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nano.RIPE

このコトバとメロディが心の奥深くに隠された大切な宝物の輝きを呼び覚ます

PH_nano_mainメジャーデビュー5周年を記念した47都道府県ツアーを現在も敢行中と、精力的な活動を続けているnano.RIPE。今年4月に4thフルアルバム『七色眼鏡のヒミツ』を発表したばかりの彼らが、早くもニューシングル『こだまことだま』を7/22にリリースする。2015年第1弾シングルとなる今作の表題曲は、TVアニメ『のんのんびより りぴーと』オープニング主題歌に決定。シングル『なないろびより』でオープニング主題歌を担当した『のんのんびより』の続編となる今回の第2期でも、引き続きテーマソングを担当することとなった。穏やかで何気ないけれど、笑えて、ほろっとして、心があたたかくなる田舎の生活を描いたアニメの世界観に寄り添った楽曲は、ゆるやかでやさしい響きを耳に残す。誰もが心の奥底に秘めた大切な宝物のような輝きを放つ名曲に、ぜひとも触れてみて欲しい。

 

●現在はメジャーデビュー5周年企画第2弾ワンマンツアー中なわけですが、47都道府県をまわるツアーは初めてなんですよね?

きみコ:過去最多としては63本のツアーというのがあったんですけど、全都道府県をまわるのは初めてです。47都道府県ツアーをまわっている意味があるなと思ったのが、「1本観に来てすごく良かったから、隣の県にも行っちゃおう!」みたいな感じで来てくれる人もいるところで。

●各地域ごとにまとめてまわっていることで、2日連続で観たりもできる。

きみコ:思っていた以上に、各地でみんなが会いに来てくれているんですよね。初めて行く土地でもこんなに温かく迎えてくれるんだということだったり、お客さんからもらうパワーがたくさんあります。

●ブログには「このツアーでぼくらは変わった」と書かれていましたが。

きみコ:今回はワンマンツアーということで、ぼくらに会いに来てくれる人しかいない空間で。毎回セットリストも変えてみたり、アルバム(『七色眼鏡のヒミツ』)と同じように同期の音をライブでも取り入れてみたりして、色んなところで変化しているところがあって。自分たちでも1本ずつ変わっているなと実感しています。集中してライブをやっているからこそ、変化がわかりやすく見えるのかな。

●各会場でセットリストも違うんですね。

きみコ:全部違います。お客さんからのリクエストをTwitterで募っているので、それをなるべく組み込むようにはしていて。

●基本的には4月にリリースしたアルバム『七色眼鏡のヒミツ』からの曲をやっている?

きみコ:そうですね。でも最近はだんだん、アルバムからの曲が減ってきています(笑)。“アルバムの曲は必ずやるだろう”という前提があるからか、お客さんからのリクエストでもそこには入っていない曲が多くて。今回のM-1「こだまことだま」も既にやっているんですけど、アルバムの曲以外にも昔からの曲や代表曲を交ぜながらやっていますね。だからアルバムのリリースツアーというよりも、本当に5周年で今までのnano.RIPEの集大成みたいなものを47都道府県でやっているという感覚が強いです。

●これだけツアーをまわっている中で、しかも前作からわずか3ヶ月でのニューシングルリリースとなるわけですが、いつ頃に制作していたんですか?

きみコ:ツアーの合間で、4月末くらいでしたね。5月からまた地方に出て東京をしばらく離れちゃうので、そこまでに録らなきゃいけなくて。

●タイトなスケジュールだったと。「こだまことだま」はアニメ『のんのんびより りぴーと』のオープニング主題歌となっているわけですが。

きみコ:『のんのんびより』の第2期が放送されるという噂は聞いていたので、また自分たちが主題歌をやりたいなとは思っていたんです。

●自分たちとしてもまたやりたいと思っていた。

きみコ:『のんのんびより』という作品とnano.RIPEは、すごくハマっているなと思っていたから。(前回のオープニング主題歌で12thシングルの)『なないろびより』は、『のんのんびより』のおかげですごくたくさんの人に届いて。あの曲はnano.RIPEのシングルの中では特殊というか、「ハナノイロ」や「面影ワープ」ほど派手な曲でもないのに、あそこまでたくさんの人に愛されたというのが自分たちとしてもすごく嬉しかったんですよ。

●『のんのんびより』の世界観にハマるからこそ、シングルとしてフィーチャーできた曲というか。

きみコ:アルバムの中の曲としてはありえるけど、「シングルじゃないよね」と言われるような曲がちゃんとシングルとして出せた。nano.RIPEの持ち味の1つではありつつも、「ハナノイロ」や「面影ワープ」みたいな曲の陰に埋もれてしまっていたような曲を“これもnano.RIPEっぽいんだ”ということで世間にお見せできるのは、『のんのんびより』との出会いのおかげかなと思います。

●今回の「こだまことだま」は、曲調的に「なないろびより」の路線を意識したんでしょうか?

きみコ:そのあたりはアニメの監督さんとお話をして。アニメではだいたい2期目とかになると前回とは違うことをやってみたりするパターンが多いらしいんですけど、今回の『のんのんびより』に関しては“りぴーと”と言っているくらいなので同じことをすると。アニメも“帰ってきた『のんのんびより』”という感じで作るから、アーティストにこんなことを頼むのは申し訳ないけれど(楽曲でも前回と)同じことをして下さいというオファーを頂いたんです。だから、曲調や歌詞も「なないろびより」とつながるようなものをあえて作ろうとしました。

●とは言え、バンド以外の音も取り入れたりしていたりと、アレンジ面では挑戦的な面も見えますが。

きみコ:そこはアルバムを出したことで打ち破った壁なので、もう臆することなくアレンジャーさんを入れて。曲のイメージを広げるという意味での挑戦はしました。

●ギター以外の弦楽器も入っていますよね?

きみコ:バンジョーが入っています。だから、ミュージックビデオでも(G.ササキ)ジュンがバンジョーを持っていたりして。

●そういう音が入っているせいか、カントリーっぽい匂いもします。

きみコ:そうですね。それがアーティスト写真やミュージックビデオの雰囲気にもつながっていたりして。

●アーティスト写真も、旅の楽隊のようなイメージがありますよね。

きみコ:「“旅のバンド”みたいなイメージで今回は撮ろう」と言って、こういう感じになりました。ちょうどツアー中なので旅をしている感じも出るし、作品と寄り添っている感じもあって、色んなことが上手く当てはまったなと思います。

●歌詞の内容としても、アニメの世界観に寄り添うものになっているんでしょうか?

きみコ:そうですね。『のんのんびより』の一期の終わりに、1本の木の前で「また来年もお花見できたらいいね」と言っているようなシーンがあって、それが印象的だったんです。だから歌詞の最初に“あの木”が出てきて、“約束を果たそう”という内容になっています。

●「こだまことだま」というタイトルはどこから?

きみコ:この曲は珍しくタイトルから書いたんです。“桜の木”と“約束”というのが、あたしの中でキーワードとしてあって。“木”から“こだま(木霊)”というのが浮かんで、そこから広げていきました。“ことだま(言霊)”というのは約束的な意味もあるので、言葉遊び的な感じで2つをつなげて「こだまことだま」と。「なないろびより」の続きでもあるので、タイトルはひらがなにしたかったんですよ。そこで「こだまことだま」というタイトルを決めてから、歌詞と曲を書き始めましたね。

●“コトバに宿るよ”という歌詞も、“ことだま(言霊)”とつながっているわけですね。

きみコ:そうなんです。“こだま”というのも、やまびこのほうの意味もあるし、“木の霊”という意味もあって。

●二重の意味があると。あと、この曲の歌詞には「代表曲と言っても過言ではないあの曲の欠片もあったり」とブログに書かれていましたが。

きみコ:そうなんですよ。“夜と朝の隙のヒミツがヒトツ 箱から飛び出してコトバに宿るよ”という歌詞があるんですけど、「面影ワープ」にも“きみがぼくに隠していた夜と朝のあいだのヒミツは 鍵のない箱の中しまい込んだきり 今も眠りに就いたままだ”という歌詞があって。

●「面影ワープ」のことだったんですね。

きみコ:「面影ワープ」の主人公も小学生くらいの男の子と女の子をイメージして書いているので、年齢的にもイメージが合っているんですよね。その“夜と朝のあいだのヒミツ”が今回の「こだまことだま」で明かされる…というわけじゃないですけど、そういうキーワードを散りばめていたりして。せっかく5周年なので、今までの曲の欠片をちょっと入れてみたりするのも面白いかなと思ったんです。

●カップリング曲に関しては、アニメと直接的にはつながってはいない?

きみコ:今回も例のごとくメンバー内コンペという感じでササキジュンと2人でそれぞれに候補曲を出したんですけど、それがM-2「みずたまり」と「こだまことだま」だったんです。だから「みずたまり」も『のんのんびより』のイメージで、どっちが選ばれてもハマるように歌詞は書いていて。

●結果的にきみコさん作曲の「こだまことだま」が選ばれたけれども、「みずたまり」も『のんのんびより』をイメージしていた。

きみコ:(きみコ作曲の)「なないろびより」とつながっているという点では、あたしのほうが最初から有利だったんですよね(笑)。でも「みずたまり」も『のんのんびより』のイメージで歌詞は書いているので、こっちもアニメとはつながっています。M-3「日付変更線」だけは、アニメとは全く別のものですね。

●「みずたまり」は『のんのんびより』をイメージして書いたものだから、ある意味で今作は両A面シングル的なものにもなっているというか。

きみコ:『なないろびより』の時もそうだったんですよね。同じように「なないろびより」と「きせつの町」という2曲を候補に出して、その時はもあたしの曲が選ばれて。でも「きせつの町」も『のんのんびより』のために書いた曲だから、同じ作品に入れてしまおうということになったんです。あの時も両A面シングル的な感じでみんなが捉えていてくれたので、今回もそうなっていくんじゃないかなと思います。

●「みずたまり」の歌詞はどういうイメージから?

きみコ:候補として2曲提出する時に両方とも同じテーマで書いてしまうと、選ばれなかったほうがボツになるか歌詞を書き換えないといけなくなるじゃないですか。だからテーマは変えようと思って、『のんのんびより』をイメージしつつも視点を変えて書いてみたんです。「みずたまり」は『のんのんびより』という作品を愛している人たちの目線で書いていて。“もうすぐそうだ ね?”という歌詞も、『のんのんびより』を心待ちにしている人たちの気持ちを描いているようなイメージで書いたんですよ。

●ファンにとっては待望の続編なんですよね。

きみコ:『のんのんびより』は本当にすごくたくさんの人たちに愛されている作品なので、みんなもう“待ちに待った”という感じだと思います。

●それにふさわしい曲にしなくてはいけないというプレッシャーもあったのでは?

きみコ:そのプレッシャーはありましたね。「なないろびより」をすごく愛してもらえたということもあって。「なないろびより」のほうが良かったと言われないように、そこは自分がライバルだと思って書きました。

●過去の自分がライバルだと。「みずたまり」は「こだまことだま」のように色んな音が入っていたりはしないですよね。

きみコ:こっちは今までどおり、nano.RIPEの4人だけの音ですね。そこでの差別化を図りたかったというのもあって。だから「こだまことだま」は思い切ってアレンジャーさんにお願いして、逆に「みずたまり」は4人だけで作りました。

●もう1曲のカップリングの「日付変更線」もすごく良い曲だなと思ったんですが。

きみコ:めちゃくちゃ良い曲なんですよ。この曲は、実はアルバムから漏れちゃった曲で。

●『七色眼鏡のヒミツ』の候補曲だったんですね。

きみコ:アルバムに入れるつもりで録音までしていたんですけど、最終的に入らなかったんです。そういうのもあってこのタイミングで入れたんですけど、ちょっと心配なところはあって。

●心配というのは?

きみコ:「こだまことだま」と「みずたまり」は曲調的にも『のんのんびより』に合っているものなんですけど、そことは全く違う曲調のものが同じ作品に入るのはどうなのかと思ったんです。でもこれはこれで今のnano.RIPEだからできることだし、メンバーもみんなこの曲が大好きなので、思い切って入れちゃおうということになりました。

●ジュンくんの作る曲は、こういう切ない感じのメロディが特徴な気がします。

きみコ:暗いんですよね。あたしのほうが根は暗いはずなんですけど、曲はジュンのほうが暗いんです。そこにあたしがまた暗い歌詞を乗せるので、どんどん暗くなっていく(笑)。

●ハハハ(笑)。この曲の歌詞はどんなイメージで?

きみコ:“境界線”ということについて、ずっと考えていた時期があって。日付変更線って本来は地図上にある線のことなんですけど、夜の12時をそう呼んだりもするじゃないですか。でも(暦の上では)12時を過ぎて日付が変わったとしても、自分が起きていたら(その時点のことを)「今日」と言っちゃうわけで。12時になった瞬間に“昨日”と言ったりはしない。“夜と朝の境目って、どこなんだろう? 眠ったらなのかな?”とか、そういうことを色々と考えていた時期に書いた曲ですね。

●そういうところから浮かんだ歌詞だったと。結果的に「日付変更線」が入ったことで、1枚のシングルとしても良い作品になったのでは?

きみコ:『のんのんびより』というアニメでnano.RIPEを初めて知ってくれた人や、『なないろびより』と『こだまことだま』しか持っていないという人には、「日付変更線」を聴いてもらって“こういう一面もある”というのを知ってもらえるかなと思うんですよ。ここから「他にはどんな曲があるんだろう?」っていう感じで、興味を持ってくれたら嬉しいなって思います。

●アニメをキッカケに知ったという人も多い中で、ちゃんとそういう人たちをライブハウスという場所にも連れて来られているのがnano.RIPEのすごさだと思います。

きみコ:特に今回の47都道府県ツアーをやってみて、それができているなと感じています。「初めてライブハウスに来ました」という若い子もいたりするんですよね。

●9/26には赤坂BLITZでのワンマンもありますが、そのイベント名を“しあわせのくつ”にした由来とは?

きみコ:“しあわせのくつ”は『ドラゴンクエスト』のアイテムからですね。

●フィールド上を一歩進むごとに経験値が貯まっていくというアイテムですよね。

きみコ:それがツアーバンドっぽいなと思って。

●確かに(笑)。BLITZでやるのは2回目?

きみコ:そうですね。(Dr.青山)友樹が入ってからは初めてになります。友樹が初めてnano.RIPEを観たのが1回目のBLITZ(2012/12/26)らしいんですよ。

●そんなエピソードが…。このライブも47都道府県ツアーの一貫なんでしょうか?

きみコ:いや、そことは別物として考えています。47都道府県ツアーはリリースツアーという位置づけなので、基本的にはアルバムの曲を中心にやっているんですよ。でもBLITZでは5年間の集大成という意味も込めて、自分たちの曲以外にも他アーティストに楽曲提供したものをセルフカバーしたりだとか、特別感を出そうと思っていて。47都道府県ツアーとは全く別の見せ方をしたいなということで、今まさに企画中ですね。

●BLITZでのライブは47都道府県ツアーとはまた違う、特別なものになると。

きみコ:小さいライブハウスもすごく好きなんですけど、「nano.RIPEは大きな会場が似合う」ともよく言ってもらえるんですよ。だからBLITZでは、そういうところでの特別な“nano.RIPE”というものを見せられたらなと思っています。

Interview:IMAI

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