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そこに鳴る

過去最高にポップかつ破壊的…。メタルすらも飲み込んで進化を遂げる迷宮ポップワールド

大阪発3ピースバンド・そこに鳴るが、新作『METALIN』を完成させた。ギタータッピングが乱舞する超絶テクニカルな重厚サウンドに、男女の幾重にも重なりあう独特の和メロとハーモニーを見事に融合させた彼らの持ち味は今作でも健在。その上で今回はメタルを消化・吸収することで、唯一無二の個性にさらなる磨きをかけている。サポートドラマーとして参加している真矢も、バンド内に新たな化学反応を引き起こした1つの要因と言えるだろう。メンバーの脱退という苦難を乗り越えたバンドが今鳴り響かせる音は、かつてないほどにヘヴィでメタリック。だが、表現力を増した歌と研ぎ澄まされたメロディは、過去最高レベルでポップな方向に突き抜けているのだ。最もポップでありながら最も破壊的でもある、この音にぜひ触れてみて欲しい。

 

「今までで一番ポップで、一番破壊的ですね。矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、確かにそうなっていると思います」

 

●前作の『YAMINABE』をリリースした後で、ドラムが脱退したんですよね。

藤原:ツアーの直前でした。3日後からツアーだったので、初日はBenthamのタカさん(Dr./Cho.鈴木 敬)に急遽お願いして。その時はタカさんがたまたま神戸にいたので、サポートに入ってもらえることになったんです。

●ツアー初日は神戸だったんですか?

藤原:いや、初日は福岡やったんですけど…。

鈴木:神戸にいるタカさんと合流してスタジオに入って、そのまま車に乗って福岡に向かいました(笑)。

●すさまじいスケジュールですね…。

鈴木:でもタカさんがドラムを叩いたら、そこに鳴るの曲でも踊れるっていうのは面白かったですね(笑)。

藤原:新発見でした。

●ツアーでは他のサポートドラマーにも参加してもらったそうですが、色々と発見があったのでは?

藤原:メチャクチャありましたね。4人のドラマーに参加してもらったんですけど、それぞれに違うタイプの人で。たとえば1タムでシングルペダルの人に叩いてもらった時も、それはそれで良いなと思って。「こういうのも全然アリやな」っていう発見がありました。今サポートで入ってくれている真矢くんは、普通に8ビートを叩くだけでもカッコ良いドラマーなんですよ。ツインペダルでやってもらっても元々の音とは全然違う感じになるんですけど、今のほうがカッコ良いと思える。

●真矢くんとの出会いが大きかった?

鈴木:メチャクチャ大きかったですね。前のドラムとは全然スタイルが違うので、サウンド面での変化もすごくありました。でも何よりも人間的な部分が大きかったというか。

●人間的な部分?

鈴木:真矢くんはサポートメンバーという立場にもかかわらず、“そこに鳴る”というバンドを良くしようと尽力してくれて。前のメンバーも含めての3人だった時は、お互いが微妙に噛み合っていないところがあったんです。お互いがお互いを傷つけ合いながら、そっぽを向いているような部分があって。でも今は真矢くんがすごく素直な感じで接してくれることによって、そこも円滑になったところがありますね。

藤原:バンド内の空気がすごく良くなりました。

●それによって、鈴木くんと藤原さんの関係性にも変化があった?

鈴木:前よりも、仲良くなった感じがします。真矢くんと初めて一緒にスタジオへ入った時に、“なぜこんなに仲が悪いの?”と思ったらしくて(笑)。だから「3人で一緒に飲みに行きましょう」と誘ってくれたりもしたんです。

藤原:今まではスタジオやライブだったり、バンドとして決まった予定以外でメンバーと会うことはなかったんです。メンバー3人で飲みに行ったのは初めてでしたね。

●真矢くんが素直な感じで接してくれることが大きかったんでしょうか?

鈴木:真矢くんがそういう姿勢を見せてくれるから、僕らも“このままじゃアカンな”という気持ちになれたのかなと思います。思ったことをストレートに言ってくれる人なので、自分たちも色々と言いやすい環境になったのかな。“そこに鳴る”を立て直してくれたと言っても良いくらいの人ですね。

●今作『METALIN』がメタル色を増したのも、真矢くんのプレイスタイルが関係している?

鈴木:関係していないことはないと思いますけど、実はメタル的な要素に関しては僕からお願いして、やってもらっていて。

藤原:たぶん真矢くんが元々持っていた要素ではないんです。

●メタル要素が強くなったのは、鈴木くんの意向?

鈴木:そうです。「次は絶対にメタルが流行る」と僕が言い出しました(笑)。それにみんなを付き合わせている感じですね。

●ちなみにメタルブームが来ると思った理由とは…?

鈴木:ちょっと前は転調が多くて構成のややこしい曲が流行っていたんですけど、反動でその次は4つ打ちブームが来て。その次に今はシティポップが来ているということを考えると…、じゃあ次はメタルじゃないですか。

●反動で真逆のものが流行ると考えたら、次はメタルだと(笑)。

鈴木:メタルの持つメロディックさや情緒感には、普遍的なものがあると思うんです。ただ日本でメタルがあまりポピュラーじゃないのは、“歌”という要因があるからだと思っていて。たとえばアニソンでもメタル調の曲があるけど、あれは歌がキャッチーやから自然に受け入れられているところもあるかなと。

●サウンドと歌のバランスが良い。

鈴木:メタル的なオケ自体は、日本人(の嗜好)に沿ったものだと思うんです。でも歌がすごいハイトーンだったりデスボイスだったりして、何を言っているのかわからないからメタルそのものはあまり受け入れられていないだけで。

●あと、独特なファッションもその要因の1つかなと…。

鈴木:だからファッション的なところもとっつきやすくした上で、ちゃんとしたメタルをやってみようというところからでしたね。そういうものは、今まであまりなかったと思うから。

●確かに。

鈴木:現代風にアレンジしたりして、洒落ているメタルはいっぱいあるんです。でも僕らはあえて様式美的なメタルに挑もうと思っていて。“これは絶対にちゃんとやったら、次に来るものになるだろうな”という勘があったんですけど…、今のところ誰からも共感は得られていないですね(笑)。

●みんなの共感を得られると思っていたのに(笑)。

鈴木:M-3「METALIN」の歌詞は、歌謡曲みたいにしたくて。そうすることで誰でも共感しやすいだろうなと思ったので、メロディと歌詞とコード進行をそういう感じにしてみたんです。

●歌謡曲的な要素を取り入れることで、親しみやすい感じにしたわけですね。

鈴木:ニヒルな感じを出しつつ、昭和歌謡的な感じを出したら絶対に日本人のDNAに引っかかるはずだと僕は信じているところがあって。そういうニュアンスとメタルには、親和性があると思うんですよ。実際にこの曲が成功しているかどうかは、まだわからないんですけど…。

●今回は、今までよりも藤原さんが歌うパートが増えていますよね?

藤原:“そういえばそうやな…”っていう感じです。

●意図的に女性ボーカルの部分を増やしたわけではない?

鈴木:“増やしてやろう”という気持ちはなかったですね。昔は僕自身の声も嫌いやったし、藤原の声も嫌いやったんです。でも最近は“良いな”と思えるようになってきたことで、(藤原の声を曲の中に)入れやすくなったというのはあるかもしれないですね。

●以前は自分の声も嫌いだったんですね。

鈴木:自分の声のほうが嫌いでしたね。自分が歌っている音源を聴いて、“黙れ!”と思っていました(笑)。

●ハハハ(笑)。そこから気持ちが変化したのは?

藤原:歌い方が変わったんじゃないかな。

鈴木:自分の声がめっちゃ嫌いやから自信がなくて、それゆえに探り探りの歌い方になってしまっていたんですよ。でも今回は、自分の好きな歌い方に寄せたというか。そっちのほうが曲にもハマるんじゃないかと思ったんです。

●自分の好きな歌い方とは?

鈴木:たとえばM-7「sayonara blue」のサビは、めっちゃ下で響かせるように歌っているんです。あと、M-6「星の行方」の歌もよく録れているなと思っていて、ようやくちょっとだけ進めたかなという感じがします。

●歌に関して、進化を感じている。

鈴木:まだまだ残念な部類ではあるとは思うんですけど、1つ突破口は見つけられたのかなという想いはありますね。

藤原:私もその時にできる最善は尽くしたつもりなんですけど、もっとできると思うのでこれからに期待しています。

●藤原さんの歌い方にも変化があった?

鈴木:“色々と意識しているんやな”とは感じますけど、“もうちょっとこうして欲しいな”と思う部分もありますね。僕は言葉足らずなので、説明するのが難しくて。藤原の声自体はきれいだと思うので、声の音作りみたいな部分でもう1つステップアップすれば、僕よりも全然良いボーカルになるだろうなと思っているんです。

●伸びしろを感じているわけですね。

鈴木:伸びしろですね!!

藤原:でも自分では、まだどうしたら良いのかわからないんです。『YAMINABE』のレコーディング前くらいから、ヴォイストレーニングにも通っていて。そこで教えてもらったことを理解はできるんですけど、応用ができないんですよ。“こういう歌い方を自分たちの曲に合わせて使えたらしっくりくるのにな…”という部分で、まだ探り探りやっているところはありますね。

●まだ試行錯誤中だと。

鈴木:僕は大学で“日本語学概論”っていう講義に出ていたんですけど、その時に使っていた本がすごく良いので藤原にも貸したんですよ。そこには舌がどの位置にあったらどういう音が出て…といったことが詳細に書かれていて、その本を読んだら子音の発音が頭で理解できるんです。舌の位置と動き方によって、どういう子音が出るかというのを理解して欲しくて。

●自分でもそういうことを意識しながら歌っている?

鈴木:今回のレコーディングから特に意識するようになったんです。『YAMINABE』の歌を聴き返したら、リズムは悪いわ滑舌は悪いわでもう自分に“死ね!”と思って(笑)。そこから、どうしたら良いのか考えるようになりましたね。自分のリズムが悪いというのも、真矢くんと一緒にやるようになってからわかったことで。

●というのは?

鈴木:真矢くんは完璧めな音符の位置で1つ1つ良い音を鳴らすタイプのドラマーなので、一緒にやっていく中で“あれ? 俺の歌って、めっちゃ速いやん”というのを自覚して。その上で『YAMINABE』を聴き返してみたら、歌もめっちゃ速いし、滑舌も良くないなと…。

●正確な位置で鳴らされるドラムと一緒にやることで、自分の欠点に気が付いた。

鈴木:そこからどうやって滑舌を良くしていこうかというのも色々と考えて、大学時代の本を読み返したりしたんです。他にも滑舌がカッコ良いなと思ったアーティストの歌い方を真似してみたり、色々と滑舌の研究をした上で今回のレコーディングには臨みましたね。

●その成果が今作の歌には出ている。

鈴木:高校時代に楽器を始めた当初は、誰かの曲を聴いている時もギターにばかり耳が行っていたんです。でも最近は、ボーカルにも耳が行くようになって。そうなると、ボーカルの粗がわかるようになってきて。だから『YAMINABE』での自分の粗もわかるようになったし、そういう意味で今回の歌は今までの自分の音源と比べてあんまり粗が見えにくいかなと思います。

●元々はあまり歌を意識的に聴いていなかったんですね。

鈴木:楽器をやっていない人やTVの歌番組くらいでしか音楽を聴かないような人って、歌を中心に聴くものじゃないですか。でも逆にそういう人たちのほうが、歌に対する耳は良いと思うんですよ。今回はそういう人たちにも、ちゃんと聴いてもらいやすい歌になったかなと思います。

●実際、今回のアルバムは普段バンド系の音楽を聴かない人にも届くものになっている気がします。

鈴木:ニュアンス的には、“オカンにもメタルの良さに気付いて欲しい”っていうアルバムなんです。

●自分の親でも聴ける音楽というか(笑)。

鈴木:オカンに衝撃を与えたいんです。あくまでもニュアンスとしてなので、実際にウチのオカンに衝撃を与えたいわけではないんですけど(笑)。

藤原:普段はメタルを聴かない人に対しても、そこへの入り口になれば良いなと思います。

●今作全体では前半の4曲がメタルを意識して作った感じでしょうか?

鈴木:いや、メタルのモードで作ったのはM-3「METALIN」とM-4「family」だけですね。

●M-1「Break out!!!」は、メタルを意識したわけではない?

鈴木:「Break out!!!」は「METALIN」よりも前からあって。ラウドロック寄りの曲を作りたいなと思っていたんです。そういうコンセプトで作ったから、ちょっとメタルにも近いのかもしれないですね。

●純粋にメタルを意識して作ったのは「METALIN」と「family」だけだと。

鈴木:先に「METALIN」があって、「family」は後から作ったんです。最初は5曲入りの音源を作るつもりだったんですよ。そこから2曲増やすとなった時に、メタルをやると言っているわりにはそういう曲が「METALIN」しかないなと気付いて。だったら「METALIN」よりもっとメタル要素が強くて、グラインドコアやデスコアくらいまで行っている曲にしようと思って作ったのが「family」で。「sayonara blue」は、その反動みたいな感じですね。

藤原:その2曲が最後にできたんです。

●真逆の印象の2曲ですよね…。

鈴木:そうですね。まるで同じバンドじゃないような(笑)。

●「family」にはサイレンの音や銃声から馬の足音まで、色んな音が入っていますが。

藤原:最初は悪フザけでサイレンの音を入れたんですけど、実はそこでも色々と試行錯誤していて。“サイレンが入る場所が早すぎるんじゃないか?”とか“もう一発、銃撃の音を入れたほうが良いんじゃないか?”みたいな、そういう細かいこだわりが詰まっています。

鈴木:一応、ストーリーがあるんですよ。

●ストーリー?

鈴木:歌詞カードには載せていないんですけど、実はAメロのシャウト部分ではKOGA RECORDS所属のバンド名を叫んでいて。KEYTALKやBentham、SpecialThanksから向井秀徳さんまで、色んな名前を叫んでいるんです。そういうところも含めて“ライオンさんもチーターさんもうさぎさんもみんなファミリーだよ”っていう歌なんです。

●実はそういう想いが込められていたんですね…。ちょうど後半の歌モノ系へとつなぐ、インタリュード的な曲にもなっているのかなと。

鈴木:そうですね。「family」が終わった後にM-5「藍色の明日へ」が始まる瞬間がめっちゃ面白いと思うんですよ。いきなりシリアスな感じの曲に変わるっていう。

藤原:わかっていても笑ってしまいますね(笑)。

●そういう遊び心も含めて、満足できる作品になったのでは?

鈴木:今までで一番良いものができたなと思います。だから、“次はどうしよう?”っていう感じですね。“まだまだ行けるぜ!”っていう感じではなくて、“これ以上のものを作るにはどうしようか?”っていう。

●次にやりたいことはまだ見えていない?

鈴木:そうですね。どうしよう…?

●時代の流れを振り返ってみれば、メタルの次にはオルタナが来たわけですが…。

鈴木:すごい! 今朝ちょうど東京に向かって車を運転している時にNUMBER GIRLを聴いていて“やっぱりオルタナやな”と思っていたところなんですよ(笑)。

●では次作はオルタナということで(笑)。

鈴木:『METALIN』の次は『ALTERNALIN』で(笑)。

●ハハハ(笑)。今作はメタルの要素も増しつつ、今までで一番ポップに突き抜けた感じもして。それが最高傑作たる所以かなと。

鈴木:今までで一番ポップで、一番破壊的ですね。矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、確かにそうなっていると思います。

Interview:IMAI

 

 

 

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