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RETO

次なる一歩を踏み出した4人の新しい“はじまりの歌”

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“泣いたり笑ったりありふれた日常をリズムとメロディーにのせて”というテーマを掲げて活動する4人組ポップロックバンド、RETO(レト)が初の全国流通盤となるミニアルバム『私のはじめかた』を10/26にリリースする。メンバー全員が作曲できるという特性を活かして生み出された、バラエティ豊かな全5曲を今作には収録。どの曲も親しみやすいキャッチーなメロディを持ちつつ、Vo./G.小山結衣の描き出す日常にリンクした歌詞はその歌の魅力とも相まって、リスナーに大きな感動をもたらす。これまでの活動に1つの区切りを付け、次なる一歩を踏み出していく4人の新たなはじまりの1枚が完成した。

 

「今作でRETOを初めて聴く人に、何かちょっとでも共感してもらえたら良いなと思っていて。自分の大切な人に置き換えてもらったりして、聴いた人がここから新しい一歩を踏み出せたら良いなと思います」

●今回のミニアルバム『私のはじめかた』は初の全国流通盤ということで、どういう作品にしようというイメージはあったんでしょうか?

杉原:今年に入ってからすぐに「全国流通盤をリリースしたいね」という話になって。どの曲を入れようかと考えた結果この5曲が選ばれたんですけど、歌詞を見るとどれも自分のことを歌っているものが多いなと気付いたんですよ。そこで『私のはじめかた』っていうタイトルにしようとなったんです。

●収録曲の共通点から、タイトルが決まった。

杉原:そこでリリース日も決まったんですけど、その前に自主制作で『あのね』(2ndシングル)を6月に出してからまわるツアーのタイトルを“私のおわりかた”にしようというアイデアが浮かんで。

小山:流通盤をリリースする前の最後のツアーを“私のおわりかた”というタイトルにすることで区切りを1回付けて、そこからまたこの5曲で新たに始めていくというイメージがありましたね。

●一瞬、解散ツアーかと思ってしまいそうなタイトルですが…。

杉原:だから、発表する時も「解散するわけではありません」と言いました(笑)。

小山:8/12に下北沢CLUB Queでやった『あのね』のツアーファイナルで『私のはじめかた』というタイトルを発表したんですけど、その時に今の説明をしたら客席から「あぁ〜」という声がすごく聞こえましたね。

●お客さんも説明を聞いて納得したと。

杉原:今作のレコ発ワンマンライブも下北沢CLUB Queでやるんですけど、それは「“おわりかた”と“はじめかた”の場所は同じほうが良いよね」ということからなんです。

●そもそも今作に収録した5曲は、どういう基準で選んだんですか?

小山:初めての全国流通盤なので、自信のある5曲というか。ライブでも反応が良いものを集めて、“これがRETOです”っていうのを知ってもらうために選んだ5曲です。

杉原:RETOの一番良い部分を詰め込んだようなラインナップですね。自分の中でも一番気に入っている曲を詰め込んでいます。

●今作には過去の自主制作盤に入っていたものも再録されていますよね?

杉原:M-3「私の歌」とM-4「あのね」はリアレンジして再録しました。

●アレンジも変えたんですね。

大阿久:特に「あのね」に関しては、ガラッと変わりましたね。壮大になったというか。

杉原:6月にリリースしたシングルでは、いつもライブでやっているようなバンドサウンドだったんです。でも今回はピアノやバイオリンを入れてみたり、色々とやってみました。

●アレンジ面で挑戦もしていると。他の3曲は新たに作った曲?

杉原:ライブではやっているんですけど、音源化するのは初めてですね。僕らはリリースを意識して曲を作るというよりも、その時点までにできている中で良いと思ったものはどれもライブでやっているんです。

●RETOはメンバー全員が作曲できるということで、作詞も曲ごとに違う人がやっているんですよね。M-2「部屋物語」は加藤さんの作詞ですが。

加藤:実は歌詞を書くのは初めてだったんですよ。全国流通するにあたって、挑戦してみたいなと思って。

●あ、初めての試みだったんですね。

加藤:この歌詞はスラスラ出てきたんですけど、後から読み返してみるとバンドの状況にもつながっているなと。バンドとしても迷ったり、葛藤したりしている部分があったから。でも(歌詞の中にある)周りの人たちからの“望まれてる聞こえる声”っていうものを信じて色々やっていきたいなという気持ちで書いたので、自分たちのことが出ている歌詞になりましたね。

●今の自分たちが抱いている気持ちも投影されているのかなと。

加藤:そうですね。改めて読んでみると、今やっていることや今までやってきたことがしっかり詰め込まれているなと思います。

●“最近はどこもかしこも 綺麗すぎるモノばかりだから 毒を吐いて汚す世界も自分も”という歌詞は、(小山)結衣さんのキャラクターをイメージしていたりもする?

小山:毒舌なんです(笑)。

加藤:普段一緒に行動しているので、そういう部分も見えていて。“毒”っていう単語が浮かんだので、それを意図的に入れた部分はありますね。

●「生命のいろは」は杉原さんの作詞ですが、こちらはどういうイメージで?

杉原:ちょうど「あのね」について“命をテーマに書こう”という話が先にあったので、(参考にするために)色んな人の話を聞いていたところで。その中で自分は“とりあえず生きていれば良いんじゃないか”と思ったんです。だからそういうものを書きたいなと思って、この曲は作詞をしました。

●これも結衣さんが歌うことを想像して書いている?

杉原:想像しています。あと、僕が結衣ちゃんに対して思っていることも歌詞の中に入っていて。それを本人が歌うというのも面白いなと思ったんです。

●たとえば“敵を作っているのは自分自身だ”というのも、結衣さんに対して思っていること?

杉原:そうですね。自分で敵を作っている気がするんですよ。“敵”というのは人だったり悩みだったりするんですけど、“それって全部、自分自身が考えていることなんだよ”っていう。実際に言われない限りは、他人がどう思っているかなんてわからないですからね。

●“頑張りすぎる君”というのも結衣さんに向けて言っている?

杉原:そうです。結衣ちゃんはすごくやる気を出す瞬間があるんですけど、そうなった時って必ず1〜2ヶ月後くらいにはズコって落ち込むんですよね。

●精神的なアップダウンが激しいというか。

小山:激しいです…。

杉原:だから、“自分の風呂敷をそこまで広げすぎずにやってくれ”と言いたくて。

●結衣さんへのメッセージソングにもなっている。

杉原:当初はそこを念頭に書いていたんですけど、そういうのって自分自身にも当てはまるし、聴いた人それぞれにも当てはまるところがあると思うんですよね。だから書いている途中で、結衣ちゃんだけへのメッセージソングではなくなっていって。

小山:広がったんですね。

●“半径50mの自分の場所”と歌詞にありますが、これってかなり広い範囲ですよね?

小山:私はすごく周りを気にしてしまうんです。他人と比べてもしょうがないとわかってはいるんですけど、つい比べてしまって。“あの子はこの歳であんなふうになっているのに、私はこうだ…”とか思ってしまうタイプで。

●そういう部分がこの曲の歌詞に表れている。

小山:“他人にはこんなふうに見えているんだ”っていうのが面白いなと思いました。バレバレでしたね(笑)。

●「あのね」はそんな結衣さんによる作詞ですが、これは“命”をテーマに書いたと。

小山:元々は“命”をテーマに楽曲を作ろうというところから始まって、最終的に“私がもし死んでしまったら”っていうテーマになったんです。もし自分が死んだとして、誰か1人に向けて歌うとしたらお父さんに歌いたいなと思って。自分の中でも珍しい書き方で、手紙みたいに便せんに“お父さんへ”みたいな感じで書いていったんですよ。ちょっと新しいなという感じがします。

●本当にお父さんに向けての手紙のような気持ちで書いていったわけですね。

小山:書いている時に、自分でも泣いてしまって…。ライブでもお客さんに涙して頂いたり、共感してもらえることが多いんですよ。だから、もっとこういう作詞の仕方も掘り下げてやっていきたいなと思いました。

加藤:この曲をバンドで初めて合わせた時は、歌詞を先に見せてくれなくて。僕らは歌詞の内容を知らないままで、演奏をやったんですよね。

●それはどんな理由で?

小山:先に歌詞を見せてしまって、感想を言われるのが嫌だったんです。歌詞を発表した時のメンバーの反応が、私はいつも怖いんですよ。だからバンドで音を合わせる中で、聴いてもらいたくて。

加藤:実際に聴いてみたら、すごくグッときて。終わった後は「すごく良いじゃん!」っていう大絶賛でしたね。

●メンバーの心にも響いたわけですね。

小山:この曲は珍しく1日でバーッと書けたので自信はあったんですけど、恐る恐る「どうだった?」って訊いてみたら他のメンバーもみんな良い反応で。自分にとって、色々と新しい発見にもなりましたね。

●「私の歌」は、まさに作詞した結衣さん自身のことを歌っているんでしょうか?

小山:これはすごく波のある私の性格が表れていて。元々カラオケで歌うのが大好きで高校生くらいから歌を始めたんですけど、最初は自分の歌声があまり好きではなかったんですよ。かすれていなくて、もっとピュアな感じの声に憧れていたんです。でも自分の声が好きだと言ってくれる人もいて、そこでの葛藤というか…。本当は自分の歌を良いなと思う時もあるんですけど、なかなか素直に好きにはなれないっていう内容ですね。

●“キライじゃない わかってるんだよ 本当は好きだよ? わかってるんでしょ”という葛藤が本当にある。

小山:そうですね。好きな部分もあるのに、素直に「私の歌を聴いてよ!」って言えない感じがあるんです。この曲を作り始める時に「私の嫌いなものって何?」って考えたら、「自分の歌かな」と真っ先に思って。そこからイメージが広がって、こういう歌詞になりました。

●結衣さん自身には葛藤もあるけれど、メンバーにとっては特別な声だったから一緒にバンドをやろうという気持ちにもなったんですよね?

加藤:本当にそうです。彼女の歌っている音源を何も知らずに初めて聴いた時、“何だこれは!? すごい!”ってなったんですよ。理由も何もなく、純粋に良かった。

杉原:好きな食べ物を説明する時に理由がいらない感じに似ていると思います。僕らの中では、満場一致でしたね。

小山:恥ずかしいですね…、でも嬉しいです。ちょっと自信が持てるかもしれない。

●「スミカ」の“生まれてはじめてここにいていいよって言われた気がした”という歌詞も、バンドのことにつながるのかなと。

小山:本当にそうですね。このバンドに対する自分の歌の存在というか、私は“本当に自分で良いのかな?”と思ってしまう性格で…。でもお客さんや関わった人が「結衣ちゃんの声が良いね」とか「メロディと合っている」と言ってくれたりして、私の声を認めて下さる人に出会ってきた中でこういう歌詞が生まれたと思います。

●他のメンバーもRETOが自分の“スミカ”だという意識があるのでは?

杉原:それはありますね。いつも会っていたりすると“嫌だな”って思うこともあるんですけど、会わなきゃ会わないで落ち着かないんですよ。

加藤:たぶん1週間も会っていないと、恋しくなるような感覚ではありますね。

●どのくらいの頻度で会っているんですか?

加藤:ほぼ毎日会っているよね?

小山:家族よりも会っています。

大阿久:本当に“家族”みたいな感じになっていますね。最近はほぼ毎日会っているから“もういいわ!”ってなることもあるんですけど、やっぱり1週間も会わなかったらソワソワするんじゃないかな。

杉原:“実は今日は練習の日なんじゃないか?”とか思って、勝手に焦りそうな気がします(笑)。

●今作の制作を通じて、バンドの結束がより固まったところもあるのでは?

小山:それは大きいと思います。ツアーで1週間一緒だった時は、やっぱり1人の時間も大事だなと思いましたけどね。でもそれがあるから、4人でいて心地良い時間もあるんだなっていう。

●制作を終えて、どんな作品になったと思いますか?

小山:今作でRETOを初めて聴く人に、何かちょっとでも共感してもらえたら良いなと思っていて。たとえば「あのね」だったら私はお父さんに向けて書いているんですけど、それを自分の大切な人に置き換えてもらったりして、聴いた人がここから新しい一歩を踏み出せたら良いなと思います。

加藤:1人1人抱えている悩みや問題は違うと思うんですけど、今回の収録曲に関しても1曲1曲が違うわけで。どれか1曲でも当てはまったら、そこで自分なりの答えを見つけ出して欲しいなと。それから別の曲にも触れていく中で、“この曲はこういうことを歌っていたんだ!”と気付いたりもすると思うんですよ。1曲気付いたらまた次の曲でも色々と気付いて…という感じで、どんどん広がっていって欲しいという想いの詰まった作品ですね。

Interview:IMAI
Assistant:森下恭子

 

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