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Azami

鬼気迫るライブと凶暴な中毒性を武器に、 カテゴライズ不能な音が新時代を切り拓く

ハードコアに軸を置きながらも1つのジャンルだけには収まらない音楽性と、日本人にしか出せないキャッチーなメロディーによる凶暴な中毒性を併せ持った5人組バンド、Azamiが1stミニアルバム『DAWN』をリリースする。2013年の結成当初より数多くのライブを通じて鍛え上げてきた、鬼気迫るライブパフォーマンス。そして聴く者の中にある記憶の1ページを呼び覚ますような、情景を描き出した歌詞は心の琴線に触れるものだろう。さらなる広がりを予感させるには十分な名曲たちを手に、シーンの最前線へと5人は駆け抜けていく。

 

「Azamiって、色んな縁が重なって今の状況があると思っていて。これくらいのライブ本数をやってきたからこそ、今の関係値を色んな人と築けているんです。これから変わっていく部分もあるかもしれないですけど、“ライブをたくさんやる”というのは常に念頭に置いておきたいですね」

●結成は2013年だそうですが、最初から今のメンバーだったんですか?

関:最初はギター2本とボーカルの3人で始めて、リズム隊はサポートメンバーを入れて活動していたんです。その1年後くらいにベースが入って、今年の頭にドラムを山梨から引っ張ってきました。

●山梨から引っ張ってきたというのは?

関:前にやっていたバンドで対バンしたことがあったので、面識はあって。ドラムを探している時に(三浦と)「あいつ良いよね」という話になったんです。なので、メチャクチャ口説きました。

三浦:俺は(河野)大夢のことを“マスターピース”と呼んでいたんですけど、「こいつがハマれば大丈夫だ」と(関)普円さんに言い続けていたんです。だから1年くらいかけて、何度も呑みに行ったりしながらバンドに誘いましたね。

●それくらい良いドラマーだと思っていたと。

三浦:“人”という部分も大きいですね。初めて会った時から、“面白いヤツだな”とは思っていて。呑み方も好きなんですよ。友だちとの忘年会に誘った時に大夢が酔っ払って、最終的にバーのフロアで2回もションベンを漏らすっていう…そこで決めました。

河野:すいません!

●ドラムと全く関係ない…(笑)。

関:俺は元々メタルコアとかヘヴィ系のバンドが多いところで活動してきたんですけど、メロディックも好きなんですよ。だからキレが良くてスピード感のある2ビートを叩ける人が欲しいなと考えた時に、大夢が良いなと思ったんです。彼は山梨で色んなバンドをやってきたので、色んなドラムスタイルに対応できるから。そういうドラマーのほうが今後、音楽性を広げる時にやりやすいなと俺は思っていました。

河野:こっちの理由を採用して下さい(笑)。

●両方使いますけどね(笑)。当初から音楽性の幅を広げていきたいという意識があった?

関:色んな音楽が好きなのでそれを上手い具合にミックスして、自分たちの色を保ちながら幅広い曲ができたら良いなと思っていました。たとえばHi-Standardといえばメロコアというイメージがあるんですけど、実際はスカっぽい曲だったりファスト・コアみたいな曲もあったりして。自分たちもそういう1つのジャンルだけじゃなくて色んなことをやれるバンドになりたいと思って、ずっと曲を書いてきたんです。

●元々のルーツはどのあたりなんですか?

関:一番のルーツはスクリーモで、00年代初期のSaosin、Story of the YearやFINCHがギターの2人は好きですね。最初はそこがキッカケで仲良くなったんですけど、後から俺はComeback Kidとかちょっと速めのハードコアも聴くようになって。そういうものをミックスした音をやりたいなと思っていたんです。あと、前は歌モノのバンドをやっていたのもあって“歌も欲しいな”と思って、色々と試行錯誤していくうちに今の感じになりました。

●初期は今と音楽性も違っていた?

関:今よりもうちょっと暗めでしたね。

三浦:マイナー調のメロディラインが多かった気はします。ただ、歌詞は当初から日本語でやりたいなと思っていたので、英語の歌詞は元々なくて。

●歌詞は最初から日本語だったんですね。

三浦:喋れるわけでもないのに、英語で歌詞を書くのはいかがなものかなという気持ちが自分の中にあって。やっぱり日本語が一番話しやすいし、想いを乗せやすいので日本語詞になりましたね。

●歌詞ではどういうことを書いているんですか?

三浦:自分に起こった出来事を、常に書き続けている感じですね。たとえば自分の周りにいた人がいなくなってしまったことだったり、“別れ”について書くことも多いです。

関:Azamiの曲はちょっと悲しくて切ないコードが多いので、歌詞の内容と自分の体験が重なってエモくなったりもするんです。そういう感じで、聴いてくれた人の生活の一部になって、“また頑張ろう”と思えるキッカケになってくれたら良いですね。

●今作『DAWN』の歌詞は前半3曲が自分の中での葛藤について、後半3曲は別れについて主に歌っているように感じました。

関:前半3曲は作曲期間中に歌詞がなかなか出てこなくて、試行錯誤してもがいている感じをそのまま出しました。自分たちの背中を押すために書いたようなところもあるので、そういう歌詞になっていますね。

三浦:特にM-2「Farewell」は、自分が超絶にヤバかった時の言葉が詰まっていると思います。“死んだ目をしている奴らが 溢れ帰る駅のホーム”のところが一番リアルですね。総武線はヤバかったです…人を線路に引き寄せる何かがあるというか(笑)。

●そこまで追い詰められていたと(笑)。

関:詩音は思い出を1つ1つ大切にするタイプなので、後半3曲は実際に起こった出来事について書かれていて。言われてみれば、前半と後半の3曲できれいに分かれていますね。

●意図したわけではない?

三浦:意図してはいないんですけど、並べた時に一番しっくりきたのがこの順番だったんです。

●結果的に良い流れになった。後半3曲に出てくる“君”は、同性にも異性にも取れる内容かなと思ったんですが。

三浦:そこは大切にしているところですね。自分以外の誰かが歌詞を読んだ時に、その人の思い出が重ねられる歌詞を書くように心がけていて。

●実際は異性との思い出について書いている曲もある?

三浦:M-5「陽炎」は、男による男のための恋愛ソングですね。自分の中では、ラブソングのつもりです。人って、絶対に恋をするじゃないですか。これは昔のお話なんですけど、その時のことが強く記憶に残っていて。

●印象的な思い出を元に書いた。

三浦:今も多感ですけど、この頃はもっと多感な時期だったんです。今も思い出しちゃうことがありますね。

中川:詩音の中で、その時の情景がすごく心に残っているらしくて。その情景が目に浮かぶような歌詞を書きたいというところが出発点でした。

●メンバーも歌詞に自分を重ねられる?

加藤:そうですね。僕らはみんなで集まって、一緒に歌詞を考えていて。詩音の思ったことを、みんなで共有しながら書いているんです。

関:詩音の気持ちや思い出を核にしながら、それをどうやったらより伝わりやすく表現できるかというところで試行錯誤しながら作っています。

●全員の気持ちを重ねて書いているから、自分たちもエモい感じになるんでしょうね。

三浦:そうですね。歌いながら思い出すこともあるし、また別の思い出が乗っかってきたりもして、どんどん記憶が更新されていく感じなんです。だから、全部に愛着があって。

●どの曲もこれまでライブで、ずっとやってきた曲だったりする?

関:いや、全て新曲です。今作のために頑張って作りました。

●曲もみんなで一緒に作っているんですか?

関:最初に俺が大体の形を作ってきます。でもバンドだから生まれるケミストリーも大事にしたいので、基本的にはみんなにフレーズや歌詞を考えてもらって。そこから俺がブラッシュアップして、広げていく感じですね。みんなのおかげで生まれた展開や言葉やメロディーもあるので、そういうところは大事にしながら自分自身も納得できるものを作っています。

●曲はスムーズにできたんでしょうか?

関:曲作り中も、色々と難航しましたね。自分の中で“あっ、これ良いな!”というリフが出てこないと、曲を作る気持ちになれないんですよ。今回は、そこですごく苦戦しました。多い時は月に10本くらいライブをやっているので、それと生活に追われていたら曲を作る時間が全然なかったんです。だから苦戦したところもあるんですけど、そうやってガムシャラにやっていたからこそ、上手く立ち回れる人には見えないことも見えたと思うから。そこは何かしら歌詞や曲にも活きているのかなと思います。

●たとえばM-1「Sash」が“大丈夫 明日への道は拓くから”という言葉で締め括られているように、そういう過程を経ているから最後はどの曲もポジティブな方向に向かえているのかなと。

三浦:ストーリーや順序は大事にしていて。“夜から朝になる”みたいなイメージが自分の中にあったので、今回はそこをキッカケにして書いていきました。だからどの曲も最終的にはどん底から這い上がるという流れになっていて、タイトルも“夜明け”という意味の『DAWN』にしたんです。

●そこは全てに一貫している。

三浦:全曲の歌詞を読み返した時に、“落ちているだけの曲はないな”と思ったんです。最終的にアルバムタイトルを決める時に、“全部、夜明けだな”と思って。僕らにとってもこの作品が初めて公に広がっていくものだということも含めて、全体的に見て“夜明け”という言葉が一番近いかなというところで決めました。

●今の5人になって初の作品というところで、バンドとしての“夜明け”という意味もあるのでは?

河野:山梨から出てきてバンドをやるというところで、自分の中でも決意的なものはあって。ここから“やってやるぞ”という気持ちは大きいですね。

加藤:これまでは何人かのサポートが交代で入りながら、ツアーをまわったりしていて。しっかり5人で固まることがなかったんです。でも今回は新しいアルバムを出してツアーをこの5人でまわれるということが楽しみだし、本当に“始まる”感じがあって。

中川:“やっと”という感覚がすごく強いですね。ようやくスタートラインに立てた感じがします。

●ツアーも現時点でかなりの数が決まっていますが…。

関:ツアーバンド全盛期から活動している先輩方が周りに多いので、自分の中でツアーと言ったらライブをたくさんやるという意識が強いんです。俺らより下の世代でもWebやSNSでの戦略を先行している人が多いんですけど、やっぱり一番強いのは口コミかなって思うから。もしお客さんが少ないイベントでも、その中で1人でも掴めたらそこから広げていける。Web中心にやっている若い世代に“こっちで見られる景色も楽しいもんだよ”というのを自分たちの活動を通して伝えつつ、先輩たちにも“久しぶりに面白いことをやっているヤツらがいるじゃん”と思ってもらえたら良いですね。

中川:そういうところもありつつ、俺らは単純にライブが好きなだけなんですよ。

●好きじゃないと、絶対にできない本数ですよね。

中川:自分たちが楽しめなかったら、意味がないから。ライブは今でも大好きなので、やり続けていますね。

三浦:Azamiって、色んな縁が重なって今の状況があると思っていて。これくらいのライブ本数をやってきたからこそ、今の関係値を色んな人と築けているんです。僕の周りにいるバンド仲間にはすごく自信を持っているんですけど、そういうカッコ良いバンドに出会えたのもたくさんライブをやってきたからなんですよね。人とのつながりがあったから、ここまで来られたんだと思います。

●ライブをたくさんやってきたことが、今につながっている。

三浦:僕らは泥臭いので、このやり方が合っていて。“自分たちの足で稼げるものもあるんだ”というのは知ることができましたね。キツい時もあるんですけど、それを上回るくらい楽しいから。ツアー中にメンバー同士でぶつかることもあるし、自分の中での葛藤や思い悩むこともありつつ、各地をまわって家に帰ってきた時には“めっちゃ楽しかった!”と思えるんですよ。だから、やめられないというか。これから変わっていく部分もあるかもしれないですけど、“ライブをたくさんやる”というのは常に念頭に置いておきたいですね。

Interview:IMAI
Assistant:室井健吾

 

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