩さなあかんのちゃうかって。まあそんな話は一切してないんですけど。

●しないでしょうね。

猪狩:ハハハ(笑)。一切そんな話はしなかったんですけど、でもそれぞれに感じていて。みんなの様子がだんだん変わっていきましたね。

 

INTERVIEW #2

「自分の違う面がもっとありそうやなって感じているというか。現時点では迷っているかもしれないけど、また違う自分を見ることが出来る予感があります」

●今回のツアーは58本で、いろんなバンドと対バンしていますけど、特に印象に残っているのはどういうところですか?

猪狩:今回は、打ち上げの二次会をできるだけセッションバーみたいなところに行ったんです。

●セッションバー?

猪狩:小さいドラムセットとか小さいギターアンプとか置いてあって、そこでお酒を飲みながらギターを弾いてもいいようなお店。次の日がオフだったらそういうお店を探したり聞いたりして。最初に居酒屋で酔っ払ってから、そこに行ってHEY-SMITHのメンバーも対バン相手もひっくるめてみんなで楽器を使って遊ぶ、みたいな。そういうことを意図的にいろんな場所でやったんです。

●ほう。

猪狩:それがめっちゃ楽しかったし、印象に残ってます。何か楽しいことをしたかったし、他のバンドのやつが音楽的にどうなのかを知りたかったんですよね。

●確かに他のバンドの人と音を合わせるとか、めったにないことですね。

猪狩:やっぱりそういう部分で性格が出るんですよ。いつもステージでは「ウワーッ!」ってギターを弾いてクソ目立っているやつが、そういうところでは恥ずかしがってシュンとしてたり。逆にいつもシュンとしているやつが、そういうところでは全然弾けないギターを思いっ切り弾いていたり。そういう、本質的な部分を見たかったんですよね。

●うんうん。

猪狩:例えばツアーを一緒にまわっているバンドのやつが「レコーディングせなあかんのに曲がまだ出来てへんねんなー」とか言ってたら「じゃあここで作る?」みたいな。そういうこともあったし。

●刺激的ですね。

猪狩:刺激的でした。それこそ、Northern19とHOTSQUALLと一緒に北海道をまわったんですけど、かなり聴いてきた音楽が近かったということもあって、誰かが弾いた曲が絶対他のやつらもカバーした経験があったりとか。朝の7時くらいまでずーっとやってました。

●楽器を覚えたてとか、バンドを始めた頃の感覚に近いですね。

猪狩:そんな感覚です。とにかく楽しい。全員がいつも使っている楽器じゃないし。「うわ、これ弾きにくい!」とか言いながらやるのが楽しかった。

●他のバンドとやることによって、逆に自分たち自身も見えてきたりするんじゃないですか?

猪狩:そうそう。それわかるんですよ。めっちゃ感じました。

●猪狩くんはどういうギタリストなんですか?

猪狩:僕はね、みんなでセッションしたときに、EコードとかBコードやったら「イエーイ!」って弾けるのに、GとかCになったら「ああ〜! 俺、GとCは何もない!」みたいな。

●GとCの引き出しには何も入ってなかった(笑)。

猪狩:“俺はこのコードがそんなに好きやったんや”っていうことが如実にわかって。みんなでセッションして弾き始めたら、それぞれ好きなようにやるから「あっ、お前はDスタートなんや」みたいなことがわかったり。僕は確実に弾き始めがEかBなんですよ。それを感じたことによって“俺はこれが好きやから、これからもEかBで始まる曲を作ろう”って思いました。さっき言ってたベトナムで作った曲もコードは思いっ切りBで、自分でも“またこんなフレーズ弾いてる”と思ったけど、でもそれが俺なんやろうなって。

●うんうん。

猪狩:酔っ払ってみんなで楽器持ったとき、練習したものじゃなくて、やっぱり本能的なものが出てくるんですよね。それはすごく思いました。

●過酷だったけど、すごく刺激の多いツアーでもあった。

猪狩:そうですね。過酷だったのは最初と最後だけです。

●最後は何が過酷だったんですか?

猪狩:やっぱりこれだけの本数まわったら疲れてきて。喉も疲れが出てきたというか。自分がこれだけ歌ったのも初めてだったんですよ。前のアルバムまではほとんどサキムキがメインで僕はコーラスという立ち位置だったんですけど、今回のアルバムはほとんど僕が歌っているし。

●ああ〜。

猪狩:90分くらいライブやるし。いつもは次の日の朝に起きたら全然OKなのに、今回は朝起きても「もう全然あかんやん」って。そういうところもあって、ツアーの最後の方はギリギリでした。もう死にそうでしたね。

●ハハハ(笑)。ヴォーカルというものを改めて認識したツアーでもあったと。

猪狩:うん、やっぱりヴォーカルに対する意識も変わりました。ヴォーカルやっている人はすごいなって思います。

●ちなみに、今までヴォーカルという意識はあったんですか?

猪狩:いや。ゼロです。

●ゼロ…え? ゼロ? 今までも結構歌ってましたよね?

猪狩:まあね(笑)。でも僕はギタリストやっていう意識やったんです。まず歌を練習したことなんてほぼなかったし。やっぱりヴォーカリストは偉大ですよね。

●他人事か(笑)。

猪狩:ツアーが終わってみて、僕はやっぱりギター/コーラスという立ち位置が自分に合っていると思います。ギターが好きで、歌もめっちゃ好きなんですけど、ギター/コーラスが好きなんでしょうね。美味しいところを持って行きたいというか。

●でもメインヴォーカルがいちばん美味しいと思うけど。

猪狩:う〜ん、僕の美味しいところはね、ちょっと違うんですよ。

●ああ〜、猪狩くんなりの美学というか。

猪狩:そうそう。僕の美学は、ギター弾きながらコーラスで持っていくという。Hi-STANDARDをずっと観ていて、惹かれるのはやっぱりKenさんなんですよ。RANCIDもティムよりラーズ派なんです。

●なるほど。

猪狩:あれがいちばんかっこいい。美味しいところ取りですよね。いちばん目立っているのはティムかもしれないけど、自由でいられるしかっこいいと思うのはラーズ。

●そういう立ち位置が、本質的には自分に合っていると。

猪狩:うん。思いました。

●でも今回のDVDにも収録されていますけど、ライブの猪狩くんの立ち位置としては、バンドを引っ張っているというか、MCも含めて、今までの猪狩くんのパーソナリティからは感じなかった責任感みたいなものを感じるんですよね。以前はもうちょっと自由だったかなと。

猪狩:うん。そうなってますね。それを今、めっちゃ脱却したいです。

●ハハハハハ(笑)。

猪狩:やっぱり一生懸命やっているときはそれはそれで良かったんです。全然後悔もしてないし。後悔はあったとしても、自分がやったことに満足はしていて。

●うん。

猪狩:でも、ちょっと型にはまっていたのかもしれないっていうか。あのツアーでは、全員が全員“みんなが良くなればいいのに”と思っていたところがちょっとあったんですよね。でも僕は、本質的にはそういう人間じゃなくて、別にそこそこたくさんの人に嫌われても全然OKっていうか。むしろ、僕は発信者やし表現者なので、そこそこの人に嫌われなあかん、くらいに思っていて。

●要するに、自分に素直じゃないければだめだと。

猪狩:はい。そこそこの人に嫌われても、それ以上の人に好かれればいいなと。なんかね、落ち着いて全体をちゃんと見渡せるみたいな、そんな自分が嫌なんです。

●ちょっといい子ちゃんになっていると。

猪狩:そうそう。僕はそんなタイプじゃない。そう思ってるから、めっちゃ脱却したい。とりあえずめちゃくちゃやりたいですよね。

●猪狩くんの考える発信者、表現者というところで、そのスタンスは重要だと。

猪狩:重要ですね。僕が昔、お客さんとしてライブハウスに行っていたとき、そういう人を観て憧れたんです。例えば普通の生活でも、みんなが一緒の動きして盛り上がるとか、みんなが一緒のファッションしてるっていうのが、僕には結構気持ち悪く思えて。

●うんうん。

猪狩:でもライブハウスに行ったら、みんながバラバラで。後ろで酒を飲んで酔っ払っている人も居れば、前で盛り上がっている人も居て。「こうするべきだ」というものが全然なくて“これでしょ!”って思ったんです。別にバンドなんて観なくてもよくて、音をお酒のアテにしてもいいわけじゃないですか。そういう意味で、自由にしたいし、自由にしてほしい。だから自分が自由にしていないと、観ている人も自由にしてもらえへんなって思っているんですよね。

●それがHEY-SMITHというか、猪狩くんの本質的な考え方か。

猪狩:自分のバンドの原体験が影響していると思うんですけど、やっぱり悪そうなバンドが好きでしたし。道を歩いてて出会ったら“絶対に無理や!”と思うようなタトゥーが入っている人とか。そういう異端児みたいな人たちをライブハウスで観ているのが当たり前やったので、自分もそうじゃないとって。

●そういうわけで、今はとりあえずめちゃくちゃになりたいと。

猪狩:めちゃくちゃになりたいし、めちゃくちゃにされたい(笑)。

●ハハハ(笑)。

猪狩:あ、さっき「脱却したい」って言いましたけど、そうじゃないかもしれないです。このツアーではそういう自分を見たので、次はもっと違う自分を見たいっていうことかな。自分の違う面がもっとありそうやなって感じているというか。現時点では迷っているかもしれないけど、また違う自分を見ることが出来る予感があります。

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INTERVIEW #3

「完璧なものを聴きに来るやつが減って、その場の衝動を味わいに来ているやつが増えたんやろうなって。なんかそう思いましたね」

●今回のツアーは、対バンからもらったものも大きかったと想像するんですが。

猪狩:大きかったですね〜。全部のバンドからなので誰からっていうのは言えないですけど、今回のツアーは既に仲のいい人たちとまわることが多かったんですよ。だから、いつもは打ち上げで酔っ払ってから初めてああだこうだと熱くなることが多かったんですけど、こういう関係になってきたら、ライブ一発観たら何を言わんとしているかわかるんですよね。

●はいはい。

猪狩:だからいちいち「今日は一緒にやる最後の日やし、よろしくな!」みたいなことを言わなくても、そういう気持ちは感じるし、ライブを観たら僕らに何を言いたいかがすごくわかるんです。あまり言葉を交わす必要がなくなったというか、他のバンドとそんな関係になれているのがめっちゃ嬉しかったです。

●ああ〜。

猪狩:みんな表現者やから、ライブだけじゃなくて普段の生活を見ていたらわかる。

●それは猪狩くんからも感じることなんですよね。多くを語らずというか、今まで何度かインタビューさせていただいていますけど、本質的な気持ちを言葉で伝えずとも行動を見ればわかるというか。極端な話、別に伝わらなくてもいいと思っている。

猪狩:はい。

●それはさっきのギター/ヴォーカルの美学にも通じると思うんですけど、男気みたいなものをすごく感じるんです。ライブをゴリゴリやっている人たちって、そういう側面をすごく持っていると思うんです。ぶっきらぼうだし、多くを語らない。でも根底には愛情があって、すごく豊かな気持ちがあって。

猪狩:ありますね。そう言われて思ったんですけど、インタビューで話す自分なんて本当の自分の1%にも満たないですからね。

●それはなんとなく感じてました(笑)。

猪狩:すべてを話すなんて無理ですよね。Twitterとかもね…Twitterなんて1%以下ですし。あんなもん、うんこみたいなもんですよ。

●ハハハハハ(笑)。

猪狩:自分のすべてをわかってもらおうなんて思っていないし、むしろ“わからんといて”って思っていて。歌とかも、別に「自分はこうなんだ!」と言いたくないんです。その人の受け取り方次第で、勝手に曲の解釈を広げてくれたらいい。自分がどうこういうより、なんせ物事は受け手の受け取り方次第って思ってます。だからそんな感じになっているんでしょうね。自分の価値なんて自分が決めるものじゃなくて、人が決めるもので。“あなたたちの価値観でしかないから”って、どんなときでも常に思ってます。

●そういうスタンスが、ちょっと冷めてるように思われるかもしれない。

猪狩:そうかもしれないですね(笑)。

●いちばん最初に猪狩くんと会ったときに思ったんです。少し人と距離がある人だなって。

猪狩:アハハハハハハハ(笑)。

●でも曲とかライブのスタンスとか観ると実はそうじゃなくて、すごく熱くて温かくて豊かなものを持っているんだけど、それを100%説明することを良しとしていないというか。

猪狩:ああ〜。でもめっちゃ言われます。「怖い」とか「近づきにくい」とか「どこまで本気でそう思ってるんですか?」とか。これはすごい誤解だと思うんですけど、僕は人がめっちゃ好きなんですよ。でもなんか人からはそう思われたり言われたりすることが多いんですよね。“別にええわ”と思ってますけど(笑)。

●DVDの映像の中で10-FEETのTAKUMAくんも言ってましたよね。「あんな猪狩初めて見た」って。

猪狩:あ、言ってました。ファイナルのなんばHatchの僕のMCについて「ああいう部分、初めて見たわ」って。あのMCで僕、「こういうことがあって…」みたいな感じで1から10まで説明していたじゃないですか。そういう姿を初めて見たって。そう言われて「そうやった?」ってびっくりしましたけど。

●自覚すらなかったと(笑)。

猪狩:ないない(笑)。思ったから言っただけで、見せたことがない自分を見せようなんて思ってなかったし。

●僕は映像で観ただけですけど、あのMCは震えるものがありました。「100点を取ろうとしていたけど、100%を出すことが大切だと気づいた」というようなことを言ってましたが、ライブってこういうことだなって。すごく生々しくて、伝わってきた。

猪狩:その場で思ったことをそのまま言ってるんですけど、後から映像を観て、あんな言葉が出てきたこと自体に自分自身びっくりしてます。

●ハハハ(笑)。

猪狩:僕、本当はあそこをカットしたかったんですよ。

●恥ずかしくて?

猪狩:はい。「うわ! 気持ち悪い!」と思って。

●アハハハハハ(笑)。

猪狩:相談もしたんですよ。スタッフとか映像を撮ってくれたディレクターに、当然同意されると思って普通のテンションで「ここカットしよう」って言ったら、みんなが「いやいや、ここは絶対に入れるべきや。カットする意味がわからん」みたいなこと言われて。

●ハハハハハハ(笑)。

猪狩:“ええ〜!? これ使うの?”ってびっくりしたんですけど、僕を観てきたのはその人たちなので、最終的にはそこを信用したというか。あのMCを使うことを決めた段階で、今回のライブ映像はノーカットにしようということにしたんです。

●あ、そういうことですか。

猪狩:でも、2〜3ヶ月経って観たら「こいつは何を言ってるねん」って思うんですけど、あのときは本当にそう思ってたんですよね。あのときは自分がもうすり減りすぎてて…だからあんなことを言ったんでしょうね。

 

INTERVIEW #4

「その場で思ったことをそのまま言ってるんですけど、後から映像を観て、あんな言葉が出てきたこと自体に自分自身びっくりしてます。本当はあそこをカットしたかったんですよ」

●ライブ映像作品は今回が初めてではないじゃないですか。すごく臨場感もあるし、生々しいライブの雰囲気が伝わってくる映像ですけど、どういうものにしようと思っていたんですか?

猪狩:他にはないものにしたかったんです。いつも撮ってもらっているチームなんですけど、撮っている最中から「こういう映像撮ってほしい」みたいな話をしていて。例えばドラムを超至近距離から撮るとか。会場にお客さんが入っていない段階から、カメラを持って「こういうのが欲しいねんな〜」みたいなやり取りをしたり。

●へぇ〜。

猪狩:ディレクターは僕らの曲を全部知っていてすごく仲のいいやつなんですけど「この曲のここはドラムだけになるやんか。そういうときにこういう映像をバーンと欲しいねん」みたいな。

●それは、今まで他の人のライブDVDを観てきた中での理想的なイメージみたいなものを膨らませて?

猪狩:まさにそうですね。更に、他のDVDで観たことのないカメラアングルをどうしても入れたかったんですよ。カメラって、だいたいまっすぐ移動するじゃないですか。でも今作は、意味がわからない角度で揺れていたりする映像も入っていて。そういうのって普通は省くんですけど「このカメラではそういう感じで撮ってほしいねん」って。

●お客さんの目線ということ?

猪狩:あ、そうそう。最初のアイディアはそのディレクターからの提案だったんですけど、そいつは最初「カメラ持ってダイブするとかどうですかね?」とか言ってきて。

●アハハハ(笑)。

猪狩:撮る前からいっぱい話せたっていうのが結構デカくて。こいつのディレクションは、僕はピカイチだと思っているんです。実際に撮ってみたら“すごいな”って思いましたね。

●以前のインタビューで、「アルバム『Now Album』はアレンジで削ぎ落とした曲が多い」という話がありましたが、実際にツアーで演ってみて、想像と違ったことはありました?

猪狩:作曲したときの印象と違って、想像では“ライブで盛り上がるだろうな”と思っていたものがそうじゃなかったり、その逆もあったりで。楽しかったですね。“え? この曲そんなに盛り上がるの?”とか、逆に“え? この曲そんなに盛り上がらへんの? え、ちょっと待って…”みたいな(笑)。

●ハハハ(笑)。

猪狩:あともう1つおもしろかったのは、やっぱりMUSIC VIDEOになってる曲とかは、やっぱりみんなが求めていたり盛り上がったりするんですけど、そうじゃない曲で、曲の知名度とか関係なく僕ら的に「キタ!」っていう演奏ができたときは必ずお客さんにもウケるっていうか。逆に、アルバムのリード曲とかMUSIC VIDEOになっている曲だったとしても、僕らのノリがいまいちだったらやっぱりお客さんの反応もハネなかったんです。

●自分たちの感覚とお客さんの感覚がリンクしているというか。

猪狩:やっぱりそうなんでしょうね。彼らは耳で聴いているだけじゃないでしょうし、心のどこかでなんとなく聴いている人も居るだろうし、いろんなアガり方をする人が居ると思うんですよ。でも今回のツアーでは、顕著にこっちの感覚と近い反応をしている人が多かったなって思いました。

●今までと比べても、そういう感覚は今回がいちばん多かった?

猪狩:そうですね。今までもある程度はありましたけど、今回ほど実感したことはなかったです。思うんですけど、みんなの音楽の聴き方が変わってきたんじゃないんかなって。

●ああ〜。

猪狩:例えばiPodとかYoutubeで音楽を聴くじゃないですか。あの状態の音楽を聴きに来るやつが減ったんやろうなって思いました。完璧なものを聴きに来るやつが減って、その場の衝動を味わいに来ているやつが増えたんやろうなって。なんかそう思いましたね。

●なるほど、そうかもしれない。

猪狩:その場の衝動を求めていなければ、好きな曲や有名な曲がきたらアガるハズなんですよ。でもたぶん彼らは…もちろん好きな曲はあると思いますけど、他にテンションが上がる場所をいっぱい持ってるんですよね。例えば、たまたま僕ら全員がジャンプしたのが一緒やって、それを機にテンションが上がるとか。そういうのがあるっていうのをめっちゃ感じましたね。

●自分たちのライブの価値観と近いというか。

猪狩:うん。近い人が来ていたような気がします。それが嬉しかったですね。CDはクソみたいに売れなくなってきていますけど、ライブに来ている人が減っているイメージは全くないんですよ。むしろ増えてるんちゃうかって思うくらい。やっぱり“生”を求めているんやろうなってめっちゃ感じました。

●いいことですね。

猪狩:いいことだと思います。CDが売れないのは悲惨ですけどね(笑)。

INTERVIEW #5

「自分らが普段やっていることの延長が仕事になったり、表現になるっていうことを示したかったという気持ちもあるし、好きなアーティストのそういう部分を知るのが僕が好きなんです」

●今作はライブ映像だけじゃなくて、DISC2にはオフショットやMUSIC VIDEOも6曲分収録されていますよね。

猪狩:そうです。6本のMUSIC VIDEOは3人のディレクターに作ってもらったんですけど、基本的にはどれも僕からイメージを伝えたんです。「Dancing Is Illegal」だけは手法が全然違いますけどね。

●確かに「Dancing Is Illegal」はちょっと雰囲気が違いますね。

猪狩:この曲のMUSIC VIDEOは最近海外とかであるリリックビデオみたいな感じになっているんですけど、リリックビデオのもう一歩先に行きたくて。英語圏の人やったら歌詞がバーッと出るだけで意味はわかりますけど、ほとんど日本の人が観るだろうから、半分くらいは意味がわかったとしても、もっとちゃんと理解させたかったんです。だから歌詞と映像でこの曲が何を言わんとしているかを伝えたかった。さっき「すべては受け手次第」と言いましたけど、この曲に関してだけはこっちの言いたいことは思いっ切り言ってもいいと思っていて、わかりにくい場所を残したくなかった。

●当然曲によって手法は違うけど、MUSIC VIDEOは作曲の延長線上にある感覚なんですね。

猪狩:ああ〜、そうですよね。たぶんそういう感覚です。やっぱり、CDで聴いてたら普通やけど、映像と一緒に聴いたらめっちゃかっこいいとかあるじゃないですか。それを目指しますよね。

●うんうん。あと、オフショットはドタバタというか、普段の素の姿が入っていて…。ああいう日常がステージに繋がっている気がしたんですよね。

猪狩:それ! そこを見せたかったんです。

●お。

猪狩:僕らはメンバーとスタッフという仲間が居て、こいつらと超真剣に遊んでいるだけなんです。一生懸命遊んでいるんですよ。その中にライブがあって、別に僕らの中でライブなんてなんの特別感もないですし、日常なんですよね。クソ遊びの延長だから、そこをちゃんと見せたかったんです。こんなに思い切り遊んで、好きなことをとにかくやっていれば絶対にどうにかなるっていうのを見せたかった。

●この2枚を観れば、HEY-SMITHのステージの上と下、ありのままの姿を知ることができると。

猪狩:オフショットは絶対に入れたかったんですよ。なんせ、このDVDを観てお腹いっぱいになってほしかったんです。やっぱりお客さんに「こういう映像観たい」とか言われることもあって、「じゃあ全部やったるわボケ!」みたいな気持ちで。時間を使って、手間をかけて、お金もかけて、本当にテンコ盛りにしたくて。

●テンコ盛りといえば、今回すごいのは、初回特典としてカメラマンHayachiNさんによる全70ページのフォトブックも付いてくるという。

猪狩:そうですよ。オールカラーですよ。これ、めっちゃ高いんですよ。

●JUNGLE☆LIFE作ってるからわかります。

猪狩:アハハハハ(笑)。フォトブックは普通に単体で売るような出来栄えです。

●でも値段は¥3,620…安っ!

猪狩:制作しながら、何回も「値段を上げよう」っていう話になって。それはもう、何回も。

●ハハハ(笑)。

猪狩:特典を何にしようかっていう話をしてたんですけど、僕的には「特典なんかいらん」という考えだったんです。最近はちょっと特典競争みたいな流れもあって、別にそれが嫌いというわけではないんですけど、でも別にそのバンドの特典なんかなにもいらんと。さっきも言ったように僕はRANCIDが好きですけど、RANCIDの特典はなにが欲しいと考えても、なにもいらん。でももし貰えるなら、未発表音源かライブ写真がいっぱい入った写真集かなって。それくらい価値のあるものじゃないと僕は特典はいらないんですよね。…ってスタッフに話してたら、「それおもろいね」ということになって。それで、フォトブックを付けることになりました。

●すごいな(笑)。

猪狩:あと、HayachiNも僕らのクルーの1人やし、ファイナルシリーズをHayachiNと一緒にまわるのも楽しそうやなと思って。

●本気で遊んでいる!

猪狩:帯同するんやから、HayachiNも絶対に全部付き合ってもらおうということで、毎日朝まで一緒に打ち上げで飲んだんです。ちゃんと最後まで遊んで、HayachiNの知り合いの音楽仲間とかも居るから、僕らもちゃんとそこに一緒に行って。僕らはいつもそうなんですよね。友達が友達を呼んで繋がりが拡がってきたんです。だからそれをしっかりやろうと。

●言ってみれば、自分たちの生き方自体が今作に詰まっている。

猪狩:自分らが普段やっていることの延長が仕事になったり、表現になるっていうことを示したかったという気持ちもあるし、好きなアーティストのそういう部分を知るのが僕が好きなんです。すごく好きなDVDがあって、BIG4…METALLICAとSLAYERとMEGADETHとAnthraxのDVDがあるんですけど、その2枚目なんかはまさにそういう場面があって。METALLICAとMEGADETHなんて一般的には犬猿の仲って言われていたのに、デイヴとジェイムズ・ヘットフィールドが普通に話していたりとか、デイヴとラーズが子供の話をしていたりとか。「え? そんな関係なん? 嘘でしょ!? デイヴはあんたらがクビにした人ちゃうの?」ってびっくりして。

●ハハハハ(笑)。

猪狩:更に、俺らがやっていたみたいに、楽屋で一緒に楽器持ってコピーやったりしてるんですよ。「えー!? そんな感じ?」って。それで一気にMETALLICAやMEGADETHのイメージが変わって、余計に好きになったんです。だからそういう映像を自分たちのDVDにも入れたかったんですよね。観てもらいたかった。

●色んな想いが詰まっているんですね。

猪狩:やりたかったことを全部詰め込んで、お腹いっぱいにしたかったんです。でも次に出すDVDの値段がもし¥10,000とかになっていたら、売れへんかったんやと思ってください(笑)。

interview:Takeshi.Yamanaka

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