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グッドモーニングアメリカ

希望と絶望のスパイラルが彼らの奇跡と未来を作る

PHOTO_GMAmainCDデビューした頃のグッドモーニングアメリカは、まだ自分たちのスタンスを探してる最中だった。自分たちはどういう音楽を鳴らし、どういうスタンスでライブをしていけばいいのか、ライブのたびに試行錯誤を重ねていた。V.A.やオリジナル作品を重ね、様々な試行錯誤を経て、お客さんも含めてライブハウスの風景をバンドに採り入れることで、彼らはバンドとしてのオリジナリティとアイデンティティを確立した。たなしんはバンドのスポークスマンとしてキャラクターを発揮し、渡邊はV.A.の企画でバンドの繋がりを拡げ、ペギは類まれなる安定感でバンドの屋台骨を支え、金廣は自らの美学で“痛みを含んだいい音楽”をとことん追求し、今やシーンの最重要バンドとしてたくさんの注目を集める存在へと成長した。そんな彼らが2013年5月8日にリリースする1stフルアルバム『未来へのスパイラル』は、今までの活動で培った“自分たちらしさ”をまったく薄めることなく、いやむしろ個性をより色濃くしながら、今まで以上にたくさんのオーディエンスを熱狂の渦へと巻き込んでいくきっかけとなるに違いない。希望と絶望のスパイラルを続けながら、時には半裸&サングラスで「ファイヤー!」と叫びながら、全力で走り続けていくグッドモーニングアメリカ。彼らの夢は始まったばかりだ。

INTERVIEW #1
「言わなくてもみんなが同じベクトルになれたんだと思います。やるべきことっていうか、“そこに到達するために”っていう感じで」

●1stフルアルバム『未来へのスパイラル』がリリースとなりますね。

たなしん:そうなんですよ! 何卒よろしくお願いいたします!

●今日も声がデカいな…。2010年10月に1stミニアルバム『空ばかり見ていた』をリリースしたときのインタビューでは、まだ音楽性やバンドとしての個性を自分たち自身が探している最中だという話があったんですが、グッドモーニングアメリカとしてのオリジナリティというか、“これがグッドモーニングアメリカだ”というものを確立した時期というのは自覚があるんですか?

金廣:うーん…例えば“グッドモーニングアメリカらしさ”というものを考えたとき、想像するにはこのバンドの4人じゃなくて、お客さんも含めた風景なんです。その風景が浮かぶものがグッドモーニングアメリカっぽいものなのかなとは思っていて。

●うんうん。

金廣:CDデビューして、自分の中でも色々と考え方が変わってきて。音楽的な面でいえば、自分の中のグッドモーニングアメリカ像に当てはまるものというと、やっぱりお客さんも含めた風景が浮かぶものですね。

●それは具体的にはいつごろなんでしょうか?

金廣:今となっては「空ばかり見ていた」とかも当てはまりますけど、当時はそこを意識して作っていたわけではなくて。だからきっかけとしては「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」(2011年7月リリースの2ndミニアルバム表題曲)だと俺は思っていて。自分のスイッチを切り替えたタイミングというか。

●そうでしたね。

金廣:曲作りに関してフラットになれたんですよ。特に「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」はメンバーと「ライブが見える曲を作ろう」というやり取りがあった上で作ったという経緯もあったし。それ以降は特に曲作りのタイミングでメンバーと話し合ったりすることはないんですけど、「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」で確定したという感じですね。

●メンバー各々が「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」のタイミングで共通認識を持てた。

金廣:たぶんそうだと思います。

ペギ:そのタイミングで、言わなくてもみんなが同じベクトルになれたんだと思います。やるべきことっていうか、“そこに到達するために”っていう感じで。だから「そっちはちょっと違うんじゃない?」みたいなことがあったとしても「あ、そうだね」ってすぐに理解できるというか。

●それはライブで培ってきた肌感覚なんでしょうね。

金廣:そうですね。音楽なので正しいとか間違っているとかはないと思うんですけど、グッドモーニングアメリカとしての正しい姿っていうのが「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」を作ったときに自分の中でちょっと見えたというか。正解の1つが見えたというか。そこから曲のバランス感は大事にしたいなと思うようになって。

●「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」という曲のおもしろいところは、この曲の歌詞では金廣くんが自ら作った音楽を皮肉っているんだけど、ライブではお客さんがすごく楽しそうに暴れたりダイブが起こるっていう。

金廣:確かに裏打ちでダイブって珍しいですよね(笑)。ライブハウスで演奏したときの風景が正しいっていうか、これがグッドモーニングアメリカなのかなという感覚を持てるようになった曲ですね。

●あと、V.A.『あっ、良い音楽ここにあります。』の第一弾を2010年8月にリリースしましたけど、あの第一弾に参加したバンドは既に半分近く活動休止や解散をしていますよね。今のシーンで活動をしてきて今回メジャーデビューということもあり、思うところもあったんじゃないでしょうか?

渡邊:V.A.のコンセプトでもあるんですけど、俺らやみんなが知らないだけで、世の中にはかっこいいバンドやめちゃめちゃ歌が上手かったり楽器が上手い奴がいっぱいいると思うんですよ。でも陽の目を浴びることなく解散している人たちがごまんといる。そういうのがすごく嫌だったので、少なくとも俺らが関わったかっこいい人たちはどんどんV.A.とかで紹介してきたんです。俺らがグッドモーニングアメリカを始めた当時、そういうきっかけがなかったから解散してしまった同世代のバンドがすごく多かったんです。そこは歯がゆいですね。

●陽の目を見ずに同世代のバンドが解散していくシーンを何度も目の当たりにしてきたと。

渡邊:そうなんですよ。それはすごく悔しかったし、もっとみんなに気づいてほしいなって思うこともよくありました。

金廣:資本主義だから、別に国がバンドを支えているわけではないじゃないですか。だからレコード会社や事務所との契約が永遠ではないということは当然のことで、それは明らかに商品としての契約ですよね。もちろんそれは“愛”が含まれているものであってほしいと思いますけど。それが故に、流行りじゃなかったら捨てられるのは当たり前だと思うし、でもそれは音楽の質が悪いとかそういう話でもなくて、そういうサイクルっていうのは絶対にあって、そのサイクルに乗れているか乗れていないかっていうことだと思うんです。

●うんうん。

金廣:でも、それとバンドが解散する解散しないっていうのはまた別の話だとも思うんです。売れてなくてもバンドを続けることはいくらでもできるし。何か事情があってやむを得ずバンドを辞めなきゃいけない人がいることは悲しいですけど。でも資本主義の中で音楽をやっているわけですから、当たり前のことなのかなとも思うんです。そこに対するレコード会社や事務所の余裕っていうのは昔と比べたらなくなってきているから、売れなければ契約が終わるっていうのは当たり前のことだと思うんです。俺らも2年後にどうなるかはわからないわけだし、でもそのサイクルをずっと見続けないと、メジャーに上がったからどうこうという話でもないとはすごく思います。今までと変わらないことをしていかないと置いて行かれるんだろうなって。

●そうですね。メジャーかどうかというのは届け方の方法の話であって、バンドの本質が変わるわけではないですからね。

金廣:そうそう。メジャーっていうのは、音楽を届けやすくするというか、もうちょっと広げるためにオプションがドッキングされるというイメージですね。

●ところでアルバムのことの前に1つ訊きたいことがあったんですが、昨年秋に発売日まで事前告知をまったくせずに2000枚限定シングル『餞の詩』(2012年10月)をリリースしたじゃないですか。発売日当日に情報解禁ということ自体がびっくりしていたんですよね。かなり思い切ったことをしたなと。

渡邊:ずーっと前に「恋愛の曲ばかり3曲を集めた作品はどうだろう?」というアイディアが出て、それが『餞の詩』のリリースに繋がったんです。まずは「餞の詩」を金廣が曲を作ってきたんですよ。かなり前の話なんですけど。

金廣:「餞の詩」は2ndミニアルバム『ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ』を作る前に作っていたんです。

●あ、そんなに前の話なんですか。

金廣:東日本大震災が起きる前の日に「あなたの傍に猛ダッシュで」を作っていて、東日本大震災の次の日に「餞の詩」を作ったんです。だからその頃から「恋愛3部作」というアイディアはあって。

●ということは、「餞の詩」は震災の影響が強く出ていると。

金廣:そうですね。震災がなければこの曲はできていないと思います。「餞の詩」はすごく個人的な話をきっかけに書いた曲なんですけど。

渡邊:かなり前にできていた曲なんですけど、すごくいいものができたので、大切に届けたいと思ったんですよ。今って毎週チャートが目まぐるしく入れ替わっているし、お店に並ぶものも週替りじゃないですか。だからその中で普通に出して流れに埋もれさせたくないなと。

●うんうん。

渡邊:じゃあどうしたら大事に聴いてもらえるかな? と考えたんです。この曲は発売日は言ってなかったんですけど、ラジオでかけてもらったりとか、CSでPVとか流してもらっていたんですよ。だからこの曲を好きだと思ってくれたお客さんはきっと自分で探してくれるだろうし、大事に聴いてくれるんじゃないかなと。だから2000枚限定でシリアル番号を付けて、発売日当日に情報解禁したんです。

●それが話題になり、FM802のヘビーローテーションや関西地区特別盤のリリース(2012年12月)に繋がるんですね。

渡邊:あれも僕らは全然予想していなかったことで。すごくありがたいなって思いました。

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INTERVIEW #2
「昔ほど難しくは考えなくなったんですよ。何事にも割とフラットに接することができるようになったんです。人に対しても」

●そして今回アルバム『未来へのスパイラル』がリリースとなるわけですが、CDデビューから2年半で、よく考えたら初のフルアルバムなんですよね。

渡邊:そうなんですよ。

金廣:だから俺たち的には「メジャー第一弾」というより「初のフルアルバム」っていう気持ちの方が大きいんです。

●今作を聴いて思ったんですけど、曲数が多いから当然といえば当然なんですけど、作詞/作曲をしている金廣くんの色んな面が出ていますよね。

金廣:ほう。

●金廣くんは初めてインタビューさせていただいたときから「痛みのない音楽は作りたくない」と言っていたじゃないですか。今まで作ってきた曲も、時にはすごく世の中を憂いていたり、時には自分も含めて痛烈に皮肉ってみたりして。だから個人的に心配だったんです。

渡邊:前からおっしゃっていましたよね(笑)。「金廣が心配だ」って。

●そうそう。金廣くんは感受性が強すぎるから、精神的なバランスをどうやって取っているのかな? と。もっと言うと、バランスが崩れないのかな? と。でも今作を聴くと、こんなにつまらない世の中だけど、その中で金廣くんが何を大事に思っていて、どう考えて生きているか…というのが伝わってくるんです。全曲を通してのメッセージみたいなものが聴こえてきた。

金廣:ああ〜。

●例えばM-11「下らない毎日が」だけ聴けば、「こいつ終わっとるやないか!」とめちゃくちゃ心配になるんです。

一同:アハハハハハ(笑)。

金廣:俺も自分で“よくこんな歌詞書いたな〜”って思います(笑)。

●でも12曲揃ったら“この人は大丈夫”だと思えるんですよね。金廣くんのことがよくわかる。

たなしん:確かに。

●結局金廣くんが何を大事に思っているかというと、“愛”だったり子供の頃に抱いていた“夢”だったりする。言葉で言うとすごく薄っぺらくなっちゃうんだけど、12曲の痛みのある音楽を通して、「愛」とか「夢」とか「希望」とかが大事だというメッセージを込めているアルバムだなと。

金廣:昔ほど難しくは考えなくなったんですよ。何事にも割とフラットに接することができるようになったんです。人に対しても。そういう物事の見方や人との接し方は俯瞰といえば俯瞰なんですけど、ニュアンスとしてはもうちょっと自分寄りな感じなんです。そのスタンスによって傷つかないというか、そもそも傷つく必要がないというか。基本的には何かがおかしかったら全部自分のせいだと思うし、そういうものだと思うようになってきたんです。だから前に比べたら大丈夫になりました(笑)。

●この話が金廣くんに当てはまるかどうかわからないんですけど、僕は人が何かをすることで傷ついたりとか腹が立ったりすることがよくあるんです。で、それはなぜか? と考えたら、人に期待するからなんですよね。期待するから裏切られたと思うし、期待するから思い通りにいかなくなったら腹が立つ。結局は自分の考え方次第というか。だから全然悪い意味じゃなくて、人に変な期待をしなくなったら心持ちが楽になった。

金廣:ああ〜、その感覚はよくわかります。それは“諦める”でもないし“見定める”というわけでもないんですけど、もっと感覚的にフラットなんですよね。求めないスタンスになってきているのかもしれないです。

●そういうスタンスを取らざるを得なかったからというわけではなくて。

金廣:うん。そっちの方が色んな物事や他人を受け入れられるような気がするんです。だからガツガツしなくなりました。昔はもっとガツガツしていたし、尖っていた部分もあったと思うんです。もちろん沸々とする部分は今もありますけど、それをコントロールできるようになった…あ、でも「コントロール」というとまた語弊があるな(笑)。

●言葉で言うと難しいですね。“ポジティブじゃなかったらネガティブ”という風に、とかく世の中は2色に塗り分けたがるけど、ポジティブな面とネガティブな面が同居している方が普通だと思う。

金廣:それが当たり前だと俺は思うんですよね。

●このアルバムはいつ頃から作り始めたんですか?
たなしん:2012年の8月にはレコーディングに入っていたので、アルバムを意識しはじめたのは『輝く方へ』を作っていた時期ですね。

金廣:メジャーかどうかは別にして、ミニアルバム3枚を作ったので、次はフルアルバムだなっていう感じで。でもどういうアルバムにしようという全体的なイメージはなかったんですよ。大枠としては、今までのミニアルバムは全部名刺みたいな曲っていうか、「これがグッドモーニングアメリカです!」みたいな意識でストレートに作ってきたんです。でもフルアルバムは、それをもうちょっとハメを外すというか。色んなことをしたいなと思って曲を作ってきたんです。

●曲作りというフェーズでは、今までよりも自由に色んなことを試したと。

金廣:そうですね。20曲くらい作ったんです。その中には昔に作ったものもあるんですけど、その中からいちばん今に相応しいものを選んで。

●「今に相応しい」というのはどういう感覚ですか?

金廣:うーん、説明するのは難しいんですけど、例えばM-3「タイムスリップしたみたいに」は『ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ』を作っていたときにできた曲なんです。2ビートの曲が欲しくて「どういう感じがいいかな〜」と考えてたらペギが「いいのあるんすよ〜」って昔に作ったデモ音源を持ってきてくれたんです。俺は作ったことすら忘れていたんですけど。

●はい。

金廣:そのデモを聴いて「めっちゃいいじゃん!」と思って。作った当時はダメだと思っていたけど今だったらOKになることってあると思うんですけど、今作はそういう“今”の感覚が全部あるんですよね。今回20曲くらい作ったと言いましたけど、選ばれなかった曲は色んなスタンスのものがあって。自分的にはすごく好きな曲ばかりなんですけど、今回のアルバムに選ばれなかったのはたぶん今じゃないんだなって。

●ああ〜、なるほど。ボツという話ではなくて、今かどうかという基準で収録曲を選んだと。

金廣:そうですね。

●「タイムスリップしたみたいに」はおもしろい曲ですよね。展開が特徴的で、トリッキーな要素があって。

金廣:だから俺的にはミニアルバムには入れられないんですよね(笑)。わかりやすいしいい曲だと思うんですけど、でも「これがグッドモーニングアメリカです!」という感じではないというか。

●今作を聴いて思ったことは、もうジャンルとか関係ないということ。グッドモーニングアメリカはメロコアからギターロックに音楽性が変化したという経緯がありますけど、今作はメロコアというかパンクみたいなものも多いし。

一同:うんうん。

●デビュー当時は自分たちの音楽性を気にしていたイメージがあるんですけど、ライブを重ねていく中で培ってきた感覚や風景が曲に落とし込まれているという。この4人で音を鳴らして、金廣くんが曲調とはギャップのある歌詞の歌を歌う、というのがグッドモーニングアメリカの個性というか。

金廣:うん。そうだと思います。

●M-10「バンバンガンガン」や「下らない毎日が」みたいな毒を吐くような曲をあれば、M-8「たった6文字じゃ」やM-9「あなたに逢えて」のような甘い曲もありますけど、そういうバランスは意識したんですか?

金廣:もちろんアルバムの中でのメインとなる曲を作ろうと思っていたし、それがどういうものになるのかは自分の中ではある程度見えていて。だから今作は、メインじゃない曲から作り始めたんです。

●ほう。

金廣:メインとなる曲はテーマをある程度決めていたし、周りの曲の方がグッドモーニングアメリカとしてのバンドサウンドを作り上げるのに時間がかかるだろうなと思っていて。

●枠を広げたり、実験的なニュアンスもある楽曲なので。

金廣:そうそう。だからメインじゃない曲から作り始めたんですけど、そこでペギがおもしろいアイディアを出してくれることによってもっと広がったりして。

●金廣くんが持ってきたアイディアにメンバーが更に新しい要素を入れたと。

金廣:それによって枠がすごく広がったので、後はバンドの中心点となる楽曲を作ったという感じですね。

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INTERVIEW #3
「泣いている人もいれば、すげぇ楽しそうに暴れている人もいて、でもサウンドはすげぇ激しくて。歌いながらそういう光景を見ているのがすごく好きなんです」

●M-4「未来へのスパイラル」にすごく印象的なフレーズがあったんです。それは“希望と絶望が/循環ではなく未来へのスパイラル”というところで。金廣くんらしいと思ったし、この感覚をもうちょっと掘り下げたいというか、詳しく訊きたかったんです。

金廣:この話はあまり言ったことがなかったんですけど、これのいちばんいい例がたなしんだと思うんです。

●ほう。

金廣:たなしんはベースが上手いとは思わないんですけど、でも着実に良くなってきているんですよ。たなしんの場合は希望と絶望のスパイラルの幅がすごく細かいんですけどね。

●ハハハ(笑)。

金廣:いいときと悪いときのサイクルが細かくて、ぶれ幅も決まっているんですけど、でも循環しているんじゃなくて、少しずつでも着実に良くなっているなと思うし、それはバンド自体もそういうもんだし。やっぱり1つの悩みをクリアしたと思ったらまた新たな悩みがあったりとかして、それは同じ所でぐるぐる回っているわけじゃなくて、少しずついい方へ向かっていると思うし、そういう感覚があるんです。だから“循環ではなく未来へのスパイラル”というフレーズが思い浮かんだんです。

●ということは、金廣くんなりの哲学というよりも、肌感覚としての実感というか確信があり、その象徴がたなしんだと。

金廣:そうですね。思い出してみると、昔からたなしんに対してそういうことを思っていたことがあったんですよね。

●その発言を受けてたなしんはどうですか?

たなしん:嬉しいです(泣)。

一同:アハハハハハハ(爆笑)。

●それは単純にベースプレイヤーとしてというだけの話ではないですよね?

金廣:そうですね。でもやっぱりベースにも人間性が出るじゃないですか。だからそのスパイラルはプレイにも表れますよね。

●そういう意味では、特に「たった6文字じゃ」のベースがすごくいいなと思ったんですよね。このベースラインも金廣くんが作ったと言われたらどうしようもない話なんですが…。

たなしん:でもほとんどのベースラインは金廣が作りましたよ。僕はほんのちょっとしかイジってません。

●今回はせっかくのアルバムなので、たなしんの音楽的な良さも見つけようと思ってベースを中心に聴いてみたんですよ。で、「たった6文字じゃ」のイントロのギターとの絡みとかすごくいいなと思ったんですけど…。

金廣:俺が作りました。

●そうだったのか…。

たなしん:そこは全然スパイラルしてないです。

●ベース弾いてないの?

たなしん:弾いてます弾いてます!

一同:ハハハ(笑)。

●僕がいちばん好きな楽曲は「バンバンガンガン」なんですよね。この曲は「ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ」の延長線上にあると思うんですけど、痛烈な皮肉をポップで勢いのあるサウンドに乗せるっていうのがグッドモーニングアメリカらしいというか、それって音楽のいいところだと思うんです。自己主張や毒もきちんとありつつ、シリアス一辺倒じゃなくて音楽に乗せたら楽しくなる。

金廣:喜劇になりますよね。

●そうそう。そういうスタンスは今の時代にもすごくマッチすると思うし、ライブハウスという場所に来る人たちはそういうことを求めているような気がする。

金廣:どの曲もライブを想像しながら作っているんですけど、「バンバンガンガン」って現実を歌っているけど、でもすごい喜劇でもあって。観に来てくれる人たちがそういう曲でワーッ! となっているのが、逆にファンタジーでおもしろいなと思うんです。

●ああ〜。

金廣:現実的なことを歌っている曲なのに、ライブハウスでは浮世離れしているような風景になるのがすげぇおもしろい。

●俗に言うJ-POPのシーンでは楽しいことを楽しい曲調に乗せて歌ったり、シリアスなことをシリアスな曲に乗せて歌うのが一般的だと思うんですけど、こういう真逆のものが同居している曲の方がリアリティを感じるんですよね。

金廣:最初はやっぱり曲だけのおもしろさでライブをやっていたんですけど、最近はこういう曲をライブでやることにおもしろさをすごく感じるんです。すごくファンタジーだし、ある意味カオスなんですよ。泣いている人もいれば、すげぇ楽しそうに暴れている人もいて、でもサウンドはすげぇ激しくて。歌いながらそういう光景を「不思議だな〜」と思って見ているのがすごく好きなんです。

●あと、さっき「下らない毎日が」だけを聴いたら金廣くんのことが心配になると言いましたけど、この曲のメロディはめちゃくちゃいいですよね。ちょっと哀愁感があって、他の曲とは違う雰囲気がある。

金廣:それは正解だと思います。俺も「下らない毎日が」がいちばんいいメロディだと思っていて。自分の中でも自信があるし。曲自体はかなり前に作ったんですよ。去年の夏くらいで。最初のきっかけは「ズッタズッタン!」というリズムの曲を作ろうというアイディアからだったんです。で、そのリズムに合うメロディは何だろう? と考えてこのメロディを思いついたとき、すごくハマッたんですよね。でも作った当時は難しいなと思ったから1回ボツにしたんです。それが不思議なことに今回また候補にあがり、最終的に収録されたんです。

●この曲のメロディは感情にすごく近いという印象があったんですけど、どうやってメロディを作っているんですか?

金廣:この曲のメロディに関しては、美しいメロディじゃなければいけないなと思ったんです。さっきも言ったように、リズムありきでメロディを作ったんですけど、このリズムに合うメロディはどういうものだろう? と考えたとき、キャッチーなものよりもすごく美しい旋律の方が合う気がして。それは感覚的なものなんですけど。

●ということは、メロディに感情を投影しているわけではない?

金廣:そうですね。かと言って論理的にメロディを組むわけでもないんです。中2くらいから曲を作っているし、あまり頭で考えるようなことはしなくなりました。だから無意識的に自分の定番みたいなものをやっちゃうこともありますけど、グッドモーニングアメリカでの正解は何かというのはある程度わかっているので、それは自分の曲作りの主軸になっていて。そこから出てくるメロディっていうのは、必然的にグッドモーニングアメリカらしくなるんです。そこを理論的に考えることはもうしなくていいというか、俺から出たものだし。

●頭で考える作業ではないと。あと、M-2「キャッチアンドリリース」はサウンドも歌詞もすごくキャッチーなんですけど、ポップではない。今の時代を皮肉っているような金廣くんらしい楽曲だと感じたんです。

金廣:「キャッチアンドリリース」は作ろうと思って作ったんです。さっき言った、このアルバムのメインになる曲を作ろうと。この曲でおもしろいと思うのは、キャッチーなサウンドに歌詞が沿っているようで沿ってないところがいいなと思うんですよね。「キャッチーなんだけどポップじゃない」と言われましたけど、まさにそういう感じですよね。いい感じになったと思います。

●アルバムタイトルを『未来へのスパイラル』にしたのは何か理由があるんですか?

金廣:アルバムの推し曲をタイトルにしようと思ったんです。「未来へのスパイラル」もアルバムの主軸になる曲を作ろうと思って作ったんです。最終的なリード曲は他の曲が選ばれても全然いいんですけど、曲を作る段階では主軸になる曲を作ろうというのがきっかけで。で、結果的にもリード曲に選ばれて。

●確かに「未来へのスパイラル」はダークな部分だけじゃなくて、そこから発展しようとしているベクトルも垣間見える。金廣くんの歌詞が持つ色んな要素が1曲に入っているというか。

金廣:そうですね。なかなかなバランスになったと思います。

●ちゃんと自分の価値観も入りつつ、グッドモーニングアメリカというバンドが持っているキャッチーさも損なわず、ポジティブな要素も兼ね備えている。

金廣:だから中立な曲かなと思っているんです。陰でも陽でもなく。アルバムのコンセプトがあったわけでもないので、じゃあ推し曲のタイトルをアルバムのタイトルにしようと。

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INTERVIEW #4
「参加してくれるバンドがいっぱいいるので、その人たちにも楽しんでもらいたい。そういうところも踏まえてお客さんに観てもらう空気を作るのが僕の役目です」

●今作の歌詞にはちょこちょこ難しい言葉が出てきますよね。M-1「ファイティングポーズ」の“池塘春草の夢”とか。

金廣:“池塘春草の夢”は偶成に出てくるんです。

●“少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず”ですね。

金廣:もともと偶成がすごく好きなんですよ。とは言ってももう30歳になっちゃったんですけど(笑)、「ファイティングポーズ」が1曲目になってすげぇ良かったなと思います。

●“池塘春草の夢”とは“青春時代の楽しみや若いときのはかない夢”という意味があるらしいですが、グッドモーニングアメリカはそういったキラキラしたものに対して希望を見て音楽をやっている、ということが今作から伝わってくるんですよね。音楽に希望を見ているというか。

金廣:そうですね。たかが音楽ですけど、でもされど音楽っていう感じですかね(笑)。「別に音楽なんて」と言う人もいっぱいいるだろうし、「無ければ死んじゃう」と言う人もいっぱいいるだろうし、それは人それぞれだと思うんですけど、たまたま俺はどちらかと言うと音楽が無きゃ死んじゃう側の人間なのかなと思ってて。でも生活の中で音楽を聴いているか? と言われれば聴いてはいないんです。なぜなら俺は音楽を生む側だし、他のものから採り入れたいという欲の方が強いので。

●はい。

金廣:例えば画家が美術館をめっちゃまわるかというと、たぶんまわらないと思うんですよね。小説を読んだりとか景色を観たりとかして、そこからインスピレーションを得て作ると思うんです。俺もそれは同じで。音楽から何かを得て音楽を作ろうとは思わないんです。

●別に聴き手として音楽に依存しているわけじゃないけど、音楽を生むということに対して、自分が生きていく上での希望や生きがいを感じている?

金廣:そうですね。でも今のところは「音楽しかできない」っていうのに近いのかもしれないです。

●せっかくなので他のみんなにも訊きたいんですが、なぜ音楽をやっているんでしょうか?

ペギ:俺はドラムからですけど音楽をやり始めて、まだ今もずっと夢を追いかけている状態なんですよ。だからまだ全然やり遂げてもいないし、現時点も夢を追いかけている途中っていう感じですね。夢を追いかけているから今も音楽をやっている。

●幸一くんは?

渡邊:俺は高校からバンドをずっとやっていて、今は“音楽をやっている”というより“バンドをやっている”という感覚なんです。バンドが好きでバンドをやっていて、若い頃からがむしゃらにやってきて今に至っていて。改めて考えてみると、今回1stフルアルバムを出せることになって、昔よりもバンドに集中できる環境になってきたんですけど、これからもっともっと音楽とバンドを掘り下げたいと思っているんです。これからに対しての欲がどんどん強くなっている。ここから先、もっともっと音楽やバンドに集中できるようにがんばりたい。だから音楽をやっているのかな。

●なるほど。たなしんはなぜ音楽をやっているんですか?

たなしん:楽しいからです!

一同:ハハハ(笑)。

●リリース後は東名阪で“あっ、良いライブここにあります。2013”が控えていますね。

たなしん:いよいよですね〜。

渡邊:楽しみですね。

●またたなしんはガツンとパフォーマンスするんですか?

たなしん:そうですね。参加してくれるバンドがいっぱいいるので、その人たちにも楽しんでもらいたいなという気持ちもすごく強いんです。たぶん前回よりも初対面のバンドが多いと思うんですよ。僕たちは全部のバンドと面識がありますけど、バンド同士が。

●あ、そうか。

たなしん:前回は仲間を集めた感じがあったんですけど、今回はもうちょっと広い感じがあって。特に今回は3ヶ所でやるということもあるし、必然的にバンド数も多いし。

●うんうん。

たなしん:世代の差もあるだろうし。そういうところも踏まえてお客さんに観てもらう空気を作るのが僕の役目だと思ってます。楽しくなればいいですね。

●そういうのいいですよね。自分が好きだと思っているもの同士がその場で繋がって、そこで新しいものが生まれる瞬間ってすごく楽しい。

たなしん:そうなんですよ。

渡邊:V.A.も同じなんですよね。きっかけが生まれたら嬉しいです。

たなしん:それに“あっ、良いライブここにあります。2013”は出演時間がかぶっていないので、目当てのバンド以外も観てもらえると思うんですよね。そこの空気感もうまく作ることができればいいと思うんですよね。もちろんスケジュールの都合上そうなっちゃうバンドもいると思うんですけど、自分の出演時間に合わせて会場に来てライブをやって帰る、というのではなくて、できるだけバンド同士が交わるような空気にしたいと思ってます。

●たなしんは去年、客席で暴れまくっていたじゃないですか。今年もフロアで暴れまくる?

たなしん:もちろんです。全部の時間でそうできるかどうかはわからないですけど、極力はフロアで暴れたいですね。実際に僕がどうなるかは来てからのお楽しみですけどね。

●楽しみにしています。ではたなしん、最後にいつものアレをよろしくお願いします。

たなしん:ではみんな、アルバム聴いてね! 3! 2! 1!

一同:ファイヤー!

interview:Takeshi.Yamanaka
Live Photo by 古溪一道
(スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2013)

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