音楽メディア・フリーマガジン

Kidori Kidori

そこでしか見られない光景と出会うために。Kidori Kidoriと共に歩む愉快なる道のり

2015/6/28@代官山UNIT
“Kidori Kidoriと雨やどりワンマンツアー”

Live_01 “Kidori Kidoriと雨やどりワンマンツアー”と題して、東名阪の3箇所をまわる最終公演が代官山UNITにて開催された。様々な困難に直面しながらも独自性の強い音楽的な芯はブレさせることなく、着実に支持を広げてきた彼らにとって最大規模の会場でのワンマンとなる。たくさんの観衆で埋め尽くされたフロアにSEとして「Tristeza」が流れる中で、メンバーがステージに登場すると歓声が沸き起こる。まずは6/3にリリースされたばかりのニューアルバム『! [雨だれ]』から、オープニングナンバーの「ホームパーティ」を披露。代官山UNITを舞台に開いた自分たちのホームパーティに集まってくれた観客たちを盛大に迎え入れた。

続けて「浮世ヴェイナー」「Everytime I See You」と連発した後に、Vo./G.マッシュが「みなさん、声出せますか?」とオーディエンスの掛け声を求めて、「Say Hello!!(I'm not a slave)」へと突入。攻め攻めのセットリストに、フロアものっけからの大盛り上がりで応える。MCを挟んで、持ち味であるホラー色が全面に出た「Zombie Shooting」。その後も「2010」「HHH」と、これまでに発表した作品から満遍なく名曲たちが叩き込まれていく。毎曲のようにイントロで手拍子を打ち、手を振り上げてノリまくる観客たちを見て、Kidori Kidoriのあらゆる楽曲がファンの間に根付いていることを実感した。

「Mass Murder」ではサポートメンバーのBa./Cho.汐碇真也(ex. BAND A)のベースが太くうねり、Dr./Cho.川元直樹の叩き出すビートとの間に新たなリズム隊の可能性を感じさせた。MCでは汐碇の紹介をしたかと思えば、なぜか演奏中に川元のモヒカンにドラムのスティックが引っかかったというアクシデントが明かされ、会場内は大爆笑。さらにマッシュのギターによる即興のBGMに合わせて、川元がモヒカンにした理由を語るという、くだらなすぎるやりとりもワンマンならではか(笑)。しかし、ユルすぎるMCタイムからの「なんだかもう」という流れは見事にハマっていた。3拍子で4つ打ちという独特のグルーヴを持つ楽曲に、気持ち良さそうに身体を揺らすオーディエンスの姿はKidori Kidoriが信念を持ってやってきたことが間違っていないことの証明と言えるだろう。

普段のライブではあまりやらない「5/10」が聴けたのも、特別な日だからこそか。深い海に飲み込まれて耽溺するような「This Ocean Is Killing Me」から、新作のタイトル曲「!」へと梅雨らしいウェットな質感の曲が続く。個人的な話だが、その後に演奏した「住めば都」がライブ後の数日間ずっと頭の中で鳴っていたように、本当にどの楽曲もじわじわと蝕む中毒性がたまらない。終盤戦も「Watch Out!!!」「NUKE?」「Come Together」とキラーチューンで畳み掛けた後、ラストは「心の歌を心を込めて」というマッシュの言葉からの「コラソン」で観る者の心を撃ち抜いて本編を終えた。

アンコールでは「I Laid Down」を披露した後に、またまたユル〜いMCタイム(笑)。「みなさん、何が飲みたいですか?」と観客に呼びかけ、様々な酒の名前をメロディに当てはめて試すが、もちろん答えは「テキーラ!」。屈指のパーティーソングと化した「テキーラと熱帯夜」で、愉快なホームパーティをお開きとした。この日のライブを観終えて思ったが、本当にKidori Kidoriは今のシーンに比するもののない稀有なバンドだ。“誰にも似ていない”ということは舗装されていない道を歩くような困難も伴うが、そこでしか見られない光景との出会いは何ものにも代えがたい。そんな素敵な光景に出会うための道のりを愉快な彼らと共に歩んでいけるなんて、何とも楽しそうじゃないか。

TEXT:IMAI
PHOTO:Tetsuya Yamakawa

Live_02

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