音楽メディア・フリーマガジン

セックスマシーン

欲しいのは“楽しい”の先にある衝動

“セックスマシーンnewシングル「文句はないな、野郎ども!」レコ発ワンマン”
2014/07/12@MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
ゲスト:ザ・ビートモーターズ

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この日を皮切りにスタートした『文句はないな、野郎ども!』リリースツアー。ソールドアウトで迎えた会場は超満員で、高揚を肌で感じられるほどに色めき立っていた。まずは開演前に、Vo.森田が前説で登場しお客さんとコミュニケーションを取っていく。中には福岡や岡山、東京といった遠方から来ていた人もおり、このライブへの期待が見て取れた。

また今回はゲストとしてザ・ビートモーターズが出演。「いきなりセクマシのライブに入ると膝を壊してしまうので、僕らでしっかりウォームアップしてください!」と、Vo./G.秋葉の機智に富んだ一言でライブが始まった。体の内側まで揺さぶられるような力強い歌声とシンプルながらキャッチーな楽曲で、瞬く間に会場のボルテージを上げていく彼ら。ウォームアップどころか、いきなり汗だくになるほどのアツいライブを見せつけた!

すっかり熱気に包まれた頃、おなじみのSE(リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」)が流れステージに突如映像が映し出される。オリンピックの聖火を模した小道具を持った森田が「準備はいいか、野郎ども!」と問うと、ついにセックスマシーンが登場。なんと1曲目はいきなり「文句はないな、野郎ども!」だ! 続いて「サルでもわかるラブソング」ではオーディエンスがメンバーと共に完璧なシンガロング披露! いや、セクマシのライブでは、オーディエンスはもはやいち観客ではない。彼らはみな共にライブを作り上げる出演者であり、セクマシのゲストボーカルなのだ。さらに「まっ」へと間髪をいれず繋げていけば、アクセル全開のメンバーとゲストボーカルが腕を突き上げよりいっそうヒートアップ! たった一言で、これ程までに気持ちが高まるものなのか。G.近藤のギターもいつも以上に雄弁に語りかけ、まるで「ワンマンだから知らない曲やレアな曲もやるかもしれないけど、お前らなら大丈夫だよな」とゲストボーカルたちへの信頼を感じるような雰囲気を醸し出していた。2002年にリリースされた「いい人どまり」や、会場限定シングルのみに収録されていた「ワンダーフォーゲル部」、Key.アキラがスタジオに遅刻してきたときに生まれた幻の未収録曲「待ちぼうけ」などともすれば知らない人もいるかもしれない楽曲を披露したのも、ゲストボーカルへの信頼が成せるものかもしれない。

この日、とても記憶に残ったものがある。MCで森田が放った言葉と、その姿だ。「ライブをやったとき“楽しかった”と言われると、ちくしょうって思う。まだその程度なのかって。俺はそれ以上のものをライブでもらってきたから、君らをもっと揺らしたい。俺がひとりで作った暗い歌詞を、みんなで歌うのが好きだ」。彼はそう言った。彼らはいつだって、胸の奥から熱いものが込み上げるようなライブを体感させてくれる。そのうえで、不器用ながらも必死に何かを伝えようとする姿には、“揺さぶるようなものを残したい”という思いが込められているようで、いつも以上に感じ入るものがあった。そんな森田の願いを叶えるように、ラストは「昨日の続き」を全員で大合唱。興奮渦巻く中、彼らはステージを後にした。

だが、これで満足するゲストボーカル達ではない。まだまだ遊び足りないというように、登場を求めて呼びかけ続ける。すると「圧倒的な、近藤潔!」というかけ声とともに、近藤がトランペットを持って現れ、ソロ演奏を披露! さらに演奏陣が登場すると、ジャジーなアンサンブルに思わず聴き入ってしまった。セッションが終わったところで森田も登場、この頃にはもう会場はトランス状態だった。「リンドバーグを聴きながら」「未来予想図4」さらにダブルアンコールで「遊び足りない」「安全地帯」ラストは「君を失ってwow」でもみくちゃになりながらフィニッシュ!

ただ楽しいだけのものなら、きっと世界中にいくらでも溢れている。でも、“楽しい”の先にある、言葉では上手く伝えられないようなよくわからない衝動が沸き上がってくる機会というのは、そうそう出会えるものじゃない。“よくわからない衝動”とは、一体なんなのか。その正体を見たければ、ぜひ彼らのライブを体験してほしい。きっと、今まで知らなかった景色が待っているだろうから。

TEXT:森下恭子

 

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