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RUSH BALL 2016

2016/8/27(土)・28(日)   会場:泉大津フェニックス

【8/27】BRAHMAN / Czecho No Republic / Dragon Ash / KEYTALK / RIP SLYME / SiM / TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA / TOTALFAT / 銀杏BOYZ / ストレイテナー
[O.A] Awesome City Club

【ATMC】a crowd of rebellion / group_inou / Homecomings / LAMP IN TERREN / LUCKY TAPES / ReVision of Sence / SANABAGUN. / yonige / サイダーガール
[Closing Act] MIYAVI

快晴の中に始まった“RUSH BALL 2016”。初日のオープニングアクトを務めたのはAwesome City Club。男女混合のコーラスが美しく響き渡り、爽やかに広がっていく。続くCzecho No Republicは、1曲目から随一のアッパーチューン「Amazing Parade」! 軽やかなスタートを切ったところで「No Way」を投入。ブーミーなベース音がスペーシーな雰囲気を醸し出し、たちまちオーディエンスを異空間に誘っていく。いつ観ても思うが、彼らは野外のステージが本当によく似合う。

KEYTALKは楽曲にそぐわぬいかめしいSEで登場(笑)。夏らしいパッションがハジケる「YURAMEKI SUMMER」、メロディセンスの秀逸さが一段と光る「fiction escape」、「MONSTER DANCE」…本日も全曲踊れるナンバーで2万人のココロとカラダを揺らし続け、頭から終わりまで熱が冷めやらぬお祭り騒ぎ! ライブの楽しさを余すところなく全身で味わった。

暑い夏をさらにアツくするべく、「夏のトカゲ」「宴の合図」と、冒頭から爆発的なテンションでキッズ達をブチ上げたTOTALFAT。「Place to Try」では曲の途中、勢い余ってバスドラが壊れるというハプニングもあったが、Shun(Vo./Ba.)が「大阪が盛り上がり過ぎてブッ壊れた(笑)!」とリカバーすれば、それすらも楽しむための要素へと変えて一層の盛り上りを生み出した。

日がいちばん高くなる頃、RIP SLYMEが“RUSH BALL”に初登場だ。「楽園ベイベー(Remix)」と夏に相応しい激アツチューンを初っ端から飛ばしていき、珠玉のマスターピース「FUNKASTIC」では、見事なダンスや各メンバーのソロを披露。歌だけでなくパフォーマンスも含めて、あらゆるエンターテインメントの良さが満ちている。これこそが長年日本のヒップホップを支え続ける雄の実力だ。

もはや彼らを知らないものはいないだろう。日本が誇るスカバンド、その名もTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA! 老いも若きも魅了するレジェンドは手始めに「ルパン三世'78」や「ペドラーズ」などを差し込んでいく。普段から耳にするような誰もが知っている名曲も、ブラスナンバーへと姿を変えて鳴らされると全く違った印象になり、溢れ出る高揚感に鳥肌が止まらない。

「大人になって僕たちは自分しか愛せなくなった。気が狂いそうな、そんな歌を歌うだけ」。そう語ったのは若者達の永遠のヒーロー、銀杏BOYZ。「I DON'T WANNA DIE FOREVER」や新曲の「骨」、永遠の名曲「BABY BABY」…峯田の歌と言葉には凄まじい求心力があり、本物のヒーローはどれだけ時が経っても色褪せず、世代を超えて憧れられるのだということを教えてくれた。

続いてはDragon Ash。オーディエンスが一斉にタオルを回す「La Bamba」、イントロからベースの高速スラップが炸裂する「The Live」、センチメンタルな美しさが香り立つ「光りの街」と、ワンシーンごとにそれぞれまったく違ったやり方で、インパクトを残す。目まぐるしく変わる彼らの表情に、誰もが思わず目が奪われたのではないだろうか。観る度に違う景色を見せてくれる歴戦の雄は、オーディエンスを飽きさせない。

ストレイテナーの1曲目はまさかの「TRAVELING GARGOYLE」! もう10年以上も昔の曲でありながら、今聴いても素直にカッコ良いと思えるのは純粋に素晴らしく、いち音楽ファンとして本当に嬉しいものだ。さらに「フェスでは有名な曲をやることが多いけど、今日は最近のアルバムからダンスナンバーを」と、「Alternative Dancer」を披露。“RUSH BALL”をホームと思っているからこその選曲に思わずグッと来た。

セットリストと言えば、BRAHMANのそれも印象的だった。「また今年も会えたことに“ありがとう”の意味を込めて」と初手に出されたのは、昨年のラストに見せた「満月の夕」。この時点で、1年前の光景を思い出して涙腺が緩む。感情や胸の内から沸き上がる衝動を、声で、表情で、全身で伝える姿に目も心も奪われた。「歴代のトリのあとに、SiMがどんなライブをするのか見てみたいからここに立ちました」とMCで語ったTOSHI-LOW(Vo.)。彼らが繋いだ重いバトンを受けて、いよいよSiMがステージに立つ。

皆が固唾をのんで見守る中、MAH(Vo.)が発した言葉。それは「俺たちと一緒に心中してください」だった。このステージに立つにあたり覚悟を決めてきたのだろう。その表情には鬼気迫るものがあった。1曲目「Get Up, Get Up」でイントロから攻めの姿勢でゴリゴリの音を叩き込む。すると随所でステージに設置された火炎放射器から炎が吹き出し、オーディエンスを一層アツくさせた。重さだけでなく「MAKE ME DEAD!」のようなポップさも兼ね備えているあたり、本当に懐が深い。実はGODRI(Dr.)は高校生の頃、お客さんとして“RUSH BALL”に来ていたそうだ。そして13年経った今、トリとしてこの場所に立っている。“13年あれば何でもできる”ことをその身を以て示した彼ら。最後に「お待たせしました、我々の時代が始まります。SiMでした」と宣言した言葉には、確かな説得力があった。

 

 

【8/28】BIGMAMA / go!go!vanillas / indigo la End / MAN WITH A MISSION / MONOEYES / SHISHAMO / WANIMA / キュウソネコカミ / ゲスの極み乙女。 / ドラマチックアラスカ
[O.A] 感覚ピエロ

【ATMC】BURNOUT SYNDROMES / Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / Halo at 四畳半 / lovefilm / ONIGAWARA / ココロオークション / パノラマパナマタウン / フレンズ / ヤバイTシャツ屋さん
[Closing Act] 忘れらんねえよ

2日目の初日は感覚ピエロ。笑いとシリアスをスタイリッシュに共存させる、ズバ抜けたセンスが光っている。今や関西若手代表として音楽シーンを背負うバンド然とした、堂々たるライブだ。その点では、ドラマチックアラスカも負けてはいない! 「ニホンノカブキ」で幕を開けたステージは、エッジィなリフと歌詞が突き刺さる「無理無理無理」へと展開し、「エキセントリックアルカホリック」「リダイヤル」と昔からのファンにとって馴染み深い楽曲へと繋げていく。「“RUSH BALL”なくしてドラマチックアラスカは語れません。だから今日は、ドラマチックアラスカなくして“RUSH BALL”は語れないというようなライブをします」という発言に違わないステージを見せてくれた。

MAN WITH A MISSIONは冒頭からその凄まじい人気を見せつけた。ジングルが鳴った時点で、会場の熱が膨れ上がったのがわかるほどだ。手を振ったり踊ったりとお茶目な姿を見せつつ、決めるところはバシッと決めるあたりライブバンドとしての風格を感じさせる。「Emotions」では会場全体がひとつになってシンガロングする声が、それに応えるように力強く唸っていた。

オオカミの次はこの人達! キュウソネコカミが数年振りに“RUSH BALL”にやって来た! SEには翌週に同じ会場で開催されるイベント“音泉魂”をフィーチャーした楽曲「OS」を流す辺りが何ともキュウソらしい。そして風刺の効いたパンチのある歌詞とキャッチ―な楽曲、特徴的なコール&レスポンスでオーディエンスをとことん踊らせる! この日ヤマサキ セイヤ(Vo./G.)は、なんと銀杏BOYZの峯田が昨日ステージで着用していたパンツ姿だった。ライブで楽曲をカバーするほど好きなアーティストから借り受けた衣装で大舞台に立つ…“RUSH BALL”には、夢があふれまくっている。

本日のイベントでは、川谷絵音が同じイベントで別バンドで2度同じステージに立つという珍しい展開。そのうちのひとバンド、indigo la Endが真昼の泉大津に現れた。透明感のある歌声とクリーンなサウンドが合わさり、風に乗って涼やかな音が吹き抜けていく。そんな清々しい音楽が実に心地良い。血肉を沸き立たせるような音楽が多かったここまでの出演者達とはまた異なったやり方で、自身の魅力を知らしめ印象付けた。

オーディエンスのパフォーマンスが今日いちの激しさを見せたのは、きっとWANIMAのステージだろう。まずはKENTA(Vo./Ba.)が「日本でいちばん“RUSH BALL”が好き! WANIMA、始めます!」と高らかに宣言! ポジティブなポップパンクに瞬く間に砂埃が上がり、低音のビートが効いた楽曲で体を揺らし、日本語の歌詞でグッとさせて、愛嬌抜群のMCで会場の心をがっちりキャッチ。人間的魅力が全面に溢れている様子に誰もが友達のような親近感を覚えるから、WANIMAのライブはいつだって暖かい空気が広がるのだ。

軽やかでポップなロックンロールは、どんな時代でも人々の胸を躍らせるもの。go!go!vanillasの音楽は、まさに時代を超えて愛されるようなグッドミュージックが目白押しだ。イントロのリフとメロウなAメロが印象的な「スーパーワーカー」に始まり、シンガロングが気持ちの良い「エマ」、タオル回しで会場の一体感を増した「ヒートアイランド」。開放的な楽曲を通じて、ライブ中はずっと多幸感が次々と伝播していく至極ハッピーな時間が流れていた。

徐々に日も暮れゆく頃、BIGMAMAのシンフォニックな音楽が鳴り響く。バンドサウンドとエレクトロサウンドが融合した「MUTOPIA」がオーディエンスを踊らせる姿を見て、改めて彼らのポテンシャルの高さを再認識。新曲の「Weekend Magic」も、爽やかかつ琴線に触れるメロディの美しさはやはり天下一品だ。一瞬で心を奪われるこのステージを観れば“たった3秒あれば僕達は 未来を変えて行ける”という彼らの歌詞も、素直に信じられる気がする。

そしてお次はMONOEYES。「夏フェスは嫌いだったけど、今はすごく好きになった。お前らの目もきらきらしてるし」と語る細美(Vo./G.)。その喜びを示すように、彼らのロックを思い切り掻き鳴らしていく。また、途中「MONOEYESに入るためにシカゴのマンションを引き払った(細美談)」スコット・マーフィー(Ba.)がボーカルを担当し、ALLiSTERの「Somewhere On Fullerton」を披露するシーンも。ラストは日本語詞が突き刺さる「グラニート」。やはり本当の名曲は、いつどこで何度聴いても名曲である。

着実にキャリアを積みながら成長し続けるSHISHAMO。期待のガールズロックバンドは、どこまでもキャッチーでありながら要所要所でソリッドな音を放つから本当に油断ならない。また演奏と合わせて、ステージ上のスクリーンに可愛らしいエフェクトの散りばめられた映像が流れるなど、今まであまり“RUSH BALL”では見かけなかったような演出も。次時代の精鋭達が、このイベントに新しい風を吹き込んでいることに頼もしさを覚え、更なる進化にワクワクが止まらない。

2日間のフィナーレを飾ったのは、ゲスの極み乙女。だ。「パラレルスペック」「ドレスを脱げ」「私以外私じゃないの」など、もはや全曲知らない人はいないのではないだろうか。それほどの知名度を誇る楽曲達の応酬に、オーディエンスのテンションも天井知らずに上がっていく。また、多くの人々が“RUSH BALL”限定のオリジナルコラボグッズである光るリストバンドを付けており、腕を突き上げる様が非常に美しい。幻想的な景色が広がる中発表された新曲では、ちゃんMARI(Key.)の技巧が冴え渡るピアノソロが印象的。さらにほな・いこか(Dr.)がフロントに躍り出て、川谷と共にツインボーカルで掛け合いを見せるパートもあり、ライブの定番曲になること請け合いだ。「来年もまた出るからな!」という彼らの言葉を胸に刻み、私達は2016年の夏を、最高の思い出と共に締めくくった。

TEXT:森下恭子

 

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