音楽メディア・フリーマガジン

トライアンパサンディ

行きすぎた感情を振り切ったサウンドに乗せ、 迷いも憂鬱も吹き飛ばす“トラパ”ミュージック

PH_Trapa2015圧倒的存在感とカリスマ性を持つVo.G-YUNcoSANDYを中心に、バンドシーンで異彩を放つ5人組バンド、トライアンパサンディ。その独自の世界観と超絶キャッチーな楽曲で話題を呼んだ1stミニアルバム『Reflection"A"』から1年2ヶ月を経て、彼らが待望の新作をリリースする。前作リリース後に自分たちを見つめ直した結果、今回の2ndミニアルバム『パラノイアン“X”』では何にも縛られないジャンルレスな音楽性を解放。奔放な曲展開が予想外の快感を生む楽曲から、全編英語詞でEDMを独自解釈した楽曲まで振り幅をより広げることに成功した。

「私たちはどこのジャンルやシーンにもハマっていないから、“この良さや楽しさを早く見つけたほうが良いよ”と言いたいですね」

●前作『Reflection"A"』のリリース以降、なかなか曲ができなかったとG-YUNさん(G-YUNcoSANDY)がブログに書かれていましたが、今回は難産だった?

G-YUN:曲ができ始めるまでは難産だったんですけど、1つキッカケになるものがポンとできてからはスムーズでしたね。前作を作ってから、「次はどうするか?」というところでの一歩を踏み出すまでが長かったんです。前回もそうだったんですけど、「トラパ(※トライアンパサンディ)らしさって何だろう?」というのをもう一度振り返って考えちゃって…。

●“トラパらしさ”というものがまだ固まっていなかった?

HIDE:固まっていなかった…というか、固まることはないと思う。

G-YUN:「固まることはないな」というのが飲み込めた時に、「じゃあ、こんなのもあるし、こんなのもあるよ」という感じの曲が集まってできたのが今回の『パラノイアン“X”』なんです。

●そこを飲み込めるまでは、“トラパらしさ”について悩んでしまっていた。

G-YUN:悩んじゃいました…。自分には前のバンド(※GOLLBETTY)があるので、たとえばメロディラインや歌詞についても“前の自分らしさ”をあまり出さないようにしていたんです。「今までにない自分って何だろう?」みたいな感じで、どんどん新しいことをしなきゃと思っていて。でも人間なんて引き出しに限界もあるし、そこで行き詰って、表現の仕方というところで最初は迷っていましたね。

●その迷いを吹っ切れたキッカケとは?

G-YUN:そうやって悩んでいた時に、「もっと色んな人と話さなきゃな」と思えるようになったんです。そこからやっと他のバンドの人たちとも話すようになった中で、私が単純に“前の自分”をライバル視しすぎていただけで「それはリスナーには関係ないところだし、逆にそこが良いところなんじゃないの?」と言ってもらえたりして。「前の自分を否定しなくて良いんだ」ということに気付けてから、殻を破れたというのはありますね。

●元々、他のバンドの人たちと喋らなかった?

G-YUN:全然、喋らなかったです(笑)。トラパのメンバーはわりと内向的なんですよ。WANIも内弁慶やし…。

WANI:“対バンド”になると、全然喋れなくなっちゃうんです。同業者ほど喋りにくいっていう…。

●相手がバンドだと遠慮してしまう?

G-YUN:私の場合はGOLLBETTYの時からのコンプレックスもあって、喋れなかったんですよ。どれだけ気持ちを込めて、頭や時間も使って、心を削って私が音楽をやっているとしても、(その当時の)音楽性や雰囲気だけを見られると“イェーイ!!”みたいな(単にポジティブな)感じに受け取られるというか。ファッション誌にも出させてもらったりしていたから、バンドマンからは「ファッション好きな子が音楽をやっているんだろうな」と見られているんだろうなとずっと思っていたんです。

●そういうことを考えすぎて、話せなかった。

G-YUN:その時はもう覚悟していて、「一匹狼で行ってやる!」みたいなナニクソ魂でやれていましたけどね。でもトラパを始めてからは本当に他にはない音楽性で、自分でもすごくカッコ良いと思っているのに、バンドの友だちが少なすぎるなと思って。トラパみたいな音楽って、今はシーンがないと思うんですよ。だから唯一無二で行ける部分もあるけど、交流の場を広げたほうがバンドにとっては単純に良いことだし、もっと知って欲しいなという想いがあって「ちゃんと喋ろう!」と思うようになりました。

●そこから曲作りも進み始めたと。ベースになるトラックは先にできていたりもしたんでしょうか?

HIDE:断片的なものはできていました。前作のツアーが終わったタイミングで既にそこそこ固まっているものは(アレンジャーの)Ryo-Heyも交えて何となく形にしていて、あとはそこにG-YUNがメロディを乗せるという状態だったんです。

G-YUN:オケの段階がまず最初にあって、第2段階でRyo-Heyと一緒に1コーラスをしっかり作って、その後で私がメロディと歌詞を乗せるというのが1つの流れとしてあるんですよ。

●今回もその流れで作っていった?

HIDE:普通はRyo-Heyと一緒にある程度の形にしたところから大胆なアレンジが加わることはあまりないんですけど、今回はそこからが結構変わったんですよね。

G-YUN:大体のトラックができてからも、自分的に何かハマらないところがあって。私自身も悩んでいたこともあって、なかなかそこから進めずにいたんです。でも自分の殻が徐々に破れてきてから、「もう一度崩そう」という話になりました。

●一度形にしたものを崩したわけですね。

G-YUN:たとえばM-1「ノウナイサイセイ」もイントロと間奏の部分は元々、全く別の素材だったんですよ。ハンドクラップを入れるためにBPMが全然違うトラックに入っていた間奏を、「ノウナイサイセイ」のBPMに合わせて突っ込んでみたりもして。そういうパズルみたいな作業を私とHIDEさんでやって、一番最初の元になるトラックを作っていきましたね。

●違うトラックから取り出したパーツをパズルのように組み合わせて作ったりもした。

G-YUN:逆にそういう作り方だけじゃなくて、もっと素直な楽曲があっても良いんじゃないかということで作ったのがM-5「ミドリ」やM-7「たまには誰かと帰ろう」で。「たまには誰かと帰ろう」の原曲は今とは全然違う感じだったんですけど、「もうちょっと素直な曲にしてみない?」という話からみんなでスタジオで合わせて作り直したんです。そういうやり方の幅も広がって、(今作が)できあがっていったという感じですね。

●楽曲の幅も広がった感じがします。

G-YUN:曲作りが面白かったですね。「こんなのができた!」という曲の次にそれとはまた全然違うものができたりして。それも「1曲1曲が良ければ良いんじゃないか」と納得できるというか。前はジャンル感が定まっていないところにコンプレックスや悩みを抱えていたんですけど、逆に今はそこを強みと思えるようになってきているのかな。どんなネタが出てきても、アイデア次第で何とでもなるなと思えるようになりました。

●だからこそM-3「I LOVE YOU.」のようなEDMの曲にも挑めた?

G-YUN:同期を元々取り入れていたからできる部分もあるし、可能性として色んなことができるっていうのを見つけられましたね。実は今はまだ寝かせてある曲で「メチャクチャ良いじゃん!」と思えるものができたので、そこへの1クッションとして「今この曲を出しておいたほうが良いんじゃないか」ということで今作に収録したんです。

●ここから一歩先に進んだような曲もできている?

G-YUN:あります!

WANI:ヤバいッス!

●ハハハ(笑)。今回は歌詞についても振り切っている感じがしました。ネガティブなものもそのまま出ていて、闇を感じさせる部分もあるというか…。

G-YUN:基本的に、私には闇の部分しかないんですけどね(笑)。闇があるのに「こうなりたい!」ということを書くから、結果的にこれまでの歌詞はポジティブな形に落とし込まれていて。そこも色んな人と話して自分と向き合うようになったことで、そのまま書いても良いのかなと思えるようになったんです。M-6「Self」は特にそういう感じなんですけど、全然ハッピーエンドで終わらないっていう(笑)。

●最後が“僕を僕が傷つける 切り刻んでしまえば 少し楽になった気がして”という歌詞ですからね(笑)。

G-YUN:でも実際にそれで楽になる人もいるかもしれないし、ポジティブなだけじゃなくても良いのかなって。(曲作りで)素直な音の持っていき方もできるんだったら、歌詞でも素直な書き方をしても良いのかなと思ったんです。だから「Self」も書けたし、「ミドリ」なんかはメロディラインも含めて「前の私だ!」っていう感じのものなんですよ。

●前の自分らしさも素直に出せている。

G-YUN:それでも表現しているのはトラパだし、トラパの中に混じったら1つの引き出しにもなる楽曲だから良いんじゃないかなと。「これで真っ直ぐ伝わる人もいるんだったら、それで良いんじゃないか」と素直に受け入れられるようになったというのもあって。だから、今回の歌詞は全然悩まなかったですね。

●ネガティブなところも素直に出せるようになったことが大きい。

G-YUN:自分には残酷な部分もあるし、もちろん汚い部分もいっぱいあって、嫉妬にもまみれているから…。

●嫉妬にまみれているんだ(笑)。

G-YUN:「羨ましいな」とか「良いな」と思うから頑張れる部分もあるし、「追いつきたいな」と思う人もいて。でも「追いつけないな〜、クッソ〜!」みたいな気持ちもある。「自分には足りないところがあるな」というのも今は認められるようになったけど、それでも負けたくない。そういうところを上手い具合に出せるようにちょっとはなったかなと思っています。

●ネガティブな感情も、今はちゃんとポジティブな力に変えられている。

G-YUN:『パラノイアン“X”』の“パラノイア”って、“行きすぎた感情”みたいな意味もあるんです。嫉妬とか被害妄想みたいなもののことなんですけど、人間って大体それでできているじゃないですか。ネガティブな気持ちもポジティブな気持ちも人間の持っている感情自体が“パラノイア”だから、今回の収録曲にすごく当てはまるなと思って。

●“X”というのはどこから?

G-YUN:誰でも持っている感情だから、どの曲にもどこかわかる部分があると思うんですよ。“X”は不特定の誰かを指すイメージで、タイトルは“パラノイアは誰にでもある”という意味ですね。“パラノイアンという人種の中の誰か”というイメージで、このタイトルを付けました。

●そういう意味だったんですね。1人で考えすぎてしまうあまり、“行きすぎた感情”を持つことは誰にでもあるというか。

G-YUN:私は昔から考えすぎて“チーン…”となっちゃうんですけど、それも上手く消化できるように少しはなったのかな。汚い部分も含めて「私ですけど」みたいな感じで、受け止められるようになったというか。そこがスッキリしてから、自分のライブもめっちゃ自由になった気がするんですよ。やっぱり「トラパらしさとは何か?」と考えすぎていた時って、「スタイリッシュにしなきゃ」とか「バンドの音に寄せなきゃ」とか考えていたんですけど、それもなくなって。…最近の私、自由じゃない?

WANI:正直…最近、マジで良いと思っています。

●おおっ! それはどういうところで?

WANI:今まで色んな大御所の人たちも見てきたけれど、(G-YUNは)そういう人たちにもない部分を持っていたりもするから。自分ではそれに気付いていなかったり「私はそんなんじゃないし…」とか言うタイプだったんですけど、最近は目に見えて変わってきたなと。他のバンドマンからもそういうことを言われるようになってきたので、周りも気付くくらい変わってきたのかなと。

●自分でもそれを実感している。

G-YUN:ライブ前にすごく緊張したりするのは今も同じなんですけど、(ステージでは)本当に自由になった気がする。カッコつけるわけでもなく、すごく自然にやれているというか。自分が自然にやったら、みんなもこんなに自然な感じで聴いてくれるんだということに気付いたんです。「“構える”ってこういうことだったんだ」というのがわかる気がして。構えないことを今の私はめっちゃ楽しめていると思います。

●10月の東名阪ツアーが楽しみですね。

WANI:良い音源ができて、ライブバンドとしても今すごく仕上がってきているので、その姿をぜひ観に来て欲しいです。

G-YUN:音源も聴いて欲しいんですけど、正直トラパの良さや楽しさはライブのほうが格段に伝わると思うんです。「ライブに来なきゃトラパを知ったとは言えない!」と思えるくらいで。私たちはどこのジャンルやシーンにもハマっていないから、「この良さや楽しさを早く見つけたほうが良いよ」と言いたいですね。それくらいのライブを見せるので、10月のツアーにはぜひ来て下さい!

Interview:IMAI

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj