音楽メディア・フリーマガジン

波多野裕文 × Predawn

似て非なる2つの世界に酔いしれた至福のひと時

JUNGLE LIFE × CLUB251 presents “Melody Laughter”
2017/5/28@下北沢CLUB251

出演:波多野裕文(People In The Box) / Predawn

2017年5月28日、JUNGLE☆LIFEと下北沢CLUB251による共催イベント“Melody Laughter”の第2回が開催された。今回の出演者は波多野裕文(People In The Box)と、G./Vo.清水美和子のソロプロジェクト・Predawn。どちらもアコースティックギターの弾き語りというシンプルな演奏スタイルで、互いに異なる世界観を魅せた至福の2マンライブをレポートする。

■Predawn

「風邪をこじらせて声が変になってしまった」とはにかみつつ、アコギを爪弾き始めたのはPredawn。繊細で優しい歌声と清涼感のあるアルペジオで、まずはCLUB251に初夏の風を送り込んだ。彼女がひとたび声を発すると、オーディエンスは魔法にかかったかのように“Predawnワールド”へと吸い込まれていく。一度その世界に誘われたら最後、独特のユルい空気が漂うMCも含めて、誰もが彼女の虜になってしまうのだ。


「数少ない日本語の歌を1曲」と言って披露した「霞草」では、英詞メインの彼女が歌う日本語の新鮮な響きに聴き惚れるばかり。中盤にはBright Eyesの「Lua」とThe La'sの「Timeless Melody」のカバーを演奏し、その豊潤な音楽的ルーツを垣間見せる。スッと耳に馴染んでいくアレンジは、オリジナルの楽曲を知らない人の心も解きほぐしたに違いない。最後は「Sheep & Tear」で柔らかな音を紡ぎ出し、フロアを陽だまりのような温かさで包み込んだPredawn。彼女がステージを後にしてからも、まだその世界にしばらく浸っていたくなる心地良い時間だった。

 

■波多野裕文

盛大な拍手で迎え入れられたのは、波多野裕文。「青空を許す」から、透明感のある歌声とアコギのアルペジオで紡がれる温かい音色が会場の隅々まで行き渡っていく。一見淡々と歌っているように見えても、“バイバイ資本主義の憂鬱”などドキッとする歌詞が所々に散りばめられていて、一瞬たりとも聴き逃せない。初のソロアルバム『僕が毎日を過ごした場所』収録曲を中心に披露されたこの日のステージの中でも、とくに洗練された演奏と歌声が響いた「雨の降る庭」は、一音一音が身体に染みこんでいくようだった。


まだまだ彼は、アコギ1本で様々な色を見せてくれる。「今日は調子が良い」とつぶやいてから披露したKate Bushの「This Woman's Work」のカバーでは、まずギター奏法のスキルの高さに驚かされた。歌からは愛やリスペクトを感じさせながらも、原曲とはまた違う姿を描き出して場内を魅了。「白い荒野」では明るくメロディアスな曲を軽快に演奏したかと思えば、ラストの未発表曲では“バーカバーカ”と歌って締めるところに、一種の狂気すらも感じる。たくさんの表情をもつ楽曲を堪能し、終演後はこれ以上ないくらいに心が満たされていた。

 

“アコギの弾き語り”という共通点はあれど、Predawnは清涼感あふれる楽曲と歌声で爽やかな風を吹かし、波多野裕文は温かみのある曲の中に一筋縄ではいかない不思議な雰囲気を漂わせるなど、両者は全く違うステージで魅せた。似て非なる2人の世界にたっぷり触れた幸せなひと時に、きっと多くの人が酔いしれたに違いない。

TEXT:室井健吾
PHOTO(波多野裕文):美澄
PHOTO(Predawn):yasai

 

 
 
 
 

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