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こうなったのは誰のせい

僕らの音楽を守る為に戦い続ける若きロックバンドが開く新たな扉

神戸発の4人組ロックバンド、こうなったのは誰のせいが1stミニアルバム『さよならノスタルジア』をタワーレコード限定でリリースする。Vo./G.カイトが中心となって2015年から始めた新世代型サーキットフェス“僕らの音楽を守る為の戦争”は地元・神戸を飛び出して、名古屋・東京でも大成功を収めてきた。そんな次世代シーンを牽引するようなバイタリティを持つ彼らが、それでも世界が続くならのVo./G.篠塚将行をサウンドプロデューサーに迎えて完成させた渾身の1枚が今作だ。G.フルキリョウタの大学院受験を機にライブ活動を一時休止することを発表しているが、その未来は確実に明るいことを予感させるような名作を作り上げた4人に迫る1stインタビュー。

 

「レコーディングの時に歌った声を聴いて、自分じゃない感じがしたというか、今までとは違うなと感じたんです。前に進んでいるかどうかはわからないですけど、変われたかなとは思います」

●“こうなったのは誰のせい”というバンド名にまず目を引かれたんですが、どういう由来で付けたんですか?

カイト:これは、今はもう辞めてしまった初期メンバーのドラムの言葉から付けたんです。仕事が嫌すぎて“こうなったのは誰のせいなんだ”と思ったと、彼が言っていたのを聞いて。ちょうどバンド名を考えていたタイミングで、その言葉が良いなと思ったんですよ。“こうなったのは誰のせい”という言葉って、もしその結果が悪ければ“復讐”みたいなニュアンスも出るんですけど、逆に良い結果なら“誰のせい”じゃなくて“誰のおかげ”になるじゃないですか。そういう裏表があるところが人間らしくて良いなと思って、この名前を付けました。

●元々は別のバンド名で活動されていたそうですが、その頃とは音楽性も変わっている?

カイト:前のバンドは、正統派ギターロックみたいなサウンドでした。

フルキ:僕は、カイトがやっていたバンドをずっと見てきていて。前のバンドの時は“カッコ良さ”を追求していたけど、今のバンドになってからは“自分のことを歌う”という形に変化していると思います。

●カイトくんとフルキくんは付き合いが長い?

フルキ:メンバーでは、僕が一番長いですね。高校生の時に学校で組んでいたバンドでライブをした時に、カイトが当時やっていたバンドと対バンして。そこで初めて知り合いました。

●現メンバーになったのは2016年の8月だそうですが。

コヤマ:カイトがやっている“僕らの音楽を守る為の戦争”というイベントに、僕も当時やっていたバンドで出演したことがあって。でもそのバンドは解散して、“どうしようかな?”と思っている時に(カイトとフルキの)2人が声をかけてきたんです。

カイト:ベースとドラムが抜けて新メンバーを探していた時に、フルキが「ベースはたっくん(※コヤマ)にお願いしたいな」と言いだして。

フルキ:“僕らの音楽を守る為の戦争”で対バンした時に、“カッコ良いな”と思っていたんです。

●そのタイミングでハシノくんも加わって、現メンバーが揃ったと。

カイト:それまでは、1年に1回はメンバーチェンジをしていたんです。でも今のメンバーでバンドが形になったから、“今年こそは作品をリリースしたい”と思っていて。今年はミニアルバムを出すということを、僕の中でもバンドの中でも目標にしていました。

●今の4人になったことが大きかったんですね。

カイト:今のメンバーが一番楽しいんです。これまでは脱退したり急に音信不通になったりした人もいて、あんまりメンバーと仲良くなれなかったというか。だから、自分としても思いきれなかったんですよ。でも今のメンバーについては“友だちが増えた”みたいな感覚で、純粋にバンドを楽しめていますね。

●思いきれるようになったことが、音楽性の変化にも関係しているのでは?

カイト:歌詞は特に変わりましたね。今までは空想だったり、頭の中で考えたことを書いていたんですけど、今は思ったことを思うままに書いているというか。その時に感じたことだけを書いています。

●自分の中で感じたことをそのまま表現できるようになった。

カイト:もしかしたら、それまでは言いたいことが言えていなかったのかなと思います。

フルキ:自分が前にやっていたバンドがなくなってカイトに声をかけた時に、弾き語りのデモ音源をもらって。それを聴いた時に“本当はこういう音楽をやりたかったんだろうな”とか、“こういう音楽がカイトの武器なのかな”とは思っていましたね。

●現メンバーになったことで、それをより素直に出せるようになったんですね。

カイト:今回は、しのさん(※篠塚将行)のプロデュースの影響もあると思います。よりドロドロしてきたかなと思っていて。

●ドロドロしてきたんですか?

カイト:元々はギターのリフとかメロディもきれいな感じだったんですけど、今は生々しい感じになっていて。前のバンドの頃から若干残っていた部分がだんだん剥がれていって、“こうなったのは誰のせい”になってからの部分だけが残って、それがしのさんによって強調されているというか。

●それも元からカイトくんの中にあったものではあるんですよね?

カイト:僕は、歌っている時の記憶がいつもなくて。今回のレコーディングの時にしのさんに「もっとお前の中の狂気を見せてくれ」と言われて、それでタガが外れたのかな。この前の東京のライブ(※2017/6/17@吉祥寺Planet K)でもすごく叫んでいて、後で動画を見返したら自分でも怖くなるくらいの歌い方をしていたんです。よりさらけ出している感が出せるようになってきたなと思っています。

●メンバーから見ても、そういう感じがした?

コヤマ:それまでは“ちゃんと真面目にがんばって歌っているな”という感じだったんですけど、東京の時は気が狂ったように突然叫びだして。“何だ、こいつは?”と思いました(笑)。

ハシノ:あんまり内面を出せていないのかなと思っていたんですけど、そこで化けの皮が剥がれた感じはありましたね。

フルキ:今回のレコーディングでも歌を録り終えた後にカイトの様子を見に行ったら、真っ暗な部屋の中に1人で体育座りしていて(笑)。完全に燃え尽きている姿を見て、“出し切ったな”と思いました。あの時は鳥肌が立ちましたね。

●篠塚くんの言葉がキッカケで、自分を解放することができたんでしょうね。

カイト:しのさんにも「もっと自分を出せよ」と言われていたんですけど、その時はまだよくわからなくて。でもレコーディングの時に歌った声を聴いて、自分じゃない感じがしたというか、今までとは違うなと感じたんです。前に進んでいるかどうかはわからないですけど、変われたかなとは思います。

●初めて第三者にプロデュースしてもらったことも大きかったのでは?

カイト:そうですね。今までは曲作りに関しても、自分たちの中だけで完結していたから。でも今回しのさんや色んな人に聴いてもらって、「こうしたほうが良い」とかアドバイスをもらえるようになって。そういうことは今までなかったんですよ。その意味でも、しのさんにプロデュースしてもらえたことは大きかったと思います。

●今作『さよならノスタルジア』の収録曲は、どういう基準で選んだんですか?

カイト:曲はずっと作っていたので、その中から“今回入れるなら、この曲だな”という感じで選びました。

フルキ:カイトの弾き語りのデモで言うと、70曲くらいはあって。その中で、僕が“今一番バンドサウンドに持っていくのに近いな”と思った曲を選んだ感じです。“カイトはこれを歌いたいんだろうな”という気持ちも汲み取りつつ、バンドサウンドにするイメージが湧きやすいものを選んだというか。

●フルキくんのタッピングが、バンドサウンドの大きな特徴にもなっていると思いますが。

フルキ:音が詰まっていないと、不安になる瞬間があって…。その結果、タッピングに行き着くんです。弾き語りのデモを聴いて、“このリフだったらこの曲の武器になるな”みたいな感覚で作っていますね。

カイト:僕は、フルキの持ってくるリフが全部好きなんです。“さすが!”というものを持ってきてくれるので、信頼しています。

●自分の求めているものがきている感触がある?

カイト:求めているもの以上のものがきます。フワフワしていたものを形にしてくれるというか。

●曖昧なイメージを具現化してくれている感じだと。M-1「ハイリ」はMVも撮ったそうですが、これを選んだ理由は?

フルキ:全曲のレコーディングを終えてから“どれをMVにするか考えよう”となった時に、「ハイリ」が一番しっくりきたのでMV曲にしました。

カイト:今ある曲の中では、内面的なところを一番歌っている曲だと思っていて。一番叫んでいたのもこの曲だったので、自分の中でしっくりきているのかもしれない。

●“矛盾だらけのこの世界は僕と同じ”という歌詞も、自分の中で思っていること?

カイト:そうですね。言っていることと、やっていることが違ったりするじゃないですか。そういう部分で、自分に嫌気が差す瞬間があって。でも周りにもそういう人がいるというのを知って、“みんな同じだな”と思ったんです。

●誰もが矛盾を抱えて生きているわけですよね。メンバーも歌詞に共感できる?

ハシノ:僕は共感できますね。

フルキ:カイトが新曲を持ってきた時に、ハシノの反応が一番良いんですよ。いつも「めっちゃ好きやわ!」みたいに言っていて(笑)。

●ハシノくんは特に共感できると(笑)。

ハシノ:たまに自分がつらい時と同じタイミングで、新曲を持ってきてくれるんですよ。そういう時に、カイトの書いた歌詞を見て“すごく良いな”と思ったりして。「最高です!」とメッセージを送ったりもします(笑)。

●M-4「心用薬」でも“僕はまたあの歌に縋る 救われたくて 楽になりたくて 逃げて 僕はまたあの歌を歌っている”と歌っていますが、実際にメンバーも音楽に救われている。

カイト:僕自身も何かあった時は部屋の明かりを暗くしてヘッドフォンで好きなバンドを聴いて、1人で泣いたりしているんです。そうやって音楽に縋る自分も嫌いというか、“自分でがんばれよ”と思うところもあるんですけどね。今までの自分が積み重なってきた中で、最終的にはずっと音楽を聴いているというところから「心用薬」ができて。それこそ“薬”みたいな音楽だなと思います。

●自分の歌が誰かを救う薬になって欲しいという想いもあるんでしょうか?

カイト:作っている時は、自分のことしか考えていないですね。聴いてくれた人がそういうことを言ってくれたりした時に、初めて“そういうふうに感じてくれるんだな”と思うんです。外に出した時に共感してくれる人がいることを知って、“その人のためにも歌いたい”と思うようになりました。

●自分自身のことを歌った結果が、誰かを救うことになったりもする。

フルキ:カイトの歌を聴いていると、カイト自身を見ているような気がしてきて。長い付き合いもあるので、僕はそういうところをカイトの歌から感じています。“こういうことを思っているヤツもいるから、みんなもがんばろうよ”みたいな感覚にはなりますね。

●“僕らの音楽を守る為の戦争”という自主企画イベントにも、そういう気持ちが現れているのかなと。それぞれに自分の信じる音を鳴らしているバンドたちと、共闘していく意志が見えるというか。

カイト:自分が好きなバンドのことを忘れちゃうことがあるんですよ。好きだったのにいつの間にか存在を忘れてしまって、CDを買わなくなったりライブにも行かなくなったりすることがあって。そういうものをもう一度好きになってもらうキッカケにしたいというか。そこでまた、そういう音楽に出会って欲しいんです。

●今回の音源リリースも、1つのキッカケになるのかなと思います。自分たちとしても、良い作品が作れた感覚があるのでは?

コヤマ:レコーディングは大変でしたけど、カイトが一番がんばっていたので、それに負けじと僕もがんばりました。

ハシノ:全力を出し切ったと思います。一発録りだったので、“もう1回やりたかったな”という部分もあったりはするんですけど…。

●心残りもある?

フルキ:“まだまだこれからも自分の音を出していきたいな”という次回への希望も含めて、やっぱり悔しい気持ちはあって。今回のレコーディングをやってみて、“もっとやれる”と感じたんです。アレンジ面も含めて、もっと自分の音をギターに変換できるなと思っているから。

●そういう気持ちがあるから、次に向かって進んでいけるわけですよね。

フルキ:『さよならノスタルジア』というタイトルには“自分たちに一区切りをして、さよならをした”みたいな意味も込めていて。

カイト:“ノスタルジア”は“古い思い出”みたいな意味なんですけど、自分にとっては1曲1曲がそういう“記憶”でもあって。それを吹き飛ばすという意味で、このタイトルを付けました。“まだまだやれるな”と思っているし、今からスタートという気がしています。

Interview:IMAI
Assistant:室井健吾

 

 
 
 
 

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