音楽メディア・フリーマガジン

FAT PROP

輝かしい光景と感情を呼び起こす待望のミニアルバム完成

L-R
Ba.Nagiken, Dr.Ema, Vo.Rinda, G.Shintaro

FAT PROPが昨年9月にリリースしたアルバム『Brand New World』は、“音楽をその場で共有する”という彼らの想いが結晶化したグッドミュージックで溢れており、その存在をより多くの音楽ファンに知らしめる転機となった。

同作のツアーを大成功させた彼らは、結成10周年を機に自主レーベル“SCRUM RECORDS”を設立し、ライブハウスで見た輝かしい光景と感情を呼び起こす新作を完成させた。

待望のミニアルバム『SHINE』には、多くの経験を経て培ってきた極上の音楽とグルーヴ、そしてタフなマインドが詰め込まれている。

INTERVIEW #1

「今まででいちばん悩んだツアーでしたね。だからこそ、ファイナルはめちゃくちゃ楽しかったんですけど」

●FAT PROPは音楽的な自我がグラデーション的に広がってきて、それがその時々の作品に反映されるという流れがあったと思うんです。
4人:はい。

●昨年9月にリリースしたアルバム『Brand New World』はそれが顕著で、日本語詞の「Stop The Time」「Hello」が収録されていたり、「Well, Well,Well」のようなブラックミュージック直系と感じさせるサウンドもあったりで、それまで言われてきた"ピアノエモ"というイメージを取り払う作品だったと思っていて。そういった新しい要素が印象的だった前作ですが、そのリリースツアーはどうでしたか?

Shintaro:前回のツアーは1本1本迷ってたというか、メンバー同士よくぶつかっていました。

●そうだったんですね。

Shintaro:ちょうど変革期にあたるツアーだったし、さっき言われたようにサウンド自体も色々と冒険した分、ライブも今まで経験してきた通りの意識でスーッと入ってしまったら、自分たち自身が火傷するみたいな。僕はそんなイメージですね。

●苦労というか試行錯誤があったと。

Shintaro:ライブの中でどんどん進んできた感じがあって、例えば「Well,Well,Well」とかは今では楽しいグルーヴを作る役割の曲になっていたりして。そういう曲の成長も、自分たちのスキルが少しずつ上がったからこそ形になったりし。色々発見があって、勉強になるっていうツアーでしたね。

Nagiken:要所要所で反省できたのがデカかったと思うんです。鹿児島に住んでいたときのツアーは出っぱなしということが多かったんですけど、今回は上京してきてからのツアーだったので、"このままじゃライブはダメだ"っていうところが自分たち自身で見えてきたときにスタジオに入ったりして。

●なるほど。鹿児島に住んでいたらツアー中になかなか帰れないけど、東京だとツアーの合間合間に帰って来れるという。

Rinda:それにスケジュール的にも、金土日がメインだったんです。

Nagiken:変に溜まんないのもよかったのかもしれないですけど。

●メンバー同士、意見をちゃんと言い合えたということ?

Nagiken:そうですね。毎週そういう機会がありましたからね。こうしたりああしたり。長期のツアーで出っぱなしになると、本数を重ねるごとにライブがちょっと惰性みたいになってきて、そういうことが言い辛くなってくるじゃないですか。でもそういうのがなかったから、ちょっとずつ自分たちで気になるところをお互い出していって、その都度修正したからいいものにはなったと思うんです。ツアーが終わってからも、また自分たちの曲をもう1回客観的に見るとか。"そういうことを考えるようにしよう"っていう意識が芽生えたような気がするんです。

●なるほど。

Nagiken:週末のライブに向けて、平日を利用して修正していけるっていう初めての試みで。でも修正できるからこそ、逆にミスもできないっていうか。普通にツアーをしていてももちろんそうなんですけど、"なぜ修正した部分がライブで改善できなかったのか?"という感じで、どんどんどんどん課題として積み上がっていって。

●はい。

Nagiken:だから"成長できていない"ということもすごく現実的に見えた。今までのツアーは"ここが上手くなった"、"あそこが上手くなった"みたいな捉え方だったんだけど、"あそこが上手くいってない"っていう課題が露骨にずっとついてまわるというか。毎週ジャブジャブ洗ったら新たな課題がまた浮き彫りになって、"洗っても洗っても良くなっていかないのはなんでだろう?"という。平均値を上げるという意味で、すごく考えさせられたツアーだったと思います。
Ema:かなりみんな悩んでたと思います。ライブ後にメンバー4人+PAさんで「次はここをこうしていこう」とか話し合ったりして。で、だんだん良くなっていくんですけど、今度また新しい課題が見えてきたりとかして。

Rinda:うん、今まででいちばん悩んだツアーでしたね。だからこそ、ファイナルはめちゃくちゃ楽しかったんですけど。色々悩み抜いてやってきたからこそ、最後に集大成を見せれたんだよっていう気持ちがすごく大きくて。

Shintaro:それまでいっぱい悩んだ分、ツアーファイナルは目的がすごくシンプルだったんですよ。悩んだものをただぶつけるだけっていう。今まで以上にシンプルでした。

●ツアーで印象的なエピソードとかありましたか? 別におもしろエピソードでもいいんですけど。

Shintaro:僕、ツアー中に結婚しましたよ。

●えっ? なぜツアー中に?

Shintaro:いや、あのー、ベタなんですけど、2人の記念日に結婚したんです(笑)。

Nagiken:おもしろエピソード(笑)。

●おめでとうございます!

Nagiken:あと、俺の子供が無事1歳になりました。

●おめでと…ていうか、別にツアーに関する話じゃないし!
一同:ハハハハ(笑)。

INTERVIEW #2

「プレイする度にずっとキラキラしたなにかが呼び起こされるような曲というか、"届いてくんねえかな"みたいな」

●7/4にミニアルバム『SHINE』がリリースとなりますが、最初に話しましたけど前作は節目となる作品だったと思うんです。対して、今作はミニアルバムということもあって、前作で見せた新しい面をより色濃く抽出したような楽曲が揃っていますよね。ブラックミュージックを背景に持つダンサブルなもの、そして"ポップ"な面が印象的な作品だと感じたんですが、全体的なイメージはあったんですか?

Shintaro:キラキラしたものにしたかったんです。聴いた人が感じる色みたいなものが。でも別に狙ってポップにしたわけじゃなくて、色々とアイディアを企んでいる中で曲を作っていって、たくさんの候補曲の中から選ぼうとしたときに、みんなで自然に選んだものが全部ポップだった。作品のイメージとかは何も考えてなくて、「これ入れたい」「これは入れたいね」って選んだ曲が全部ポップで、レコーディング終わったくらいのタイミングで改めてよくよく考えたら「すげーポップなアルバムだね!」みたいな。

●気分的にそういうものを求めてたんでしょうか?

Shintaro:かもしれないです。辛いツアーだったのかな(笑)。

●ハハハ(笑)。

Shintaro:でも作品のきっかけになったのはM-1「SHINE」なんです。制作を進めていく中で「やっぱりこの曲は1曲目でいこう」という意識が一貫してあったので、全体的にキラキラしたものになったんでしょうね。

●「SHINE」が他の曲を呼んだと。この曲はどういうきっかけでできたんですか?

Shintaro:この曲はツアーが終わってからできたんですけど、『Brand New World』のツアーは毎回、Nagikenがその土地の食材にちなんだポエムを詠むっていうコーナーがあったんですよ。その土地の名産品を。

Nagiken:本番10分前にググって調べて。

●おもしろエピソードあるやん(笑)。

Nagiken:ありましたね(笑)。くだらなすぎて全然忘れてた。

Shintaro:MCで、ずっと食材でポエムを詠んでいたんですけど、そうしたらファイナルになるともうお客さんはザワザワですよ。「今日はなにでポエムを詠むんだろう?」みたいな感じで。

●東京の名産品は何だろう? みたいな。

Shintaro:そうそう。俺らメンバーも"今日はなに言うんだろう?"って思ってたんです。そしたらいきなり「俺らFAT PROPは誰かが死ぬまでバンド辞めねーから!」って。往年の長嶋茂雄くらいの勢いで言ったんすよ。

●永遠に不滅です的な(笑)。

Shintaro:"なに簡単に言っちゃってんだよ!"みたいな(笑)。でも観に来てくれた人は当然のように喜んでくれて、俺もその空間がすごく嬉しかったんです。Nagikenがそう言って、それに対して「おーっ!」「辞めんなよ!」みたいな感じ。そういうお客さんの気持ちに応えたい、というところからこの曲はスタートしたんです。

●ということは、「SHINE」は届ける先が見えていた。

Shintaro:そうですね。そのとき、俺の頭の中ですごくキラキラしていたんです。だから、プレイする度にずっとキラキラしたなにかが呼び起こされるような曲というか、"届いてくんねえかな"みたいなイメージからスタートして。で、そのイメージ通りに進んでくれた曲ですね。

●なるほど。この曲は日本語詞ですが、日本語で歌うというのは必然的だったんですか?

Shintaro:Rindaが最初のピアノリフとか持ってきたときから「やっぱり日本語だよね」と言っていて。すごく自然な流れで日本語詞になりました。

●しかも、前作と比べて日本語詞の歌い方が進化していると感じたんですが。

Nagiken:それは俺も思いました。

Shintaro:今回はレコーディングに向けてめちゃくちゃ歌を練習したんです。前回は日本語詞に慣れていないから歌い回しとか迷ってた部分があって、発音やイントネーション的に英語っぽく聴かせることで歌のリズムを壊さないように、っていうところばかりに意識がいっていたんです。でも、そもそも日本語にする理由は"シンプルに伝えたい"ということですからね。そっちのが大事なんじゃねえかって。

●うんうん。

Shintaro:前作から1年経っての心境の変化とかもあると思うんですけど、より伝わりやすいようにするためには、歌のリズムを日本語側に寄せたりすればいいんだっていう。

●単に英語を日本語に変換するんじゃなくて、楽曲としての完成度を上げるために、曲の作りとして日本語が乗りやすいようにすればいいんじゃないかと。

Shintaro:そうそう。あとは、歌い回しをRindaと2人で何度も練習して。

Rinda:ずっとやってました。

Shintaro:毎日レコーディングが終わった後に地獄の特訓ですよ。

●地獄の特訓?

Shintaro:とは言っても、喉の心配があるから大きな声を出したりはしなかったですけど、緻密に計算してRindaの携帯のボイスメモに録って…という繰り返し。
Ema:今回大阪でレコーディングしたんですよ。だから2人はホテルに戻ってから特訓していたんです。

●なるほど。Rindaくんはどうだったんですか?

Rinda:それはまあ、すごい眠かったですし。正直眠かった部分もありますよ。毎晩3~4時くらいまでやりましたからね。眠かったですね。

●「眠かった」しか言ってないですけど(笑)。

Rinda:でも出来あがった瞬間にこれでよかったんだと思いました。辛かったけど、最後に聴いてみたら"やっぱりこっちのがいいわ"って。

Shintaro:報われたでしょ?(笑)

Rinda:報われた(笑)。

●表現や演奏が難しいというか、グルーヴ感を出すのが難しいような曲…前作でいうと「Well,Well, Well」に代表されるような楽曲が今作は多いですよね。ブラックミュージックを基にしているソウルやファンクな雰囲気がある曲というか。こういう曲をライブで表現するのは難しいと想像するんですが。

Shintaro:難しいですね(笑)。でもやっぱりやりたいっていう。

●これは前回のインタビューでも言ったんですが、「踊れ!」と煽ってお客さんを踊らせるのではなく、FAT PROPは聴けば踊り出さずにはいられないような楽曲を作る、という志向性が圧倒的に高いですよね。今作はそういう意識が今まで以上に色濃く出ている気がするんですが。

Shintaro:そうですね。「もっと踊れよ!」という意識だったら、分かりやすくシンガロングな曲を作ったかもしれないし。

●そういう想いはより強くなってきているんですか?
Ema:うーん、特に意識してないって感じですね。

Shintaro:でも言われてみたらその意識はずっとあるね。

Nagiken:ツアーとかを重ねてきてより強くなってきているのかもしれないですね。俺らが自覚していないだけで。当初からずっとそのつもりでやってるけど、底が上がってきているから、第三者から見たらそういう印象を受けるのかもしれない。俺らは特別意識してないけど、根本的に持っているものが高みに上がってるのかなっていう。

●なるほど。そんな中で、M-5「SONG FOR YOU」はガラッと雰囲気が違いますよね。Rindaくんによる弾き語りに近い感じの曲で。

Shintaro:こういう曲も入れたいなと思って。最近思うんですけど、僕がギターで、Nagikenがベース、Rindaがキーボードとヴォーカルで、Emaがドラム…バンドにはパートがあるじゃないですか。でも曲がパートを欲していなかったら、別に無理矢理入れなくてもいいんじゃないかとも思ったりしていて。より音楽的なものを表現したいっていう。だからこういうのもおもしろいですね。

●歌詞はまさにバンドのメッセージですよね。今のFAT PROPにすごくリンクしているというか、バンドの意思や想いが込められている。パートは少ないけど、バンドにとってすごく重要な曲だと思ったんです。

Shintaro:これはほぼRindaがほとんど1人で書いたんです。

Rinda:やっぱり色々な気持ちを入れたいなっていうのもあって。震災のこともまだあるし。

Shintaro:前作で震災をテーマに書いた曲もあったけど、また1年後も。やっぱり1年じゃ消えないですよね。だからこの歌詞を見たときに俺も"そうだよな"と思いました。

●「より音楽的なものを表現したい」という発言がありましたが、今作は"ポップミュージック"というものを追求していくという意志の表れでもあるような気がするんです。

Nagiken:『Brand New World』を作ったときもそうだったんですけど、みんなに寄せる気はないというか、やっぱり俺らから出てきたものがFAT PROPだと思うんですよね。

Shintaro:だからこそ、ちゃんと俺らが好きな音楽をまず第一にやろうと思います。その意識はずっと変わらないです。そういうものを好きでいてくれたら嬉しい。

●ということは、FAT PROPの音楽的な変化の理由は、自分たちが"いい"と思う音楽がより広がってきたということなんでしょうか?

Shintaro:そうかもしれないです。

Nagiken:きっかけとしてはShintaroから新しいものが出てくる場合が多いんですよ。Shintaroはいちばん冷静に判断できるプロデューサーみたいな視点を持っているし、色んな音楽を俺らより先駆けて聴いてるし、おもしろいことをやろうと言い出すのはだいたいShintaroで。そこにRindaが乗っかるということが多いよね。

Shintaro:普段は別に新しいことやってるという意識もないんですけどね。普通に「こんな曲できたからやろうよ」と言って作ったものが「新しいね」と言われたりとか。

●そうなんですね。

Shintaro:でもそれは自然なことだと思うんです。人として成長して…それが成長なのか進化なのか退化なのか分かんないですけど…まわりの状況とかで聴く音楽が変わるっていうのは。その流れにちゃんと沿っていきたいというか、無理に若作りするつもりもないし、おっさんなったらおっさんなりのかっこよさがもっと出ると思っていて。

Nagiken:僕らのことですからね。別に人に決めてもらうことじゃないと思うんですよ。楽曲もそうだし。だから自然なんじゃないかなっていう。

Shintaro:もちろんSex Pistolsみたいにずっと貫いている人たちもかっこいいと思いますよ。でも、まあそれは俺らじゃないかな、みたいな感じ。

INTERVIEW #3

「ダラダラやって終わりだったかもしれないですからね。そのタイミングで2人が入ってくれたからこそ、ここまで来れた」

●ところで結成して今年で10年なんですよね?

Nagiken:そうなんですよ。なんだかんだでもう10年…。なんか無責任なんですけど、気がついたら10年経ってたという感じなんです。

Shintaro:僕とEmaは半分くらいだもんね。10年はオリジナルメンバーの2人だけ(笑)。

●あまり実感はない?

Nagiken:うーん、あんまり実感はないですね。言っちゃうと"もっと色々できたな"っていう気持ちはもちろんあるんですけど、だけど"挫けたり挫折とかもしないでよく続けられたな"っていう気持ちがいちばん強いかな。無茶苦茶なケンカとかもしたことなく、うまくバランス取ってやってこれたかなっていう。振り返ってみると、ShintaroとEmaが入って2009年に今のメンバーになったときは"どん底期"みたいな感じだったので、こいつらと一緒じゃなかったら難しかっただろうなと思うところもありますけどね。

●なるほど。

Nagiken:メジャーとの契約が切れちゃって、みんなで「おい、やべーぞ」って言ってたときに、「もうなるようにしかならないからツアーとかやろうよ」みたいな気持ちになれたのは、このメンバーだからっていうのが大きい。Tシャツとかの物販も全部自分たちで作ってやろうよって。本当になんの後ろ盾もなく、原点に戻ってじゃないけど、バンドが思いつくことをやろうと。

●うんうん。

Nagiken:そうやってがむしゃらにやっていたらまた拾ってくれるレーベルがあって、それからは時間が経つのが早かった。やっぱり、そうやって少しの間だけでも自分たちでもう1回やったということが糧になって、関わってくれる人が増えてくると、自分たちがやらないといけないことの純粋さが増してくるし、やらなくていいことも見えてきて。それがどんどん加速していったという感じです。だからありがたいと思う半面、すごく早く時間が流れていくっていうか。あまり気を抜かずにやってこれた感じはします。

●いいことですね。

Nagiken:そうですね。昔のままだったらダラダラやって終わりだったかもしれないですからね。そのタイミングで2人が入ってくれたからこそ、ここまで来れたかなっていう。

●バンドにとっての転機にもなったんでしょうね。今のメンバーになって、しかもそれがいい相互作用を生んでいるというか。

Nagiken:そうですね。こないだShintaroの結婚式で鹿児島に帰ったとき、いちばん最初のドラムが来てて…。

●オリジナルメンバーが?

Nagiken:そうです。最初は3人でやってたんですよ。Rindaがギターヴォーカルをやっていて、ベースが俺で、ドラムで。

●最初は3ピースだったのか。

Nagiken:で、その3人で写真を撮ったんです。別にかしこまって撮ったわけじゃなくて、たまたま一緒にいたんだよね、そのタイミングで。

Rinda:うん。

Nagiken:3人でしょうもないことを話していたんですけど、ノリで3人並んで写真を撮ったんです。で、俺はそのときに初めて10年経ったという実感があったんです。

●というと?

Nagiken:昔と比べて、俺ら老けちらかしてて。

●アハハハハ(笑)。そういうことか(笑)。

Nagiken:昔、3人で撮った写真があるんですよ。ツアーをやるからライブハウスとかのスケジュールやHPに載せてもらう用で。

●アーティスト写真みたいな?

Nagiken:そうです。で、偶然なんですけど当時の写真と似たような構図で撮っていて。その写真を見て"すげえ老けてる!"と思ったから、「これ撮り直していい?」とか言ってもう1回撮ったんですよ。でもやっぱり老けてるという。
一同:アハハハハハ(爆笑)。

Nagiken:3人ともザワザワとなって「やべえ! 超老けてる!」とか言って、「ちょっともう1回だけ撮ろうよ」って。そのときくらいかな、俺が本心から"10年経ってる"と実感したのは(笑)。

Rinda:俺、その写真を見て「あれ?」って言いましたもん。「あれ? なにこれ?」って。

●改めて比べたり振り返ったりしないと、案外実感しないものですからね。

Nagiken:もうアラサーですからね(笑)。最近、俺とShintaroは髪の毛のボリューム感みたいなものにちょっと悩んでて…。同年代のやつらと対バンしたときとか、楽屋でそういう話題になることが多いんですよ。

●何の話やねん(笑)。

Nagiken:で、Rindaがスカルプを使い始めたんですけど、露骨に増えているという(笑)。
一同:ハハハハハ(笑)。

Nagiken:他のバンドのやつらが「あんなの効くのかよ?」とか言って、「Rinda見て! めっちゃ増えてるから!」って(笑)。

Rinda:8000円しましたからね(笑)。

Shintaro:8000円か~。

Nagiken:でもそれで髪の毛が帰ってくるなら安い安い(笑)。

●ハハハ(笑)。ところで、自主レーベル"SCRUM RECORDS"を立ち上げた理由というのは?

Nagiken:もともとやりたかったというのがいちばんの理由で、タイミングを探していたというところもあったんです。

●あ、そうだったんですね。

Nagiken:それで"今やるべきじゃないだろう"ってところは分かるんですけど、"今やるべきだろう"ってところはちょっと分からなかったんです。やっぱり自主レーベルを立ち上げるってすごく大きなことだし。

●うんうん。

Nagiken:でも10周年で節目だからっていうこのタイミングで、もう1回締めなおそうっていう気持ちで立ち上げたというか。

●なるほど。

Nagiken:もちろん前に所属していたCAFFEINE BOMB RECORDSにもすごくお世話になっていたし、レーベルをやるっていうことの大変さはすごく分かるんですけど、でもこのタイミングでまたバンドがもう1つステップアップ…それは楽曲とかじゃなくて…バンドとしての深みというか、そういうところでまた1歩前に進むことができたらいいなと思ってます。

INTERVIEW #4

「"10周年"という1つの区切りのタイミングで、鹿児島の地元のハコでライブをするというのは特別な意味になってくる」

●9/7からリリースツアーが決まっていますが、最初の話でもありましたように前回のツアーは結構大変だったわけですよね。今作に収録されている新曲はライブでの表現が難しいと思うんですが、どういうツアーにしたいと思っていますか?

Shintaro:相変わらず悩んで悩んで、1本1本いいものを出していきたいと思います。

Nagiken:そうだね。

Shintaro:ごくシンプルに、来てくれた人がすごくいい顔して帰ってくれたらいいなって思うので、そういうライブを作りたいですね。
Ema:今回のツアーは本数が少ないから、前回みたいに悩む時間が減ると思うんですよ。だから最初から前回でいうところの終盤みたいな意識でやっていきたいと思ってます。きっと悩む間もなく終わると思うんです。

Nagiken:期間にすると1ヶ月ですからね。ガッと1ヶ月で集中してまわる、みたいな。それと、前回のツアーはブッキングとかも結構手伝ってもらってたんですけど、今回はバンドとしてしっかり…レーベルを立ち上げたっていうことも含めてなんですけど…ツアーの制作にもより食い込んでいったんです。

●自分たちで組んだツアーというか。

Nagiken:そうですね。特に、鹿児島だけは完全に自分たちの企画でやらせてもらうんです。他のところは制作の会社が入ってくれているんですけど、鹿児島だけはもう「どうしても自分らの企画でやらせてくれ」と言って。国分FUZZ ROCK HALLというライブハウスも俺らの地元で、まさにホームなんです。

Shintaro:実家から車で5分ですからね(笑)。

Nagiken:"いいツアーにしたい"っていう気持ちは当然のことながら毎回あるんですけど、"10周年"という1つの区切りのタイミングで、鹿児島の地元のハコでライブをするというのは特別な意味になってくると思うし。

●確かに。

Nagiken:もちろんファイナルはファイナルでしっかりと。今はもう鹿児島のバンドじゃないですからね。俺らは東京に居るバンドなので、そこでどういうライブができるのか? というところもあるだろうし。あとの場所は今までと一緒で、ちゃんと悩んで貪欲にやっていけばいいと思うんです。

●はい。

Nagiken:そういう意味では、今までとは少し違った意味合いがあるツアーかもしれないです。もちろんいつもと同じ気持ちでやるんですけど。ライブの本数は少ないけど、バンドが一皮剥けることができたらいいなと思ってます。

●対バンも自分たちで声をかけているんですか?

Nagiken:そうです。誘っているバンドはおもしろい人たちばかりですよ。ジャンルとかにあまりこだわらず、とにかく自分たちが"かっこいい"と思った人たちとか、純粋に仲がいいバンドとかに声をかけて。

●そういうのいいですね。

Nagiken:今回のブッキングで"そういうこともやろうと思えばできるんだ"という実感というか、改めての発見があって。逆に言うと、色んな人に手助けしてもらったことで見えていなかったところが、自分たちでやることによって改めて見えてくると、今まで手助けしてくれていた人たちに対するありがたみもまた変わってくるんですよね。

●そうでしょうね。

Nagiken:だからいつもサポートしてくれる人たちにもすごく感謝するし、自分たちが「お願いします!」と言ってブッキングが決まるのはすごくありがたいしっていう。CDをリリースしてもいない頃、自分たちでイベントを企画して、地元のバンドに「ちょっと俺らのライブ出てくんない?」とお願いして、そのイベントでチケットがソールドアウトした…みたいな喜びが今回のツアーでは味わえるかなっていう。

●当然その方が手間はかかるし絶対に大変なんだけど、大切なものは見えやすいんでしょうね。

Nagiken:そうですね。俺はそういうことを先輩からしてもらってたんです。だからそういうことも含めて、これからは自分たちでやれることをもっと明確に打ち出していこうと思ってます。

Rinda:楽しみですね。今回のツアーは9本しかないので、全箇所ツアーファイナルみたいな感じでやりたいなと思ってます。これがツアーファイナルだよみたいな。ファイナルシリーズです。

Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:栗山聡美

 

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj