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SHIBUYA-AXでのラストライブとなった伝説的な一夜。 二度とない瞬間に感じた、あの興奮を再来させる奇跡の映像作品

PH_lynch_mainlynch.にとってはSHIBUYA-AX(2014年5月閉館)でのラストライブとなった、今年4月23日の“TOUR'14「TO THE GALLOWS」-ABSOLUTE XANADU-”公演。その模様を収録したライブDVDが、9/10にリリースされる。Vo.葉月自身が当日にMCで語っていたように、映像では決して伝わらない、ライブの現場だけでしか味わえない感覚を満喫したこの日。実際に体感した者にとって、今回のDVDが果たしてどのような意味を為すというのか? …結論から言ってしまえば、「絶対に観たほうが良い」。それが今作を観終わって、一番に浮かぶ言葉だ。

まずはライブ映像から伝わってくる臨場感が、その理由の1つとして挙げられるだろう。何台ものカメラを駆使し、様々な角度から映し出されていくステージ上と会場の様子。そこに映し出される光景は、現場で自分の立ち位置から観ただけでは湧き上がらないような興奮と感慨を湧き起こしてくれる。演奏中に一瞬見せるメンバーの表情を鮮明に捉えることは最前列にいたとしても当然、限界があるはずだ。だが映像を通して間近に観ることで、瞬間瞬間の機微まで伝わってくるようで、こちらまで感情を揺さぶられてしまう。まるでその時のメンバーの気持ちが乗り移ったかのように、共に喜び、時に照れ笑いまで一緒に浮かべてしまうような感覚は普通のライブ映像ではなかなかに起こりえない。

その感覚を助長しているのが、初回限定版のみに収録のメンバーによるオーディオ・コメンタリー(副音声)だ。lynch.にとって初の試みだったようだが、最初は慣れない感じを漂わせながらも、リラックスした様子で延々と喋り続けるメンバー。画面に映し出されたシーンに合わせて、その時に何を考えていたかを語ったりすることで、よりライブ映像がリアルなものに感じられるのだ。また、観ている側でも絶対に頭に浮かんだ人がいるであろう素朴な疑問を、メンバー間でぶつけあうのも面白い。たとえば“バンド名が描かれた巨大なバックドロップはどうやって作られたのか?“という話から、“Ba.明徳が当日巻いていたバンダナはどうやって手に入れたものなのか?”というところまで、様々な謎が解き明かされていく。

初回限定版の約150分という収録時間に最初は「長いな…」と思うかもしれないが、(特に副音声をオンにしながら見始めると)あっという間に進んでいく印象だ。当日の現場にいた人も自分の視点からでは見えなかった光景から、次々と新しい発見をしていくことだろう。現場ではなかなか全ては聴き取りづらいMCも今作では明確に聞こえることで、メンバーの想いもよりダイレクトに伝わってくる。また、副音声ではその楽曲を作った時のエピソードが明かされたり、パフォーマンスに対する各メンバーのこだわりも語られるなど、興味深い内容も非常に多い。メンバー同士のたわいもない、良い意味でくだらない会話に腹を抱えて笑いながら観ていると、本当にいつの間にやらエンディングを迎えてしまっていた。

ライブ中に起こった想定外のハプニングまで含めた完全ノーカット映像を収録したという初回限定版だが、まさしくそのことが功を奏した映像作品だと言えるだろう。曲の入りでタイミングを誤って失敗するシーンもその瞬間の表情が映し出されることで、1つのエンターテインメントとして成り立ち、今作の面白みを増していたりするのだ。譜面通りに演奏すれば良いライブになるわけではないと実証するような、熱気の溢れる素晴らしい演奏とパフォーマンスを見せたAXでの一夜。それは二度とない瞬間だったはずなのだが、本DVDを観ることでまた何度でもあの興奮が蘇ってくるかもしれない。そう思えるほどの特別な“何か”が詰まった今回の作品。「絶対に観たほうが良い」。最後にもう一度言い切ってしまおうじゃないか。

TEXT:IMAI

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