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BOYZBOYZBOYZ

クロスオーヴァーの向こう側で生まれたガレージパンクの超進化型 前作は忘れていい、これが彼らの真の姿なのだ

 “これがあのBOYZBOYZBOYZなのか!?”と一瞬、誰もが思うだろう。

初期ANTHRAX直系の80年代クロスオーヴァー・スラッシュを前面に打ち出していた1stアルバム『THRASH RETRO』。そこから1年半というスパンでリリースされる2ndアルバム『ELECTRIC EVIL MAKE BOMB』で、そのサウンドはダイナミックな変貌を遂げた。

スケート・スラッシュやメタルの要素は残しつつ、60sガレージやサイケからサーフやモッズまで幅広い音楽要素を消化吸収したサウンドが躍動している。前作は忘れていい、これこそが彼らの真の姿なのだ。

Interview

「今作でやっていることは、僕が知る限りでは他にやっているバンドはいない。本当に自分が聴きたかったロックンロールをやっていますね」

●ANTHRAX直系のクロスオーヴァー・サウンドだった前作(1stアルバム『THRASH RETRO』)から、ガレージパンク色の強い今回の『ELECTRIC EVIL MAKE BOMB』へと大きく変化しましたが…。

AKILLER:狙ったわけじゃなくてなんだか自然と。でも僕の中では同じなんですけどね。新しいものを模索しながらやったわけじゃなく自分の中にあるものを出しただけだから、好きなことをやっているのは同じというか。売り文句として"ガレージ"という言葉も使っているんですけど、最初はそういうつもりもなくて。結局、ガレージっぽいものは冒頭2曲くらいで、他は前とそんなに変わらないかなと。ただ、ポップにはなりましたね。

●前作ではファッションも含めて、スラッシュメタル的なイメージが前面に出すぎていただけというか。

AKILLER:スラッシュメタルのイメージというか…、80年代後期のANTHRAXですよね(苦笑)。ライフズアビーチの短パンとか今でも大好きですよ。でもメンバーも変わったので、前と同じことをしようとしても違う感じになってきて。オルガン(WiKa)が加入したことで、音が変わったというのは大きかったと思います。前作の曲もWikaさんのオルガンが入って、かなりサタニックになっていますよ(笑)。メタルの悪魔っぽい感じの曲にオルガンが入ると、かなりサタニックな感じになるんです。

●(笑)。今作に関しては、スラッシュメタル的な縛りは取り払った。

AKILLER:縛りみたいなものはなかったんですけど、前作は結成当初の流れをそのまま踏襲したものというか、あの頃から今作寄りに持って行こうとしてたんですよ。でも、メタルの雰囲気は残したかったんで、うちのメタル教科書のat5U5hiのドラムに関してはもうサウンドを無視してメタルのままでやってくれと。そこでまた新たなクロスオーヴァーが生まれるかなと思って。自分では成功したと思ってます。

●そんなメタルの教科書なat5U5hiさんですが、サウンドの変化は平気だったんですか?

at5U5hi:僕は元々、全然違うタイプのバンドから加入したんですけど、"好きなものは何でもぶち込んじまえ!"っていう雑食感がBOYZBOYZBOYZの魅力だと思っていて。今回もメンバーが変わったことで、今のメンバーでしか成し得ないような音になったと思います。

AKILLER:元々は僕が曲の元ネタを持ってきてメンバーに全部指示する感じだったんですけど、今回は曲の作り方も変わって。今はat5U5hiと僕の2人で作っているので、リズムパターンからできる場合が多いんです。

●曲作りの方法が変わったことで、曲調も変わった?

AKILLER:リズムから作るようになったことは大きくて。メタルの教科書なat5U5hiですが、叩くドラムは全然違って、すごくロックンロールっぽいんです。彼の場合は全編フィルインみたいなリズムのほうがハネるんですけよね。それってもう、キース・ムーン(THE WHO)じゃないですか! だから今は広がりがあっていいのかなと思います。

at5U5hi:メタルは聴くのが好きなだけで、自分が叩くとなるとそういう感じになっちゃうんですよね。それが今回のギターリフとも良い感じでマッチして、聴きようによってはガレージパンクにも聞こえるし、オルタナに聞こえたりもする。1曲の中にすごくメタルっぽい荒々しいパートもあれば、すごくジャジーだったりアシッドだったりするパートもあって。そういう色んな表情を持った曲がたくさんできたと思います。

●at5U5hiさんの元々のプレイスタイルが活きたわけですね。

at5U5hi:前作の頃はAKILLERさんが持ってきたリフを元に2ビートで曲を構成していこう、みたいな感じだったんです。でも今回は「自由にやっていいよ」と言われたので本当にそうしたら、意外とハマっちゃって。さらにオルガンが入ったり、ZAKIさんのボーカルが加わって、良い感じに仕上がりました。

AKILLER:at5U5hiはメタルとか1つの音楽に精通しながら、ドラムとしては全く別の音楽をやっていて。そこでものすごいヴァイブスが生まれているわけだから、正解だと思うんですよ。KO→HEYも音楽に関しては無知だけど、ここで色んな要素を吸収してごった煮になったものを出している。彼は僕の家に来た時に聴いているくらいなのに、プレイはあたかもそういうロックが好きな人が弾いているように聞こえるんですよね。

●ある意味、天才肌というか。

AKILLER:1回聴いたらできちゃう。ただ、そこから次々と聴くわけじゃないんですけどね。右から左へ流れる感じで、良いところだけ取ってしまうんです。

●女性の趣味はB専なのに。

AKILLER:彼から嫁の話は絶対するなと言われてるんですが、まぁそりゃもう××××というか。
一同:(爆笑)。

●そこも含めて、雑食なんでしょうね。

AKILLER:たまたま部屋で13th Floor ElevatorsとかTHE SEEDSとかMUSIC MACHINEを聴いている時にKO→HEYが来て、「これは何ですか?」と訊いてきて。「僕はこういうのがやりたかった」って言うから、こっちも「本当に!?」っていう感じでしたね。BOYZBOYZBOYZは前作みたいなことをずっとやっていくバンドだと思っていたところから、「じゃあ、やってみよう」となって今作への流れが始まっているんですよ。

●ある意味、KO→HEYさんが今作のキッカケになっている。

AKILLER:KO→HEYの名言で「僕の中ではTeenage FunclubとCARCASSは同じ"バンド"なんです」というのがあるんですけど、まさにそのとおりで。そのくらい同居できていないと、1つのジャンルに寄ったものになっちゃうから。僕の中でもANTHRAXと大瀧詠一が同じ世界にいるし、そういうものをたまたま1つにしてみたらこうなったというだけなんですよ。

●全然違うジャンルのものをクロスオーヴァーさせているわけですよね。

AKILLER:オリジナルなものを作りたかったんですよ。そして、そうなっていると思います。もちろん今作を聴いて「何かに似ている」と言う人はいると思うんですけど、それはかなりマニアックに音楽を聴いている人だけだと思うんですよね。

●逆に前作でやっていたことは元ネタに忠実すぎた。

AKILLER:前作ではツインボーカルでヒップホップっぽい要素もあって…みたいな。でも、その枠はもう満員だったんです。その時の"今聴きたいもの"っていうのはもう世の中にあった。逆に今作でやっていることは、僕が知る限りでは他にやっているバンドはいない。本当に自分が今聴きたいものをやった感じですね。自分が聴きたかったロックンロールをやっています。

●ボーカルが1人だけになったことも大きいのでは?

AKILLER:ツインボーカルだと片方はラップをしなくちゃいけないとか、どうしてもスタイルが決まっちゃうので逆に大変だったんですよ。別にツインボーカルが嫌だったわけじゃないけど、1人だけになったことで単純に気持ちも楽になりましたね。ZAKIも自由になったというか、今はバンドを引っ張っている感じすらあります。

●ZAKIさんのメンタルも変わった。

at5U5hi:最近はすごいですよ。

AKILLER:僕の言い方がきついとかで、怒られたりしますもん。直すつもりはないですけど!
一同:(笑)。

●バンド内を良い空気にしようとしているんですね。

AKILLER:それはWikaさんも同じですね。彼女が入ったことで、バンドが明るくなったんですよ。野球部の女性マネージャーみたいな感じで、1人1人に「がんばってね」とか声がけをしてくれるんです。そういう部分でも入ってもらって良かったなと思うし、今はすごくメンバーの仲も良くて。

at5U5hi:めっちゃ仲良いですよね(笑)。

●ちなみに、今回ここまで一度も名前が出てきていないZURI SENNIN(TAMA-KING)さんは、なぜ三つ編みなんですか?

AKILLER:最初は罰ゲーム的な感じで、「その髪型で街を歩け」っていう話だったんです。でも彼は気に入っちゃったみたいで、今はこの髪型にすがっていますね。「オイシい」と思っているみたいなんですけど、全然オイシくないですから!

●(笑)。彼は"The Apprenticeship Thing"というパート表記になっていますが…。

AKILLER:"見習い"っていう意味ですね。彼は今回、何もしていないんです。何かしようとはしていましたけど。

at5U5hi:"何もやらないこと"をやっている感じでしたね。

AKILLER:あ~、深いな…。

●ジャケットでネイティブアメリカンの格好をしているのには何か意味が?

AKILLER:これは勝手に僕が決めただけですね。60年代のガレージバンドとかって、こういう人がメンバーに1人はいたりするんですよ。彼はその役割のためだけの人間です。

●前回のインタビューでは「リーダーであり、バンドの支柱である」的なことをおっしゃっていましたが…。

AKILLER:建物でも、支柱なんていうものは時間と共に腐っていきますからね。なるべくしてなった"降格"ですよね。

●柱だし、シロアリにでも食べられたんですかね?

AKILLER:シロアリも食わないんじゃないですかね。汚いものですから!
一同:(爆笑)。

●彼の降格も含めて、バンドは変わったと。

AKILLER:「前作は忘れていい」っていう今作のキャッチコピーがとても良く表現できていると思います。もう別のバンドと思って頂いていいですよ。 だって全然違いますもん! (笑)。

at5U5hi:前作の時は自分たちが"パーティーバンド"であることを意識しすぎていたんです。でも今作にそういう気負いはないし、音楽的な面でも「他の人がやっていないような新しいことをやってやろう」という意識で取り組んだアルバムなので、色んな人に聴いて欲しい。特に若い子たちから、どんな反応があるのか楽しみですね。

●新しい人に聴いて欲しい気持ちもある。

AKILLER:2012年のテーマをみんなで話し合った時に、Wikaさんは「メジャーデビュー」と言っていたくらいですから。良い意味で前作は何も考えていなかった部分があるんですよ。でも今回はちゃんとやりたいことを詰め込んだし、気持ちが入っているのでとにかく「聴いてくれ!!」っていう心境ですね。逆に「これがダメだったら、ヤバくない?」っていう不安もあって。

●やりきったからこその不安ですよね。

AKILLER:自分の生き様みたいなものなので、反応がないっていうのが一番怖くて。こんな気持ちになったのは何年ぶりかだし、本当に初期衝動的な感じがあるというか。最近はMCでも自分たちのことを「ロックンロールバンド」と言っちゃっているんです。僕らの聴きたかったロックンロールがみんなにも届いて欲しいですね。

Interview:IMAI

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