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歌うアホウドリ

繰り返す破壊と再生の先に待つ終わりなき進化。 いつの日か、この空白にも意味が灯るのだろう。

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初の全国流通盤となった1stフルアルバム『無我夢中』を2016年6月にリリースしたばかりの歌うアホウドリが、前作から半年も経たない内に新作EPをドロップする。1/12の自主企画を最後にMitsuyoshi(G.)の脱退が決まった中で、現体制では最後の集大成として作り上げられた今作。敬愛するKIM(UHNELLYS)とMiya-Z(memento森)という先輩2人をゲストに迎え、『Scrap & Build』というタイトルそのままに破壊の先に行われた創造が未来への道筋を照らし出すような名作となった。

 

Satoshi (Vo./G.) & Mitsuyoshi (G.) INTERVIEW
「こんな場所にとどまっている場合じゃない。どんどん先に行きたいんだ」

 

●Mitsuyoshiくんが脱退するというのが、今回のEP『Scrap & Build』を作るキッカケの1つになったそうですが。

Satoshi:Mitsuyoshiが辞めるとなった時期に、ちょうど友だちのバンドが解散して新しいバンドをやり始めたりもして。その友だちと一緒に『シン・ゴジラ』を観に行ったんですよ。映画の中で「この国は結局、“Scrap & Build”で成り立ってきた」みたいなセリフを聴いた時に、“歌うアホウドリも同じだな”と思ったんです。俺たちもこれまでメンバーチェンジを繰り返しながらやってきたわけで、“だったら、ここは最後にMitsuyoshiと一緒に曲を作るのが一番健康的なんじゃないかな”と思ったんですよね。

●最後に作品を一緒に作ってから別れようと。

Satoshi:そうなった時に俺たちが一番お世話になっている人というところで、memento森のMiya-ZさんとUHNELLYSのKIMさんが浮かんで。しかも両バンド共に活動歴が長くて昔とはメンバーの編成が変わっていたりもするので、共感できる部分も大きいだろうなと思ったんですよ。お2人に参加してもらった上で、“Scrap & Build”というテーマでMitsuyoshiと一緒に作る最後の作品ということで、現体制での集大成かなという想いもありましたね。

●どういう曲を作ろうというイメージはあった?

Mitsuyoshi:Satoshiさんと話している中で、これまでに僕のフレーズ先行で作った曲が全部暗いと言われていたのが気になっていて…。最後に明るい曲を作りたいなと思って、色々と考えて作ったのがM-1「Scrap & Build」なんです。

Satoshi:Mitsuyoshiが加入して以降は彼が持ってくるフレーズをメインに使って、そこに俺が意見を加えてビルドアップしていくという作り方が多かったんです。歌詞を書いている俺が暗い人間だと思われがちなんですけど、実はMitsuyoshiが最初に持ってくるものが暗いから歌詞も暗くなるんだというのは、世界に向けて伝えたいところですね(笑)。

●そういう中で、「Scrap & Build」は頑張って明るくしたわけですね(笑)。

Mitsuyoshi:色々と考えて、明るくしました。

Satoshi:今のmemento森は踊れるようなノリの良い曲も多いし、KIMさんも色んな引き出しがある中でダークめなグルーヴに乗せて面白い言葉を歌ったりもしていて。そういう人たちと一緒に、あえてちょっと明るめのトラックで最後はお祭りできたらなっていう。楽しかった想い出もいっぱいあるし、そういう中で物語性も持ちつつ自分ならではの歌詞が書ければ良いなと思っていました。

●物語性を意識していた?

Satoshi:アホウドリという鳥を主人公にして、1本の物語を描きたいなと。“総理大臣”という言葉のダサさにパッと閃いたので、それをアホウドリが目指していくという内容にして。実はバンドマンの話だというふうに見てもらうと、そこでもつながるように書いてあるんです。“飛べばいいのに歩いて各地に”というのはツアーのことだし、“少しずつ広がる支援着実に”というのも全部、前作『無我夢中』を出してからの自分たちのストーリーと重ね合わせているんですよね。

●そういうことだったんですね。

Satoshi:さらに終盤の“どこもかしこも宙ぶらりんのまんま”というのはUHNELLYSの「Doors」という曲のフレーズで、その次の“Nobody else answer your question 脳で施行する前に施工”というのはmemento森の「0.02mm」という曲から引用させて頂いているんです。自分たちの今までの体験を落とし込んだ歌詞なので、“歌うアホウドリというバンドがどういう道を歩いてきて、どうなっていきたいのか”っていうものになっていて。Mitsuyoshiが抜けていっても“その答えというのは誰も与えてくれないから自分たちなりに進むしかない”ということで、最後に“アホの逆襲のはじまりはじまり”と歌っているんですよ。

●ちゃんとした深い意味がある。ゲスト2人のパートはそれぞれが書いているんでしょうか?

Satoshi:そうです。最初は色々お願いしてみようかとも思ったんですけど、あの人たちがバンド活動をしてきた中での“Scrap & Build”が出たほうが面白いだろうなと思って。Miya-Zさんにまず先に入れてもらって、最後のパーツをKIMさんに入れてもらって完成する感じだったんですよ。だから、仕上がりがメチャクチャ楽しみでしたね。

Mitsuyoshi:上がってきたものを聴いた時は「こういうふうになったか!」と思ったし、すごく嬉しかったです。

●最後を“Go Fight!!”でシメるっていう(笑)。

Satoshi:ヤバいですよね(笑)。最後にあれを入れてきたのはすごいなと。一番最後に、未来に向けて“行けっ!”っていう先輩からの後押しをもらったような気がして。さすが、落としどころが素晴らしいと思いました。

●KIMさんのフィーチャリング曲に、前作収録のM-2「The World Is Mine」を選んだ理由とは?

Satoshi:最初は他にも新曲を入れようかと考えていたんですけど、「Scrap & Build」という曲ができた時点でその言葉をコンセプトにしたEPにしようと思ったんです。過去の曲を先輩方の力を借りてブッ壊して、もう一度ビルドしてみようじゃないかっていうことになって。「The World Is Mine」に関しては、自分たちの中で最も完成形が見えない曲というか…。

Mitsuyoshi:本当に意味がわからないくらい、すごい曲なんですよね。明るいのか暗いのかもわからないし、何を伝えたいのかも明確にはわからなくて。

●自分たちでも掴みきれていない曲だった。

Mitsuyoshi:特にラップからサビまでの間にある長いBメロ的な部分については、「何をここに入れたらもっと良くなるんだろう?」とずっと悩んでいたんです。もちろん意図してはいなかったんですけど、今回そこにKIMさんが言葉を入れてくれたことで締まったんですよね。

Satoshi:我々が一番悩ましいと感じていた部分に、スパッと入れて下さって。KIMさんが歌っているパートは原曲にはない部分で、僕の歌詞を読んで“こういうことだろうな”というのを考えて英語で入れてくれたんだと思います。

●M-3「泡沫」は“w/piano ver.”ということですが、これをこの形で入れたのは?

Satoshi:この曲はリリース以降もライブの中でアレンジがどんどん変わっていって、言いたいことも明確になってきつつあったんです。何度かピアノの方に参加してもらってライブをやった中でも、「泡沫」は一番きれいな感じがしたので入れようということになって。あと、この曲ができてから今のスタイルが確立された感覚もあったので、Mitsuyoshiと一緒にやってきた曲の中でも特に思い出深いものなんですよ。

●Miya-ZさんをフィーチャリングしたM-4「ソラノワ」は、フリースタイルで作ったそうですね。

Satoshi:元々はMitsuyoshiがアコースティックギターで弾いたフレーズを元に歌詞を書いていたんですけど、実際に歌ってみたら全く納得がいかなかったのでフリースタイルでやることにしたんです。実はMiya-Zさんの“夕暮れ迫る街角”という歌い出しは、memento森の「day,」という曲と同じなんですよ。Miya-Zさん的にもすごく大事にしている曲だと思うんですけど、「歌うアホウドリとこれまで一緒にやってきた中で今回Mitsuyoshiが抜けることになって、捧げたいと思った」と言ってくれて。

●そのくらいの想いで臨んでくれていた。

Satoshi:僕にとっても自分が掛け値なしに人生で一番感銘を受けたくらいの曲のフレーズがいきなり出てきたので、“どうしよう!?”となりましたけどね(笑)。フリースタイルをその場でエアマイクで録っていたのでやり直しがきかなくて、“この1回を絶対に無駄にできない!”と思って自分なりに必死に考えながらやりましたね。あと、この曲のサビは唯一、Mitsuyoshiが歌っているんですよ。

●Mitsuyoshiくんに歌わせた理由とは?

Satoshi:サビの“I wanna go, I don't wanna stay(俺は行きたいんだ、ここにとどまりたくない)” という歌詞をMitsuyoshiに歌わせるのも酷だなと思ったんですけど、それも1つの決意というか。彼が去るというのもそうだし、我々もMiya-Zさんも“こんな場所にとどまっている場合じゃない。どんどん先に行きたいんだ”という前向きな意味を込められたので本当に聴いて欲しいですね。

●今作を作れて、本当に“Scrap & Build”できた感覚があるのでは?

Mitsuyoshi:本当に“Scrap & Build”できていますね。Satoshiさんの構想どおりに上手く行ったなと思うので、僕としても嬉しいです。今回「泡沫」にピアノを入れたのもそういうことなんですけど、Satoshiさんの頭の中にある世界をギターだけで表現するのが本当に正しいことなのかというのは前から思っていて。そういうところを模索するという面でも今回の収録曲はそれぞれに意味があると思うし、次につながったら良いなと思っています。

●これから辞める人が最後を締めるという…(笑)。

Satoshi:それも良いんじゃないですかね。この2人で取材を受けている時点で、ケンカ別れじゃないというのが伝われば良いなと思います(笑)。

Interview:IMAI

MESSAGE FROM THA GUEST ARTISTS

UHNELLYS KIM

俺はタイに向かう飛行機の中。 普段全く見なくなった映画を見始める。どれも決め手が無いから、隣のインド人が夢中で見ている『シン・ゴジラ』にした。予想通り一切内容が入って来ないまま映画は終わる。でもひと言だけ妙に気にかかる言葉があった。「Scrap & Build」だ。

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memento森 宮地慧(Miya-Z)

最早絶命危惧種と言って良いほど実直な音楽阿呆が、あくまで自分の道を真っすぐ進む為に目の前にある全てをぶち壊して新たに世界を創りあげる。やっぱり人生は痛みが無いと面白く無いよな。

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