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“OTODAMA’15〜音泉魂〜”

11年目の新たな挑戦…音泉魂(オトダマ)を作る清水音泉スタッフに突撃インタビュー

番台  清水 裕 / 男湯  田口 真丈

番台 清水 裕 / 男湯 田口 真丈

個性的な魅力溢れるバンド達が出演することから、イベント自身の根強いファンがいることでも有名な清水音泉主催の野外音楽イベント“OTODAMA〜音泉魂〜”(以下音泉魂)。2daysで開催される本年は、これまでとは違う新しい試みに挑戦しているらしい。本インタビューでは、音泉魂にかける想いや出演者について語ってもらった…はずだったが、取材中5割近くがプロレスの話だった。

 

 

 

Q.「今年の音泉魂のテーマは?」 A.「初日はアントニオ猪木、2日目は長州力・藤波辰巳・天龍源一郎・ジャンボ鶴田、全体を通して橋本真也」

●まずは基本中の基本から教えて頂きたいのですが、音泉魂ってどんなイベントなんでしょうか。

清水:清水音泉と関わりのあるバンドが“この1年間はこんな事をしてきた”という成果を見せられる発表会のような場所を作りたいとの想いからスタートさせたイベントです。

田口:大人が本気で作る“良くできた学園祭”にしたいと思っています。これは番台が音泉魂を立ち上げた時から掲げてきたビジョンなんです。

●“良くできた学園祭”というのは?

清水:プロになりきってしまうと、面白い事ができなかったりするじゃないですか。もちろんプロはプロらしく完璧にしないと駄目なんだけど、僕らみたいな事を生業にしている人間よりも、学生の学園祭の方が面白い発想が出る事って絶対にあると思うんです。アマチュアリズムというか“無茶苦茶してるな”みたいな。そういった“枠に囚われない”面白い事が出来るという意味での学園祭ですね。

●確かに、学生の発想力はプロを超えてくる事があるかも。そういう観点で言うと、過去の音泉魂では場内にプロレスのリングが設置されたり、清水さんの等身大パネルが置いてあった年もありましたね(笑)。

清水:それはこの人(田口)らの仕業で、しかもパネルは僕に内緒で勝手に作ってるんです。ホント大迷惑です。

●そうだったんですか(笑)。でも、イベンターの顔が見える大型イベントというのは珍しいですね。それもあってか、お客さんとイベンター、そしてバンドとイベンターの距離感が近いような気がします。音泉魂のお客さんには、イベントはもちろん音泉さんのファンだという方も居ますし、ライブを観ていて“このバンドは清水音泉の事が好きなんだな”っていうのがめちゃめちゃ伝わってくるんですよ。

清水:それが魅力のひとつになればいいですね。僕らが一緒にやる事によってバンドのモチベーションが上がったら良いライブにも繋がりますし、お客さんも嬉しいはずなので、そうありたいとは思っています。

●事実そういう要素があると思います。今回は2daysで開催されるという事ですが、それぞれ出演者のカラーがまったく違いますね。

清水:1日目は僕がブッキングした人たちで、2日目は田口と野原(清水音泉のスタッフ)がブッキングしているんです。

●では、まず初日はどういった理由で決まった人たちなんですか?

清水:元々フィッシュマンズを中心としたキャスティングはずっとやりたかったんですよ。今年やっとタイミングが合って出来る事になったんです。東京スカパラダイスオーケストラはフィッシュマンズのドラムである欣ちゃん(茂木欣一)、Polarisにはベースの譲くん(柏原譲)がいるので呼びたいなと。ハナレグミやクラムボンはフィッシュマンズをリスペクトしてプロになった世代だし、真心ブラザーズはバンドをやる前からボーカルの佐藤くんと知り合いだったりして。SCOOBIE DOはフィッシュマンズのカバーをした事もあるんです。意外なのは、凛として時雨のTKは個人的にフィッシュマンズが大好きなんです。

●そうなんですね! バンドの音楽とはまた違うイメージです。

清水:他にも一組一組いろんな気持ちでお招きしました。フィッシュマンズのライブが終わった後って感傷的になるから、最後(湯あがりアクト)は赤犬で終わったらハッピーに帰ってもらえるんじゃないかなという意図があったり、イベント全体を通して見た時来てくれると面白いなと思って高橋幸宏さんを中心に結成されたMETAFIVEを呼んだり。

●面白いというのは?

清水:僕らみたいな3流プロモーターがレジェンドを呼ぶとか面白いじゃないですか。例えば、果たしてギャラは払えるのか! とか。

●アハハハハ! 学祭にミスチルが来たみたいな(笑)。

清水:そうそう! お客さんに“えっ!”って思ってもらえるんじゃないかと。だからこの企画はまさにアマチュアリズムですよ。

●熟練者揃いの初日に対し、2日目の出演者は若手で固まっていますね。今ノリに乗っているキュウソネコカミが初のヘッドライナーを務めるそうですが。

田口:もともとは2年前に四星球が「オトダマーチ」という曲を作って音泉魂を盛り上げようとしてくれた事が始まりなんです。歌詞の内容は応援というよりも足を引っ張っている印象ですが…。それにインスパイアされたキュウソネコカミが、去年「清水音泉ぶっとばす(仮)」っていう曲を作ってくれて、後に「OS」というタイトルになってリリースされたんですけど、頼んでもないのに全国でその曲を披露して、音泉魂の宣伝をしてくれたんです。「チケット売れてないし音泉魂に来てくれ!」と…マイナスプロモーションやんけ(笑)!因みにこの曲は僕らが知らないうちに勝手に作ってくれてたんですよ。歌詞の確認もなかったし。(笑)

●バンド側が自発的に宣伝してくれたんですね。

田口:いっぱいイベントがある中で、勝手に音泉魂を背負ってくれたのがすごく嬉しくて。四星球やキュウソみたいに“音泉魂を全国に広めたい”と思ってくれるバンドがいたから、2015年はその人たちをど真ん中に置いて戦いたいという想いが強かったんです。その上で、新しい事を始めたい欲があって。

清水:今年はずっと皆勤賞だったフラワーカンパニーズが居ない初めての音泉魂なんです。

●あ、そうか。イベント中に“フラワーカンパニーズ12・19日本武道館”の応援企画がありますけど、本人達が出るわけではないんですね。

田口:これは四星球が演奏して、いろんなバンドのボーカルが入れ替わりでフラカンの曲を歌う企画です。以前、怒髪天の武道館を応援するためにやった“怒髪天1・12日本武道館”と同じ形式ですね。

●それで言うと、前回のように飛び入りで本人達が登場する可能性も?

田口:僕らがプロレスが好きというところにヒントがあるかもしれません(笑)。

清水:乱入者が試合を盛り上げる、というね。それにフラカンは「かき氷を売りに行きたい」と言ってたんで、なんらかの形で会場には居るような気はしますけど(笑)。

●ハハハ(笑)。でも正直に言うと、イメージとして音泉魂らしいメンツというのがあって。その人たちが出ていないと少し寂しいというか、違和感があるというか…。

田口:それについては、亡くなられたプロレスラー・橋本真也が残した名言「破壊なくして創造なし」の精神ですね。当時の新日本プロレスは、アントニオ猪木が掲げた“ストロングスタイル” という在り方が主流だったんですが、橋本真也はその歴史や在り方を一度ブチ壊して、新しい新日本プロレスを作ろうとしたんです。それと同じ想いですね。

清水:バンドもイベントも長年やっていると自分たちのスタイルが確立してしまって、新しい事になかなか挑戦しにくくなるないじゃないですか。固定観念を外して初めて新しい何かを始める事ができる…そういう精神です。プロレスラーって良い事をいっぱい言ってるんですよ。例えば猪木だったら“馬鹿になれ”っていう名言があるんですけど、それもさっき言った学祭の精神に培われていて。人間ってプライドが邪魔をしてなかなか裸になれないけど、それを捨てて馬鹿になった方が素直になれるし、感動できる。

●おぉ〜! なるほど! 正に名言の宝庫ですね。今回はサブタイトルとして、初日が“闘魂編”、2日目が“俺達の時代編”とありますが、これにはどのような想いが込められているんですか?

清水:フィッシュマンズのボーカル・佐藤くんが存命の頃、日比谷野外音楽堂でやった自主企画のイベントタイトルが“闘魂”だったんです。

●イベントタイトルから頂いたと。

清水:そうです。ちなみに佐藤くんも僕もプロレスが大好きで繋がったところでもありますが、猪木イズムではなく、あくまでフィッシュマンズイズムの表れです。

田口:2日目に関してですが、1989年頃のプロレス界は長州力・藤波辰巳・天龍源一郎・ジャンボ鶴田という多団体でありながら同世代の若手4人が頭角を現し、“俺達の時代”をテーマに共に上の世代(ジャイアント馬場やアントニオ猪木)を超えていこうという革命的なムーブメントが起きるんです。それがまさしく2日目のサブタイトルにピッタリじゃないかと思って。フィッシュマンズやスカパラというレジェンドがいて、若手がそれを突き上げたるぞと。サブタイトルはすごく悩んだんですけど、シンプルにプロレス思考で考えたらすぐに出てきましたね。

●プロレス基準なんですか(笑)。

田口:そして両日を通してのコンセプトは、“今までお世話になってきた常連の方たちに頼り過ぎない”。つまり「破壊なくして創造なし」の精神で、新しい事をやってみようという挑戦なんです。

●つまり今年の音泉魂は、「初日はアントニオ猪木、2日目は長州力・藤波辰巳・天龍源一郎・ジャンボ鶴田、全体を通して橋本真也」という事ですね…ってさっきからプロレスの話になってるじゃないですか!

清水:ロックよりもプロレス派です。

田口:プロレスの方程式で音楽を生業にしている感じですね。

●言い切っちゃった…(笑)。

清水:プロレスとロックはいろいろ置き換えれるんですよ。例えばレスラーがテーマ曲に合わせてリングに上がってお客さんに見栄を切るのと、バンドがSEを流して袖から出てきて1曲目を鳴らすのは、ほぼ同じニュアンスなんですよ。

●…確かに、よく似てるかも!

清水:エンターテインメントとして、お客さんにどう見せて、どう満足させるのかという点が一緒ですからね。他にも出演順はマッチメイクの感覚に近いし、タッグマッチで言えば………(長くなったので割愛)という事で、音楽とプロレスは同じなんですよ。

●(同、じ…?)な、なるほど。今回、水曜日のカンパネラさんが“湯の花アクト”として出演されますが、湯の花アクトとは何ですか?

田口:女性がメインという意味で紅一点なので、可愛いかなと思って付けただけです(笑)。カンパネラのコムアイちゃんも清水音泉にシンパシーを感じてくれているみたいなので、何かしら音泉魂ならではの事をやってくれるだろうとは勝手に期待しています。ちなみに湯の花アクトっていうのは僕らが勝手に付けたから、本人も勝手に音泉魂を背負わされているという(笑)。

●キュウソは勝手に曲を作るし音泉さんは勝手に肩書きをつけるし、お互いに知らないところでどんどん話が進んでいる(笑)。何が起こるかわからないですね。

田口:そうですね。キュウソもこれだけヘッドライナーとして推してますけど、演奏時間が5分くらいかもしれないし。22時からラジオの生放送もありますから。

一同:アハハハハ!

●最後に、読者の方に伝えたい事があればどうぞ!

清水:僕はこの仕事を27年ほどやっていますけど、フィッシュマンズのライブは他じゃ体感できない音を出してくる破格のライブだったんです。ボーカルの佐藤くんはもう居ませんが、原田郁子ちゃん(クラムボン)がすごく良い形でやってくれるハズなので、期待してほしいなと思います。今がいちばん良い状態に感じたので、ぜひそこを見て頂きたいです。

田口:今回のイベントロゴはキュウソのセイヤくんに書いてもらったんですけど、「題字:窮鼠猫噛」という字だけマネージャーのはいからさんが書いたらしいんです。それだけは読者のみなさんに知って頂きたい。

●正しくは「題字:窮鼠猫噛(はいから)」だと(笑)。

田口:あと一番訴えたいのは、音泉魂を気に入ってくれた方はぜひ清水音泉のスタッフに応募して下さい!

清水:いやいや、そこは「音泉魂を観てワンマンに行ってください」やろ!(怒)

Interview:森下恭子

 


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