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the band apart

進むための記憶を重ねてきた4人にしか 奏でられない普遍的で豊潤なる音の愉楽

オリジナルの単独作品としては約2年半ぶりの新作となる8thフルアルバム『Memories to Go』を、the band apartがリリースした。過去2枚のアルバムは日本語詞の楽曲のみで構成されていたが、今作ではサウンドに合わせて使い分けられ、久々に英詞の楽曲も復活している。80'sポップスやシティポップのニュアンスも漂わせつつ、フュージョンやメタルなど様々な音楽性を昇華した個性的な楽曲は、彼らにしか生み出し得ない唯一無二のものばかりだ。流行り廃りに流されない普遍的にして豊潤な音を、ぜひ全身で浴びるように味わって欲しい。

 

「楽しいだけではなかなか生きていけないじゃないですか。でも辛かったことも“何となく乗り越えていたんだな”と思うところはあって。そういう記憶や経験というのが、前に進んでいくための糧になるんだなと」

●今回の新作『Memories to Go』には、どこかノスタルジックな雰囲気を感じました。80'sポップスやシティポップ的な要素もあるからなのかなと思いますが、意識した部分もあるんでしょうか?

木暮:意識はあまりしていないですね。俺から見ていると、特に荒井(Vo./G.)と原(Ba./Cho.)が元ネタを持ってきた曲は自然とそういう感じになったものが多かったのかなと思います。

●今、若い世代の間ではシティポップがまた流行っていたりしますが、そういうリバイバルとは違って実際に80年代当時に聴いていたものが自然と出ているというか。

木暮:そうですね。だから、どことなくイナたいんだと思います。特にM-7「She is my lazy friend」の感じなんかは、いわゆるリバイバルとは少しズレちゃっているのかもしれないです。小学生くらいの時にCMで流れていたり、アニメのエンディングテーマとして耳に入っていたり、そういう原体験が出ているだけなんじゃないですかね。

●何かを狙って作ったわけではない。

木暮:何も狙っていないですね。一番最初は“宇宙を感じるヤツを作ろう”みたいなことをみんなで言っていたんですけど、そんなことは3日目くらいですっかり忘れてしまって。あとはいつも通り、狂いそうになりながら作りました。

●狂いそうになったんだ(笑)。

木暮:狂いそうというか、“もう今回はできないんじゃないか…?”みたいな。

●そんなに難産だったんですか?

木暮:最初はまだやることがあったので、何とかやっていたんです。でも途中からは“明日は何しようか…?”みたいな感じになって。明日する作業を無理矢理作り出している感じでしたね。それで1ヶ月延びて、マスタリングも1回やり直して結局、当初のリリース予定より1ヶ月半延びたんですよ。

●一応、最初の段階では“宇宙を感じるヤツ”というコンセプトはあったんですね。

木暮:だから最初のほうに録ったM-3「Find a Way」とM-8「BOOSTER」は、まだ宇宙の要素が残っているほうかなと思います。「Find a Way」は歌詞でSFチックなところがあったり、「BOOSTER」は曲の展開がコロコロ変わるところや川崎(G.)のギターがわりとエフェクティブだったりして。“コズミック感溢れるものに”という当初の目論見が少しは残っているかなと思いますね。

●この2曲にはまだ宇宙要素が残っている。

木暮:この時はまだ宇宙要素を取り入れる心の余裕があったんだなと(笑)。

●そこから、心の余裕がだんだんなくなっていったと(笑)。

木暮:どんどんなくなっていっていきました。

●M-4「Castaway」の歌詞にも“galaxy”(※銀河)と出てきたりして、宇宙感がある気はしますが。

木暮:そう言われてみれば、そうですね。でもその曲は、だいぶ後のほうにできたんです。

●あと、“silver key”(※銀の鍵)という言葉が「Find a Way」「Castaway」とM-9「Super High」には出てきますが、これは今作のキーワードなんでしょうか?

木暮:それについてはこの間も(別のインタビューで)訊かれたんですけど、その時はよくわからなかったんですよ。でも何となく今、思うことがあって。今回のアルバムで歌詞があるのは11曲中10曲で、そのうちの7曲は俺が歌詞を書いたんです。わりとヴァリエーションはあるけど、実は言いたいことやテーマは1つで。

●あ、共通するテーマはあるんですね。

木暮:困難や壁みたいなものにぶち当たった時に、弱っちいヤツがそれを乗り越える感じというか。それは1つのシチュエーションなんですけど、たとえば誰かが何かのために勇気を出したり一歩踏み出したりするというテーマが全部にあって。その一歩を踏み出したりする時に背中を押してくれるのが“覚悟”や“勇気”なのかもしれないし、そこでキーポイントとなる何かというのが“銀の鍵”なんじゃないかな…と昨日の夜、車で帰っている途中で思いました。

●メチャクチャ最近の思い付きですね(笑)。色んな曲の中に“銀の鍵”が出てくるというのは、意図的なんでしょうか?

木暮:そこは狙って使っています。“そういうのがあると面白いかな”と。『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦)とかを読んでいると、“またこいつが出てきている!”みたいなキャラクターがいるじゃないですか。そういう平行世界の色んなヴァリエーション的なイメージで、共通している部分もあるような感じで作りたかったのかな…と昨日の夜に思いました。

●それも昨日の夜に思い付いたんだ…。ちなみに、木暮さん以外のメンバーが歌詞を書いた曲とは?

木暮:M-2「ZION TOWN」とM-11「38月62日」が原で、M-6「雨上がりのミラージュ」の歌詞は荒井が書きました。「38月62日」の最初のほうは、少しだけ俺が書いていますけどね。

●今作で久々に英詞が復活したのは、どういう経緯で?

木暮:Mock Orangeとのスプリット盤『Daniels e.p. 2』を去年出したんですけど、その時に“Mock Orangeと一緒にやるなら英詞で良いんじゃない?”という話になって。そこで気軽に、英詞に戻しました(笑)。

●気軽に(笑)。今後はずっと日本語詞でやろうと考えていたわけではない?

木暮:そういう時もありましたね。でも『謎のオープンワールド』を作ってツアーをやったら、そういう気持ちも落ち着いてきて。ライブでやる曲の割合も日本語と英語が半々くらいになったから、“もうどっちでも良いな”と何となくみんな思っていたんだと思います。

●日本語詞の曲数も増えてきた結果、ちょうど良いバランスになったと。M-10「お祭りの日 (LIC2.1)」と「38月62日」のラスト2曲は日本語詞メインで、じっくり聴かせる感じのものになっていますね。

木暮:曲順を考えている時に、こういう少し寂しい気持ちになる2曲で終わったら良いかなと思って。

●“お祭りの日”というわりには楽しさよりも、ちょっと寂しい感じが出ている。

木暮:日本語の歌詞だから、この国に住んでいる人が何となく持っているような原風景を描いてみたというか。綿アメを食べるとか、そういうノスタルジックな場面を描いてみたかったんです。あと、お祭りではしゃいでいるのは楽しいんだけど…っていう。

●楽しいお祭りにも必ず終りが来るわけですよね。

木暮:それを振り返っているような、寂しい感じを出したかったんです。だから音も必要以上に入れないようにして、シンバルとかもなるべく叩かないようにして。そういう素っ気ない音作りのほうが、俺の思う日本人の奥ゆかしい美意識みたいなものが表現できるかなと。この曲のテーマは“日本”ですね。

●お祭りと言っても単に楽しいだけではないのが、日本らしい侘び寂びというか。

木暮:楽しいんだけど、なぜか思い出すと寂しさもあるという何とも言えない感じですね。(リスナーを)泣かせにかかるようなドラマティックな感じというよりは、思い出した時に何とも言えずしんみり胸にくるような感じになれば良いなと思って作っていました。

●ちなみに「お祭りの日 (LIC2.1)」の“LIC2.1”には、何か意味があるんですか?

木暮:the band apart(naked)名義のアルバム『1』に、「light in the city 2」という曲が入っていて。今作を全部録り終わって聴いている時に、“この曲のコード進行は「light in the city 2」のサビと、最初の4小節が全く一緒だな”と気付いたんです。俺の好きなコード進行なんですけど、“あまりにも一緒だからヤバいな”ということで“2.1バージョンということにしよう”と思って付けました。

●“LIC”は“light in the city”の頭文字だったんですね。

木暮:でも今聴き直してみると、そんなに似ていないなと思って。別に付けなくても良かったと思っています。その時はマスタリングしている時で、神経質になっていたんでしょうね。今だったら絶対に付けないです(笑)。

●ハハハ(笑)。ラストの「38月62日」も“あの日に帰れない”と歌っていたりして寂しさを漂わせていますが、この歌詞はどういう内容なんですか?

木暮:これは最初の2行くらいだけ俺が書いて、そこから後は原が全部書いたんです。仲が良かった友だちで、今はいなくなっちゃったヤツが1人いて。破天荒すぎて周りには迷惑をかけていたんですけど、俺らからすれば“よくそんなことができるな!”みたいな面白さがあったんですよ。(その人が)「いなくなっちゃったね…」という話を原と2人でしながら作っていたから、“もう会えない”という気持ちが出ているのかもしれないですね。あとは原なりに、そいつと思いっきり遊んで過ごしていた時期の記憶とかが投影されているのかなと思います。

●そういう個人的な思い出も込められているんですね。「ZION TOWN」の“タバコを 燻らせて 座る 駐車場は”というのも過去の思い出でしょうか?

木暮:いや、これは現在も変わっていないです。原は今も家の近くのコンビニの駐車場で、タバコを燻らせていると思いますよ。現在進行形ですね(笑)。

●ここに関しては、原さんの現在進行形だと(笑)。

木暮:あいつが書く歌詞は、日本語ラップ並みに現在進行形で自分のことを言っている場合が多いですね。でもコンビニの駐車場で出会った中で、いつの間にか遊びに来なくなったヤツのことを思い出したりはしているかもしれないです。

●アルバムタイトルの『Memories to Go』も“思い出”や“記憶”に関わるものですが、今回はそういうことを歌っている曲が多いですよね。

木暮:『Memories to Go』というタイトルを付けたのは一番最後で。俺が何となく全体からそういう雰囲気を感じて、付けたのかなと思います。

●木暮さんの中ではどういうニュアンスで、このタイトルを付けたんですか?

木暮:僕らは今年で39歳なんですけど、人間としても“わりと生きてきたなぁ”と思うんです。ここまでには色んな記憶や喜怒哀楽があったけれど、楽しいだけではなかなか生きていけないじゃないですか。でも辛かったことも“何となく乗り越えていたんだな”と思うところはあって。そういう記憶や経験というのが、前に進んでいくための糧になるんだなと。だから“年を取るのも悪くないな”と思いつつ、“進むための記憶”という意味で付けました。

●そういう意味で使っているんですね。

木暮:今って、若さに価値が置かれているじゃないですか。見た目とかもそうだし、バンドに関してもたとえば“フレッシュな新しいバンドが1枚目を出す”ということのほうがどうしてもニュースとしてのバリューもある。そういう価値観に何となく流されがちですけど、“年を取るというのも記憶や経験においては価値があるんだな”と自分の中で思って。それで『Memories to Go』というタイトルを付けました。

●記憶や経験が前に進むための力になっているという意味では、1つ1つが“銀の鍵”なのかもしれないですね。

木暮:そうかもしれないですね。良いと思います!

●ハハハ(笑)。19歳の子には19歳の子にしか出せない音があるように、39歳には39歳にしか出せない音があるというか。時間をかけて色んな経験を積んで、色んな音楽を聴いてきた上でしか鳴らせない音を今のthe band apartは生み出している気がします。

木暮:自然とそうなっているのかもしれないですね。無理に若作りとかはしていない感じがして。曲を作る時も、ウチのバンドは狙いとか衒いみたいなものが一切ないから。そこはすごく良いなと思っています。

Interview:IMAI
Assistant:室井健吾

 

 
 
 
 

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