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桐嶋ノドカ

新たな歌と共に爪先踏み出した彼女の前には未知の世界が広がっている

生命力溢れる力強さと聖母のような優しさを併せ持った歌声で、聴く者の心を震わせるシンガーソングライター、桐嶋ノドカ。2017年7月にキングレコードへの移籍を発表した彼女が、音楽プロデューサーの小林武史とryo (supercell)のダブルプロデュースによる新プロジェクト第1弾となるシングル『言葉にしたくてできない言葉を』を11/22にリリースする。表題曲は、マンガ・ノベルアプリ『comico』で連載中の人気公式マンガを実写映画化した『爪先の宇宙』の主題歌だ。また、同映画では桐嶋ノドカ自身が主人公の吉河亜紀役を演じている。3歳からピアノを始め、聖歌隊や合唱部での活動を経て、物心ついた時からずっと歌と共に生きてきた彼女。2015年7月に1stミニアルバム『round voice』でメジャーデビューを果たすも、ここに至るまでには歌うことをやめていた時期もあったという。自らと真摯に向き合う中で葛藤を乗り越え、再び歌と生きる道を歩き始めた彼女の過去・現在・未来に迫る、表紙&巻頭10,000字スペシャル・ロングインタビュー。

 

桐嶋ノドカ #1

「それは本当に歌を始めた時のような感覚というか。“もっとこうしてみたいな”と思えたりして、歌うことに対してもう1回新しい気持ちで探検しているような感じでしたね」

●今回の1stシングル『言葉にしたくてできない言葉を』は、前作のミニアルバム『round voice』から2年4ヶ月ぶりの作品になりますね。その間には、桐嶋さんの中で様々な葛藤もあったそうですが。

桐嶋:“もう歌えないや”と思った時期もありました。子どもの頃に“歌が私の人生だ”と思ってからずっと迷いなく歌い続けてきたけれど、急に“いったい何だったんだろう?”と思うようになったというか。“私の人生はこれで良かったんだろうか?”とか、“この歌で良かったんだろうか?”とか色んなことを考えた日々があって。その間もずっとライブを続けていたんですけど、そういう迷いがある中で人前で歌を歌い続けるのはものすごくキツいことなんですよね。そこでいったん歌わないという選択をした時期もあったんです。

●迷いが生じたのは、どういうところから?

桐嶋:1枚目の作品の『round voice』を作っている間も、生みの苦しみをかなり味わって。“自分ってどういうものだったっけ?”と思いながら、曲を書いていたんです。元々、私は聖歌隊とか合唱部から歌を始めたので、まさか自分が“シンガーソングライター”になるとは思わずにこの世界に入ってきているんですよ。

●元々は純粋な“シンガー”だった。

桐嶋:通っていた学校の先生に「歌を歌っていきたいんだったら、自分で曲も書いてみれば?」と言われて、軽い気持ちで書き始めたんです。そこで初めて作ったデモテープをキッカケに小林武史さんに出会ったところから、そのまま自分で書いた曲を歌うということになって。元々“自分で曲を書く”というのは、私の中ではマストではなかったんですよ。私にとって“歌う喜び”というのは、ある曲を理解していく過程で自分自身のこともより知って、最終的にそれを“自分の歌”として表現することだったから。

●誰かの作った曲を“自分の歌”に昇華して、表現することに喜びを感じていたんですね。

桐嶋:それが私にとっての“歌”だったのに、“いつの間にかシンガーソングライターになっちゃったな”という想いもありつつ、それを“生業にしていく”ということにもなっていって。私の中で“歌”というのはもっと純粋な表現だったし、自分の身体から音が鳴っているということの喜びや気持ち良さが大きかったんです。

●“歌う”という行為自体が好きだった。

桐嶋:他人にとっては何の役にも立たないかもしれないけど、ただ自分にとっては“それをしていたら幸せ”というものだったんですよ。私は昔からわりと1人で考えごとをしちゃうような子どもで、“自分は何で生きているんだっけ?”みたいなことを考えたりもしていて。そんなところに歌が入ってきたことで、“私って歌うために生まれてきたんだ”と思えたんですよね。

●歌と出会って、生きる理由が見つかったと。

桐嶋:“こんなに幸せなことってあるんだ。これが生きるっていう感覚なんだ”ということを、自分の喉から声が出た時に感じて。そこから始まったのに、この世界に入ってからはだんだん“歌う”ということがそういう純粋な喜びではなくなっていったんです。“もっと多くの人に聴かれるような良い曲を書いて、良い歌を歌わないといけない”ということを考えるようになったというか。元々は歌うことで自分が喜びを感じられれば良いと思っていたけれど、それだけではビジネスにならないし、プロとは言えないから。そういう中で、歌っていても喜びを感じなくなってしまって…。

●歌うことに喜びを感じられなくなってしまった。

桐嶋:それって、すごく意味のないことで。私の人生の中では歌が唯一生きている実感を感じられるものだったし、最大の喜びだったものが全くそうではなくなってしまった。むしろプレッシャーに感じたり、他人の評価を気にして恐れてしまうものになってしまっていたんです。いつの間にかそうなっていることに気付いた時に、“それでも走り抜けないとどうしようもないじゃない”という想いもありつつ、“これじゃ私の歌が可哀想だ”という気持ちになって。“自分のためにもならないし、人のためにもならないな”と思って、立ち止まった時期がありました。

●そこで歌と距離を置いた期間があったんですよね?

桐嶋:そうですね。その期間は誰かの曲を聴いたりもせず、自分で歌うこともなかったんです。歌を始めてから十何年も経つけれど、初めて何も歌わない日々を過ごしました。2016年末くらいから全く歌わなくなって、ただ毎日3食ご飯を食べて、寝て起きて掃除・洗濯をして…みたいな、ただの人としての生活を過ごしていましたね。

●そんな日々の中で、“歌”に対する想いが変わってきたりもした?

桐嶋:歌をいったんやめるにあたって、“なぜ私はこうなったんだろう?”ということはすごく考えて。それって全部、自分で判断して自分の意志で“自分”というものを作り上げなかったから、こうなったんだと思ったんですよ。色んな人と関わっていく中でできていくものはあるけれど、どこかで他人に任せてしまったり、本当は納得していないことがあったんじゃないかと。この世界にいるうちに、自分自身の意志がわからなくなっていたんです。だからここでいったん歌をやめるなら、生き方の全てを見直して、自分でもう一度“自分”を作り上げないといけないと思うようになりました。

●自分というものをもう一度、自力で作り上げようと。

桐嶋:そこからは自分が“歌いたい”と思うまでは声を出さないようにしようと思ったし、着る服や髪型とか発言にしても自分が本当に“良い”と思っているもの以外は全部やめようと思ったんです。“食べたいものを食べる”ということだったり、本当に小さなことから“自分が本当にしたいことって何だろう?”と考えるようにして。たとえば欲しいアクセサリーがないんだったら自分で作ったり、色々と手を動かしながらやっていきました。そんな生活をしていたら忙しくなって、意外と歌どころではなくなったんですよね。

●歌以外の色んなことをそこで経験したわけですね。

桐嶋:自分の手を動かして服や雑貨を作ったり、野菜を作ったりとか色んなことをしていました。そうやって歌以外でもクリエイトしていく中で、“人生を燃やせるものは他にもあるんだな”と気付いたんです。なかなか歌に戻るキッカケがなくなっていたんですけど、小林さんが内々での小さなイベントに誘ってくれたりして。楽な感じで参加しているうちに、だんだん生活の中に歌が戻ってきたというか。

●楽な気持ちで、歌に再び接するようになっていった。

桐嶋:いつまでかはわからないけれど、自分が“楽しい”と思うまでは歌と距離を置こうと思っていたんです。だから最初は誘われるがままにライブをしたり歌ったりというところから始めて、徐々に戻っていきました。そこは自分の力では、全くなくて。小林さんだったり、その頃にはryo (supercell)さんとの作業も始まっていたので、お2人の力を借りた感じですね。

●再び歌い始めた時は、もう“楽しい”と感じられたんでしょうか?

桐嶋:“絶対に自分がしたくないことはしない”と思っていたので、最初はすごくフラットな感覚で始めて。もしそこで“やっぱり苦しい”とか“つまらない”と感じたなら、歌とはもうお別れの時だなというくらいの気持ちでした。でも実際に歌ってみたら楽しかったので、すごく嬉しかったです。

●ryoさんとの出会いも大きかった?

桐嶋:ryoさんは最初に、私の今までの歌に対して必要なものと良いところを細かく指摘してくれて。「これができるようになって欲しい」と言われると、私も負けず嫌いなところがあるので“絶対にこういうふうに歌えるようになりたいな”と自然と思えたんです。そういうことをやっていくうちにだんだん歌に対する情熱みたいなものが戻ってきました。それは本当に歌を始めた時のような感覚というか。“もっとこうしてみたいな”と思えたりして、歌うことに対してもう1回新しい気持ちで探検しているような感じでしたね。

●歌を始めた時のような感覚に戻れたことが良かったんでしょうね。

桐嶋:ryoさんは、私がどういう歌い方をしても1回ちゃんと聴いてから、良い悪いを判断してくれて。かなり柔軟に受け止めてくれるので、安心できたんですよね。“本当に何でも良いんだな”と思いながらやれているから、今は楽しいんだと思います。

●柔軟に受け止めてもらえることで、自由にやれるという楽しさが生まれる。

桐嶋:“どうすれば伝わるのかな?”とか、“人を感動させるには?”といったことを考えがちだから。でも“聴いてくれる人にとって何が正解なのか?”ということじゃなくて、もっと単純に“喜びをどこに感じられるのか?”を考えることが大事で。“良い/悪い”というのは人それぞれだから、まず自分が“良い”と思えることをやらないとっていう。「そこに“正しい”も“正しくない”もない」とryoさんが言ってくれたのが、すごく嬉しかったですね。

●そういう過程を経ているからか、今作の歌を聴いた時にすごく人間らしい感じがしたんです。生々しい“歌”の魅力を感じたというか…。

桐嶋:たとえば音程が崩れちゃったり、上手くリズムがハマらなかったり、そういうことはあるに決まっているじゃないですか。でもryoさんは「そこも自分の技にして欲しい」と言ってきたんです。その時に録ったテイクで事故が起きていたとしても“人間味があって良いな”と思うんだったら、それをいつでも出せるように習得するのがプロというか。

●偶然の産物で終わらせるのではなく、そういうものすらも表現技術の1つとして引き出しに加えていけと。

桐嶋:崩れとか揺れとかそういう“ブレ”をちゃんと認識して、自分の引き出しに入れていくことがすごく大事なんだと。そうしないと常に行き当たりばったりで、その日の出来次第という感じになっちゃうからと言われて。“ロックスター”とかのイメージって技術で何かを再現するわけじゃなくて、毎回“その時の俺”みたいな感じじゃないですか。

●そこでしか生まれない、奇跡の瞬間みたいなものはありますよね。

桐嶋:その奇跡をいつでも起こせて、どんなパターンの奇跡も出せますというのが、プロの歌手として歌うことの仕事だったり面白味だったりするのかなと。だから「そういうところは自分で探して認識して、いつでも技として出せるように繰り返し練習しておいたほうが良い」とryoさんに言われて。実際の練習にもすごく付き合って下さったんです。そういう意味で今回は生々しさが自分でも出ているなと思いますし、“出したな”とも感じています。そこがすごく面白かったし、自分の成長した部分だなと思いますね。

●ryoさんと出会ったことで、成長することもできた。

桐嶋:ryoさんは私を“歌う人”として扱ってくれて、歌うことだけに集中させてくれたんです。私にとっての“歌”の原点に近いスタンスでやらせてもらえたので、ありがたいなと思いました。

●“シンガーソングライター”から、“シンガー”に引き戻してくれたというか。

桐嶋:以前は生みの苦しみを毎回味わっていて、曲を書くのが本当に苦しかったんです。でもryoさんは今回「歌のプロになって下さい」と言って歌わせてくれたのが、私にとってはすごい喜びでした。今まで“シンガーソングライター”としてやってきた私が曲を書かないというのは、他人からは“何かを失った”と見えるのかもしれないけど、私にとっては“歌うことができるようになった”という感覚で。これが自分にとってフルの状態だと感じていますし、逆にryoさんの感覚で書かれたメロディや歌詞を歌うことで、“次は自分でどういうものを書こうかな”という気持ちにも自然となれたというか。

●ryoさんの作った曲を歌うことで、創作意欲も蘇ってきた。

桐嶋:“私が書いたらどうなるのかな?”という単純な好奇心として、“こういうものをやってみたいな”と自然に思えるようになったのは、自分の中でも“あれっ?”という感覚でした。

●自分では思いつかないようなメロディや表現が、刺激になったのかもしれないですね。

桐嶋:そうですね。それが“私の歌”として完成されていくのが新鮮だったし、自分でも“曲が書きたいな”と思えたことは喜びでした。

 

桐嶋ノドカ #2

「自分でも今後がどうなるのかわからないんですけど、もう何でもアリだから。予想していない出来事が起きたとしてもそこで自分が思ったことをただ受け止めて、歌にしていけたら良いな」

●今回のM-1「言葉にしたくてできない言葉を」はryoさんの作詞によるものですが、まるで桐嶋さん自身の言葉のようにも感じられます。

桐嶋:誰が書いた曲であろうと、私が歌うなら自分の言葉になるというか。昔からそれが面白くて、歌を歌ってきましたからね。でも今回は特に私の心にもリンクしてくるワードがたくさん入っているんですよ。だから自分だったら絶対に使わない言葉遣いだとしても、自然に“私だな”と思えました。

●自分の内面とつながる言葉が多い?

桐嶋:そうですね。特にサビの“だけど ねえ 思うほどになぜ間違うの だってわかんない”とか、“思うほどに何も言えないの”という部分だったり、自分の心の中にはあったけど“人に言うようなことではないな”と思っていたことが歌詞になっているので、ハッと気付かされるところがあって。それを実際に歌にする時には本気でそう思えるし、すごく不思議な体験でしたね。“私が書いたわけじゃないのに、私が書いたみたいな気持ちになるなんて”と思いました。

●この曲を主題歌とする映画『爪先の宇宙』で桐嶋さん自身が主役を演じられたことも、心情をより重ねられる要因になったのでは?

桐嶋:それはすごく大きかったですね。映画に出演するにあたって、原作を初めて読んだ時に“私の中にもこういう心があるな”と思ったんです。当時はちょうど歌っていない時期だったので、自分の想いを曲に紡ぐ作業もしていなかったし、“自分はどういうふうに思っているんだろう?”と考えながら日々の生活を送っていて。

●ちょうどその時期に原作に触れたんですね。

桐嶋:原作の主人公は自分が何かを言うことで誰かを傷つけたり、誰かに嫌われちゃったりすることを恐れていて。なかなか誰にも何も言えなくて、それが原因で逆に人との関係が上手くいかないという女の子なんです。そういうことを恐れる気持ちは自分にもあるなと思って、“私とすごくリンクしてくるな”と感じていたんですけど、ryoさんが素の状態の私と原作の主人公の気持ちをちゃんとピックアップして曲にしてくれたのかなと勝手に思っています。

●主人公の気持ちだけではなく、歌う桐嶋さんの気持ちも汲み取ってくれていると。ちなみに、演技をするのは初めてだったんでしょうか?

桐嶋:初めてです。だから最初は“本当に私で良いんですか? できると思いますか?”みたいな感じで(笑)。

●普通はそうなりますよね(笑)。

桐嶋:でも演技をするにあたって台本を読んで、役を自分の中に入れて主人公と気持ちをつないで表現するというのは、歌ともリンクする部分があるから。“できないこともないかな”みたいな感覚もあったし、表現方法として単純に興味もあったので、不安と恐怖の中で挑戦してみました。でも本番に向けて演技レッスンとかも受けさせてもらったら、思っていたものとは全然違っていたんですよ。

●というのは?

桐嶋:人の感情や心を自分に近付けて表現していくという部分もあるんですけど、演技というのはもっと自然なことというか、“コミュニケーション”だったんですよ。相手がいないと成り立たないし、相手にものすごく影響されるんです。歌だったら、私が曲を理解して“こういう歌を歌う”と決めたらそういう歌になって、それを誰かが聴いて終わるじゃないですか。

●聴き手の反応によって、歌が変わることは基本的にないですよね。

桐嶋:でも演技は事前に台本を読んで“こんな感じかな”と思っていても、相手が会話の中でどういうテンションや表情でその言葉を言ってくるかによって、私が返していくべきものが同じ言葉ではあっても変わってきて。自分が何を用意していったとしても、そんなものは相手次第で全然変わっていくものなんだなということは実際にやってみて初めて気付きました。

●ただセリフを正しく覚えてきて、その通りに言うことが正解ではない。

桐嶋:まず第一段階として“相手の話を聞く”というのが大事で、相手の目や表情をちゃんと見ないといけない。その人が何を言うかは知っているはずなのに、実際に聞かないとわからないというか。それが不思議でしたね。当たり前のことなんだろうけど、初めて演技する人間からしたら新鮮だし、傍で見ているだけでは実感できなかった感覚だなと思って、面白かったです。

●そういった経験が歌にフィードバックされた部分もある?

桐嶋:すごくあると思います。相手の話を聞くためには、まず自分が聞こえるようにしておかないといけないんですよ。そのためには本当の意味で心を開いたり、リラックスしていないと聞けない。レッスンの中でも心身開放のやり方を教えて頂いたんですけど、深呼吸をしながら脱力して指先や関節から心まで開放した上で演技をすると全然違って。なぜか役を演じているはずなのに、そこで自分が言われたことに悲しくなったり傷付いたりする状態になるんですよね。

●心身を開放することで、本当に自分自身のことのように感じられるんですね。

桐嶋:そういう経験をしたことが、歌にも返ってきて。“こう見せよう”と構えることなく、単純にその曲に向かっていけるというか。“どう思われたい”とかそういう気持ちもなくリラックスして本来の表現ができるようになったし、その歌を聴いたお客さんたちの反応もただ単純に受け止められるようになったんです。良い意味で力が抜けた状態になれたので、逆にすごく音楽の中に入り込みやすくなりました。

●リラックスした状態で、音楽に入り込めるようになった。

桐嶋:上手く入っていくというか。ただ没頭しているだけじゃなくて、自然な私がただいるという感じで。すごく不思議な感覚で歌えるようになりました。

●M-2「夜を歩いて」は桐嶋さんが作詞をされていますが、こちらは主人公の気持ちになって書いたんでしょうか?

桐嶋:この曲は完全に主人公の亜紀ちゃんの言葉として書いた感じですね。桐嶋ノドカが書いたというよりは、“亜紀ちゃんはこう言うだろう”という感じで書きました。でも自分の歌だなと思っていて。

●こちらも重なる部分が多い?

桐嶋:亜紀ちゃんの気持ちになりきって書き始めたんですけど、だんだん私の感情になっていったというか。幽体離脱っぽい感じで、なんか不思議な感覚なんですよ。私なのか私じゃないのか、亜紀ちゃんなのか亜紀ちゃんじゃないのかわからないけど、“どっちも私だし、亜紀ちゃんだし”と思って書いた曲ですね。

●ryoさんが作詞した「言葉にしたくてできない言葉を」とも通じる内容になっているのが面白いなと思いました。

桐嶋:そうなんですよ。示し合わせたわけではないんですけど、かなり通じるところがあって。結局、同じことを言いたいんですよね。そこも面白かったです。

●「夜を歩いて」の曲中で途中から入るドラムのビートが、ゆっくりと前進していく背中をそっと後押ししてくれるように感じられて。

桐嶋:主人公の亜紀ちゃんは、前進する速度がものすごく遅いんですよ。迷ってばかりでなかなか一歩を踏み出せないんですけど、何回でも前に進もうとしている。だからきっと私も他の読者の人たちも応援したくなるんだろうなと思うし、そこにすごく勇気をもらえる作品だなと思ったんです。たとえ進めていないとしても、ちゃんと前を見ているような歌でありたいなというふうに考えて歌詞を書きましたね。

●誰もが簡単に一歩を踏み出せるわけではないし、そこに葛藤があるところにも共感できるのかなと思います。

桐嶋:本当にそうだと思います。亜紀ちゃんは信じられないくらい葛藤し続けているんですけど、それが誰にも見せられない本来の自分のような気もして。やっぱり迷ったり葛藤したりすることって、誰にでもあるじゃないですか。でもそれって誰にも言えないものだし、いちいち他人に相談するものでもないからこそ、自分1人で抱え込みがちになるんだと思うんです。

●悩みを誰かに相談するのは、意外と難しいですよね。

桐嶋:そういう中でものすごく葛藤しながらも本当に少しずつ変わっていく姿を見ていると“頑張れ”と思うし、不思議と自分に対しても“頑張れ”という気持ちが湧いてくるんですよ。あまりプレッシャーにならない程度に、自分の中で自分を応援することができるようになってくるなと。原作を読んでいてそう思ったし、そういう優しい感じが好きですね。

●決して強い勢いで“頑張れ!”と背中を押すわけではなく、そっと後押ししてくれる感じがある。

桐嶋:最初は“亜紀ちゃんを応援するような曲が良いのかな”と思ったりもしたんです。でもこの作品はそういう元気の出し方ではないなと思ったし、自分自身もそういう応援のされ方を今回はしていないなと思って。ryoさんや小林さんに助けられて私は歌を歌っているけれど、決して「頑張れ!」と言われたこともなければ、「やれ!」と言われたこともないから。ただ「一緒にやってみない?」とか「こういう歌い方はどう?」という感じで寄り添うように私の思うようにやらせてくれて、支えてくれたというか。そういう経緯もあったので“応援する”というより“寄り添える”ものが良いかなと思って、こういう言葉になったところはあるかもしれないです。

●ここまで話した2曲はどちらも映画『爪先の宇宙』関連のものですが、M-3「How do you feel about me?」だけは違いますよね。曲調も他の2曲とは全然違いますが…。

桐嶋:この曲はとにかく楽しかったですね。私は元々エレクトロやEDMみたいなバンドサウンドではないものを普段聴いていることが多くて、ryoさんもそういう畑の人ではあるので、この曲に関しては“自分たちがカッコ良いと思うものをやりたい”と話していて。そこから始まって、アレンジも色々と加わっていくうちに、どんどんトリッキーな感じになっていったんです。

●すごく遊び心を感じさせる曲だなと思いました。

桐嶋:そうなんですよ。最初はアコギとリズムだけをバックに私が歌っていたところから、“あれもこれも面白い”となって色々と取り入れているうちにどんどん変わっていって。本当に“遊ばせて頂きました”という楽曲ですね。

●1〜2曲目とは全然違うタイプの女の子目線で書かれた歌詞も面白いなと。

桐嶋:これはryoさんに完全にお任せしたんですけど、すごく“女の子女の子”していて、私も意外だなと思いました。自分で書くとしたら、絶対にこんなに“女の子女の子”した歌詞は書けないですね。でもこの曲にはすごく合っているから、面白いなと思って。今回は“今まで持っていた価値観から外れたものをナシにする”ということはやめて、面白いと感じたものは何でもやろうと思っていたんです。だから、この曲も本当に楽しみながら歌えましたね。

●そこが“シンガー”の面白さというか。シンガーソングライターなら自分がそれまで作ってきた曲のイメージとかけ離れたものを急にはやりづらいけれど、シンガーの場合はその人が歌えばどんな曲でも自分の曲になるという自由さがあって。

桐嶋:そうなんですよ。シンガーソングライターに対しては、みんな“君は何を歌いたいの?”というところから入っていくものだから。一貫するテーマがあったほうがリスナー的には入り込みやすいし、その人が“どういう生き方をしているのか”という部分に共鳴していくものだと思うんです。でもシンガーの場合はその時にその曲に対してどういうアプローチをして、どういう歌声でどういう自分を入れ込むことができるかという表現の部分が“生き様”になっていくというか。“歌”を表現するシンガーとして考えるなら、そこが私にとっては一番のポイントで、そこにプライドを持っていきたいなと思っていて。

●どんな曲が来てもそれを自分なりに表現することが、シンガーとしての生き様になる。

桐嶋:だから今回、こういう振れ幅の大きい曲をryoさんが用意してくれたのが本当に嬉しくて。“そうそう!”みたいな感じで私もシンガーとして面白がれたし、“じゃあ私はこういうふうにやろう”と思えたんです。今まで自分で書いてきた曲にはない歌詞や曲調でも、“それは自分じゃない”というわけではないから。そういう意味で「How do you feel about me?」という曲も私らしくないわけじゃないし、純粋にシンガーとして楽しませてもらいました。

●こういう曲を歌うことで幅も広がるし、より自由な表現ができるようにもなるのかなと。

桐嶋:そうですね。“何でもアリなんだな”と今回は思えたし、そう思わせてくれたのがryoさんと小林さんなんです。

●その2人と一緒に今作を生み出したことで、今後がより楽しみになったのでは?

桐嶋:自分でも今後がどうなるのかわからないんですけど、もう何でもアリだから。予想していない出来事が起きたとしてもそこで自分が思ったことをただ受け止めて、歌にしていけたら良いなと思っています。

Interview:IMAI
Assistant:室井健吾

 

 
 
 
 

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