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Menoz

日常世界を忘れさせる色鮮やかなファンタジア。その扉はもう目の前に開かれている

PH_MENOZファンタジックな世界観の中にノスタルジーも感じさせるメロディ、緻密に構築されつつダイナミズムに満ち溢れたサウンドを奏でる男女5人組バンド、Menoz(メノズ)。2011年の結成から東京・大阪を中心に精力的なライブ活動を続けてきた彼らが、初の全国流通盤となる1stミニアルバム『時空パビリオン』をリリースする。映画音楽からプログレやポストロック、アニソンに至るまで様々なジャンルを独自に昇華した楽曲の数々は、透明感のある女性ヴォーカルと共に耳を捉えて離さない。色鮮やかでポップ極まりないMenozワールドの扉が、今ここで開かれる。

 

 

「“ここじゃないどこか”に自分が行きたいという願望が無意識の中にあるんだと思います。音で、違う世界を見たいというか」

●アーティスト写真からは個性的なメンバーが集まっている感じがするんですが、それぞれの嗜好も違っていたりする?

ひかる:全然違いますね。興味があるものとかも全然違うんですよ。

●元々どういう経緯で出会ったんですか?

てつ:元々は大学で知り合ったメンバーで前身バンドを結成したんですけど、上京してから1年くらいで解散しちゃって。ベース以外は前身バンドの時からのメンバーですね。

ひかる:ドラムだけは同じ大学じゃなくて、ライブハウスで知り合いました。

●前身バンドの頃から今につながる音楽性はあった?

ひかる:ありました。前身バンドの頃から今まで作詞・作曲は全部、てつがやっているんですよ。だから前身バンド時代の曲も、今でもやっているものがあって。前はウッドベースだったのでサウンド的には若干変わっているんですけど、その頃よりポップになった感じですね。

●今作『時空パビリオン』が初の全国流通作品となりますが、この7曲以外にもたくさんある中から選んだ感じでしょうか?

ひかる:他にもあるんですけど、曲数はまだまだ少ないんです。てつが曲を書いてきても、アレンジで難航しちゃうことが多いんですよ。

●アレンジはかなり凝っている感じがしますが、音楽的なルーツとは?

てつ:僕のルーツになっているのは元々、90年代のエモやポストロックなんです。あとイエスとかも大好きなので、アレンジする時に細かくなっちゃう癖があるんですよね。

●ポストロックやプログレのような構築感はサウンドの特徴になっていますよね。音楽的な軸という意味では、ひかるさんの歌も大きいと思うんですが。

てつ:今の彼女が確立してきているものは、僕が学生時代から「こうなると良いな」とイメージしていたものに近いんですよ。若い時は色んな可能性に手を出したがるものなので定まらなかったんですけど、最近はひかるしか持っていないものを磨き上げていっているなと思います。

●そうなったのはここ最近のこと?

てつ:レーベルのスタッフだったり、客観視してくれる人たちと関わるようになってからなので、本当に最近ですね。以前はレコーディングのディレクションも全て僕がやっていたんですけど、やっぱり身内だから難しいんですよ。今はそういう人たちの意見がもらえることで、僕自身も「もっとこうしなきゃ」というところがわかりやすく考えられるようになってきました。

●ひかるさん自身も、歌を確立してきているという感覚があるんでしょうか?

ひかる:やっと“喋るように歌える”ようになったというか。逆に、喋る時は“歌うように喋る”っていう感覚がわかるようになってきて。ちゃんと自分に近い声で歌えるようになってきたのかな。あと、ブレなくなりました。

●前はブレていた?

ひかる:色んなことに対して、ブレブレでした(笑)。幅を広げるために始めた別プロジェクトとかでメンバー以外の人と一緒にやるようになって、気が楽になったというか。以前はわりと凝り固まった感じでやっていたけど、自由にやっても良いんだなと思えるようになったんです。それまでは、てつが思い描いている感じにしなきゃいけないと勝手に思い込んでいたんですよ。

●てつさんの中にも明確なビジョンがある?

てつ:若い時は「絶対にこうじゃないとダメ!」みたいな感じでした。今はもう「Let It Be」系ですね(笑)。

●「なるようになるさ」と(笑)。

てつ:やっぱり人はそれぞれ違うものだから。最近は手伝いとかでバンド以外の場所でも弾かせてもらうことが増えてきて、やっぱりそういうほうが良いなとわかってきたんですよね。

●自分のイメージだけで固めすぎないというか。

ひかる:僕も弾き語りを始めたのが大きいかもしれない。1人でやってみて、色々とわかったことがあって。メンバーが「今までこんなに大変なことをやってくれていたんだ」というのも知ったし、「自分もMenozを引っ張っていかないと」って思いました。でも曲を作っているわけではないので、フロントマンとしてライブでもっと引っ張っていこうという感じで。昔は落ち込んでいる時は、ライブでもバンバンそれを出していたんです(笑)。その時の気持ちでやるというのが良いと思っていたんですよ。

●その時の感情がライブにも出ていた。

ひかる:昔はよくライブで泣いていましたね。

てつ:そういう時って、他のメンバーも「よっしゃ、やったる!」みたいな顔をしているんですよ(笑)。

●逆境から巻き返そうとする感じ?

ひかる:泣いて落ち込んでいるところから、それをプラスにまで持って行こうっていう感じですね。でもそういうのって、「見ている方もしんどいわっ!」っていう(笑)。

●そういうところから今は脱した?

てつ:ライブハウスという環境だと、そういうライブをしても不思議とお客さんやスタッフが「すごく良かった!」と言ってくれたりするんですよ。でもお金を取って見せる価値があるのかと考えたら、それは違うなということにここ1年で気付きましたね。

ひかる:今はMenozを観に来たら、ちゃんといつもの“Menoz”が観れるっていうものにしたいんです。

●バンドとしても成長を遂げたと。今作はいつ頃にレコーディングしたものなんですか?

てつ:録った時期はバラバラなんですよ。今年に入ってから録ったものもあれば、1年前に録ったものも入っています。

ひかる:M-3「アドベンチア」とM-5「僕らのナツ。」とM-6「こどものかくれが」とM-7「未来少年」は1年前に録りました。

●そんなに前から録っていたんですね。

てつ:いつリリースするかは決まっていなかったんですけど、いつでも出せるように録っておこうと。でも1年前とは志向がガラッと変わっちゃったので、一番新しく作ったM-1「YO RO Z」は、明らかに他とは音が違いますからね。これからは「YO RO Z」みたいな曲がどんどんできてくると思うんですけど、そういう意味も込めてタイトルに“時空”という言葉を入れたんですよ。

●時空を飛び越えて、色んな時期の曲が入っていると。「YO RO Z」は子どもの声みたいなのが入っていたり、色んな音が入っていますよね。

てつ:“狐と狸の神隠し”の部分ですね。あれは、ひかるが入れたいと言ったんです。

ひかる:京都の手毬唄が入っています。最初は「かごめかごめ」が浮かんだんですけど、それだとありきたりだなと。弾き語りのライブの時に手毬唄で毬をついてから歌ったことがあったんですよ。その時にこれを「YO RO Z」でも使ったら良さそうだなと思って。

●この曲やM-4「ファンタジア」が顕著ですが、幻想的な世界観が歌詞の特徴かなと。

てつ:そういうところはありますね。自分の中で「ここじゃないどこかがある」という感覚がすごく衝撃的だったんですよ。子どもの頃に乗馬を習っていたんですけど、普段の小学校に通っている時と乗馬をやっている時とでは全然違う世界にいたんです。乗馬では周りがみんな大人たちだから。

●そこで全く違う世界の存在を認識した。

てつ:そういうギャップの中で育ったので、普通に小学校にだけ通っている子たちが知らない世界を自分は持っているという感覚が強くて。乗馬をやめて音楽だけになった時に、その感覚をそこ(音楽)で補完しようとしたんじゃないかな。だから日常を描くような音楽には全く興味がなくて、「ここじゃないどこか」に自分が行きたいという願望が無意識の中にあるんだと思います。音で、違う世界を見たいというか。

●「ここじゃないどこか」への憧憬が世界観を形作っている?

てつ:そういうのは作品全体に出ていると思います。「ファンタジア」は特にファンタジーを前面に押し出しているんですけど、他の曲にもそういうところはありますね。「ここではないどこか」があるんだという確信みたいなものが自分にはあって。普段の自分が生きている世界とは違う場所があるというのは常に意識しています。

●「YO RO Z」の歌詞も、目には見えないものの存在を信じている感じがします。

てつ:信じていますね。

●ひかるさんも信じている?

ひかる:私も信じています。でもそういうことを言葉にするとケンカになるので、心の中で「わかっているな」と思っていて。感覚では会話できるけど、言葉ではあまり会話できないんです。言い方で(意味合いが)変わっちゃうので、あまり喋らないほうが仲良くいられますね(笑)。

●ハハハ(笑)。歌う前に歌詞のイメージを訊いたりはしない?

ひかる:どういう景色をイメージしているのか訊いたりはします。歌う時はそういうものも踏まえつつ、自分でもイメージする感じですね。最近は自分が歌うからには自分の曲だと思っているので、どうしてもイメージが思い浮かばなかったら……ボツ!

一同:ハハハ(笑)。

●気持ちを重ねられないようなものは歌えない。

ひかる:昔はそれでも「重ねなきゃ…!」という感じだったんですけど、今はそんなことはないですね。逆に自分には書けない歌詞なので、やり甲斐はあるというか。自分の中にはないものなので、それを歌うことで自分ではないものになれる感覚があって面白いです。女優さんが色んな役を演じるような感覚に近いのかもしれない。

●シングル曲でもあるM-2「遥・i m a」は、今作でもとりわけ独特な歌詞ですが。

ひかる:今までにやってきた曲とは全然違いますね。よりポップな方向に行った曲です。

てつ:自分の中では挑戦的な曲でした。全部を濃い口で作りたがる傾向があったので、メンバーやスタッフから「もう少しサラッと聴けるものを」と言われて。そういうところを初めて意識して作った曲ですね。そのぶん薄味に見えてしまうんじゃないかという懸念がありましたけど、内容が薄いわけではなくてメタファーはたくさん入っているんですよ。でも別にそれは伝わらなくて良いんじゃないかと割りきって作ってみました。

●歌詞カードで見ると、“いーーーまーーーー”だったり記号っぽい感じが面白いなと。

ひかる:語尾の“〜だ(DA)”だけローマ字だったり、△や◯みたいな記号が入っていたりするのが言葉遊び的な感じで面白いなと思いますね。色んな意味で捉えて欲しいのかなと思ったので、じゃあ僕も自分なりの意味で捉えて歌っても良いのかなと。

●てつさんから、どういうふうに歌って欲しいかは伝えていない?

てつ:最近はほとんど言わないですね。言うとしても2行くらいです。昔は20行くらい言っていたから(笑)。

●歌い方が今はもう確立されているから、言う必要がなくなった?

ひかる:「Menozっぽい歌い方ってこれだな」みたいな感じはありますね。

てつ:次の作品ではもう1種類くらい開発したほうが良いなと思っていて。今のひかるとは違う、幅を見せられるような極端なキャラクターというか。そういうものも出せるようになれば、その間に位置するような曲もすごく増えると思うんです。でも現状では、ひかるにしか出せないキラキラ感みたいなものはもう少し追求して欲しいなって。

●キラキラした雰囲気は今作全体からも感じます。

ひかる:宝箱みたいな感じですよね。今までやってきたことを詰め込みつつ、新しいMenozも垣間見える作品になったと思います。特に「YO RO Z」は他の曲と全然違うので、「Menozは今後どうなっていくんだろう…?」っていう感じがすごくするアルバムというか。

●自分たちでも今後にワクワクしている?

ひかる:ワクワクしますね。“To be continued…”みたいな感じで、続きが気になるものができたと思います!

Interview:IMAI

 
 
 
 

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