音楽メディア・フリーマガジン

THE SPOONIE

魂を揺さぶる歌とメロディが宿る轟音ギターロック

AP_SPOONIE90年代のUKギターロックを音楽的ルーツに持ちつつ、日本人の琴線に触れるメロディも併せ持った独自のサウンドを鳴らすバンド、THE SPOONIE。アメリカの伝説的なヴォーカリスト・Jeff Buckleyを彷彿させるVo./G.大内啓介の歌声は、切なく美しいメロディと共に心を震わせる。初音源となる1stミニアルバム『SKIN』を手に、J-ROCKシーンの未開拓ゾーンへと3人が切り込んでいく。

 

 

 

 

 

●2010年に大内くんと大山くんの2人で結成したそうですが、どちらもパートはギターですよね…?

大山:“ゆず”的な、ギターデュオだったわけではないです(笑)。メンバーチェンジが多くて今はベースがサポートなんですけど、正式メンバーは3人ですね。結成から常にいるのが、この2人という感じです。

大内:元々、僕ら2人は幼なじみで。15歳くらいから一緒にバンドをやっていて、その解散後に2人で新たに始めたのがこのバンドなんですよ。

●2人は音楽的な好みや方向性が近い?

大内:この2人がソングライターなんですけど、お互いが作ってくる曲に対してぶつかることはほとんどないですね。好きなものはそんなに違わないから。

大山:結成した時点から「こういう方向性で行こう」という話をしていたのもあって。UK的なサウンドを邦楽のキャッチーさを保った中でどれだけ活かしていけるかという方向で、次第に固まってきた感じですね。

●ルーツになっているのはUKロック?

大内:RadioheadやMuse、Mansunといった90年代のUKギターロックが好きですね。リアルタイムではないので、後追いで掘り下げていって。お互いにCDを貸し合ったりもしていたんです。

大山:そういうものが徐々にお互いの中に根付いていって、このバンドを始める時には共通項としてあったんですよ。だから衝突することもなかったのかな。ギターのフレーズや演奏の雰囲気を伝える時も「あのバンドのあの曲みたいな…」と言えば、「ああ、あれね」という感じですぐにピンとくるんです。探り探りで進む必要もないので、スムーズにいくというか。

●他のメンバーにもそういう感覚を共有して欲しい?

大内:Dr.そのだ(ゆうすけ)は元々、ロック畑の人間じゃないんですよ。モータウン系とかのブラック・ミュージックが好きだったり、松任谷由実さんや山下達郎さんみたいなAORっぽいものやJ-POPが好きなんです。加入した当初はロックバンドのドラムというものがわからなくて、苦労していましたね。それも面白いところではあると思うんですけど。

●2人と違うエッセンスが加わることで、良いスパイスにもなる。あとはやっぱり、大内くんの声がこのバンドのストロングポイントなわけですよね?

大山:前のバンドを解散した時にもう一度この2人でやろうと思ったのは、ヴォーカリストとしての大内啓介が武器になると強く感じたからなんですよ。だから、別の音楽性になっても一緒にやろうということで踏み出せた。その武器は僕らの中で一番強い力だと思っていますけど、バンドとしては歌を聴かせるためだけのアレンジにはしたくなくて。

●歌だけをフィーチャーする形にはしたくない?

大山:それだったらバンドである必要がないから。ギター、ベース、ドラムというバンドアレンジでのサウンドも含めて作品として成り立つものにしなきゃという感覚が常にあって。歌を大事にするということだけで思考停止したらアレンジはすごく簡単なんですけど、そこには陥りたくないので時間がかかってしまいますね。

●サウンドはUKギターロック的な暗さはありながら、陰鬱とはしていないというか。どこか開けたような明るさを感じるのはアレンジの妙なのかなと。

大内:単にそういうダークな感じにするほうが、アレンジは簡単なんですよね。好きなものをやるだけなら簡単だけど、そればかりだとバンドの研究欲もなくなってしまうから。日本人が聴いた時に“カッコ良い”と思えるのはどういうものなのかということも考えながら作品作りができないと、自分たちが望むところには行けないなって思うんですよ。

●単に洋楽志向のものがやりたいわけではない。

大山:サウンド的には洋楽志向が強いんですけど、“洋楽好きのニッチな需要に合わせたマニアックなことがやりたいか?”と言われたらそうではない。UKロックのサウンドを使って、いかに日本の音楽シーンを切り崩していけるかという意識のほうが強いから。やはりオープンな部分というのは保たないといけないし、それはかなり意識していますね。

●ちゃんと日本の音楽シーンで響かせられるものを意識して作っている。

大山:そうですね。特にM-1「Beautiful Life」なんかは楽曲のフォーマットや構成はすごくJ-POPに寄せているし、そういう開けた部分はかならず保つようにしています。間口は広くなるように意識していますね。

大内:そういう意識もありつつ、やっぱり日本の音楽を聴いて育っているわけですからね。意図しなくても自然と日本人としてグッとくるメロディになっていたりもするんですよ。J-POPの良さを取り入れるという見方もできるし、J-POPの枠から抜け出そうという見方もできて、今はちょうどその間くらいなんです。そこからどう広げるかというところが、これからの課題じゃないかな。

●今作を作ったことで見えたものもあるのでは?

大内:今回はたくさんある中から厳選して選んだ曲ばかりで、すごく気持ちのこもった作品になっていて。楽曲自体はもちろん、サウンドやプレイの面でも今できる最大限のものを詰め込んだので、アルバムとしては納得しています。ただ、バンドとしては満足していないんですよ。もっとやれることがあるというのが、レコーディングしている中で徐々に見えてきたから。

●次につながるものが得られた。

大内:バンドの成長に合わせて方向性が定まったような気もするし、広がったような気もしていて。色んなヒントがレコーディングしている中で得られましたね。今回は“さらけ出す”という意味合いで『SKIN』というタイトルにしたんです。“まずはさらけ出したよ。ここからどうなって行くかを見ていてね”という意味も含めて、スタートの1枚としては良いタイトルかなと思っています。

大山:やりたいことはまだまだたくさんあるので、これからもっと広がっていきたいですね。

Interview:IMAI

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