音楽メディア・フリーマガジン

coldrain

熱い血液を流し込み、魂と感覚を覚醒させる。

coldrain_summer2015ストイックな姿勢で培ってきたタフな経験を手に、国内はもとより海外での活動もより活発化させているcoldrain。今年はオーストラリアの“SOUNDWAVE FESTIVAL 2015”や、主催イベント“BLARE DOWN BARRIERS 2015”の他、フェスなどで大きく強く成長した姿を見せてきた彼らが、バンド初の世界同時リリースとなるフルアルバム『VENA』を完成させた。新進気鋭のプロデューサー・Brandon Paddockを迎えて制作された今作は、彼らの個性とエゴが今まで以上に濃く強く反映されており、5人のリアルな息吹を体感できる。世界に飛び立っていく誇り高き日本のラウドロックバンドの雄姿を記憶に刻め。

 

INTERVIEW #1

「余計なことを考えずにやった結果だから、自分たちは普通にやればいいんだっていう。だから逆に日本でも肩に力を入れずにやれるようになった」

●昨年6月にリリースしたミニアルバム『Until The End』以来のインタビューとなりますが、『Until The End』のリリースツアー以降も、今年4月に主催イベント“BLARE DOWN BARRIERS 2015”があったり、オーストラリアの“SOUNDWAVE FESTIVAL 2015”に出演したりと、相変わらず精力的に動いていますね。海外と国内の活動のバランスは半々くらいになっているんでしょうか?

Masato:そうですね。でも、アメリカに行くのは今年末のツアーが初めてだし、だからまだまだ日本での活動を少し犠牲にしつつやらないと、ライブの予定を綺麗に組めないんです。自分たちの冠ツアーだったらまだしも、人のツアーに乗っかる分、時期を主体的には決められないし。かと言って自力で組んだとしても、アメリカとかは行ったことがないから意味がないだろうし。

●まだまだ開拓しなくちゃいけない場所が世界にはいっぱいあると。

Masato:全然あります。

Y.K.C:南米とかもね。

●ここ1〜2年くらいのcoldrainのライブの印象として、いい意味で、お客さんがどう反応するにせよ全然ブレない感じがすごくあって。

Masato:それは結構、俺たちが楽しんでいるときのライブを観ていると思います。

●お、なるほど。

Masato:それが、俺たちなりのライブの楽しみ方っていうか。焦ってるときは変な方向にいっちゃうんです(笑)。

●空回りになるというか。

Y.K.C:自分たちのニュートラルの位置を海外でライブすることによって気づけたというか。日本でこれだけライブをやってきて、その上で海外に行って。海外では新人同然じゃないですか。それは結構貴重な体験だったと思っていて。

●うんうん。

Y.K.C:実際に海外で、全然俺たちに興味がないにも関わらず次のバンドを観るために最前に来ちゃったような人が「お! ヤバいじゃん!」って盛り上がってくれたりとかして。それは余計なことを考えずにやった結果だから、自分たちは普通にやればいいんだっていう。だから逆に日本でも肩に力を入れずにやれるようになったというか。

●振り返ってみれば、coldrainってライブの変化というか成長の度合いが速い気がするんです。デビュー前から観てますけど、同じことをずっとやっていないというか、常にその時のベストをやっているというか。

Masato:自分たちからしたら、1つ前のツアーとかについて“あんなライブはあり得ない”みたいな違和感はずっとあったんですけど、その違和感はどんどん無くなってきたと思います。

●自分たちが目標としているものが形にできつつあると。

Masato:そうそう。だから“EVOLVE”(2014/1/18に新木場STUDIO COASTで開催したワンマンライブ)くらいから、ちゃんとツアーも組めるようになったなと思えたし、やっとワンマンができるバンドになったという感覚がありますね。

●今年の前半は制作がメインで、オーストラリアがありつつ主催イベントがありつつ、という感じだったんですか?

Y.K.C:そうですね。もう、制作が忙しくて吐きそうでした。

Masato:年末年始だけ少し休んだくらいで、後はずっとアルバムの制作で。

●その吐きそうになったという今作『VENA』はアメリカでのレコーディングで、Brandon Paddockというプロデューサーが付いているじゃないですか。アルバム『Through Clarity』(2012年8月)とアルバム『THE REVELATION』(2013年4月)はDavid Bendethがプロデューサーで、前作『Until The End』(2014年6月)はセルフプロデュースという経緯がありましたが、もともと今回もプロデューサーを付けようと思っていたんですか?

Y.K.C:そうですね。前回がセルフプロデュースだったのも、“1度自分たちでやってみよう”というのと、単純にスケジュールの都合という両方の理由があったんです。やっぱりフルアルバムだから、6人目のメンバーが居る感覚っていうのが欲しいなというのがあって。多分、自分たちだけでもできるんですけど、プロデューサーみたいな人が居ないとドキドキ感みたいなものは少ないだろうなと。例えば第三者がポロッと言った言葉が自分たちにとって大きなきっかけになったりすることがあるんですよね。

●今回のプロデューサー・Brandon Paddockは、なにか繋がりがあったんですか?

Masato:いや、全然です。

●え?

Masato:今回の制作にあたって「誰がいいかな?」と探していて。もともとはJohn Feldmannという人とやりたいと思っていたんです。前からずっとやりたくて、その人はONE OK ROCKのプロデュースもやっていて。

●はい。

Masato:前のDavid Bendethは基本的にエンジニアをやらない人だったんですよ。プロデューサーが居て、エンジニアが居て、っていう。その経験を踏まえた上で今俺たちに必要なのは、プロデューサーもエンジニアも兼ねている人だろうなって。そう思って探していたら、John FeldmannのところでエンジニアをやっていたBrandon Paddockに辿り着いたんです。Brandonはもともとエンジニア出身なんですけど、2枚ほどプロデュースもしていて、俺と同い年の29歳なんですけど、ちょうどいいなと。

●お、めちゃくちゃ若いですね。

Masato:もちろん経験が浅い分、難しいところもあったんです。でもハングリー精神がすごくあって、がんばってくれて。

●制作はどれくらいの期間だったんですか?

Y.K.C:プロデューサーと一緒に仕事をしたのは40日間で、その後Masatoが1週間くらい単独で行って。

Masato:今までの作品と比べて期間が短かった分、録りながら書くみたいな感じで同時並行的に進めたんです。ヴォーカル録りが終わった後にドラム録りやベース録りをやったりとか。色んなやり方で録ることができたからこそ、完成形をイメージしながら納得するまで作ることができたと思います。

●なるほど。

Masato:それにプロデューサーが若いからこそ、ミックスにまでメンバーの意見を反映させることができたし。今までは結構任せていたんですよね。

●まさにY.K.Cくんが言ったように6人目のメンバーとしてアルバム制作に参加したと。

Masato:そうそう。俺らが補った部分もあるし、彼が補った部分もあるという。若いからこそっていう感じはありました。

●逆に、若いからこそぶつかった部分もあったんじゃないですか?

Masato:ありましたね。土日になるとスタジオにそいつの彼女が来るという。

●え?

Y.K.C:あれダルかったよな(苦笑)。

●週末になると、プロデューサーの彼女がお泊りに来る(笑)。

Masato:制作は日曜日が休みだったんですけど、金曜の夜から彼女がスタジオに来るんです。だから土曜日、普通に仕事しているとなぜかそこに居るんです。スタジオで俺が歌録りとかしているところで、ソファーで寝たりするんです。“ベッドで寝てくれ”と内心思うんですけど、彼女は邪魔をするわけでもなく、ただ彼氏と一緒に居たいだけなんですよね。邪魔してきたりウザかったりしたらBrandonに「お前の彼女いい加減にしろよ」と言えるんですけど、そこそこ気を遣ってくれて、ギリギリ文句言えない感じで、“うーん…”って。

●ハハハ(笑)。

 

INTERVIEW #2

「“濃さ”を出そうと思っていたというより、結果的に出た。音作りの時点で出ているし、最初にアルバムを作ろうとなって話し合ったときに意識していた部分でもある」

●アルバム全体のイメージは当初から明確にあったんですか?

Y.K.C:向こうに行く前…去年の9月の時点で8〜9曲デモを作っていて、みんなに聴かせていたんです。でもその時点ではかなりラフなものだったので、みんなが抱く曲ごとのイメージもバラバラなんですよね。曲によっては完成像が見えないようなものもあって。俺は作っている側だからその感覚がわからなかったんですけど「あ、そうなんだ」と思って、5人でミーティングをして、その時点であったデモを全部ナシにして、5人で作ろうということになったんです。

Masato:あの時の空気感ヤバかったなぁ…。

●ヤバいというと?

Masato:それまでのやり方を一度否定したというか。「Y.K.Cが作ってきたものをどう活かすか」という方向でみんなで考えていたんですけど、「やっぱりこれは活かす方向じゃなくて、ゼロからやった方がいいんじゃないか?」という結論になって。そこから、みんなで家に集まって「こういうのかっこよくない?」とか言いながら作っていって、結果的にはそれがよかったんですけど、初めてバンドを組んだような不安と達成感が入り交じるような感覚だったんです。

●確か前作『Until The End』は、Y.K.Cくんがかなり具体的な完成像まで提示したんですよね?

Masato:そうです。その反動じゃないんですけど、今回はかなり余白が多かった分、メンバーが戸惑ってしまったんです。でも一旦5人でイチからやるとなったら…採用する/しないは別にして…意外とみんなから意見が出るということがわかったんです。バンド結成の頃はメンバー全員で作っていた感覚が強かったんですけど、だんだんY.K.Cが1人で作ってくるようになって。だから昔の感覚を思い出したような感じですよね。

Y.K.C:俺1人の作業は今までと変わらないんです。でも最初にミーティングをしているからこそ、“これってあの話だよね”ってみんながすぐに反応できて、その後の摺り合わせがスムーズになった。

Masato:そうそう。だから音を出したときに全然見当違いなメンバーが居ない。その辺の共有ができていたんです。

●今作を聴いて思ったのは…全部濃い。全部タイトル曲というか、シングルになり得る高い濃度があるという。

2人:確かに(笑)

●結果的にそうなったんでしょうか?

Y.K.C:きっと5人で話したときに、1曲1曲について「こういう曲だよね」みたいなコンセプトを持たせたからだと思うんです。はじめから曲の方向性が見えていたので、それが結果的に濃さに繋がったんだと思います。

●うんうん。

Masato:歌がなくても自信がある曲っていうか。毎回そこを目指して作っているんですけど、昔はその感覚がよりあったと思います。レコーディングに入ったときにはもうほとんど曲が完成しているので。でも海外でレコーディングするようになって、カツカツな中で制作するようになってからは、その感覚は少なくなっていたのかもしれないですね。今回は事前に話していた要素がいっぱいあったから、曲ができていなくても“こういう曲が必要だ”みたいな共通認識が最初からあったんです。そういう意味では不安は少なかったですね。

●その話はすごく納得できるんですけど、今作のアレンジの部分…特にリードギターとかが顕著なんですけど…今作はアレンジに迷いがないですよね。かなり極端というか、一歩間違ったらベタになるくらいの、エグいアレンジが多い。

Masato:それを言えばギターだけじゃなくて全員かもしれないですね。全員が、一歩間違えたらダサくなるくらい前に出ている瞬間があるというか。

●あ、なるほどね。

Masato:だから濃いんですよね。「ここはこいつが目立っている」っていう要素が結構入ってきている思います。

●今までよりも強く感じる部分ですよね。

Masato:それにミックスのバランス感で言えば、今までの作品の中でいちばん日本っぽいと思うんです。1つ1つのパートの際立たせ方というか。

●ああ〜、うんうん。

Masato:それを俺たちは今まであまりやってこなかったんです。ドラムのベーシックに合わせていくっていう方法論がここ何作かは多かったんですけど、自分たちでやっていた1st〜2ndアルバムの頃は、自分たちには何が足りないのかがわかんなかったんですよ。例えば昔の作品を今になって聴くと、1つのパートの音だけを変えたらすげえよくなるということとかがすぐにわかる。そういうのが経験を積んでいくことによってわかってくるんです。

●ふむふむ。

Masato:今回はそこを納得するまで詰めることができたんですよね。今まではスケジュールや色んな都合があって少し飲み込んだというか、録りの時点で決まっていたことを変えられなかったということもあったんですけど、そういうことは極端に減ったと思います。だから“濃さ”を出そうと思っていたというより、結果的に出た。メロディやアレンジだけじゃなくて、音作りの時点で出ているし、最初にアルバムを作ろうとなって話し合ったときに意識していた部分でもある。

●話し合ったこと自体が、それぞれのパートのアレンジにも強く影響していると。

Y.K.C:リードギターだけに関して言えば、そういう作り方をした上で最後の物足らない部分をギターで調整したというか、補正した部分もありますからね。だからちょっと今までやっていなかったような無茶なこともしつつ、でもそれがあるからこそ他の楽器も際立つ作品になったと思います。

Masato:特にリードギターは全曲、メインの歌を録り終わった後に録ってるから、確実に際立つようになっているんですよね。

●あ、歌の後なんですね。言われてみて思ったんですけど、歌に対するコーラス的なアプローチのギターも多いですね。

Y.K.C:そうですね。

Masato:Brandonもそういうタイプのプロデューサーなんです。「歌とギターの関係性が自分の中で完璧じゃないと絶対に嫌だ」って。そういう意味でも、プロデューサーが居てこその作品になったと思う。

Y.K.C:俺が1人で全部責任を負わなくてもいいっていうところで安心感があったし、Brandonと同じタイプだったからこそ、2人共が迷路に入り込むこともあったんです。そういうときがいちばん最悪だった(笑)。

Masato:最悪だったね(笑)。1日かけて悩んでた。

●今作は、coldrainらしいヘヴィでラウドな要素は当然どの曲にもたくさんあるんですけど、同時に“歌心”も感じたんですよね。ヴォーカルだけじゃなくて、楽器も歌っているような感覚。

Y.K.C:それはベースに依るところも大きいと思います。ベースって、どのプロデューサーも割りとどうでもいい扱いなんですよ(笑)。ラインとかについてはいちいち言わない、みたいな。

●RxYxOくんそんな扱いだったのか(笑)。

Y.K.C:でもBrandonは、歌に絡んでいくベースラインを理想としているので、「そこのベースはそうじゃないな」みたいな意見も結構出していて。

Masato:あとはやっぱり、歌を早めに録ったということも大きいと思います。歌が間違いないバランスにあれば、色んなところでチャレンジができるんです。ドラムももっとデカくするとか、他のパートが死なないようなことができる。今回、ミックスの段階でBrandonとモメたんですけど、モメたのはそれが理由の1つだったんですよね。

●というと?

Masato:歌だけを聴いて「いいじゃん」っていうミックスになっていたんです。バンドのロック感が出ていなかったというか、メンバー的に納得がいかなかった。

Y.K.C:そもそも最初に5人で話し合ったきっかけもそこだったんですよね。「歌があるところにアレンジしたい」という話になって「じゃあ今あるデモじゃなくて、5人のスタート地点を一緒にしよう」という感じになったんです。いわゆる正攻法というか、本来の曲の作り方になったんでしょうね。

PHOTO_coldrain02

INTERVIEW #3

「考えてみたら、自分のヒーローに参加してもらってるんですよ。それなのに俺、“不安だった”とか失礼ですよね(笑)」

●ところでM-3「DIVINE」には女性の声が入っているじゃないですか。あれびっくりして。

Y.K.C:あれ、なかなか深いんですよ。

●深い?

Masato:「DIVINE」は、人間が不老不死になることを歌っているんです。人工知能の世界的権威である実在の科学者(レイ・カーツワイル)がモチーフになっているんですけど、その人は不老不死になることや、人工知能が2045年に人間の能力を上回ると言っている人なんです。

●ほう。

Masato:その人の演説を聞いて“この人はなんだ?”ってびっくりしたんですけど、「DIVINE」のサウンドからなんとなくそういうイメージを受けたんですよね。で、Brandonとそういうことを話してて、Brandonは「俺は永遠に生きたい」とか言い出して「お前なに言ってんの?」って、2時間くらい言い合いとかになったんですよ…そしたら「DIVINE」の歌詞ができました。

●ハハハ(笑)。

Masato:不老不死になることについての俺なりの考え方をそのまま歌詞にしたっていうか。で、「DIVINE」でしゃべっている女性の声は、実はコンピューターなんですよ。

●え?

Masato:コンピューターのソフトなんです。あれ、文字を打ち込んだだけなんです。それだけであのレベルまでしゃべるんです。

●え? マジで?

Masato:はい。要するに、普通に人だと思えるレベルまで機械が発達してるんですよ。

●なるほど。そのこと自体が「DIVINE」で歌っていることとリンクしている。

Masato:なんにもいじってないですからね。文章を打ち込んでしゃべらせたらあそこまでなるという。しかも方言まで選べるという。今回はイギリス訛りだったんですけど(笑)。

●それはびっくりです。

Masato:普通にギターだけでもよかったんですけどね。あとは、Aメロで“digital”という言葉が出てくるんですけど、そこはちょっと加工してデジタルっぽい音にしたり。

●アレンジが歌詞に寄っていると。

Masato:そこはエンジニアとプロデューサーが一緒だからこそっていうところですよね。Brandonはずっと歌詞に合わせてやっている人だから、Y.K.Cがデジタルな音をデモで入れていたとしたら、逆にBrandonはアコースティックな音を足したり。だから色んなところで歌心を感じるんでしょうね。

●なるほど。あとM-7「WHOLE」は、今作唯一のラウドじゃない曲ですよね。バラードというより、スケール感の大きなロックという雰囲気があって。

Masato:「WHOLE」については、Sugiがスタジオで適当にギターを弾いてたんですけど、それをBrandonが勝手に録音していたんです。

●ほう。

Masato:それは制作の初期段階だったんですけど、曲が出来上がっていくに従って「もう少し静かな曲もあった方がいいかもね」という話になって。そしたらBrandonが「Sugi弾いてたじゃん」って。でもSugi本人は全然覚えてなくて、「え? 俺そんな曲弾いてた?」って。

●ハハハ(笑)。

Masato:Sugiのクセみたいなコード進行だったようで、Brandonが録っていたフレーズをピアノに変えて、ピアノとループみたいなものをスタート地点にして、各メンバーがポンポンと乗っけていって出来た曲なんです。

●作品として静かな曲が欲しかったんですね。

Masato:そうです。「静かな曲を作ることができるのがcoldrainの強みだよね」っていう話はずっとしていて。でも他の曲を先にまとめたかったから、「WHOLE」の歌は俺が1人で戻ったときに録ったんです。

●やっぱりcoldrainの場合、こういう歌い切る曲も聴きたくなる。

Masato:ただいちばんの問題は、俺がピアノを弾けないという。ライブでは生演奏できないんですよね。

●え? 弾いた方がいいでしょ?

Y.K.C:選択肢としては、Masatoが弾くか、俺が弾くか。だからVan Halenスタイルでいくか、maroon5スタイルでいくか(笑)。

Masato:X JAPANスタイルじゃないの?

Y.K.C:いや、X JAPANスタイルだとドラムが居なくなるもん。

Masato:あ、そうか。

●ハハハ(笑)。

Masato:俺、ピアノまったく弾けないですもん。

Y.K.C:でもMasato弾いた方がいいと思うけどな〜。

●うんうん。

Masato:ツアーまで練習する期間あるから、EUツアーに鍵盤シート持っていって練習するしかないですね(笑)。

●ハハハ(笑)、楽しみにしてます。あと、M-8「RUNAWAY」はJacoby Shaddix(Papa Roachのヴォーカル)のフィーチャリングですよね。以前、Papa Roachのツアーサポートをしたんでしたっけ?

Masato:はい。俺たちのヒーローだし、ツアーのときに仲良くなっていたから「俺たちの曲に入ってもらいたい」っていう話は冗談半分でしていたんです。もちろん当時は本当にできるなんて思ってなかったんですけど、実際に今回録っているときにたまたまメールが来て、「なにしてんの?」って訊かれたから「いまレコーディングしてるよ」って返事したら、「ゲストヴォーカル必要なときは連絡してよ」って言われて。

●お!

Masato:それで「全然やってよ!」ってお願いして。でもそのときは彼がツアー中で「ツアーが終わってから地元の環境でやるよ」と言われたんです。だから「RUNAWAY」は俺の歌録りまで済ませて送ったんですよ。Jacobyが入る場所も空けておいて。そしたら、俺が歌ってるところまで歌ってる。2番のAメロは頼んでないんです。

●アハハハハハ(笑)。

Masato:勝手にやってきた(笑)。結局は2番全部歌いやがって、「やりすぎだよ!」って。でもかっこいいからOKにしたんです。絶対にすごくなるってわかってたんですけど、なにをやってくるか全然わかんなくて不安だったし、Brandonと「ダサくなったらどうしよう?」って言ってたんですけど(笑)、完璧でしたね。

●Masatoくんのヴォーカルとのコントラストがいいですよね。

Masato:うん。思っていたよりも声のトーンが近いんですよね。それがcoldrainの音に合ってるし、世代が違うバンドマンなのに変な違和感が全然なくて。

●そういう意味では、憧れの存在だった人とツアーも一緒にやって、音源でも共演して。すごいことですよね。

Masato:そうそう。考えてみたら、自分のヒーローに参加してもらってるんですよ。それなのに俺、「不安だった」とか失礼ですよね(笑)。

●しかもこの曲、今作の中でもかなりキャッチーですよね。

Masato:メロディもしっかりしてるしキャッチーなんですけど、もう1つなにか要素がほしいなと思っていたところだったんです。そこにたまたま連絡が来たんですけど、バッチリでしたね。

●ちなみに今作でいちばん苦労したのは?

2人:M-6「THE STORY」です。

●え? この曲、すごくわかりやすい曲ですよね?

Masato:すごくキャッチーだし、簡単に作ったように聴こえますよね。でもこの曲、すげぇ大変だった(笑)。

●なにが大変だったんですか?

Y.K.C:要するに、そのキャッチーな部分は最初なくて枠組みを先に作ったんです。キャッチーさとか、曲の決定的なものがない状態で、「ここにそういうものを入れるべきだ」という感じで枠組みだけ作ったんです。

●あ、そういうことか。聴いているこっちとしてはキャッチーなフレーズが耳に残るけど、あれが最初なかったと思ったらすごいことだな。

Masato:だから10回裏の逆転サヨナラホームランです。

●順番が逆という(笑)。

Y.K.C:だから自分たちで勝手にハードルを上げているんですよね。「ここに俺たちはすごい要素を入れるだろう」と想像しながら、先に枠組みを作ったわけで。

Masato:タイミング的にも難しかったんですけど、5曲くらいレコーディングした上で「THE STORY」にとりかかったんですよ。それまでは色んなタイプの曲ができて、すげえいい感じで進んできていたのに、「THE STORY」でいきなり大きな壁にぶつかったんです。それまでも壁はあったけど1日で乗り越えられていたのに、「THE STORY」の壁は何日も越えられなくて。

●へぇ〜。

Masato:結局、一旦置いたんですよね。それでフレッシュな気持ちでもう一度「THE STORY」にとりかかってみたら、いろんなアイディアが出てきて、合唱とかも入れてみて「いいじゃん!」「ヤバいじゃん!」って。今作の中でもめちゃくちゃ強い1曲になりましたね。

●そうですよね。強くてインパクトがある。

Masato:だから歌詞的にも“どんなことがあっても乗り越える”っていうことをテーマにして。それはアルバム制作の醍醐味ですよね。レコーディングに入ってから作るっていう。結果的に、そういうときに生まれたものはアルバムの中でキーになったりするんです。

 

INTERVIEW #4

「土俵はみんな一緒だと思うし、“世界に立つ”と言っても日本も世界の一部だし。海外の経験を経てそういう感覚がすごく強くなった」

●サウンドも歌詞もそうなんですけど、今作の曲からは共通して“怒り”の感情が多い印象を受けたんですよね。それは今までもそうだったんですけど。

Masato:うん。そこは「いま一度」っていう感じですね。「ここまで来たからこそ、いま一度」という心境の表れというか…結局、いつも一緒だな(笑)。

Y.K.C:ハハハ(笑)。

●でも「いま一度」っていう心境はすごく今のバンドの状況に直結しているというか。今作は世界同時リリースとなる作品だし。

Masato:そうですね。新たなるスタートラインだし、そういう意識は歌詞にかなり出ていると思います。やっぱり俺としては、すごい苦悩があるんですよ。

●苦悩というと?

Masato:4枚目で、俺がやりたいことはずっとこれだし、これしかないんですけど、作品を重ねる毎に歌詞が難しくなるんです。例えばさっき話した「DIVINE」のような歌詞を書くのは簡単っていうかスムーズなんです。

●モチーフがある場合や物語を書く場合はスムーズだけど、心境を表現するのは作品を追う毎に苦悩が伴うと。

Masato:そう。“いちばん言いたいことが簡単に出ない”っていうのは、レコーディングをするたびに感じることで。歌うことに関しては余裕でできるのに、思っていることを表現することの難しさというか。自分の中で置いているハードルもあるし、それは年々変わるものだし。

●うんうん。

Masato:だから人からの期待というより、自分やメンバーやプロデューサーの期待を超えたいという風に思うと、歌詞はいつも同じくらいのしんどさがあるんです。マイナスをプラスにするような表現をするっていうのは、バンド結成当初からのテーマだし。

●まさにM-1「VENA」やM-2「WRONG」は、いまおっしゃったようなことを歌っていますよね。

Masato:そうなんです。俺の感覚的には、この2曲は“長い1曲”というか、繋がっているような感じなんです。「VENA」の歌録りは最後だったんですけど、そういう想いを全部吐き出して総括したような曲ですね。だから叫び倒して。

●だから「VINA」の最後で“Fuck”と言ってるのか。

Masato:このアルバムで唯一の“Fuck”です(笑)。

●あ、唯一なんですね。

Masato:その気持ちのまま「WRONG」に繋がっていく…だから根暗な2曲ですよね(笑)。

●自分に対して歌っていると。

Masato:人に対して怒っているように思えるけど、自分に対する怒りですよね。

●いま一度、もっと強くなりたいという想いの発露というか。

Masato:うん。それは日本人として世界に立つということのテーマでもあって。日本人って常に世界に対してチャレンジャーな気持ちがあるじゃないですか。

●はい。

Masato:そういう姿勢は大切かもしれないけど、本当は要らないなって思うんです。土俵はみんな一緒だと思うし、「世界に立つ」と言っても日本も世界の一部だし。海外の経験を経てそういう感覚がすごく強くなった分、余計な気持ち…“日本人だけど俺がんばる”みたいな気持ち…は要らないなって。だからこそ、自分で居ることが大変だということにも気づけたんです。ライブについても、例えばいいライブが5回できたのに、なんで1回悪いライブになっちゃったんだろう? っていうことに今まで以上に怒りを覚えるというか。

●常にストイックに自分を律していくというか、その積み重ねが今のcoldrainの音やステージに出ていると思う。バンドにとって大切な姿勢というか。

Masato:その怒りはプラス思考なんですけど、なんかアスリート的な感覚に近いのかもしれないですね(笑)。

●coldrainらしいアルバムになりましたね。リリース後というか、リリース前の9月末からヨーロッパツアー“VENOM EUROPEAN TOUR 2015”(Bullet For My Valentineツアーサポート)が始まり、11/20からはアメリカツアー“THE GREATER THAN TOUR”(Northlaneツアーサポート)が始まりますが、ものすごくタイトな日程で。これはアホのスケジュールですね(笑)。

2人:アホのスケジュールです(笑)。

Masato:新人バンドでもこれだけやんないですよね。年内70本くらいあります。でも逆にこれをヘッドライナーは1時間くらいのライブをやるって考えたらマジですごい。

●あ、そうか。

Y.K.C:だから俺らはまだまだ全然です。

●この過酷なスケジュールを経ての年明け“VENA JAPAN TOUR 2016”はめちゃくちゃ楽しみですね。音はもちろん、肉体も精神も削ぎ落とされていると想像するんですが。

Masato:逆に“VENA JAPAN TOUR 2016”がヤバくないとバンドとしてマズいでしょ(笑)。年内の海外ツアーで俺が選手生命を絶たれない限り大丈夫です。

●楽しみにしてます。

Masato:俺ら自身も楽しみですね。(“VENA JAPAN TOUR 2016”のスタートが)もうちょっと後でもよかったけど…1/9って(苦笑)。

一同:ハハハ(笑)。

interview:Takeshi.Yamanaka

 

PHOTO_coldrain03

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj