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Migimimi sleep tight

独自進化を遂げるダンスミュージックがライブハウスのフロアをクラブへと導く

「君の人生で一番泣けて、一番踊れるバンド」をコンセプトに結成し、昨年7月には1stミニアルバム『The Lovers』をリリースしたMigimimi sleep tight。それぞれにキャリアを持つメンバーの得意分野を詰め込んだバラエティ豊かな前作から、数々のライブ出演を経て生み出した2ndミニアルバム『The Massive Market』はまた新たな進化を見せる作品だ。EDMや最新のクラブミュージックから要素を取り入れつつ、バンドならではのグルーヴやビートも強化して作り上げた独自のダンスミュージックが、聴く者の身体を否応なく揺さぶっていく。

 

「今回はロックだけに囚われず、ダンスミュージックに振り切ろうという方向性が1年半くらいやってきた中で定まって。どんな形でもダンスミュージックとしてフロアを踊らせることだけに集中して作ったという感覚に近いですね」

●前作『The Lovers』リリース以降のライブを見ていて、クラブ/ダンスミュージック色がどんどん強まっている気がしたんです。そこはバンドとして、意図的に変えていったんでしょうか?

涼平:曲に関して言うと、『The Lovers』はバラエティ感が強くて。もちろん僕らにとって大事な作品ではあるんですけど、それによって初めて観る人に伝わりにくくなっていたと思うんですよ。“この人たちはどこがど真ん中なんだろう?”と思われてしまう感じだったというか。そこで僕らの間でも意図的に1つの方向性に尖らせようという話をして、どんどんクラブっぽい方向に特化した曲を作っていったんです。

●今作にも収録されているM-3「Akirakeiko」の路線に寄せていったのかなと思ったんですが。

涼平:完全にそうですね。その路線にしようと思って、アレンジ面とかについてもみんなでミーティングして考えていきました。

依恋:「Akirakeiko」は、ライブでもすごく盛り上がるんですよ。こういった僕らにしかできない、ドロップ部分が前面に出ている曲をもっと打ち出そうと思って。

●サビがシンセメロのドロップになっているのが、この曲の大きな特徴ですよね。

涼平:そもそもこの曲ありきだったというか。このグループを始める時に“こういう曲をやってみたい”ということで持っていったのが「Akirakeiko」なんです。EDMではサビがシンセのドロップになっているような曲があるんですけど、それをロックバンドのアレンジでやってみたいという提案から始まっていて。ただそれだけだと難しいだろうと思って、みんなで色々な曲を持って行った結果として、1stはバラエティ感のあるものになったんです。

●実は最初から「Akirakeiko」のような方向性で行こうとは考えていた。

誠治:元々の土台としては、そういうニュアンスのバンドを始めようということだったんです。でも結果的に『The Lovers』は、メンバーそれぞれのキャリアを1枚にまとめたようなものになっていて。メガマソとNEXTRADEとFUNKISTとthe telephonesの要素が全部入っていて、“メンバー紹介”という感じに近かったというか。

JOTARO:元々は毛色の全然違う人たちが集まったところから始まっているので、得意/不得意だったり発想の仕方から違うんですよね。でも次第にやることが明確になっていったことで、そこをより掘り下げていって。それによって自分たちに必要なものがわかったし、何をやれば面白いのかということもわかってきたんです。

●前作を作った後も、色々と模索していたわけですね。

誠治:それで今回はようやくMigimimi sleep tightの“バンド紹介”的なものになったんです。そういう意味では、今回のほうがバンドとしては“1st”っぽいところがありますね。

●ちなみに、そもそもバンドの出発点でもあったはずの「Akirakeiko」を前作に入れなかった理由とは何だったんですか?

涼平:前作はそれぞれのやりたいことが色々と溢れすぎていたがゆえに、「Akirakeiko」はそのバラエティ感の中にはハマらないところがあって。でも逆に今回のM-1「MACAU:The Massive Market」やM-2「MOVE ON!」の流れには自然とハマるなということで収録しました。

●「MACAU:The Massive Market」は1曲目にもなっていますが、今作のキーになる曲だったりもする?

涼平:僕個人としては「Akirakeiko」のようにサビの部分がドロップオンリーというアプローチをもっと推し進めたかったんですけど、そういう曲はロックファンには届きにくいんだなということに気づいて。

●確かに、ロックファンにはあまり馴染みがない曲展開ですよね。

涼平:先に配信でリリースしていたM-6「Escape from Tsuki No Uragawa ZOO」もサビはドロップだけなんですけど、「MACAU:The Massive Market」に関してはドロップのサビの後にもう1回大サビみたいなメロディを持ってきたんです。それによって、ロックファンも入りやすいダンスミュージックになっているのかなと。そういう意味でも入口にもってこいというか、まさにアルバムの1曲目にピッタリの曲だと思います。

誠治:「MACAU:The Massive Market」は、自分たちの中で“ここをもうちょっと掘り下げたいな”というキッカケになった曲で。「MOVE ON!」は、その方向性をさらに尖らせたような曲なんです。

●その意味では「MOVE ON!」が、バンドとして最新のモードを表している。

涼平:「MOVE ON!」は元々、「Move on to the next club」というタイトルだったんですよ。“次のクラブに行こうぜ!”みたいな意味なんですけど、今回のアルバムのテーマでもある“ライブハウスのフロアをクラブに導く”に通じていて。そういったところをテーマに、メンバー全員で書いた曲ですね。

●「MOVE ON!」は全編英詞というのも珍しいなと。

涼平:この曲の歌詞に関してはあえて直接的な表現で、ノリノリで楽しめちゃう感じにしたというか。僕らの曲を聴いてくれるのはやっぱり大半が日本人の方なので、なるべくリフレインを多くしてキャッチーにしようということも意識しました。

●歌詞でいうと、M-4「Workaholic」の“今夜も定時に上がれそうにない”みたいな現実的な表現は涼平くんなら使わなそうですよね。

涼平:確かにそうですね。

JOTARO:この曲だけは、れんれん(※依恋)が作詞・作曲しているんですよ。だから曲に関しても、良い意味で非常にわかりやすいJ-POP的な進行があって。ライブでもやっていたんですけど、そのままのアレンジで行くとただのJ-POPになってしまいそうだったので今回はかなり変えました。

●どういうところを変えたんでしょうか?

JOTARO:このバンドはシンセや打ち込みの要素が強いから、個人的にはそこに抗った部分もあったりして。ベースのフレーズで際どいところを攻めて、ダンスロックかつ、生バンドがやっている意味のあるタイミングや音色、フレーズ感というものを入れ込んだんです。ちょっとやり過ぎたかなとも思いますけど、やり過ぎくらいがちょうど良いのかなと。

依恋:僕が作った曲なんですけど、せっかくバンドでやるからには変わって欲しいんですよね。それぞれのアレンジが加わってこその、バンドだと思うから。それによってアルバムのテーマでもある、ダンスミュージックに昇華できたので良かったなと思います。

●サウンドもダンスミュージックに昇華されている。

依恋:それでもこのアルバムの中では、一番ロック色が残っている曲なんじゃないかなと思いますけどね。

涼平:僕もこの曲だけ、ギターを変えたんです。他のは全部ストラトだったんですけど、これだけは厚みのあるポールリードスミスで弾いています。

●ロック色のある曲のほうが今回は珍しいというのが、やはり前作からの大きな変化を示していますよね。

涼平:たぶん今作を聴いた後に前作を聴くと、逆に面食らうかなとは思います。でも最初からこういう感じのことはできなかったと思うんですよね。1枚目からこういう作品を出せたかというと出せなかっただろうし、出せたとしてもここまでのクオリティにはなっていなかっただろうなとは思います。

依恋:前作を出した時は本当に結成したばかりでまだ“ロックバンド”という固定観念があって、ロック色が良くも悪くも残っていたんですよ。でも今回はロックだけに囚われず、ダンスミュージックに振り切ろうという方向性が1年半くらいやってきた中で定まって。ギターとドラムとベースがいるからロックバンドだというよりは、どんな形でもダンスミュージックとしてフロアを踊らせることだけに集中して作ったという感覚に近いですね。

●どんなジャンルの音楽が好きな人でも、否応なく身体を揺さぶられるような音楽やライブを目指しているのかなと。

涼平:そういうライブにもっとなっていけば良いし、“していかなくちゃな”とは意識しています。

依恋:ライブハウスだけじゃなくて、クラブでもどんな場所でもパッと見てもらった時に“よくわからないけど楽しそう”って思われるような雰囲気を出していけたらなと思っていて。今回はそういうアルバムになっているんじゃないかなと思いますね。

●目指している方向に近づけたものになっている。

涼平:今回「MACAU:The Massive Market」とM-5「TREES ON FIRE」には“馬鹿”という言葉を入れているんですけど、メンバーにはずっと「馬鹿になろう」と言っていて。みんなキャリアがあるので“こんなこともあんなこともできる”という部分はあると思うんですけど、そこをあえて今向かっている1つの方向性だけに寄せようというか。

●キャリアがあるからこそ、馬鹿になれないという面もありますよね。今回の作品は、そこを解き放った上で作れたのでは?

涼平:本当にその通りですね。やっぱり自分たちのキャリアの中で初めて作った作品って偏ってはいても、“これしかできない”というものが多いと思うんですよ。僕たちは今、そういうところに立ち返りたいなと思っていて。もちろん今のセンスや技術は入れ込むのでそういうところでは昔と違うところも出せるけど、音楽性についてはもうちょっと極端で良いのかなと思っています。

●極端なもののほうが、ある意味フックは強いですからね。

涼平:そうなんですよね。“他のバンドとの差を出すにはどうしよう?”というのが、Migimimi sleep tightのここ1年の課題だったから。

●そういう意味ではどんどんオリジナルな存在になっていっている気がします。

涼平:ありがとうございます。やっとその方向に向けて、進めている気はしています。

●前作以降でイベントにたくさん出演して対バンを重ねてきた中で、他のバンドとの差別化を意識するようにもなったのかなと。

誠治:それはあると思いますね。特に今年は、これまでとは違うタイプの対バンも多かったから。“SAKAE SP-RING 2017”や“イナズマロックフェス2017”にも出演できたりして、色んな規模感やジャンル感の中でやることが多かったので、そこから学んだことも多くて。“こういうところはもっとあっても良いな”とか逆に“こういうものはなくても良いな”という感じで、自分たちの中での“あり/なし”はもう少し精査していこうかなと思っています。

●まだまだ進化していく過程というか。

誠治:“これから”という感じはあります。もっと面白いアウトプットができるだろうと思っているので、ここから先にも期待感を持って今作を聴いて欲しいなと。“このバンド、これからどうなっていくんだろう?”と思ってもらえたら良いですね。

Interview:IMAI
Assistant:室井健吾

 

 
 
 
 

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