音楽メディア・フリーマガジン

nano.RIPE

遠回りや寄り道をたくさんしてきた“ぼくら”だからこそ生み出せた幸福な時間

2015/9/26@赤坂BLITZ
nano.RIPE 5th anniversary program Vol.3「しあわせのくつ」

PH_nano_Main“たった一度の人生なら夢見るくらいは自由でしょう?”という歌いだしの「空飛ぶクツ」で幕を開けた、nano.RIPEのメジャーデビュー5周年企画第3弾「しあわせのくつ」。本編が始まる前にはスクリーンに物語の始まりを告げるナレーションと共に、作品のジャケット写真やミュージックビデオを編集した映像が流され、この5年間で歩いてきた道が走馬灯のように目の前を過ぎていく。結成まで遡ればもう10年以上、夢をずっと見続けながら進んできた“ぼくら”の現在点。会場の赤坂BLITZを埋めたオーディエンスが、nano.RIPEの登場を歓喜の声と万雷の拍手、そして満面の笑顔で迎え入れる幸福な光景はそれを確かに表していた。

まずは「空飛ぶクツ」「もしもの話」「パラレルワールド」と3曲を一気に畳み掛けて、フロアの熱を呼び起こす。「今日1日のライブでレベルがどれだけ上がるか、ぼくらとみんなにかかっています!」というMCは、「しあわせのくつ」というイベント名からも察することができるように某人気RPGゲームにかけたものだ。少しでもレベルを上げんとするかのごとく、「こだまことだま」では曲に合わせてジャンプする観客たち。「なないろびより」「透明な世界」「月花」と続くアニメ関連の楽曲に、イントロが鳴り始める度に歓声が上がる。「影踏み」を叙情的に歌い上げた後のMCでは、「過去最多の曲数をやります」と宣言したVo./G.きみコ。この時点までに11曲を演奏してきたが、まだまだ前半戦なのだ。

「15秒」「色彩」とインディーズ時代からの名曲を連発した後、さらに「ユートピア」を挟んでMC。この日の時点ではまだ途中の47都道府県ツアー(nano.RIPE TOUR 2015「47.186」)について、「今までのぼくらを全て詰め込んだツアー」だと語る。「神様」が終わると、いったん幕が降りてスクリーンに映し出されたのはツアーのドキュメンタリー映像だ。その中できみコが言った“よく似た仲間”の4人が衣装も新たにステージへと再登場して、「フラッシュキーパー」から勢い良く後半戦がスタート。「流星群」と「プラリネ」という楽曲提供した2曲をセルフカバーで聴けるのも、スペシャルな一夜ならではだろう。

「ここから自分の中にある真っ黒い部分を全部出して欲しい!」との呼びかけから、怒涛の終盤に突入。「ノクチルカ」「面影ワープ」というキラーチューンの連発に、フロアのヴォルテージは天井知らずに上がっていく。「タキオン」では“「しあわせのくつ」スペシャルバージョン”ということで、女性ダンサー4人を引き連れてのG.ササキジュンの“ふしぎなおどり”に会場中が笑いに包まれる。タオルが乱舞する「リアルワールド」に続いて、「地球に針」で本編を締めくくった。鳴り止まない拍手と歓声に応えてのアンコールは「こたえあわせ」の壮大なコーラスから始まり、ダンサー陣を伴っての「ハナノイロ」へ。そして大名曲「世界点」で全28曲に及ぶライブは終幕を迎えた。

全ての演奏を終えた後、きみコが生声でオーディエンスに語りかける。「遠回りも寄り道もたくさんしてきたけど、それでいいんだ」。その本心からの嘘のない言葉の1つ1つはマイクを通さずとも、会場に集った全ての人々の心に届いたはずだ。遠回りや寄り道をしてきたからこそ“ぼくら”は今ここで、しあわせな時間を共に過ごせているのだから。メジャーデビュー5周年と言っても、nano.RIPEはまだまだ冒険の途中。限りない未来を夢見ながら、これからも歩き続けていく。

TEXT:IMAI

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