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ダイナマイト☆ナオキ

永遠に未完成なロックスターから、全ての社会不適合者に捧げる問題作

東京を中心としたライブハウスシーンでじわじわと中毒患者を増やし続けているダイナマイト☆ナオキが、問題作満載の新作を完成させた。働く者たちの本音を歌った表題曲「仕事行きたくない」に始まり、事故車すらも買い取ってしまうと勝手に宣言する車買い取りCMソング「ズバブーン」、エドヴァルド・グリーグの代表的名曲に中年男の哀愁に満ちた歌詞を乗せて大胆にアレンジした「山の魔王の宮殿にて」など、笑って泣ける楽曲が勢揃い。ユーモアとペーソス溢れる歌詞と無駄に超絶テクニックなギター、そして意外とポップでキャッチーなメロディに触れれば、あなたもきっと虜になるはずだ。そう、誰もがある意味、社会不適合者なのかもしれない…。

 

「“どんな音楽を作ることができれば、俺はこの温泉でくつろげるようになるのかな?”ということを真面目に考えているんですよ」

●『仕事行きたくない』というタイトルからはダメ人間感が漂ってきますが、ナオキさん自身もそういう社会不適合者的な要素が強いんですか…?

ナオキ:自分では社会に適合しているつもりなんですけど、よく不適合者だと言われちゃうんですよね…。それで仕事もロクにしていない自分が温泉に浸かっていると、何だか申し訳ない気分になってストレスを感じるんです。

●ストレスを感じるというのは?

ナオキ:たとえば周りにいるおじいちゃんとかは、日本のために一生懸命に役立ってきた人が自らの苦労をねぎらいに温泉に来ているわけじゃないですか。そういうのを見ると、大した苦労もせずに音楽をチャラチャラやっている俺がいる場所じゃないなと思えてきて。心の中で“お前も頑張っているじゃん”と言ってくれる自分もいれば、“お前は温泉なんか行くんじゃねぇよ”と言ってくる自分もいて…その葛藤が歌になりました。

●タイトル曲のM-1「仕事行きたくない」は、そういう心の葛藤が表れているんですね。あと、単純に温泉好きなのも伝わってきます(笑)。

ナオキ:大好きです。行く前はソワソワするくらい楽しみなんですけど、いざ行ってみると落ち着かないですね。24時間入れるお風呂とかで夜中に露天風呂に自分しかいない時は、本当に反省の場でしかないというか…。

●普通は解放感を覚えるシチュエーションだと思いますが…。

ナオキ:もう縮こまっていますね。小学生の時に、忘れ物をして正座させられちゃっているような感覚に近いです。“何かすいません。明日から頑張ります…”という気持ちになるというか。自分にとって温泉は、滝に打たれに行くような特殊な場所ですね。

●温泉に対して、そんな向き合い方をしている人に初めて出会いました(笑)。そこで反省して、“明日から仕事を頑張ろう”ということにはならない?

ナオキ:ならないですね。“それならなぜ温泉に行くんだろう?”と自分でも思いますけど、ちょっとしたらすぐ忘れちゃってまた繰り返しているだけなのかもしれない。やっぱり温泉はトキメキますね。大好きです。

●温泉に入っている時に、音楽的なインスピレーションが降りてくることもある?

ナオキ:作品作りのことは常に考えていますね。“どんな音楽を作ることができれば、俺はこの温泉でくつろげるようになるのかな?”ということを真面目に考えているんですよ。“この温泉に浸かるのにふさわしい人間に俺はいつなれるのだろうか?”とか、旅館ですごく美味しい料理を食べた時に“この料理に対して俺の音楽はそのレベルに達しているのか?”といったことを考えています。

●温泉や料理と自分の音楽を比較して、自問自答していると。

ナオキ:美味しいものを食べたり、大自然のすごい風景を見たりすると、“俺の自己表現はこの自然には到底かなわねぇ!”と思うんですよね。そういう何か感動するものに触れた時に“自分は匹敵できているのだろうか?”ということを常々考えてしまうので、温泉に入っている時も“俺はこの湯に浸かる資格はあるのか?”とか考えて、心が休まらないのかもしれないです。

●基本的にネガティブなんでしょうか?

ナオキ:ネガティブというか、“マイナス”の人が頑張っている姿を見るのが好きなんですよ。“プラス”の人が順風満帆な人生を送っているのを見るよりも、マイナスな境遇の人がもがきながら上がっていく姿のほうが好きだから。「仕事行きたくない」はまさにブルースサウンドですけど、根底にあるのはブルースが好きということなんです。

●ルーツにはブルースがある。

ナオキ:奴隷としてアメリカに連れて来られた黒人たちが農場で働かされて、差別が酷かった時代に夜な夜な酒場で歌ったりしていたわけじゃないですか。酒場で酔っ払って落としたビンの口が割れたのを拾って指にはめて弾いたのがスライドギターの始まりだと言われるように、迫害されている立場でも黒人たちがハッピーな音楽を作って歌っている感じが好きで。脳天気なハッピーじゃなくて、何かを抱えている人がハッピーになろうとしている姿が好きなんです。

●困難な状況にも腐らず、前向きに生きようとする姿に惹かれるんですね。

ナオキ:細かい話を言えば、実は「仕事行きたくない」はBlind Boy Fullerっていう黒人ブルースマンをオマージュした曲なんですよ。名前に“Blind”とついているように目が見えないんですけど、肌の色が違うだけでも迫害されて生きていくのが大変なのに、なおかつ目が見えないってものすごいハンデだったと思うんです。でもそういう人が作る音楽って、目が見えている人以上にハッピーなものが多くて。そういうところに、自分はグッときますね。

●そこはナオキさん自身が表現する上で、核になっている部分なのかなと。

ナオキ:特にそういうブラインド系の音楽は、よく聴きますね。「仕事行きたくない」ではラグタイムのようなブルースサウンドで、いかに自分がハッピーに気持ち良くなれる曲を作れるのかというチャレンジをしました。

●そういう感じで音楽的背景がちゃんとしているので、曲だけ聴くとすごくカッコ良いんですよね。ちょっと失礼な言い方かもしれないですが…(笑)。

ナオキ:いや、それは褒め言葉です。嬉しいですよ。

●カッコ良い曲の上に、ちょっと情けなくて面白い歌が乗っているのが良いバランスなのかなと思います。

ナオキ:「ギターがしっかりしているから、歌とのバランスが良い」みたいなことをよく言ってもらいますね。「無駄にギターが上手い」とか「ギターがすごいのにもったいない」とか、酷いものになると「インストで聴きたい」と言われたりもします(笑)。でも自分では、ギターが上手いとは思えないんですよ。好きなので自分なりのこだわった向き合い方はしているつもりではいて、その上に未完成な歌が乗っかっているんです。

●歌は未完成という自覚がある?

ナオキ:自分は37歳になるまで、人前で歌ったことはなかったんですよ。

●えっ、そうなんですか?

ナオキ:バンドはやっていましたが、ずっとギタリストでした。それまではずっと音痴なことが、すごいコンプレックスだったんです。だから歌の上手い下手に耳が奪われないように、歌詞で攻めているところはありますね。

●確かに歌詞はすごく耳に残ります。

ナオキ:ギターのすごいフレーズを1小節入れるよりも、ものすごい歌詞を入れられちゃうと耳が奪われるじゃないですか。歌詞って、すごい力を持っているんだなと思うんですよ。ギターがあってこそのグルーヴだし、グルーヴがあってこその言葉なんですけど、やっぱり言葉には威力がありますね。

●M-4「山の魔王の宮殿にて」は歌詞が掲載されていませんが、それでもストーリーが頭にスッと入ってくるのは言葉の力かなと。

ナオキ:歌詞にこだわるとか言っておきながら、この曲に関しては作り込んだわけじゃないんですよ。何かのタイミングでスタジオに入って、ひとしきり汗をかいてノリノリになっていた時になぜかあんなことを歌い始めちゃったんです。変なアドレナリンが出ていたんでしょうね。マイクチェックみたいなテイクだったので、歌詞もあまり決まっていない状態で…。

●ほぼフリースタイルだったんですね。

ナオキ:“ヘイ!”とかなぜ言っているのか、自分でもよくわかっていないんです。そこから改めてちゃんとした歌詞を書こうとなった時に、面白いものが出てこなくて。結局、最初のマイクチェックのテイクが楽しかったので、それをそのまま収録しちゃったんですよ。

●ある意味、未完成のままで録ったからこそリアルな臨場感が生まれて、良い方向に左右したのでは?

ナオキ:そう言ってもらえると嬉しいし、ずっとそういう聴き方をしてもらえる作品を作りたかったんです。自分に限らず、未完成の魅力を持っているアーティストって絶対にいると思うんですよ。でもアーティスト自身が“自分は未完成だから楽しいんだ”と気づいちゃうとつまらなくなるし、その未完成さがあざとくなってしまう。だから本人が一生懸命やっているのに、完成できていないというのが良いのかもしれないですね。

●それで言うと、M-5「50%完成したブルース」も未完成ということでしょうか?

ナオキ:自分1人でやっていると、どこまで完成させたら良いのかわからなくなるんですよ。バンドだったら他のメンバーに相談したりできるけど、1人だと相談相手がお客さんしかいないじゃないですか。だから途中まで作って「未完成の曲を発表するぜ。みんなが楽しんでくれたら完成させてくるからな」っていうことをライブでよくやっているんです。この曲は、それをそのまま入れてみました。“最後のオチはお前らで考えてくれよ”みたいな感じですね。

●ここで作品として発表した後に、ライブでやっていく中で完成する?

ナオキ:いや、未完成という1つの作品になっちゃいました。永遠に完成しないです。

●永遠に完成しないんだ(笑)。でもそれは曲だけじゃなく、自分自身についても言えることですよね?

ナオキ:ライブのMCでは、“みんなで育てようロックスター”を1つのキーワードにしていて。“育成型ロックスター”というところを目指しています。

●みんなで育てるんですね(笑)。ステージに立つ時は、ロックスターやヒーローになっている感覚もあるのでは?

ナオキ:元々は情けなかったりするし、わかりやすくカッコ良いヤツじゃないから、“ステージに出ている短い間だけは俺はヒーローだ!”という気持ちで生まれ変わっているつもりではありますね。

●ライブではある意味、変身している。

ナオキ:別に不良ではなかったんですけど、中学時代はケンカっ早い時期があって。ムカつくことがあると、すぐケンカしていたんですよ。でも中学の後半でギターを買って、高校でライブをやり始めてからはケンカをしないようにしていたんです。ムカついたら呪文のように“俺にはライブがある…俺にはライブがある…”と心の中で唱えていたんですけど、今でも悔しいことがあるとそうしていますね。“ライブに全部込めるぞ。変身だ!”みたいな感覚はあります。

●ライブや音楽に救われている部分があるんでしょうね。

ナオキ:救われています。情けないことやだらしないことを色々とやってきたので、“音楽をやって人生がメチャクチャになっちゃったな…“とある時までは思っていたんですよ。でも高校を卒業して親元を離れて自分で自由に選択できるようになったら、どこまでも堕落できるということに気付いて。その時に自分の中で“これ以上堕落したらギターが弾けなくなるぞ。音楽をやれなくなるぞ”という基準が生まれたんです。それが自分を食い止めるギリギリのラインになったので、やっぱり音楽に救われていますね。

●「仕事行きたくない」では“一生働かない……”と歌っているけれども、完全に堕落しきってはいない。

ナオキ:だから申し訳程度にですけど、最後の1行で“でも働かないと水道止められて 温泉どころかお家のお風呂も 入れなくなるぜー”というのを入れて、ギリギリ保っているんでしょうね。

●本当にダメな人なら“仕事行きたくない 月曜休む 火曜日辞める 一生働かない……”で終わると思うんですよ。でもナオキさんの歌にはちゃんとその先がある。

ナオキ:そこは迷いましたけどね。曲としては“一生働かない……”のところでドッチャンドッチャンと盛り上げて、お祭りっぽく終わるのも良いかなと考えていたんですけど…今の話を聞いて、“入れておいて良かったな”と思いました(笑)。

Interview:IMAI
Assistant:室井健吾

 

 
 
 
 

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