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宇宙人

2014年度の“泣き歌”大本命!? 3部構成で紡がれる“じじい”と孫、別れと愛のストーリー

宇宙人「じじい」A_sha不思議としか言いようがない世界観と中毒性の高いポップセンスで、じわじわと人気を拡大している4人組ポップバンド、宇宙人。昨年5月にはTVアニメ『惡の華』のオープニングテーマを担当し、ロトスコープという特殊な技法を使用したMVがYahoo! 映像トピックスランキングでウィークリー1位を獲得するなど話題を呼んだ。そんな彼らが次に放つ2ndシングルのタイトルは、何と『じじい』…。センセーショナルなタイトルとは裏腹に、“家族愛”から“生きること、死ぬこと”まで真摯に向き合った感動的な“泣き歌”となっている。3部構成で展開される“じじい愛”を歌った超大作について、Vo.しのさき あさこに訊いた。

 

 

●今回のリリースを記念して4/8に東京・アメ横センタービル5階屋外ステージでイベントを開催したわけですが、「孫」の大ヒットで有名な大泉逸郎さんとの共演はいかがでしたか?

あさこ:大泉さんの歌がすごく上手かったです。

●自分たちのライブはどうだったんですか?

あさこ:やっぱりまだ慣れていないので、難しいです。(今回の曲は)メロディがまっすぐじゃなくて(キーの)幅が広いので、歌うのはすごく大変で…。息継ぎのタイミングとか、もっと練習しなきゃって思いました。

●でも大泉さんからも「演歌にはないリズムで、指の先まで全身にメッセージが伝わってくる」と誉めてもらっていましたよね。

あさこ:帰りに大泉さんが「(自身が経営する)さくらんぼ農園にいつでもおいでよ」と言ってくれて。本当に優しかったです。

●逆に大泉さんの歌に対する、G.こまつ(けんた)くんの「めっちゃカッコ良かったです!」というコメントも面白かったですが(笑)。

あさこ:司会の方がこまつくんに話を振った時に、ちょっと危険を感じましたね(笑)。でも本当に、心が洗われたような感じでした。

●イベントでは大泉さんに“じじいソング”として認定されたわけですが、そもそも「じじい」っていう言葉をよく使うんですか?

あさこ:去年の口癖が「じじい」だったんです。

●「じじい」が口癖って(笑)。

あさこ:「首からじじいの臭いがしてまいりました、宇宙人です」っていう挨拶を、色んなところで言っている時期があって。

●それはライブのMCとかじゃなく、普段どこかで会った人に言っていた?

あさこ:普段会った人にです。

●いきなり「首からじじいの臭いがする」って言われても…という感じでしょうね(笑)。

あさこ:ちっちゃいときから首が臭くて(笑)。じじいの臭いをかいだこともないのに、何か「じじいの臭いがする!」と言っていました。たぶん、じじいが住んでいるんじゃないかって思います。

●首のところに、じじいが住んでいる(笑)。

あさこ:自分のことも「じじい」って言いたいくらい、その言葉が大好きな時期があって。『珊瑚』(2ndミニアルバム)の時も、タイトルを『じじい』にしようと言っていたくらいなんです。それで今回はスタッフから、「おじいちゃんをテーマに曲を作ってみるのはどうだい?」と言ってもらったんですよ。

●それが今回の『じじい』を作るキッカケになったと。

あさこ:ただ「じじい」っていうタイトルで面白おかしい曲だったら失礼なだけで終わるから、「ちゃんとストーリーを考えて作らないと」っていう話になって。

●「じじい」というタイトルの時点で、だいぶ失礼な気はしますが(笑)。

あさこ:でも「おじいちゃん」っていうタイトルにするより、「じじい」のほうが親しみやすいかなと思って。親しみやすいなと思ってもらえたら良いなと思います!

●2回言った(笑)。

あさこ:悪口と思われたら大変だから。ここは太字で強調して欲しいです(笑)。あと、“じじい”っていう響きがポップなんですよね。

●確かに言葉のインパクトは強い。

あさこ:もし「おじいちゃん」にしたら、タイトルを見ただけで内容がだいたい想像されそうだから。「じじい」の方が“いったい、どんなことを歌っているんだろう?”っていう興味も持ってもらえそうかなっていう気が…一昨日くらいからしてきました(笑)。

●つい最近じゃないですか(笑)。でも確かに内容は想像できないですね。

あさこ:「じじい」っていうタイトルを聞いたら、「えぇ!? ギャグなのかな?」って思いますよね。でも実際に聴いて頂くと、“ドカン!”とくるんじゃないかなと(笑)。

●内容的には感動的な“泣き歌”になっているわけですが、実話を元にしているんでしょうか?

あさこ:今回のモデルになったのは、Ba.にいや(ひでひろ)くんのおじいちゃんで。にいやくんの幼少期の思い出を取り入れた部分はあります。

●にいやくんの実体験が元になっている。

あさこ:にいやくんはおじいちゃんと一緒に暮らしていて仲良しだったから、すごくエピソードがあって。自転車の後ろによく乗せてもらっていたそうなので、おじいちゃんだけがどんどん遠くに行っちゃうというのを“進みだした車輪はもうもどれない”という歌詞で書いたりしています。

●自分自身のエピソードは入っていない?

あさこ:お葬式のシーンとかは、(自分の)ひいおじいちゃんが死んでしまった時の様子を思い出して書きました。でも全体的には、理想のおじいちゃん像を描いていますね。あとは、普段は考えない“家族愛”とかを考えて書いたところもあって。

●普段は考えないんだ(笑)。

あさこ:絶対考えないタイプですね。家族は大好きなんですけど、当たり前すぎて。“家族愛”や“生きること・死ぬこと”みたいな普段は考えることがないものについて、この機会に深く考えて作ろうと思ったんです。でもそれを1曲に詰め込もうとすると全部が薄くなってしまいそうだと思ったので、3曲に分けた方が良いなと。1曲じゃ、生前・死後・天国は語れないぞっていう。

●最初からその3段階について歌いたい気持ちはあったんですね。

あさこ:それは先に決めていました。

●それぞれのサブタイトルが各段階を表現している?

あさこ:最初にM-3「じじい -そして伝説へ-」が浮かんで。そこへつながるものということで考えたのがM-2「じじい -おわりのはじまり-」で、“終わるからまた次があるんだよ”という意味も込めました。あと、やっぱり一番最初はインパクトが大事だろうということで…。

●それでM-1「じじい -導かれし宇宙(コスモ)-」になったと(笑)。曲ができた順番は?

あさこ:曲は3つとも一気に1週間くらいでできました。でも歌詞がとにかく書けなくて…。M-3は絶対にすぐ作れるっていう根拠のない自信があったので後まわしにしたんですけど、他の2曲ですごく困りました。M-2のサビがまず最初にできて、そしたらM-1の歌詞が一気に書けたのかな。M-1が一番先に完成したので、曲順通りにできた気がします。

●歌詞で悩んだんですね。

あさこ:伝えるための言葉選びが一番大変で。“自分ではわかるけど、これだと人にはわからないかも…”っていうことを考えたら、難しかったです。

●ちゃんとリスナーに伝わる言葉を選んだと。

あさこ:自分の気持ちは自分にしかわからないので、気持ちを伝える時はやっぱり言葉を選ばないとなって思いました。あと大変だったのは、感情が3曲でどんどん変わっていくところで。1曲の中でも後半に向かって感情が変わっていくんですけど、そういう歌詞を書いたことがなかったのですごく大変でした。

●1曲の中でも感情が変わっていくというのは?

あさこ:M-1は(じじいがこの世から)どんどん離れていくから“悲しい”がメインの感情なんですけど、その中にも“もうちょっと生き延びてくれ”っていう希望もないと“悲しさ”が伝わらないかなと思ってバランスを考えました。後半へ進むに従って、徐々に死を受け入れる主人公がいて。M-2の最後の“今日も生きているんです”というところで、死と完全に向き合ってM-3へ続くような終わり方にしています。

●M-2はリード曲ということで、3曲の中でもより聴きやすい形になっている気がします。

あさこ:ストレートに伝わって欲しいなと思って。最初のAメロは優しい感じでひなたぼっこできそうなメロディにして、サビは“やっぱり嘆きみたいなのがないとな”というのを意識して作りました。曲から作ったのに、歌詞の内容に沿ったメロディに偶然なっているんですよ。

●何かに導かれたんでしょうね。

あさこ:「-導かれし宇宙(コスモ)-」だけに(笑)。

●ハハハ(笑)。M-3は曲だけ聴くと、すごく楽しそうですよね。

あさこ:天国はやっぱり楽しくなきゃと思って。死を受け入れただけで終わっちゃうと、すごく悲しいなと思ったんですよ。この歌詞では(主人公が)天国に行って、じじいと再会するんです。じじいが死神や天使と楽しく暮らしているのを見て、“死は誰にでも訪れるけど怖くないものだから、今を精一杯生きてパラダイスに変えよう”っていう歌詞ですね。“これからも続くんだ”っていうもののほうが良いなと思ったから。

●最後は希望につながっている。たくさんの声が重なるコーラスパートも、合唱みたいで面白かったです。

あさこ:ミュージカルをイメージしたんです。たくさんの人で歌えるほうが良いなと思って、パート分けとかもしてみました。

●アレンジはメンバー全員でやるんですか?

あさこ:にいやくんがリーダーみたいな感じで、アレンジを一緒に考えてくれたりします。今までは歌詞を見てからアレンジを考えるっていうのをやったことがなかったんですけど、今回初めてやってみて。「すごく難しかった」と言っていました。

●今までは歌詞を見ずにアレンジしていたんですね。

あさこ:歌詞はおかまいなしな感じだったのが、今回は歌詞の内容も考えてアレンジしてもらいました。そこは挑戦でしたね。普段はアレンジをするのがすごく早いんですけど、今回は1ヶ月くらいかかったという…。「超大作」とか言っちゃおっと(笑)。

●実際3部作ですから、そう言ってしまっても良いんじゃないですか。

あさこ:3曲通して聴いて欲しいですね。そうしてもらえると、ちゃんとストーリーが伝わるかなと思うので。伝わって欲しいです!

●3部作だけにアルバムに入れる時にどうなるのか…というのはありますよね。アルバムについても考えていたりする?

あさこ:そのうち…また今度みたいな(笑)。

●マイペースな感じですね(笑)。曲は普段から作っているんですか?

あさこ:ほとんど作らないです。でもたまにCMソングを勝手に作って、スタッフに送りつけるっていう嫌がらせはやっています(笑)。

●ちなみにその他で、最近ハマっていることは?

あさこ:ダイオウグソクムシ!

●じゃあ、「じじい」に続くシングルは「ダイオウグソクムシ」になるかもしれないですね…。

あさこ:かもしれない(笑)。

Interview:IMAI
Assistant:森下恭子

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