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BACK DROP BOMB

ストリートミュージックのネクストレベルは常に彼らと共にある

1022_bdb昨年2月に4年ぶりとなる5thフルアルバム『THE OCRACY』を発表し、さらに12年ぶりに復活した“BAD FOOD STUFF TOUR”でもその比類なき存在感を見せつけたBACK DROP BOMB。オリジナルメンバーのMasuo Arimatsu(Dr.)が復帰しての第1弾作品となるミニアルバム『59days preface』が、前作から1年というスパンで完成した。あえて短期間でのスピード感ある制作に臨んだという今作は彼ら一流のクリエイティブな側面も備えつつ、より勢いを増したストレート&ラウドな楽曲が揃っている。ライブでの盛り上がり必至なキラーチューンに加えて、常に最新のストリートミュージックにアンテナを張っているBDBならではのコラボレーションナンバーも収録。尽きることなき探究心と斬新な遊び心で独自の進化を続ける彼らが次に到達する次元は、誰にも予想することができない。

 

「ワンアンドオンリーのことをずっとやっているわけじゃないし、全部その時になって触れてみないとわからないというのは今までもずっとそうなんですよね」

●4年ぶりだった前作『THE OCRACY』から約1年での新作リリースということで、急にペースが早まったのには何かキッカケがあったんですか?

Shirakawa:東日本大震災のチャリティー作品として配信のみでリリースした音源(『Coming re:Action』2011年4月)の制作が発端といえば発端ですね。それが前作と今作につながっている感じで。時期が時期だったので極力、短い時間で仕上げたんです。そういう作業を今までやったことがなかったんですけど、やってみたら逆に「今の体温だったら合うんじゃないか」ということになって。僕らは各パートごとに練って練ってという作業をわりとやってしまうので、それだともう最初のものは跡形もなかったりもするんですよ。

●普段は原型がないくらいまで作り込んでいく。

Shirakawa:でも配信限定作を作った時はそんなことをやっているヒマもなかったので、最初に出てきた各々のアイデアを比較的ストレートにまとめるようなやり方だったんです。タイトすぎるくらいのスケジュールだったんですけど、実際にやってみたら逆にちょうど良いくらいなんじゃないかと。作品として出すことを考えても、各々に絞ったものがあるのでカラーもはっきり見えやすい。「このスピード感でアルバムを作ってみたらどうなるんだろう?」ということで、試してみたのが前作で。そこからメンバーチェンジも経て今作を作ったんですけど、体温的にはあまり変わっていないかな。

●今作からドラムにオリジナルメンバーのArimatsuさんが戻ってきたことも大きかったのでは?

Shirakawa:大きかったと思います。まずライブで合わせるとかもなく、いきなり曲作りから始めたのでどう転ぶかは僕らもわからなかったんですよ。そこでメンバーの顔色を探り合うような状態ではやりたくなかった。でもArimatsuなら当然、勝手知ったるところがあるわけですからね。

●当初は、自分たちでもどうなっていくか見えない状況での制作だったんですね。

Shirakawa:制作のスピード感もそうだし、ライブで合わせることなく曲作りをするというのも自分たちにとっては実験みたいなものでしたね。でも今回は、そういうふうにしたかったんです。元々、ミニアルバムにしようとは思っていたので、そういう機会じゃないと実験できないかなというのもあって。

●このくらいのスパンで出すということも考えていた?

Shirakawa:Arimatsu以外はその時間軸の使い方に慣れてきていたので、今回もそのペースでやったほうがいいんじゃないかということでした。もしそこで練り始めていたらフルアルバムになっていたと思うんですけど、今回はもうちょっと早いスパンでものを作るっていうことをやったほうがいいかなと。曲作りをスタートしてから、2ヶ月間で作りましたね。

●そんなに短期間だったとは…。前作までに4年間かけたのとは全然違ったわけですね。

Shirakawa:前作までの期間は、ちょうどストリートミュージックのレベルが大きく変わり始めた時期で。僕にとっては、そこに足を踏み入れてチェックする時間でもあったんですよ。だからこそやりたいことが決まって、今回の制作にも取りかかれたというところがあって。

●今作のM-1「The Beginning and The End feat.AKLO」も、最新のストリートミュージックに触れてきた結果というか。

Shirakawa:そういう部分もあるとは思います。あと、フィーチャリングや共作については前作から始めたくらいなので、単純に楽しくて(笑)。その延長線上で「今回もやりたいね」という話になって、AKLOとトラックメイカーのBACHLOGICにお願いしたんです。

●その2人を選んだ理由とは?

Shirakawa:自分たちが好きな人というのは大前提にありつつ、そこから一緒に作業をしてみたい人ということで考えていった時に、トラックメイカーだったら絶対にBACHLOGICだった。AKLOに関しては、ここ何年かでいくつか確立されてきた日本のヒップホップのスタイルの中でも一番新しいところというか。そういうイメージがあったし、同世代のラッパーの中でも突出していると思っていたから。彼自身もBACHLOGICと一緒にやっているので、制作する上で話もしやすいかなと。

●共作することで、新しいものを取り入れていこうという気持ちもあった?

Shirakawa:単純に近くで見たいっていうのはありましたね。自分たちの制作物に、彼がどうラップを乗せるのかっていう部分で興味はありました。そういうところで声をかけたという部分もあります。

●一緒にやることで刺激を受ける部分も大きい?

Shirakawa:やっぱり刺激を受ける部分はありますよ。しかも共作といっても一部分だけに参加してもらうわけじゃなくて、1から一緒に作っていく形なので。「もしその人たちがメンバーになったらどんなエッセンスが足されて、どう広がるんだろう?」という発想から始まっているんです。今回もトラックを作る段階から関わってもらったんですけど、やっぱり面白かったですね。

●広げて行きたいという気持ちがあったんですね。

Shirakawa:最初はバンドだけの作品でもいいかなと思っていたんですけど、もうちょっと広がりのある形のほうがいいかなということになって。バランスは後から調整すればいいので、とりあえず現時点でやりたいものというところでやってみたんですよ。やっぱり幅が広がるならそのほうが良いと思うし、実際にやってみないとわからないこともあるから。今回、そういう機会を作れたことは良かったなと思います。

●新たな挑戦もしつつ、2・3曲目を聴くと逆にバンドというものの初期衝動的な部分に回帰しているところもあるのかなと。

Shirakawa:それはよく言われるし、自分でもそう思うところはありますね。そこを意識した上での、制作期間の短さでもあるんです。今はそんなに着こむ必要がないというか。前はアレンジをこねくり回したりすることを楽しんでいたけど、よく考えたらそんなに意識せずにさらっとやったものでも十分こねくり回されているなと思って(笑)。だったら自分の中でシンプルめにやったものを、作品の中に足してみるとどうなるのかなというところでした。その意識が特に強かったのは前作なんですけど、その延長線上でやってみたらどうなっていくのかなと。フレーズも最初から勢いのある感じだったので、言わずともそういう感じはメンバーにもあったんでしょうね。

●メンバーとも自然にそこは共有できていた。

Shirakawa:フレーズ自体が2・3曲目は特にそういう感じだったんですよ。もう“ハードコアかメタルか”みたいな感じのフレーズが最初にあって。M-2「Entered Again」なんて最初のデモの段階では、もっと昔のジャパメタみたいでしたからね(笑)。

●(笑)。スラッシュメタル的な感じもありますよね。

Shirakawa:そこの要素は後から入れたんですよ。最初はもっとコテコテのジャパメタだったんですけど、作り進めていく内に刻みがどんどん増えていってスラッシュメタル的な感じも出てきて。各々が自分の中で当てはまるイメージを勝手に持ってやっていた感じで、僕の中では80年代後半から90年代頭くらいのSuicidal Tendenciesみたいなイメージですね。サウンドがうるさい感じだから、あえてそこにパーティーラップみたいなものを入れてみたりとか。

●自分が若い頃に影響を受けてきたものを出した。

Shirakawa:特に「Entered Again」は、そういう感じですね。作ってみて思ったんですけど、逆にこういうサウンドを今までやったことがなかったんですよ。そういう意味では、これが一番新鮮だなという気もします。もうこのスラッシュな感じはやらないと思いますけど(笑)。

●ルーツの1つではあるけど、それをここまでストレートに出したことはなかったんですね。

Shirakawa:こだわりを持ってこういうサウンドをやる人もいると思うんですけど、どちらかと言うと僕らにとってはサンプリング・エッセンスの1つという感じですね。単純にガキの頃に聴いていて、頭の中でずっと覚えているサンプリングフレーズを出してみた感じというか。一番遊ばせてもらったとも言えるし、一番新しい挑戦した曲とも言えるのかなと。

●今作ではM-4「Interlude」以降に入っている曲も遊び心が強いと思ったんですが。

Shirakawa:自分たちとしても、そこに一番新しいタイプの曲を入れたんですよ。そういうセクションにしたかったというのがあって。遊んでいるっていうか、もうフザケている感じですね(笑)。

●(笑)。アルバムタイトルの『59days preface』にはどんな意味を込めているんですか?

Shirakawa:“59days”というのは、今回の制作日数ですね。次はフルアルバムに向かうと思うので、その日数で作ったものが次作への“前書き(preface)”となればという感じで。かと言って、これを出した2ヶ月後に次のアルバムが出るというわけじゃないんですけど。

●今のペースで行くと、早そうな気もしますよね。

Shirakawa:とりあえずメンバーも変わったので、今はちょっとライブをやっておきたいなというところがあって。そういう中でまたメンバー各々にやりたいネタとかが出てきたところから、ぼんやりと次の制作が始まっていくと思います。…早ければいいですね(笑)。

●次作もここ2作の延長線上になりそう?

Shirakawa:それはその時にならないとわからないですね。ただ、流れでいくと、前作『THE OCRACY』の次のアルバムという雰囲気になると思います。今作では、ここでしかできないことも少しやってしまっているから。でも前作とはメンバーも少し変わった上で今作を作り上げたので、そこの新しいビルド感は次のアルバムにも向かっていく部分じゃないかな。

●次へとつながるところは今作からも感じられる。

Shirakawa:うん。でもヒントくらいかな? 自分自身も次がどうなるか全然わからないので。ワンアンドオンリーのことをずっとやっているわけじゃないし、全部その時になって触れてみないとわからないというのは今までもずっとそうなんですよね。

Interview:IMAI

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