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キノコホテル

この呪縛からはもう抜け出せない…いや、抜け出したくない

キノコホテル_メインアー写鬼才・マリアンヌ東雲が率いるキノコホテルが、4枚目のオリジナル・アルバムを完成させた。前作『マリアンヌの誘惑』をリリースしてから約1年半の間に、新社員(メンバー)としてジュリエッタ霧島(電気ベース)が加入。実演会(ライブ)での活動は継続的に行いながら、バンドとしての進化を続けてきたようだ。60'sロックンロール/ガレージ的な色は健在ながらも、80'sのパンク/ニューウェイヴが持っていたクールな熱さや不穏で刺激的な空気感も漂わせる今作。スピード感のある楽曲はもとより、淡々としたビートの楽曲でも感じられるグルーヴの太さはかつてないものだろう。時にプログレッシブでサイケデリックなサウンド、パンキッシュな怒りから心打つような切なさまで表現する歌でそれぞれに様々な表情を見せる楽曲たちは、1つのジャンルや年代に収まらない唯一無二のオリジナリティを放っている。獲物に一度絡みついたら決して離さない大蛇のごとき拘束力と、その毒牙に秘めた甘美な猛毒による中毒性を兼ね備えた全10曲。この呪縛からはもう抜け出せない…いや、抜け出したくないのかもしれない。

マリアンヌ東雲・Special Solo Interview #1

「むしろ今までのキノコホテルを捨て去って、新しいキノコホテルを一から始めたいというか。ちょっと突っ走りたい欲求が自分の中に湧いてきて」

●1年半ぶりの新作となりますが、マリアンヌさんの中では早く新作を作りたい気持ちがあったそうですね。

マリアンヌ:そうね。やはりベースの人が交代したことで、新たにキノコホテルとして追求したい世界が出てきたというか。新しいベーシストが入ったキノコホテルのイメージを拡散させたかったというのはありますね。そのために実演会があるとはいえ、そこになかなか来れない人のためにはやはり音源をリリースするしかない。だからなるべく早く次を作れたら良いなとは思っていたんですけど、作曲のペースは相変わらずで(笑)。(新作を)作りたいなと思いながらも、それに向けて具体的に準備をきちっと進めていたわけではないんです。

●ジュリエッタ霧島(電気ベース)さんが加わったことで、新たなバンドのイメージを打ち出したくなった部分は大きかったんですね。

マリアンヌ:情報を上書き…いや、むしろ今までのキノコホテルを捨て去って、新しいキノコホテルを一から始めたいというか。ちょっと突っ走りたい欲求が自分の中に湧いてきて。実際に“何か変わったか?”と言われたらそんなに変わってはいないんですけど、この1年半の間に自分の中で様々な心境の変化はありました。

●この1年半の間には全曲カバーによるミニアルバム『マリアンヌの逆襲』(2013年5月)もリリースされたわけですが、そこで見られた初期パンクやニューウェイヴの匂いは今作にもつながっている気がします。

マリアンヌ:それはあまりないですね。あの作品のことはあまり覚えていないんです(笑)。

●覚えていないんだ(笑)。

マリアンヌ:リリースすると、自分の中では終わってしまうんですよ。聴き返したりもしないから、“それはそれ、これはこれ”という気持ちなんだけど、聴き手側としてはそういうストーリーを思い描く方もいるかもしれないですね。でも確かにあれを出したことによって、“単に歌謡曲だとかGSのリヴァイヴァルバンドではない”って再三ワタクシが主張し続けてきたことが1つの形になったところはあります。

●今作は今までの60's〜70's的な音楽の要素もありつつ、80's的な匂いも漂わせる作品だと思いました。

マリアンヌ:自分の中では、非常にポップだなと思っていて。そういう年代的なアレンジだったりについてワタクシ自身はあまり気にしていないんですけど、“ポップなものを作りたい”っていう意図は少なからずありました。あくまで自分なりの「ポップ」だけど。1つの年代で区切られたりしないような、良い意味で捉えどころのないものというか。そういう作品のほうが面白いんじゃないかと思うから。元々キノコホテルはそういうスタンスで始めたつもりでしたが、(当初は)どうしてもGSだ何だっていう枠にはめられて、それを求められる傾向が強かった。でも今回はようやく4枚目で、自分自身がある種の呪縛から解き放たれたような気もしています。

●ジュリエッタさんが加入したばかりの『マリアンヌの逆襲』リリース時もそういう話をされていたので、彼女の色が出た部分もあるのかなと思ったんですが。

マリアンヌ:あの時はジュリエッタさんが入社して間もない時期だったんですけど、彼女の持っているスピード感や良い意味での安定感を得たからこそ生まれたアイデアなどは確かにあったと思います。その流れで今までキノコホテルではあまり表に出してこなかったワタクシの個人的な嗜好だとか、内にしまいこんでいたものが少しずつ出てきたというのもあって。

●ジュリエッタさんのベースが加わったことで、表現したいことをより具現化できるようにもなったんでしょうか?

マリアンヌ:そうですね。ベースラインから曲の構想を練っていくことが多いので、ワタクシにとってベースというのは非常に重要なポジションなんです。そういう意味で、鼓舞されるものはあったように思います。曲が仕上がるのもすごく早くなったし、ワタクシ自身が無意識の内にベースを立たせようとしているのは(今作を)通して聴いていて感じました。

●今作はベースラインが印象的な曲が多いですよね。特にM-3「Fの巡回」は淡々としたベースのリフレインなんですけど、徐々に盛り上がっていってトリップする感じがサイケデリックというか。

マリアンヌ:たぶん彼女(ジュリエッタ)じゃなかったら、この方向には向かわなかったかも知れない。淡々としたリズムと進行の中でグルーヴをいかに出していけるか、そういうものを聴かせられるかどうかというのは、すごく技量が問われると思います。誤魔化しがきかない。そこはワタクシからリズム隊2人に対する挑戦状みたいな部分でもあったりして。

●それを実現できているから、自然と身体が揺れるような“踊れる”曲になっているのかなと。

マリアンヌ:キノコホテルの実演会を観にきた人たちがみんな踊っている画って今のところ想像できないんですけど、そういうふうになったら面白いなっていう妄想のもとに書きました。どうせ踊ってくれないと思いますけど。

●ハハハ(笑)。

マリアンヌ:キノコホテルはシャイな顧客様が多いので(笑)。

●そういう人たちも踊らせてやろうという意図はあるわけですよね。

マリアンヌ:本来そうありたいというのはあります。踊れると思うんだけど…。

●ライブではもう演奏しているんですか?

マリアンヌ:「Fの巡回」は去年の夏くらいからやっています。M-6「恋の蟻地獄」とM-7「完全なる支配」、M-9「肉体と天使」が未発表曲で、それ以外はすでにステージではお披露目済み。M-1「ボレロ昇天」は、実演会の冒頭でワタクシがステージに登場するための曲として3年くらい前からある曲。でも特に音源化することは考えていませんでした。

●それを今回収録した理由とは?

マリアンヌ:今回のアルバムのトータル的なイメージを思い描いた時に、冒頭に相応しいような気がしたの。チェンバロやテルミンは元々入っていなかったんですけど、折角なのでスタジオでほぼアドリブ的に録ってみました。

●この1曲目でただならぬ雰囲気を醸し出しつつ、急にM-2「冷たい街」でポップになって、また次の「Fの巡回」で妖しい雰囲気になるという流れが面白いなと思いました。

マリアンヌ:序盤から振り回す(笑)。

●実演会で披露している曲が多かったことで、制作もスムーズだったのでは?

マリアンヌ:歌以外のトラックに関しては非常にスムーズで、おそらくキノコホテルの今までの作品史上最速くらいの速度で進みました。そのぶん自分の時間がたくさん取れるから、曲を作ったり詞やメロディを詰めるのを後まわしにして、油断して遊びまわっていたら、まあその後の大変だったこと(笑)。

●最終的には苦しんだと。

マリアンヌ:オケがスムーズに上がっても、その上に歌詞とメロディが乗らないと完成しないので…。そこの工程が大変でした。中でも「肉体と天使」はすごく追い込まれて、5分くらいで書いた歌詞なんです。歌録りの当日、スタジオに入ってエンジニアさんを待たせながら大急ぎで書いて。だから、ちっとも歌い込んでないまま録ったっていう(笑)。今回はそういう曲が何曲かありますね。

●結果的にレコーディングのギリギリまで制作していたわけですね。

マリアンヌ:お尻に火がつかないとやらないの。経験から学べないタイプなのね(笑)。

キノコホテル_サブアー写

マリアンヌ東雲・Special Solo Interview #2

「メンバー間での良い温度差のようなものが生まれている。まとまっているのかとっ散らかっているのか…そのへんが面白いんじゃないかしら」

●レコーディング自体は順調だったんですか?

マリアンヌ:今回はとにかくテイク数が少ない。やはり同じ曲を何回もやると、疲れてきてしまうでしょう。だから過去のメンバーの時はテイクを繰り返していく中で集中力や体力が切れてしまって、リズム録りにすごく時間がかかったこともあります。そういう意味では、今回は本当にビックリするほど早くて。演奏もトチらないし、それで作業が早く進んだんだと思いますね。

●そこもジュリエッタさんが加入した効果が出ているわけですよね。

マリアンヌ:彼女は良い意味で、たぶん4人の中で一番プロフェッショナルだと思います。手がかからないし、色々お任せできる。人間的にもすごくフラットな方なのでトラブルも起きないし、本当に理想的な人ですね。…ちょっと褒めすぎかしら(笑)。

●もう片方のサイドを固める、イザベル=ケメ鴨川(電気ギター/以下ケメ)さんはどうなんですか?

マリアンヌ:彼女も信頼の出来るプレイヤーだと思っています。良い感性を持っているし、スタジオでのちょっとしたやりとりで済むから助かるわ。これは今に始まったことではないんですけど、たぶん私と彼女の中で“何がアリで何がナシか”が言わずとも共有できている気がします。ワタクシから見て、彼女の長所はそこです。

●感覚を共有しているから、ある程度は任せられる。

マリアンヌ:「そのセンスはないわよねぇ」というのがあまりない。それこそ彼女が入社した頃は、ワタクシや前任のギタリストが作ったフレーズをそのままなぞったりしていましたけどね。でも何年かして慣れてきて、いまや彼女のオリジナリティが遺憾なく発揮されていると思います。今は基本的にワタクシの中でリフが決まっている時は指定しますけど、さしたるこだわりがない時は任せています。

●今やケメさんの60's的な音色のギターは、キノコホテルにとって1つの大きな特徴にもなっていますよね。

マリアンヌ:それはよく言われます。枯れた感じというか。あれでギターが別物だと全然違うし、キノコホテルのオリジナリティの肝になっているかと。

●逆に今作で聴かれるジュリエッタさんの淡々としたベースラインは80'sっぽくて、それが合わさっているのが面白いところかなと。

マリアンヌ:そうね、それが今のワタクシの気分に合っているような気もします。そういう意味で、メンバー間での良い温度差のようなものが生まれている。まとまっているのかとっ散らかっているのか…そのへんが面白いんじゃないかしら。それぞれの人間性が出ているというか。

●ある程度、メンバーの個性を許す自由度がある。

マリアンヌ:度重なる人員の変更があったけれど、ようやく自由にやらせても安心な顔ぶれになりつつあるとは思います。自由とは言っても、ちゃんとワタクシの意図を汲み取りながら、キノコホテルとしてどうなのか、というところまで各自思考出来るようになってきていると…。

●バンド内での関係性も確立されているんじゃないですか?

マリアンヌ:過度な期待はしないっていう。良い意味で“自分は自分”で、1人1人が人間として独立してベタベタした感じがない。たとえば子供の頃から仲良しだとか、逆に割りきって音楽をやるという目的のためだけに一緒にいるか、そのどちらかでないと上手くいかないのではないかと思います。その間の中途半端ななれ合い的関係だと面倒ごとが起きる。実際にそういう時期もありました。今は日常で4人が揃うことは滅多にないんですけど、逆にそれがすごく良いんだと思う。しょうもないことでのぶつかり合いもなくなったし、そういう意味でキノコホテルは大人の女のバンドだと思っているわ(笑)。

●お互い仕事としての責任感は持ちつつ、一緒に音を出すことは楽しめているわけですよね?

マリアンヌ:ワタクシ以外の人も、一緒に音を出している時は楽しいと思っているはずよ。でなきゃ辞めますからね。結局そういう極めてシンプルなところでつながっているというのがある種、良いのかもしれない。

●バンドとしても成熟してきている?

マリアンヌ:バンドとしてはどうなんでしょうね…。自分が音楽で生活していくようになって、公私ともに色々な出来事があって。そういう中で音楽やキノコホテルに向き合う自分のスタンスみたいなものが変わってきただけで、バンド内でどうこうというのはあまり関係していないと思います。もちろんベーシストが変わったことでのサウンドの変化とかはありますけど、“こういう路線でやっていこう”みたいな話をメンバーにしたこともないですし。そんなワタクシの気まぐれにメンバーがついて来てくれているっていう構図は、あまり変わっていないと思うわ。

●キノコホテルに向き合うスタンスが変わってきたというのは?

マリアンヌ:プライベートの自分と“マリアンヌ東雲”という人間は似て非なる部分もあったりするわけなのですが、別に演じているわけではありません。それが良いことなのか悪いことなのかは別にして、そこの距離感があまりなくなってきていて。そもそもキノコホテルも自分で立ち上げておいてなんですが、最近ようやくしっくり来るような気分がしているかなって。キノコホテルと本来のワタクシがここ数作で、ようやく上手く共存できるようになってきたようにも思います。

●本来の自分というものも無理なく、出せるようになってきたというか。

マリアンヌ:それはありますね。初期の頃は、自分のむき出しの感情をさらけ出すのはすごく恥ずかしいことだと思っていたから。でも人前に出て自作の音楽を披露するっていうこと自体、そもそも恥ずかしいことでしょう。キノコホテルも7年目になるわけで、長くやっている内にだんだん“どうせ恥ずかしいんだから、むしろもっとさらけ出しても良いんじゃないかしら?”と思うようになって。なんだかんだ言って人間ですからね、そういう生々しいものをちょっと出したくなったのかも。

●今回は人としての“弱さ”みたいなものも見える作品かなと思いました。

マリアンヌ:そういう部分を出すことへの恥じらいみたいなものが拭い去られたというか。かつて自分が“そういうのはしたくない”と思っていたことを、今は自然とできてしまっているというのは1つの変化ですね。

●マリアンヌさんは“強い女性”というイメージもあるので、“弱さ”を出した時により引き立つ気がします。

マリアンヌ:弱そうな人間が弱い歌を歌っていても当たり前すぎて面白くないし、強そうな人が強気な歌だけを歌っていても薄っぺらくて「それだけかよ」っていう話になる。それに何もないところに、いきなり“怒り”が湧いてくるということはなくて、悲しいとか寂しい、やるせない、上手くいかないといった滅入るような気分が元々あって、それが悲しみに向かうこともあれば怒りに向かうこともあるわけで。根本的に、負の感情としての出発点は同じなんじゃないかしら。1つの感情を怒りとして爆発させるか、悲しみに暮れるかっていう部分だったりすると思うので。だから自分としては表裏一体というか、どちらかだけでは成り立たない感情だとは思っていて。怒りがあれば悲しみがあるし、悲しみがあれば怒りがある。

●実際に感情の起伏は激しいほうなんですか?

マリアンヌ:元々はわりと淡々とした人間でした。でもここ数年でエモーショナルな人間になった気がします。何かあったわけじゃないけど、まあそれなりに社会に揉まれたんじゃないかしら? …だったら逆に落ち着くか(笑)。

●ハハハ(笑)。でもちゃんと自分がやりたいことは表現していけている。

マリアンヌ:本当に自分のやりたいように全てのことを自分1人でコントロールするのはなかなか難しいものです。何も考えないで自分の好きなことやワガママを言って…それは最初からそうか(笑)。でもワガママといっても自分としては、それも全部キノコホテルのためなの。そのためのワガママは絶対に我慢しないわ。基本的には良かれと思って何とか現状を打開するためだったり、必死で戦っていたりするのよこれでも…。

●バンドの状況を良くするために戦っていると。

マリアンヌ:大人たちと日々、戦争しているんです(笑)。だから、そういう意味でメンタル的にはヒリヒリしていることが多い。“万年反抗期”みたいな感じで、なかなか丸くなれなくて辛いときもあります。むしろ年齢を重ねれば重ねるほどにどんどんトガッていくものだから、“このままだとどうなるんだろう?”ってたまに不安になるわ。

●でもそれが音楽的にも良い方向に出ているのでは?

マリアンヌ:何もないところから“反抗”っていうのは生まれないわけで、やはり抑圧されていたり、何か気に入らないことがあって初めて反抗心というものが出てくるんです。そういうマインドは元々、多分に持ち合わせているみたいで。イエスマン的な立ち回りができないし、敵を作るとわかっていても噛み付いてしまう性分は大人になっても変わらなかった。でも結局、そういう人間としてしか生きていけないのだと…。それがキノコホテルの音楽性にも出てきているし、もう仕方ないか、と(笑)。怒りだ何だっていう負の感情をどんどん吐き出していくことに対する抵抗感があった時期もあるんですけど、最近はそういうものを押し殺して気取ったりする必要はもうないように思っています。

●負の感情が自分を突き動かすパワーになったりもするし、そういう曲のほうが突き刺さると思うんですよね。

マリアンヌ:キレイごとばかり言う人はいくらでもいるので、そういうのはその人たちに任せておけばいいと思うから。

●たとえば「私、結婚して幸せよ」みたいな曲を聴いて、(本人以外)誰が楽しいのかっていう(笑)。

マリアンヌ:嫌ですよ。“ケンカ売ってんのか?”って(笑)。共感できないですね。…でもいつかそういう歌…歌ってみたいもんだわよねぇ。

●歌いたいんですか!?

マリアンヌ:“新しい命が宿って…”みたいな。そういう反吐が出るような歌を歌いたいわよ。それですごく非難されたい。

●今までのファンに?

マリアンヌ:「マリアンヌ東雲、終わったな」とか言わせたいですね。もちろん幸せいっぱいの妊婦ヌードとかも出しちゃうわよ。

●やりそうな気もしますね。

マリアンヌ:やるわけないでしょうが(笑)。

●結局、やらないんだ(笑)。でも周りが勝手に抱いているようなイメージやキャラクターには縛られたくないわけですよね?

マリアンヌ:それは虚構というか、作られたものだから。だから結局、マリアンヌ東雲を壊せるのはマリアンヌ東雲しかいないのかも知れません。

●今作で初めて南石聡巳さんにエンジニアを依頼したのも、違う部分を見せたいという気持ちの現れだったのでは?

マリアンヌ:そこに深い意味はないんですけど、“違う方にお願いしたらどうなるかな?”という好奇心はありましたね。南石さんにはすごく頑張って頂いて、今回の楽曲が持つ世界観を1曲ごとに追求できたんじゃないかと思います。

●今までで最高傑作になったという感覚もある?

マリアンヌ:アルバムを作る時は、今まで出したものよりも良いものにするっていうのが当然のことだから。結果的には、今までリリースしたものの中で一番好き。作品を作るたびに“よく頑張った”とは思いますけど、何だかんだで“もっと良くできたはず”と思うところもあって。別に手を抜いたわけではないのに、余力が残っていることを感じたりするんですよ。そういう気持ちの中で、新たなイメージやテーマが浮かんできて、次につながり続けていくのかも知れない。

●自分でも“もっとやれる”という可能性を感じているわけですね。

マリアンヌ:なかなか“出しきった!”みたいな感覚はないですね。出しきることってすごいなと思います。ワタクシは出しきったら、(音楽を)辞めてしまうと思います。

●バンドとしても芯にあるものは変わらず、進化し続けているのでは?

マリアンヌ:変わらない部分と変わった部分というのは、どちらもあると思います。進化しているのか退化しているのかわからないですけど、人間って日々の生活を送る中でやはり変わっていくものだから。たぶん去年の自分と今の自分は何かしら違うし、ただ年を取ったというだけではなくて、良くも悪くも変わっていくものだと思う。そうやって変わっていく人間の集合体がバンドであって、絶えずアメーバみたいに動き続けているし、それが当たり前だと思う。それがバンドの在り方だとか音楽性にどう影響を及ぼすのか、その変化の仕方も含めてキノコホテルだと思っていますので。

●それを楽しめているっていうのが大きいんじゃないですか?

マリアンヌ:受け入れるしかないですもの。それに楽しくなかったら、辞めちゃうわ。こんなことやっていたってしょうがないし、時間の無駄でしょ(笑)。女性の良い時期っていうのは、限られているんだから。だいぶ費やしちゃったわよ…ワタクシ。どうしてくれんのよ?

●ハハハ(笑)。今、マリアンヌさんに捕まったら本当に“呪縛”かもしれないですね(笑)。

マリアンヌ:地獄へ道づれよ。

一同:(笑)。

Interview:IMAI
Assistant:馬渡司

キノコホテル_ライブ写真

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