音楽メディア・フリーマガジン

SiM

必要としているのはスターでもアイドルでもない 夢を持ち続けるリアルなロックの体現者なんだ

SiM_ArtistPhoto_2014Summer_01_Main_Comp2014年6月、バンド結成10周年を記念し、アルバム『PANDORA』リリースツアーのライブ映像とバンドの歴史と内面を余すことなく赤裸々に詰め込んだDVD作品『10 YEARS』を発表し、シーンに衝撃を与えたSiM。多くの困難に直面しながらも、その1つ1つの壁を強い意志で乗り越えてきた彼らは、レゲエやダブなど様々な音楽を貪欲に昇華しつつ、現代に於けるリアルなロックの体現者として2014年のシーンに君臨する。過去最高傑作のアルバム『PANDORA』を経て、9/17に彼らがリリースするミニアルバム『i AGAINST i』は、ミュージシャンとして、バンドマンとして、そして人としての誇りと意志がつめ込まれた6曲を収録。夢を持ち続けてきた者にしか作り得ない最高到達点を体感しろ。

 

INTERVIEW #1

「本当は(DVDに)出て欲しいと思う人はもっといっぱい居て。その人たちはみんなかっこいいんですよね。それも嬉しい。ダサい人が1人も居ないんです。そういうことも含めて、SiMを知ってもらいたかった」

●6月にリリースしたDVD『10 YEARS』はびっくりしたんです。昨年リリースしたアルバム『PANDORA』ツアーのライブも収録されていましたが、今までインタビューでもなかなか文字に出来なかったようなバンドの背景…前の事務所とのいざこざだったり、メンバー内のモヤモヤだったり…バンドの歴史が酸いも甘いも全部余すことなく収録されていますよね。前に所属していたソニーのスタッフのインタビューもあって、事情を少なからず知っているだけに“この人なんで出てるの!”ってびっくりしたんです。

一同:ハハハ(笑)。

●でもそれがSiMらしくて。バンドの影の部分を隠すんじゃなくて、全部ありのままを出すことが表現にも繋がっている。10周年という区切りだから、ああいう映像作品を出したかったんですか?

MAH:そうですね。例えばJUNGLE☆LIFEでも以前、俺1人で深い部分をしゃべらせてもらったこともありましたけど、ああいうところでもまだ話してないようなことが色々とあって。新しいお客さんとか、昔から知っている人とかいろいろ居るので、1回ここで俺たちに関する認識を統一したいなと。

●確かにバンドの歴史が長くなってくると、お客さんによって情報量の違いは生じますよね。

MAH:いちいち訊かれるのめんどくさいじゃないですか(笑)。

●こんなDVD出されたらインタビューする立場としては商売上がったりなんですけど(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

MAH:バンドに関することって、Wikipediaがいちばん詳しいってなんか悔しいじゃないですか。誰かファンの人が雑誌のインタビューとかから引っ張ってきて編集して。絶対少し違うところがあるし、でもSiMがオフィシャルとして出すものであれば、嘘はひとつもない。あと、しゃべっている表情とか声色とかでも伝わり方は変わっちゃうと思うので、DVDではちゃんと自分たちでしゃべろうと。それに自分たちだけじゃなくて、周りや第三者からの視点を入れることで、リアルで脚色していないものになるだろうなって。10年といういい機会だったから、そういうものも入れたいなと。みんなこういうのやればいいのにって思います。

●すごく興味深くて見入っちゃいました。ティザーにもなっていましたけど、SHOW-HATEくんのインタビューなんてもう度肝を抜かれて。「泣いとるやんけ!」って。

SHOW-HATE:ハハハ(笑)。

●あのDVDを観ていちばん印象的だったのは、メンバーはもちろんですが、SiMに関わる全員が本気だということ。事務所のボスの京條さんがレコード会社に対して「約束破ったらぶん殴ってやります」とか言ってて、このバンドいいなって思いました。

SHOW-HATE:俺たちは嫌なことがはっきりしてるんですよね。自分たちが新しい環境でも嫌なことは「嫌だ」とはっきりと言って今まで進んできたから、現時点で必要としてくれる人たちが集まっている気がします。自分たちを理解してくれる人に恵まれているし、自分たちもだからこそしっかりと意志を持つことができるっていうか。

●うんうん。

MAH:10年の間ずーっと俺らのスタンスが変わらないから、それが無理な人はやっぱり離れていきますよね。2〜3年だったらいい顔して付き合ってくれるかもしれないけど、“こいつら変わんねえな”って思う人は離れていっちゃう。だから今残っている人たちは、自然と理解してくれている人になるんだろうなって。

●なるほど。

MAH:それに、俺らは今まで転びそうになっても絶対に立ち上がってきて、その姿を見てくれている人たちばかりなんです。だからちゃんと情熱を注いでくれると思うんです。転んだまましばらく倒れているようなバンドだったら、慈善事業じゃないんだから関係は続かないですよね。特に他社ともなると、なかなか手を貸し辛くなるだろうし。俺たちはとにかく止まらなかったから。SHOW-HATEが病気のときとかどうしようもなかったけど、それでも1〜2ヶ月しか休まずに、サポート入れてなんとかライブをやってきて。

●確か以前、メンバーが抜けてMAHくんとSHOW-HATEくんの2人だけになったときも、とにかくツアーを決めてバンド活動を止めなかったですよね。

MAH:とにかく何が何でもやるぞ! っていうギラギラしたものが、ちゃんと周りの人たちに伝わってたのかなって。DVDに出てもらった人たちも、本当は出て欲しいと思う人はもっといっぱい居て。その人たちはみんなかっこいいんですよね。それも嬉しい。ダサい人が1人も居ないんです。そういうことも含めて、SiMを知ってもらいたかった。

●思うんですけど、音楽って“音源を聴いてそのアーティストのライブに行く”という楽しみ方が一般的というか普通ですけど、特にライブバンドの場合、その人たちの人生に継続的に触れるということがいちばんの醍醐味のような気がしていて。良いことも悪いことも含めてバンドだし、そういう背景や人柄を知ることで音楽やライブ自体が奥深くなる。

SHOW-HATE:そうですね。

●SiMはそれをリアルに体現しているバンドだなって。SHOW-HATEくんの病気やDVDで語られているマインド的なことなんて、普通のバンドは表に出さないと思うんです。でも、そういうことも全部音楽やライブに繋がっているという自覚があるからこそ、ああいう作品を出せるのかなと。

MAH:バンドを見てて、ライブを観てて、その背景に何もないわけがないですよね。大人が4人も集まっているわけだから。お客さんもやんわりとその背景を想像すると思うんですけど、みんな実際に語らないし、脱退も“一身上の都合”や“音楽性の違い”で片付けちゃうじゃないですか。

●そうですね。

MAH:でもその裏にはいろいろとあるわけで。それを知ってもらうことで、“そんなことあったけど今はキラキラしてるんだな”って思ってもらえるというか。音楽ではかっこいいこと言ってるけど、実際には普段なにも苦労していないような人に「夢を見ろよ」と言われても「はあ」って感じじゃないですか(笑)。

●ですね(笑)。

MAH:例えば1年やって3年休んでいる人が「続けることは大事だ」と言っても説得力がないですよね。でも何があっても10年間ライブをし続けたバンドが「続けることは大事だ」と言ったら、それはやっぱり信ぴょう性があるというかリアルになる。まあ別にネガティブな話やバンドの裏側をここまで出すつもりはなかったんですけど、でも、もうちょっと他のバンドも出した方がいいんじゃないですかね。なんか隠し過ぎっていうか。

SHOW-HATE:ポジティブなところだけ出しても刺さらないと思うんですよね。ネガティブなところがあるからこそ、反動でボジティブな内容が濃くなる。そういうところを出していった方が、リスナーからしたら新規感が湧くと思うんですよね。

●確かに日本のバンドってちょっと芸能人的な見せ方が普通になっていますよね。逆に海外のバンドは、むちゃくちゃな裏側まで赤裸々に出す人たちも多い。

MAH:俺たちが好きな海外のバンドはこういうドキュメンタリー的な作品を出しているんですよね。例えば世代的にはKoЯnのDVDが高校生の頃に出たんですけど、それにはバンド初期の頃のホームビデオの映像が入っていたり、NirvanaのDVDボックスとかにも昔のツアー映像が入っていたり。だからみんながやってるイメージなんです。俺たちの『10 YEARS』の発想はそこからきていて、10周年だし、海外のバンドがやっていたような映像作品を作りたいなって。

●なるほど。

MAH:日本のバンドって、映像作品といっても“ライブDVD”みたいな内容で終わることが多いじゃないですか。だから人間性を知る機会があまりないと思うんです。Twitterとかblogとかも考えて書くから、100%素かと言えばそうじゃないだろうし。俺なんて特に考えて書くから。そうじゃなくて、街を歩きながら密着してもらっているカメラマンにポンと質問されてその場で答えたり。そういう方が本質が出る。大事だと思うんですよね。バンドの性格が出るっていうか。

INTERVIEW #2

「レゲエが好きになってくれたらあとは自分で色々と探せばいいだろうし。逆に、こういう有名なレゲエのリズムをフィーチャーすることで、レゲエしか聴かない人にもちょっと届けばいいなとも思っているんです」

●『10 YEARS』を出したことが今作に影響を与えているんでしょうか?

MAH:ああ〜、どうだろうな? 俺自身は直接的には影響がないと思っていますけど、ただ10周年という区切りでバンドの今までを語ったDVDを出してひと区切りできたので、1回なんでもできる期間になったんです。そういう意味では影響があるのかな。今までとの繋がりを考えなくていいっていうか。

●ああ〜。

MAH:シングル『EViLS』(2013年4月)からの1年かけた大きなストーリーが、MV5本作った『PANDORA』で終わったというのもデカいんです。そこでひと区切りしたから、次はできそうなことを全部やってみようかなと思って。

●なるほど。今までのリリースごとのインタビューでMAHくんは「SiMなりのラウドを表現しました」とか「SiMが表現するレゲエパンクはこういうものだ」という発言が多かったと記憶していて。SiMはいろんな要素を持ったバンドだけど、作品ごとに“こういう面を見せたい”という意志がはっきりとありましたよね。

MAH:うん。そうですね。

●でも今回のミニアルバム『i AGAINST i』はそういうところがなく、本当に自由な作品だと思うんです。極端に言えば、DVD『10 YEARS』で音楽的なルーツも全部説明して、バンドの背景を表現したからこそ作り得た作品なのかなと。

MAH:今回のテーマとしては、レゲエとかスカをもうちょっと昔の感じで使っていこう、みたいな考えがぼんやりとあったんです。そういうテーマを持って作り始めたので、ちょっとレゲエが多めですよね。でもそれ以外は四方八方に散らばってもいいかなと。それくらいの自由な感じです。

●以前はMAHくんが楽曲をかなり作り込んだ上でバンドアレンジに落とし込むという作り方をしていましたが、『PANDORA』ではメンバーみんなでセッション的に作った曲が多かったじゃないですか。今回はどうだったんですか?

MAH:今回はセッションはほぼなかったですね。あ、でもM-3「GUNSHOTS」はSHOW-HATEがイントロのスカのフレーズを作ってきて、Aメロやサビはその場でみんなで考えたか。セッションはそれくらいかな。他は俺がガチガチで作ってきました。

●「Blah Blah Blah」(『EViLS』&『PANDORA』収録)という楽曲はSiMが持っているいろんな要素がマーブル的に融合していて、SiMの音楽性が新しい次元に到達したと感じたんですが、今作はどの曲もそういうニュアンスがあって。レゲエの要素が多めに入りつつ作品全体の振れ幅が大きいですが、結構どの曲も1曲の中にいろんな要素が入っていて、忙しく曲が展開していく。でもその要素の1つ1つの繋ぎ目が自然で、更に歌詞の内容とサウンドのリンク度も高いという。

MAH:『PANDORA』はセッションで作った良さもあったんですけど、やっぱり繋ぎが緩いというか。緩いっていうか、100点ではないかなって。やっぱりその場で作っているので、極端に言えば音符単位で詰めることができなかったのかなって。

●ふむふむ。

MAH:でも今回みたいに作り込むと、そういうレベルまで緻密に作ることができるというか。繋ぎ目をなるべくでこぼこしないようにできた。『PANDORA』が完成したときはいいアルバムだと満足していたんですけど、後から聴くともうちょっとできるなと思って。

●なるほど。

MAH:2ndアルバム『SEEDS OF HOPE』(2012年10月)はラウドロックに寄せましたけど、3rdアルバムの『PANDORA』はもうちょっとロックにしたかったんです。ラウドロックというよりは、もうちょっと広い意味でのロック。でも今から考えると、もうちょっとイケるんじゃないかなと思って、そういうところを踏まえつつ作ったのが今作なんです。

●それに加えて驚いたのは、レゲエという音楽はリズムがゆったりしているから冗長な面があるというか、悪く言えば退屈させる恐れがあると思うんです。でも今作のレゲエの要素が入っている曲は、冗長性がまったくない。なぜ冗長に感じないかというと、メロディだけがキャッチーなんじゃなくて、ギターのちょっとしたフレーズや、ベースライン、リズムの絡みだったり、曲の最初から最後まで全部の部品がキャッチーに作られているからなのかなと。これはすごいなと思いました。

SHOW-HATE:そこは各々がすごくこだわったところなんです。レゲエって俺も最初はそうだったんですけど、言っちゃえば毛嫌いする人も居ると思うんです。でもどれだけそれをキャッチーで、聴きやすくするかということを心掛けて。「レゲエがダメ」っていう人にもすんなりと聴いてもらえるようなアレンジは結構考えましたね。

●そういう意味でSiMには時代性があると思うんです。色んなルーツを取り入れつつ、絶対に懐古趣味にはしない。すごく磨き抜いた作品ですよね。

MAH:例えばM-5「Slim Thing」のイントロは“Sleng Teng”リディムというすごく有名なフレーズを使っていますけど、あそこは敢えて原曲に近い音にしてやってるんです。曲名の「Slim Thing」も、パトワ語の“Sleng Teng”を英語に訳したら“Slim Thing”になるいうところからきていて、敢えてリスペクトを持って作っている。

●はい。

MAH:でもM-2「Fallen Idols」で使っている「Black Roses」という曲のリズムは、出来る限り今風にアレンジして、俺たちが最近やってるダブステップ感を混ぜてアレンジして。今風のアレンジにしているからこそ、聴いている人もダブステップ感覚で聴けると思うんです。でも実際はレゲエだよっていう。そういうことを考えたかな。ガチガチのBob Marleyみたいなレゲエをやることもできるんですけど、それをやっちゃうとさっきSHOW-HATEが言っていたように拒否反応が出る人も多くなると思うし。やっぱり俺らはロック畑に居るから、レゲエが嫌いな人に出会うことも正直多いんです。そういう人も、知らないうちにレゲエを聴いていた、という感じにしたいんです。

●それがいいですよね。好きな音楽を昇華しているということですから。

MAH:それでレゲエが好きになってくれたらあとは自分で色々と探せばいいだろうし。逆に、こういう有名なレゲエのリズムをフィーチャーすることで、レゲエしか聴かない人にもちょっと届けばいいなとも思っているんです。だから振り切らないように気をつけてはいます。そのバランス感は大切にしていますね。

INTERVIEW #3

「バンドで何が言いたいかっていうと、歌詞で書いていることがいちばんだと思っているから、そこに照準を合わせなかったらサウンドが一致しない。バラついてたら濃いものができない」

●さきほど「GUNSHOTS」はSHOW-HATEくんがイントロのスカのフレーズを作ってたという話がありましたけど、曲のアイディアが浮かんだんですか?

SHOW-HATE:俺、スカとかの音楽によく入っているオルガンみたいな音がすごく好きで、その音を使ってダブステップを作りたいなと考えたっていうのが「GUNSHOTS」のきっかけなんです。あのオルガンの音は結構チープなアナログの音ですけど、一方でダブステップは最近の音だからなかなか馴染まないんですよ。バンドでやるときに“どうする?”と考えて、アナログとデジタルの間をとるような音作りを色々と考えました。

●音楽的なアイディアがきっかけになったと。

SHOW-HATE:だから最初はその意味とかも特になかったんですよ。でも後で歌詞が乗って、後付かもしれないけど意味合いがはっきりとして。フレーズにも意味を持たせて鳴らすことができるから、最終的にサウンドと歌詞の内容が合致してよかったですね。

●「GUNSHOTS」で描いているのは「Mr. Wicked」(2009年リリースのライブ会場限定2ndシングル『Murderer』収録)と繋がる世界観ですよね?

MAH:そうです。今回のCDに付くブックレットに書いてある通りなんですけど、歌詞で描いている物語が繋がっているだけじゃなくて、「Mr. Wicked」のサビのメロディが「GUNSHOTS」にも入っていたり。個人的にも「Mr. Wicked」はすごく好きな曲で、周りのバンドマンからも評価が高かったんですよ。未だに「あの曲ライブでやんないの?」って友達とかに言われることも多いんです。まあやんないんですけど、でもストーリーが実は繋がっているっていうのが好きなんですよね。例えばシリーズ物のゲームとかでもあったりするじゃないですか。シリーズIの主人公が、VIくらいで脇役で出てくるとか。そういうのが大好きなんです。

●その世界観…歌詞で描かれているストーリーだったり情景描写みたいなことが、ヴォーカルの表現に直結していますよね。SiMは物語を歌うような楽曲だけじゃないですけど、1つの表現としての描き方が、今作は更に深まっている。前にSHOW-HATEくんが「サウンドトラックみたいな音楽を作りたい」と言っていましたけど、そういう指向性がサウンドや歌詞や歌い方に表れていますよね。

MAH:例えばシャウトで「I LOVE YOU!!」と叫んでたとするじゃないですか。その前のパートで「君が好きだ」とか言ってたら“なんでシャウトしていきなり怒ってるんだ?”となると思うんです。

●うん。確かに。

MAH:でもちょっと頭がおかしい奴が狂ったような歌詞があった上で「I LOVE YOU!!」とシャウトしていたら、“こいつ狂ってるな”となりますよね。そういうところで、なぜそういう歌唱法なのかっていうことを突き詰めたくて。

●スタイルとしてシャウトするんじゃなくて、表現としてシャウトしている。

MAH:ラウドロックが増えてきて、叫びたくて叫んでいるバンドが多いなと感じるんです。人が叫ぶのは怒ったり悲しかったり、感情が爆発するときじゃないですか。だからそういう歌詞の流れで、この言葉だからシャウトしたい…そういうところまで考えて作らないとライブをやっていてもなんか変な感じになると思うんですよね。

●より自然にと考えたら必然的にそうなると。でも曲を作る過程では、歌詞は後からじゃないですか。ということは、歌詞が付いた時点でアレンジへのフィードバックもある?

MAH:もちろんあります。サウンドは歌詞が決まってから最終アレンジを決めます。

SHOW-HATE:歌詞を読んで、みんなで「どうしようかな〜?」って。

MAH:オケのベーシックがフル尺でできたら、そこに歌詞とメロを乗っけてみんなに渡すんです。それを聴いて最終的な上モノのギターを入れたり、ちょっとしたフレーズを入れたり。たまにそこで大幅にアレンジを変えることもあるんですけど、俺たちは歌詞ありきなんですかね?

●というか、表現したい世界観ありきなんでしょうね。

SHOW-HATE:そうですね。バンドで何が言いたいかっていうと、歌詞で書いていることがいちばんだと思っているから、そこに照準を合わせなかったらサウンドが一致しない。バラついてたら濃いものができないし、そのメッセージ性を濃く伝えるためにはどうしたらいいか? と考えたら、歌詞を読んで理解した上でアレンジをするのがいちばんだと思うんです。昔から聴いてきた音楽は全部そういうものなんですよね。だから自分のバンドでもそういうことをやんないと聴いてきた意味がない。なんでそういう音楽が好きだったのかをちゃんと理解して今に活かしたいんです。俺はやっぱり歌詞が大事だなって思います。

●うんうん。前作のインタビューでSHOW-HATEくんが「演奏者じゃなくて表現者になりたい」と言っていたことを、今作を聴いたときに何度も思い出したんです。MAHくんの歌声も時には女性みたいな歌い方になってるし。

MAH:オケにインスピレーションを受けて俺が歌詞を書いて、それを戻してみんながアレンジして。そこでちゃんとサイクルができているっていうか。だからちょっとジャンルを振り切っても、ちゃんと別の次元で筋が通ったものになると思うんです。そういうのが俺らの特徴なのかな。

SHOW-HATE:さっき言ってた「GUNSHOTS」もそうですよね。最初は音楽的なアイディアでオケができたけど、そこからインスピレーションを受けて歌詞ができて、その歌詞によってアレンジをして。だから成り立つのかなと思います。

INTERVIEW #4

「俺を見て、MAHが「Teardrops」の歌詞を書いてくれたんです。俺がこの曲を演奏しているときに、自分の子供のことを想ってちゃんと気持ちを込めることができるよう」

●さきほどの話のように表現を突き詰めた楽曲もあれば、M-1「RiOT」や「Fallen Idols」のように、自らの主張を歯に衣着せずにズバッと言う曲も相変わらずある。それはSiMがもともと持っていたスタンスだし、自分たちがやりたいと思うことを信じてやり続けているからこその表現だと思うんです。今を生きている感じがすごくSiMらしくて、こういうの好きなんですよね。

MAH:「GUNSHOTS」のようにストーリー性のある作り話みたいな歌詞も書いてて楽しいんですけど、それとは別に言いたいことは言いたいことであるんですよ。バンドをやっている以上、それは歌詞にするべきだと思っているんです。Twitterとかで言うのは簡単だけど、歌っていることが全然違うことなのにTwitterではメッセージ性の強いことばかり言ってるのもちょっと違うし。俺らは音楽家なので、音楽で表現することがいちばん正しいと思うんです。

●気持ちいいバンドだな(笑)。

MAH:そういう部分も含めてお客さんが好きになってくれればいちばんいいと思うんです。ただ、「Fallen Idols」のような誰かをディスっているような曲は、今の日本の音楽を聴いている人たちは嫌いなんですよね。

●そうでしょうね。

MAH:だから“どうしようかな?”とちょっと悩んだんですけど。

●でもディスっているというより、愛情があるからこその曲だと思うんですよね。

MAH:ああ〜、そうですよね。例えばフェスとかだとブワーッとバンドがいますけど、全員と仲がいいわけでもないし。

SHOW-HATE:最初に言ってたネガティブとポジティブの話じゃないですけど、誰も好きな人もいれば嫌いな人も居るじゃないですか。その方が人間らしいし、そういう部分も出した方が伝わると思うんですよね。

●それに覚悟がないと歌えないことですよね。

MAH:反面教師でもありますからね。ステージに立ってもてはやされている人たちって、お客さんにとってはヒーローじゃないですか。でもステージを降りたら全然かけ離れているような人もいる。お客さんにも、そういうことを見抜く目を持ってほしいというか。

SHOW-HATE:そうそう。俺らが思ってるからお客さんにもそう思ってほしいんじゃなくて、自分がおかしいと思うことに対してキチンと「おかしい」と言ってることを感じ取ってもらえたらいいなと思うんです。ファンだからといって、バンドに合わせる必要なんて全然ない。でも好き嫌いははっきりした方がいいということを言いたい。

●しかもこういう曲を作ったことで、今後SiMがかっこわるいバンドになったら本当にかっこわるいですもんね(笑)。

MAH:本当にそうですよね。俺らがバンドとしてダサくなったら元も子もないですけど、音楽は置いといて、人としてメンバーの誰かがクソダセえ人間になっちゃったら叩かれても仕方がないです。“その覚悟を決めました”という意味の楽曲かもしれないですね。

●うん。僕はそう受け取りました。SiMって正直なバンドだな。

MAH:自分たちへの戒めです。

●あと、M-6「Teardrops」というバラードチックな曲があるじゃないですか。バラードといえば「Same Sky」(『EViLS』収録)を聴いたときにも“なんていい曲なんだ!”と思ったんですけど、「Teardrops」を聴いたときにもうびっくりして。“Aerosmithか!”と思いました。

一同:アハハハハハ(笑)。

●ジャンルとか関係ない普遍的な良さがある。これ名曲です。

MAH:「Same Sky」とか「Rosso& Dry」(『PANDORA』収録)とか「Rum」(2008年リリースの1stフルアルバム『Silence iz Mine』収録)とか、SiMにバラードはあるんですけど、全部すごくゆったりしていて、聴き入っちゃうような曲ばかりなんですよね。自分たちがバラードを作るとそういう感じになっちゃうというか。

●確かに「Same Sky」をライブでやると、いい意味でも悪い意味でも流れが変わりますよね。

MAH:そうそう。だからいい具合に疾走感があって、いい意味で聴きやすいバラードを作りたくて。「Teardrops」は完全に俺がデモを作り込んできてメンバーに「これでお願いします」って渡したんですけど、雨の中で歌っているイメージがあったんです。フェスとかで雨が降ってきちゃって「ウワーッ」ってなっているところがサビ、みたいな。

●うんうん。

MAH:あとは、海岸線をドライブしながら聴けるようなイメージだったり。この曲は歌詞がメロディと一緒にでてきたんですよね。

●こんなに大きなメロディなのにキャッチーさが随所にあるんですよね。

MAH:ちょうどいい感じのバラードがほしかったんです。「Same Sky」は4分半くらいあって、ライブだとちょっと伸ばすから5分くらいあるんです。だからライブで「Same Sky」をやってきて、“もうちょっと…”と内心思ってて。30分セットでもパッとできるようなものが欲しいっていうリアルな悩みもありつつ、暗すぎず、明るすぎないメッセージ性もいい感じに仕上がったなと思います。

●これは聴き手に対するメッセージソングだと受け取ったんですけど、ライブで映えるでしょうね。

MAH:そうですね。あ、でも、作っている途中で盛り込んだんですけど、実はSHOW-HATEのために歌っているところもあって。

●え?

MAH:2番のAメロのちょっとパンクっぽくなるところ、“I'm thinking of you / when you face the hard times, I wish to be with you…(君のことを考えている/君がつらい思いをしている時に飛んでいけたらって…”というパートなんですけど。

●これはリスナーに対してのメッセージじゃないんですか?

MAH:例えば何か辛いことがあった人が居て、その人がいちばん辛いのはライブに来ているときではないですよね。ライブというより、その人がいちばん辛いのは1人になったとき。部屋で1人で音楽を聴いているようなとき。当然、そこに俺らは一緒に居てあげられないですよね。そういうときに俺らのCDを聴いて力付けられるように、“俺らは一緒に居ないときでも必死に歌い続けているよ”っていうのがこの曲の表向きのメッセージなんです。

●そう受け取りました。

MAH:それはもちろん正解なんですけど、それともう1つ。SHOW-HATEがお父さんになったんです。

●お。

SHOW-HATE:『EViLS』ツアーと『PANDORA』ツアーのとき、俺がいつも子供の写真を見てからライブに行くところをMAHが見ててくれたんです。俺はバレないようにしてたんですけど。

●おお。

SHOW-HATE:その俺を見て、MAHが「Teardrops」の歌詞を書いてくれたんです。俺がこの曲を演奏しているときに、自分の子供のことを想ってちゃんと気持ちを込めることができるように書いてくれて。

●うわあ!

SHOW-HATE:それをメールで送ってきて「うわ!」って。胸がジーンとなりました。

MAH:まだ赤ちゃんだからSiMのCDを聴いてもわからないと思うけど、「君のためにパパは遠くでギターを弾いてるんだよ」っていう(笑)。

SHOW-HATE:だからライブの気持ちの入れ方もすごく変わってきますよね。でもうちの子、SiMの曲を聴いたらめっちゃ暴れ出すんですけど。

一同:アハハハハハ(笑)。

●めっちゃいい話だなぁ。聴きごたえも噛みごたえもある作品になりましたね。

MAH:サウンド的には、俺たちにとって結構実験的な作品なんです。でも歌詞のメッセージ性と、そこからインスパイアされたみんなの演奏が噛み合って、1本筋が通った作品になってよかったなと思います。シングル的な作品を挟むかどうかはまだわかんないですけど、次に出すであろうアルバムはもうちょっとストレートなものにしようかなと思っていて。

●あ、そうなんですね。

MAH:去年色々と精力的に動いて、今年は夏フェスとかでもいちばん大きいステージに出させてもらって。たぶんここで求められてるのは「KiLLiNG ME」(『SEEDS OF HOPE』収録)のような一発ドカンとインパクトのあるようなものを作るべきだったと思うんです。それはわかりきっていたんですけど、敢えて俺たちのタイミングとしてはここでこういうことをやっておきたかった。

●今後の可能性がより広がる作品になりましたね。では最後に、1人ずつツアーに向けた抱負を聞かせてもらえますか。リズム隊の2人は今日まったく発言してないので、これはちゃんとしゃべってもらうための質問です。

MAH:今回のツアーは、今まで「いつかここでできたらいいな」と言っていたような少し大きめのキャパのライブハウスが多いんですよ。だから1つステップアップしたいですね。ゲストバンドもかなり豪華だから、喰われないように気合いを入れて挑もうと思います。

●SINくんはどういうツアーにしたいですか?

SIN:3、2、1、ファイヤー!!

●それ違うバンドのベーシストですよ。

SIN:今回は結構自信がある作品になったんです。だから曲を早く合わせたい。今まではそんなことなかったんですよ。今まではツアー前になると“新曲大変だな…”という感じ。

●ハハハ(笑)。SiMはアンサンブルが難しいから、いつもそう言ってましたよね。

SIN:でも今回は“早くやりたい!”っていう。それくらい違います。

MAH:こないだ「GUNSHOTS」を初めてリハで合わせたんですけど、すげえ楽しかったよね。

3人:めっちゃ楽しかった。

SHOW-HATE:大変だけどね(笑)。

SIN:SHOW-HATEはすげぇ大変だと思う。機材が多いから。

●あ、そうか。

SHOW-HATE:曲の中でキーボードからギターにいったりとか。大変ですね。でも新しいことに色々とチャレンジしたからこそ、飽きさせないようなライブになると思うんですよ。音源を聴いて“この音は誰がどうやって出しているんだろう?”と思ったようなところも、ライブで実際に感じて欲しいですね。そういうおもしろさも観てほしい。

●大変かもしれないけど楽しみですね。

SHOW-HATE:そういえばGODRiも大変だよね?

GODRi:うん。僕も相当大変です。

MAH:今作は電子パッドが多いんです。

●叩く場所が増えると。

SHOW-HATE:曲を作るとき、演奏できるかどうかは別にして好き勝手に音を入れちゃいますからね(笑)。

MAH:パッドは9面あるよね?

GODRi:バッドは9面だけど、ペダルとかでも音を変えることができるから、全部で54個叩くところがあるということか。それをライブで全部太鼓にしたら…。

SHOW-HATE:GODRi見えなくなるよね。

●アハハハハハハ(笑)。

GODRi:僕、見えたいです。

Interview:Takeshi.Yamanaka

imageSiM_ArtistPhoto_2014Summer_Closer

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj