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un-not

都市に息づくファンタジーを鮮やかに描き出す、 有機的なる“シティポップ×ポストロック”の新境地

東京都在住のシンガーソングライター・聖絵(まさえ)のバンドプロジェクトとして2011年に活動を開始したun-notが、初の全国流通盤となる1stフルアルバム『MUSIC ALLEY』をリリース。何度か編成を変え、2016年に到達した現在の4人編成で、今作ではライブ感を強く打ち出すために一発録り主体のレコーディングを敢行したという。一青窈などへの楽曲提供でも知られる森安信夫との共同プロデュースで完成させた全11曲は、大人の色気とファンタジーが融合し、“シティポップ×ポストロック”の新境地とも言える作品となった。

 

「今回でやっと自分から“un-not”という概念が離れてくれた気がするんです。やっと打ち上がったというか。大きな手がかりをつかんだ感じがしています」

●un-notは聖絵さんのバンドプロジェクトということですが、最初からそういうスタイルで活動していたんでしょうか?

聖絵:曲を作ろうと思った最初のキッカケは、2011年にたまたま赤坂BLITZでイベントに出してもらえる機会があったので、身近にいた好きなプレイヤーを誘って4人でやったのが始まりだったんです。そしたら自分の中で欲が出て、“レコーディングしたいな”と思うようになって。今後どういうふうに活動していきたいかを考えた時に、好きなプレイヤーと一緒に作りたいなと思う一方で、作曲とか活動方針の主導権は握っておきたいなというところがあって、それで“シンガーソングライター・聖絵のバンドプロジェクト”という形にしました。

●それまでも音楽はやっていたんですか?

聖絵:ピアノや簡単な打ち込みはやっていました。最初はマッキントッシュにmidiキーボードみたいな環境でやっていたんですけど、そのライブの時にギターを始めたんです。それからは“1人でアコギを持ってステージをこなせる力をつけたいな”と思って、ソロでも弾き語りをやるようになりました。“よし、この新曲で行こう!”と思えるまで1人で土台を作ってから、ライブをやったりレコーディングしたりする形になっていきましたね。

●過去に自主でEPを2枚出されているんですよね?

聖絵:そうです。最初の赤坂BLITZに出た時のサポートメンバーと録ったのが、1st EP『時速30分』で。その頃は私のアコギがまだ頼りなくて、エレキギターにも参加してもらっていたので、今よりもっとロックなアレンジでした。

●2nd EP『MINSTREL SONG』から今のサウンドに近づいてきた?

聖絵:単純に私がギターに慣れてきたので、2ndの頃にはアコギ主導で曲を書けるようになって。当時Jose Gonzalezさんに惚れ込んでいて、アコギ主体でありながら、抱擁感のあるサウンドがその周りを支えているような音楽をやりたいなと思っていたんです。

●自分の頭の中にある、やりたい音楽のイメージを徐々に具現化できるようになっていったんでしょうか?

聖絵:頭の中にある、やりたい音楽はその時々によって変わっているんですけど、音で出てくるというより、映像や色とかシチュエーションが先に浮かんでくるので、それを“今のこの人たち、この楽器編成なら、どう表現するんだろう?”という感じで形を作っていきますね。

●その時いるサポートメンバーの編成によっても変わってくると。現在の編成は2016年に固まったそうですが、この4人になったことも大きかった?

聖絵:今回の『MUSIC ALLEY』に関しては、この4人になったことが非常に大きいですね。サポートではあるけど、松野裕太(Dr./Per.)さんがグルーヴをコントロールして、船本泰斗(Key./Syn.)さんがコードをリードして、片山郁(Ba.)さんが全体をバランシングしていて…という感じで住み分けが見えてきて、曲作りの段階でそれぞれ変に遠慮し合うことなく積極的に提案をもらえるようになりました。

●役割分担が固まったのが大きかったんですね。

聖絵:以前は“上モノのコードは誰が決定打を出す”とか“ノリをどっちに合わせる”というところで譲り合いになっていて。今の編成になってから“これでいきましょう!”みたいな感じがバンドで出せるようになって、メンバーとの同時録りも挑めるようになったんです。

●今回は一発録り主体のレコーディングをされたそうですが。

聖絵:これまでの2枚のEPは、各パートをバラバラに録ったものを重ねていって、最後に歌を録っていたんですけど、それだとジェンガ状態になるんですよ。良くも悪くもクリックライクになっちゃって、グルーヴが浮かんでこないんです。NOKKOさんのサポートとかをやっていらした、ベーシストの山内薫さんに過去の音源を聴いて頂いた時に、「せっかくアナログでやれる人がいて、アナログで録れる状況があるなら、同時に録れば?」というお言葉を頂いたことがあって。それが印象に残っていたので、“せっかく生身の人間なんだし、次にアルバムを出す時はアナログ感を出したいな”と思っていたんです。そういう時に森安信夫さんという“ザ・アナログ”みたいなプロデューサーさんに出会ったんですよね。

●森安さんとの出会いのキッカケとは?

聖絵:その前に加瀬玲子さんというボイストレーナーの先生に出会って。2年くらいかけて“表現するとは何なのか?”みたいなところから、歌について叩き込まれたんです。その関係で参加した呑み会で、森安さんと出会ったんですよね。その日は朝まで、スタジオで音楽を流しながら飲んでいたんですけど、その流れでun-notの曲も聴いて頂いた時に「もっとこういうふうにしたほうが良い」というアドバイスを頂いたんですよ。

●呑み会で出会ったと。

聖絵:最初は全く喋らなかったので“この人は何者なんだろう?”と思っていました。「同時録りでやってみたいです」と言ったら、“そのために何をしなくちゃいけないのか”というところをまず叩き込まれて。最初に東京で一度、ぎこちないながらも同時録りしてみたのがM-1「アポロと冒険」なんです。自分たちの中でも良い曲だという手ごたえがあったし、MV監督も「これで撮ろう」と言ってくれたのでまずMVを撮りました。

●今作の1曲目にもなっていますよね。

聖絵:この段階ではまだ、別の人にアコギのサポートをお願いしていたんです。それで“次はどうしよう?”となった時に森安さんから、「山中湖のスタジオで録りましょう」という提案と、「聖絵のアコギのグルーヴを、曲の中心に置いてフルに活かそう」という提案を同時に頂いて、そこからアコギも全部私になりました。それから何度か試行錯誤を繰り返しながら作曲して、レコーディングを重ねていって、最後にできたのがM-2「Music Alley」だったんです。

●それがアルバムタイトルにもつながった。

聖絵:そうですね。今思うと、同時録りをするのには最高のメンバーに恵まれました。この最後の曲を録った時に、この4人だからこそ、できた気がしました。

●それはグルーヴが合うということ?

聖絵:人間的にも音楽的にも、ある種のツボはそろっているけど、よく聴いたら全然違う。それが同時に鳴ると、全体がまとまる。共通項も多いけど、趣味もバラバラの4人で、お互いの持っているグルーヴを出しているのに、それぞれが合わせているように聴こえる。そういえば私と森安さんは、歩き方で意気投合したんです。

●歩き方?

聖絵:歩き方ってその人の潜在的なグルーヴが出るそうで、私はどうやら“引っ張りながら歩く”人みたいなんですよ。森安さんもそうやって歩く人らしくて、最初に「歩き方が良いね」と言われた時は“何のこっちゃ?”と思ったんですけど、結果的にキッカケはそこだったんです。クリックに合わせるんじゃなくて「聖絵が持っている歩き方のグルーヴが歌やアコギにも出ているから、そのグルーヴを録ろう」と言って頂いて。

●だから、有機的なグルーヴが出ているんでしょうね。

聖絵:自分の気持ち良いグルーヴも出しやすくなったし、でもみんなの音も無理なく重なって、全体のノリが完成するようになりました。その結果、すごく聴きやすく、歌いやすくなった。“良い音楽”に欠かせないのって、何度も聴ける、身体的に無理のない音だと思っていて、そういう意味でかなり良いアプローチができました。今回はグルーヴも音色も、アナログ感のある有機的な丸い音を作ろうと思っていたんです。

●そのせいか今作のサウンドは都会的だけど、無機質な感じではないというか。有機的なシティポップという感じがします。

聖絵:それ、良いですね! 見出しに使って下さい(笑)。

●ハハハ(笑)。他にも楽曲からは、色んなジャンルの音楽性が感じられて。M-5「夜にシエスタ」なんかはダブっぽいですよね。

聖絵:ダブは好きです。ただ全曲ダブだと私が飽きてしまうので、今回はその1曲で我慢しました。やっぱり今回のリード曲は「アポロと冒険」で、タイトルチューンは「Music Alley」なので、この2曲はこれからも主軸として残したいと思っていて。他の曲(のジャンル)に関しては要素として自然と残っていくものなんだろうなと思って作ったので、今作のキャッチフレーズとしては“シティポップ×ポストロック”というところに絞ったんです。

●その2曲の要素が今後の主軸になっていく?

聖絵:そうですね。周りからも言われるし、自分たちも納得して“これが真ん中にきても良いんじゃない?”と思えたのが、この2曲なんです。ライブではノリやすいので、M-3「エポナ」が人気ですけどね。

●M-6「really for me」も、ライブで大好評だそうですが。

聖絵:それは落語をするからですね。今作を出すまでの2年間で、落語にハマって。

●この曲についてTwitterで“アリスの映画と落語を同じ日に観て”書いた曲だとつぶやいていましたよね。

聖絵:“アリスの映画”は『アリス・イン・ワンダーランド』のことですね。落語とアリスの共通点って、どちらもポンって異世界に落ちるところだと思っているんです。落語は日常の街を抜けて寄席に入って、良い声のお兄ちゃんが語り始めた瞬間に“えっ? ここどこだったっけ?”みたいになる異世界感があって。アリスも、扉を開けたらいきなりワンダーランドが広がっているっていう。

●曲の途中で落語が急に始まるパートは、ある意味でワンダーランドだと。

聖絵:そう。ここで落としたかったんです。“あれ? 今どんな曲やってたっけ?”となる感じを出したかったというのはあります。「really for me」は、“えっ、マジ?”みたいな意味なんですよ。

●ちなみに、落語の部分は実際にある噺なんですか?

聖絵:実際にあります。『猫の皿』という定番の落語なんですけど、本来の噺とは逆の目線で喋っていて。旦那が主人公で猫を買いにくる噺を逆にして、猫を売るお店の人の目線になってみたんです。“un-not”という名前の由来が、そもそも対比思考というか。人間の思考って、常に逆バリを含んでいる気がするんですよね。たとえば「あの曲良かったね」と言われたら、“じゃあ良くない曲もあるんだろうな”と思ったりするわけで。

●言われたことと逆のことを考えてしまう。

聖絵:言葉ってそういうところがあると思うので、曲を書く時にあえてひっくり返して書くことがあるんですよね。その一貫として、落語もひっくり返してみました。「Music Alley」のCメロの“会話なんていらない”というのも、普通は逆だと思うんですよ。好きな人とは喋りたい、でも“そうじゃない時もあるんじゃないの?”というところであえて逆にしてみた感じです。

●対比思考は、un-notのテーマにもなっている?

聖絵:何につけても、絶対にどちらかだけというのはないと思っていて。短所も長所になるし、シチュエーションにも人にもよるわけだから。そういうところを柔軟に切り替えて考えられられるような意味を内包したいなと思ってつけたバンド名が、今も残っています。

●最初につけた名前をちゃんと体現していると。

聖絵:はい。今回関わって頂いた共同プロデューサーやサポートメンバー、MV監督やイラストレーターといった色んな人たちが“un-notって何だろう?”と考えてくれたんですよ。それで最後にデザイナーの方に音源を聴いて頂いて「対比的な世界観を出したい」と伝えたら、点対称のきれいなロゴを作って下さって。

●バンド名の“u”と“n”の文字は点対称になっていますが、最初から意識してつけたわけではない?

聖絵:まさか! ロゴを見て“そんなにきれいになっていたんだ”と気づきました。文字に意味が入っていたんですよね。そうやって誰かに解釈してもらったのを受けて、“un-notって何だろう?”というのが浮き彫りになってきて。MVやロゴを作ってもらったり、リフやビートを出してもらったりすることもそうなんですけど、今回でやっと自分から“un-not”という概念が離れてくれた気がするんです。

●1つの独立したものになった?

聖絵:やっと打ち上がったというか。大きな手がかりをつかんだ感じがしています。それを踏まえて、“この次のアルバムはどうしようかな?”と今は悩みまくっています。

Interview:IMAI
Assistant:室井健吾

 

 
 
 
 

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