音楽メディア・フリーマガジン

ガガガSP

“長田大行進曲2017”開催記念!! ガガガSPコザック前田インタビュー

ガガガSPが主催するフェス、“長田大行進曲”。2010年に1回目、2011年に2回目を開催し、3回目の開催となるはずだった2012年はメンバーの急病により中止となり、以降開催されることがなかった同フェスが、ガガガSP結成20周年を迎えた今年、6年ぶりに遂に帰ってきた。ガガガSPならではのメンツが神戸に集い、2日間にわたって開催される“長田大行進曲2017”、1秒も息をつく暇がないほどの濃厚なライブが繰り広げられるに違いない。開催が間近に迫った今月号では、ガガガSPの唄い手・コザック前田氏に“長田大行進曲2017”、そして20周年を経た現在の心境について訊いた。

 

「できなくなる時は来ると思うんですよね。だからこそ、“まだできる”
というところにありがたみを感じてやるべきだなと思うんです」

●今年はガガガSP結成20周年ですし、“長田大行進曲”が6年ぶりに開催されますよね。そもそも“長田大行進曲”は、2003年に開催されたフリーライブ“弱男の夕〜1.19フリーライブin神戸〜”が始まりなんでしょうか?

コザック:そういうわけではないんです。チケットが無料のライブという意味では、“GOING KOBE”(現・“COMIN'KOBE”)があるので。ただ、“GOING KOBE”をやるにあたって僕らが最初にフリーライブをしたのがきっかけになっているというのは聞いたことあるんです。

●その話は松原さん(“COMIN'KOBE”実行委員長)から聞いたことがあります。

コザック:だから神戸にもうちょっとお金を払って観に行くフェスをバンド主催でやってみるのもいいんじゃないかということで始まったような感じですね。年に1回“COMIN'KOBE”だけ来てもらってもなかなかライブハウスに足を運ばへんとかになってきているので、対価を払ってもらうイベントがバンド主催であってもいいのかなと思いまして。

●今回6年ぶりですけど、この6年間はお休みしていたということでしょうか。

コザック:そうです。3回目の時にウチの桑原が急性すい炎になって中止になって、そこからなくなりました。今年はバンド結成20周年なのでいいかなと。だから来年しようとは思っていないんです。1回きりです。

●え!

コザック:僕らがやらなくても誰かがやるでしょ。

●ハハハ(笑)。

コザック:僕らが始めた7年前は今みたいにフェスがいっぱいなかったし、状況が違いますからね。それに僕らが“前へ前へ”という感じもないですし。HEY-SMITHとか10-FEETとかできる人がやっているし、神戸だったらKNOCK OUT MONKEYとかキュウソネコカミがやってくれればいいんですよ。やれるバンドがやるべきなんですけど、20周年やから無理矢理動かしている感じ。

●ハハハ(笑)。ラインナップは非常にガガガSPらしいというか、濃いメンツが集まったという印象なんですが、前田さんにとってこの人たちは“仲間”という感覚なんでしょうか。

コザック:いや、どうなんですかね。初めて会う人もいますし。それはそれでまたこれからに繋がっていくものじゃないかなと思いますね。両日ともに自分らが最後を締めるわけですけど、いいライブをするとかしないとかの話じゃないですよね。1日の流れがどういうふうになるのかわかりませんし。つつがなく満足して終われるようなイベントにしたいなと思ってます。

●最近でいうと、“京都大作戦”とか“COMIN'KOBE”でガガガSPのライブを拝見したんですけど、めちゃくちゃ素晴らしくて。最近のライブのモードはどうですか?

コザック:やっぱりライブは水ものなので、日によるかなという感じですね。ただ、“悪くはないかな”という感じでもあります。そういうのは人が決めるものだと思っているので、僕らが「めちゃくちゃかっこいいでしょ?」と言っても変な話ですよね。人様が見ても遜色ないというか、ある程度満足してくれているものになっていたらありがたいですね。

●勝手な印象ですけど、一皮剥けて振り切れている印象を受けたんです。極端に言えば、“かっこいいとか悪いとかどう思われてもええわ”くらいの吹っ切れた感があるというか。

コザック:それはあるかもしれないですね。“こう見せよう”という意図的なところは減ってきたかもしれないです。

●それは最近ですか?

コザック:そうですね。ここ2〜3年くらいですね。いろいろと考えたところで思い通りにはならないし。

●“その日にやれることをやったらええわ”と。

コザック:なんか囚われてしまうじゃないですか。“こうしなアカン”という自分のイメージとか。かと言って勝手なことをするわけではないんですけど。あまり疲れて帰るのもどうかなと思いますし、それだったら素の状態に近いところから、なんとなく広がっていく感じがあればいいと思っているんです。

●肩に力が入っていないということ?

コザック:肩に力は入るんですけど、“おっさん頑張ってんなぁ”くらいでいいかなという。

●でも、その“おっさん頑張ってんなぁ”という姿を見ると感動するんですよね。

コザック:だからそういうベタなセコいところに入っていって。

●ハハハ(笑)。ところで今年は結成20周年ですが、音楽をやるモチベーションは20年間で変わってきましたか?

コザック:だだ下がりですよ。

●え!? だだ下がり?

コザック:その下がっているのをちゃんと出すのが面白いなと思っているんです。

●出た! ズルいところ!

コザック:そうなると“おっさん頑張ってんなぁ”しかないんですよ。

●そういうことか…。

コザック:クリエイティブなことは限界までやり尽くしたというのが自分の中にあるんです。結局「変わらない魅力」とかわけわからないこと言うわけじゃないですか。

●素のままを。

コザック:素では“Suchmosがいいな”とか思っているんですけど、ガガガSPのイメージはある程度守ってやっている感じですね。

●相変わらず正直に答えてくれますね(笑)。

コザック:音楽に対してありがたさとか感謝の気持ちは多くなっていますけど、例えるなら、ラーメン屋さんでも開店した時より20年後のほうがモチベーションは下がっているじゃないですか。

●それは確かに。ずっと同じモチベーションでやっていたら異常ですよね。

コザック:そうなんですよ。だから新しいメニューを考案したり店を改装したりして心機一転しているんでしょうけど、ガガガSPはそういうことをやってきていないんです。だからとりあえずは切に現状維持を。

●今まで活動ができない期間が何度かあったじゃないですか。ガガガSPを解散しようと思ったことは具体的にあるんですか?

コザック:あるにはあるんですけど、終わらせることってエネルギーが要るじゃないですか。僕は1回離婚を経験しているのでわかるんですけど、結婚する時より離婚する時のほうがエネルギーが要るので。

●すごいリアルな話(苦笑)。

コザック:とにかくすごいエネルギーが必要になるんですよね。だから今から“バンドをやめる”というエネルギーを使うことがしんどいんです。JUNGLE☆LIFEだからちゃんと喋りますけど、他にこんなこと話すバンドいないでしょ?

●いないです(笑)。

コザック:でも絶対みんなそうだと思うんですよ。パンクバンドなんてアルバム5枚が山ですよ。その後は、曲を作ってきて“ええのできた”と思っていたら、前の自分の曲とほぼ一緒だったりしますから。

●ハハハ(笑)。

コザック:それでもパンクっていい感じになるじゃないですか。Ramonesが何も変わらなかったように。そういう瞬間風速みたいなものがパンクバンドにはあると思うんですよね。だから20年やってきた時点で、どこかよれているというか。「やり始めの頃と同じ気持ちで」と言うのは簡単かもしれないけど、そういうところではなく、枯れていく感じがあってもいいのかなと思うんですよね。

●いつ頃そういう心境になったんですか?

コザック:30歳くらいからですかね。

●結構前ですね。

コザック:今38歳なので結構前ですね。そこから創作意欲はなくなりましたね(笑)。

●でも音楽は楽しいですよね?

コザック:楽しいし、苦しいものでもありますよね。でもそれも、お仕事と考えると当然のことかなと。

●大人になったということですかね。

コザック:いや、枯れていっているんですよ。みんな40歳前だし。旦那(桑原)なんか“音楽を辞めたらどこに就職先があるんだろう?”とか思うし。僕もそうですけど。

●確かに旦那は心配ですね(笑)。

コザック:MVの撮影で旦那が喫茶店の店員の役をした時、水が入ったグラスに親指突っ込んで持ってきましたからね。その程度のこともできないんです。

●ハハハ(笑)。

コザック:あの男は昔30軒以上バイトの面接を受けて、通ったのはティッシュ配りだけだったんです。そんな男を抱えているのに解散したら、一家も崩壊させてしまうじゃないですか。そこが一番のモチベーションになっています。だんだん歳をとってきて背負うものが多くなってきたら、やっぱり選択肢の幅は狭くなってくると思うんですよ。

●そうですね。

コザック:“全部を捨ててもいい”という覚悟があるなら選択肢は広がるかもしれないけど。それは、そこまでしてでもやりたいことがあるからじゃないですか。独立したいとか。

●そもそも夢とか目標を持っている人ですよね。

コザック:そう。“ずっと起業したかった”とかそういう想いを持っている人だと思うんですけど、僕はやりたかったことが22歳くらいで成功しているので。そこからフワフワとして、「にんげんっていいな」がスマッシュヒットになって一瞬だけ動員が上がったりとかしつつ、そういう感じで徒然と活動しているんです。

●先程「感謝する気持ちは多くなってきた」と仰っていましたけど、お客さんに対しての気持ちは強くなってきましたか?

コザック:それはありますね。たとえば僕が会社員だとして、何かの謝恩会があって2次会とかで40歳前のおっさんがギターを持って弾き出したら、若い子から「また前田のおっさん始まったよ」とか言われるじゃないですか。そんなアラフォーになっている人間の唄を、決して美声で唄っているわけでもないのに聴きに来てくれるというありがたさはありますね。だから最近は“どうもありがとうございます”という気持ちでライブしています。

●そういう気持ちを素直に出せるようになったからこそ、本気で客を殴りに行くようなステージにもできるんだと思うんです。それが愛情表現の形というか。

コザック:だから面白くなくなっているかもしれないですよ。山もっちゃん(山本)も客席に飛び込まなくなっていますし、ちゃんとクリック聞いてやるようになったりして、音作りのほうを楽しむようになってきていますね。それはそれでいいことじゃないですか。そういうメンバーがいて、自分が唄えるというありがたさもありますし。最初の頃は“自分が引っ張っていた”という意識もあったんですけど、今は“他のメンバーがおるから自分がやらせてもらえてんねんな”というのもありますし。

●思い切り暴れることができる場所をメンバーやお客さんに作ってもらっているからこそ、というか。

コザック:そうですね。だからあとは“テンション上げてやらなアカンな”というだけですね。人間ってバイオリズムがあるじゃないですか。やっぱり暗い時は暗い唄になりがちなんですけど、そういうのもなく山もっちゃんとか旦那もウチのイメージに沿った曲を作ってくれるので、ありがたいなと思うんです。無理に「俺らまだまだビンビンですよ!」とは言えないですよね。結構しなびているという感じはあります。

●きちんと現実を受け入れているというか。

コザック:そうなんですよ。受け入れて肯定していかないと、どうしようもない気がするんですよ。やっぱり還暦は還暦ですよね。世の中の人が若くなりすぎているというか、今は「還暦に見えない」と言われるほうが美徳とされているじゃないですか。でも“ちゃんとおっさんになっていきたい”と思うんですよね。

●そもそもガガガSPは、弱さを肯定して武器にしているというか、そういう価値観が前からあると思うんです。

コザック:自分が何か人より長けているという意識はないですからね。だから自虐とかそういう方にいっちゃうんじゃないですかね。

●あと、神戸という街に対しての想い入れはあるんですか?

コザック:神戸に救ってもらったし、神戸に振り回されたし。震災があってそのことをインタビューで語ったりもしかしたけど、“もう僕自身が語るべきではないんかな”と思うこともありましたね。でも神戸にいさせてもらえたから、今の自分があるという想いもある。

●神戸在住にこだわっているんですよね?

コザック:こだわるという企画ですよね。

●そういうことか(笑)。

コザック:まだネットが普及していない頃に、地方分権がしたいと思ったんです。“地元にいてもやれる”というスタンスを作りたかったというのはありますね。

●神戸で活動するというのが、ガガガSPの1つの特徴であり、企画の1つであり、個性であると。

コザック:そうです。

●なるほど。そう考えると神戸で面白いのは、ガガガSP以降のバンドって、結構ガガガSPの背中を見ているというか。タダ者ではない個性を持った人が結構多い気がするんです。土壌として神戸はそういうものがあるのかなと。それは松原さんという人がいたからだと思いますし、神戸のライブハウス自体も個性を育ませるような土壌があるのかなという気がしているんですけど。

コザック:関西自体にそういう感じがあるんじゃないですかね。人とは違うことをして目立ちたいというのは最初にあって。そこからどういうふうに音楽をやるのか、迷走しながら答えを見つけていくというのはあるんじゃないですかね。

●でも実際に後輩のバンドから「ガガガSPから影響を受けました」と言われることも多いでしょ?

コザック:たまにはありますね。でもその人たちの音楽がウチとはかけ離れていることもあるので、“ホンマかいな”とは思いますけど。

●ハハハ(笑)。なるほど。ではこれからも神戸でやり続けると。

コザック:そうですね。どういう形でも続けていくというのが、根本として一番大事なのかなと思うんですよね。

●来年“長田大行進曲”はやらないけど、バンド活動は粛々と続けていくと。“長田大行進曲”、次はいつやるんですか?

コザック:わからないです。

●そういう時が来れば?

コザック:そうですね。“そういうものは大事にしていこうかな”という意識は出てきますよね。できなくなる時は来ると思うんですよね。だからこそ、“まだできる”というところにありがたみを感じてやるべきだなと思うんです。

Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:室井健吾


ガガガSP Official Site http://gagagasp.jp/

 

“長田大行進曲2017”
09/30(土)、10/01(日)
神戸空港島 多目的広場内 特設野外ステージ

http://gagagasp.jp/nagatafes2017/

 

 

 

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj