音楽メディア・フリーマガジン

SpecialThanks

心のときめきのままに。変化を恐れず、新世界への扉を開く

SpecialThanks_aphoto_heavenly_MAIN2アルバムとして初めて日本語詞を取り入れた前作『missa』で、新たな進化を見せつけたSpecialThanks(以下スペサン)。前作のリリースツアー後にメンバーチェンジを経て、新体制となったスペサンがニューミニアルバム『heavenly』を完成させた。録りおろしの新曲6曲に加えて、2015年11月1日に下北沢GARDENで開催したワンマンライブの模様を17曲収めたDVDもコンパイルした今作。楽曲や歌詞の普遍性とスケール感をより増しながら、自らが目指す理想郷への一歩を着実に踏み出していることが実感できるポジティブな1枚だ。

 

「『heavenly』は第一歩という感じで、今はまだ扉を探していて。これからもっと広がるだろうし、やりたいことがもっといっぱいあって。やっぱり人生は一度きりだし、時間はどんどん過ぎていっちゃうから、今は本当にワガママに生きたいなと思っているんです」

●昨年7月にリリースした2ndフルアルバム『missa』では日本語詞の楽曲を取り入れたわけですが、リスナーに受け入れられるかどうかという不安も当初はあったのでは?

Misaki:最初はありましたね。周りのバンドからも「日本語の曲を取り入れると、お客さんの間で英語派と日本語派で割れたりする」という話を聞いたことがあって。「スペサンはどうなるのかな?」と思っていたんですけど、意外とみんな「どっちも良いね」と言ってくれたんですよ。マイナスな声は1つも聞こえてこなかったので、『missa』のリリースツアーでも自信を持ってやれました。

●『missa』が受け入れられたことで、今後も日本語詞をさらに推し進めていこうというモードになれたのかなと。

Misaki:そうですね。最初はずっと英詞でやってきたんですけど、年齢を重ねていくうちに日本語で歌うことの恥ずかしさがだんだんなくなってきて。昔は自分の日記みたいな歌詞ばかりだったので、日本語で歌うのが恥ずかしいという気持ちがあったんです。でも今はもう全然、抵抗がないですね。

●『missa』制作時には日本語詞の曲は歌詞から先に書いたというお話もありましたが、今回はどうだったんですか?

Misaki:M-2「SWEET」は最初、英詞にしようと思っていたんですよ。だからメロディから先に作ったんですけど、やっぱり日本語詞にしてみようとなって。M-3「KOKOKARA」は、歌詞とメロディがほとんど同時だったかな? メロディに言葉を当てはめつつ作っていった感じで、「歌詞がこうだから、こういうメロディにしよう」とか「このメロディが好きだから、歌詞をこういうふうに変えよう」みたいな、両方のやり方がありましたね。

●今作『heavenly』に向けた曲を作っている段階で、何かイメージはあった?

Misaki:イメージはそんなになかったです。でも今までとまた違った感じにしたいとは思っていました。

●今までと違う感じというのは?

Misaki:この『heavenly』のもっと先に、新たなスペサンが広がっていけるような曲作りというか。

●今後さらに進化していくための、1つのステップ的な感じでしょうか?

Misaki:そうです。このアルバムはステップとして捉えていますね。これを作ったことで、自分の中でもまた新しいものが見えてきたんです。

●新しい方向に進んでいきたいという想いがあった?

Misaki:そうですね。今までのものにちょっと飽きちゃったというか…。今回の歌詞でもそういうことを歌っているんですけど、心がときめく方向に進んでいきたいなっていう。アンテナを常に張って、直感で「こっちのほうが良いな」と感じる方向に進んでいったら面白いかなと思っています。

●聴く音楽も変わってきたりしている?

Misaki:変わってきたと思います。元々、私は洋楽をほとんど聴いたことがなくて。そこはみんなに「えっ、そうなんだ!?」って言われるんですけど(笑)。

●まさにそう思いました(笑)。

Misaki:洋楽はGreen Dayくらいなんですよ。あと、隣の部屋でお兄ちゃんが聴いていたGood CharlotteやSum 41とかが漏れ聞こえてはいたんですけど、自分でよく聴くのは日本のインディーズバンドが多かったですね。「これが好き!」となったものばかりを聴いている感じで、これまではあまりたくさんの音楽を聴いてこなかったんです。

●そこから今は色々と聴くようになった?

Misaki:今になって、Weezerを聴いて「すごく良いな」と思ったりしています(笑)。私は元々パワーポップがすごく好きだったんですけど、最近改めて「やっぱりパワーポップが一番好きだな」と思っていて。

●実際、音楽的にも初期よりメロディックパンク色が減って、パワーポップ色が強まった感じがします。

Misaki:元々、そっちのほうが好きなんです。やっぱりKOGA RECORDSに入ったくらいだし(笑)。これまでもミュージックビデオになっている曲や代表曲的なものは「HELLO COLORFUL」(『SEVEN LOVERS』収録)や「Getting on」(『MOVE ON』収録)、「You say GOOD BYE」(『SEVEN COLORS』収録)とかで。だんだん好きなほうに近付いている感じがしますね。

●自分が元々やりたかった方向へと進めている。

Misaki:そうですね。だから、これからの人生がすごく楽しみです。

●今回の曲を作っている時もそういう感覚で、楽しく作れていた?

Misaki:楽しく作れました。でもまだこれからですね。『heavenly』は第一歩という感じで、今はまだ扉を探していて。

●M-1「DOUNARUNO!?」の歌詞でも“looking for the door”と歌っていますが、これには今の心境が出ている?

Misaki:沸々とした感じが出ていますね。これからもっと広がるだろうし、やりたいことがもっといっぱいあって。やっぱり人生は一度きりだし、時間はどんどん過ぎていっちゃうから、今は本当にワガママに生きたいなと思っているんです。

●変に気を遣うことなく、やりたいことをやる。

Misaki:だから今は本当にワクワクしていて、楽しいことばかりなんですよ。何かに遠慮しちゃって、本当の自分が出せなかったりすることってあるじゃないですか。そういうのは嫌だなと思っていて。

●M-5「Nothing」でも“くだらない理由で好きなことを諦めたり 頑張ってきたことを辞めたりする人がいた”(※和訳)と歌っていますよね。これは時期的に、メンバー脱退のことを連想させたりもしますが…。

Misaki:やっぱりそう思われますよね。自分でも書いた後で、そう見えるよなと思いました(笑)。でも全然違っていて、これは辞めたメンバーのことではないんです。この歌詞自体は、昔からあったんですよ。

●実は昔からある歌詞だったと。

Misaki:こういう気持ち自体は、私が中学〜高校生の頃からあって。その頃も周りでバンドをやっている人たちがいたんですけど、受験や就活を理由に辞めてしまうことが多かったんです。そういうキッカケでバンドを辞めてしまうというのが、私はすごく悲しかった…という歌詞ですね。すごく良い音楽をやっている人ほど、そんな感じで辞めていったりするのがもったいないというか。「もっともっとバンドをやって欲しいよ」っていう気持ちで書きました。

●Misakiさん自身も、学校や仕事とバンドを両立してきたわけですよね。

Misaki:だからこそ私は受験の時もバンドを辞めなかったし、就職しても辞めなかった。そういう(生き方の)1つの見本というか、苦しくても意地になってやっていた部分はありますね。「音楽が好きだったら、できるんだよ」って言いたくて。これから先にいつか結婚して、子どもができたりしてもバンドは続けたいから、今はその時に向けての下準備の期間というか。30代になってもカッコ良い音楽がやれるように、これからの20代後半はもっと勉強したいなと思っているんです。今の音楽的な知識では全然足りないと思うし、もっともっと吸収したら絶対に良い音楽ができると思っていて…本当に良い音楽を生みたいんですよ!

●そういう強い気持ちを持っていることが、歌詞にも出ていると思うんです。ここ最近の作品では日記のような自分についての内容から、他者に向けたメッセージ性を持つものに変わってきた感じがします。

Misaki:元々はバンドにおいて「自分が楽しければ良い」という考えだったんです。ロックバンドをやる上ではそれがカッコ良いと思っていたし、自分が満足できたら良いと思っていた。でもだんだん伝えたい気持ちが出てきて。『missa』を作って、余計にそう思うようになったんですよね。

●そこも『missa』がキッカケだった。

Misaki:『missa』のリリースツアーに来てくれたお客さんたちを見て、またさらに強く思って。すごく支えてくれているから、みんなをもっと元気にしたいし、伝えたいし、まだスペサンを知らない人にもどんどん発信していきたい。だんだん周りを見て、バンドがやれるようになってきました。

●デビュー当初はまだ10代だったというのもあって、そこまで考える余裕もなかったでしょうからね。

Misaki:目の前のことだけで必死でしたね。今も必死なんですけど、その中でもちょっとは周りが見えていて。せっかくこういう声に生まれてきて、良い環境でやらせてもらえているわけで、それって自分だけのために使うものじゃないなと思ったんですよ。きっと何か理由があって、自分はこうやって歌っているんだろうなと。ずっと自分だけのためにやっていたら、喉も潰れてしまって何もなくなっちゃうかもしれない。だから、みんなで楽しいこととかを分かち合いたいと思いました。

●前作から、愛や神様のような大きな普遍的存在に対する歌が増えてきたかなと。

Misaki:そうですね。でも愛については、『SEVEN LOVERS』くらいからずっと歌っていて。“愛”って、無敵だなと思うんです。バンド名も“SpecialThanks”と付けたし、愛や感謝というのは私の中でテーマになっていますね。

●M-6「Please Watch Me」の“you”というのは、神様のような存在に対するものでしょうか?

Misaki:自分が本当に困っていて誰も助けてくれない時に、人間って神頼みをするじゃないですか。たとえばご先祖様にお祈りをする人もいるだろうし、そこは人それぞれだと思っています。

●特定の宗教や神を指すものではない。

Misaki:自分を常に見守ってくれている存在というか。いつも見てくれている存在がいて、“1人じゃない”みたいな感覚があって。『missa』の「feel your life」もそういう歌詞なんです。たとえば誰かの幸せを願ったり、そういう行動を取ることで、良いことがあるんじゃないかなっていう。

●M-4「heavenly」には“愛の上に住む”というフレーズが出てきますが、これはどういうイメージで?

Misaki:最終的に、愛に溢れた環境になると良いなっていうことですね。“愛の上に愛がある”みたいな感じで、そこが目指すところというか。

●「heavenly」をタイトル曲にした理由とは?

Misaki:目指すところが“heavenly”なんです。天国という意味だけじゃなくて、自分が思い描く素敵な世界だったり、自分がときめく場所だったりとか、そういうところが“heavenly”で。この歌詞はそこに行くまでの葛藤というか、まだ目指している途中という感じですね。

●まだ目指している場所へ向かう途中にいる。

Misaki:本当に“ここから”ですね。

●“ここからどうなるの!?”というのが、自分でも楽しみなのでは?

Misaki:今回は自分の中で、“メンバーが抜けちゃって、どうなるんだろう!?”っていうところからまず始まっていて。心がときめく方向に進んでいった中で、“ここからだよ”っていうところに着いた流れでしたね。もちろんこれでスペサンが完結っていうわけでは絶対にないので、“ここから、ここから!”っていう感じです(笑)。

Interview:IMAI

 
 
 
 

SpecialThanksの近作をAmazonでチェック!!

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj