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GOOD4NOTHING

世界標準を手にした4人の新たなスタート

 結成13年。日本国内はもちろん、近年では積極的に海外へも足を伸ばしてライブ活動を展開するパンクロックバンドGOOD4NOTHING。

2年前にDr.SUNEを迎え、数多くの経験を積んでバンドとしての成長を遂げた彼らが新たなスタートを切るべく、昨年7月のショートチューンアルバム『It’s shoooort time!!』に続いて早くも新作2タイトルを同時リリース。

3月からは海外を含む“RIGHT NOW TOUR”も決定しており、ライブバンドとして世界標準の高みへと駆け上る4人に怖いものはない。

Interview

「海外に行ったら何か爪痕を残したいんですけど、海外の人らって僕らの今までの13年とか知らないじゃないですか。そこで何も渡されへんっていうのはすごいストレスだった」

「初めて観る人にでも通用する表現力、歌唱力、演奏力、パフォーマンス力、それと楽曲…全部を兼ね備えたバンドになりたいです」

●早速ですが、今回はシングル『RIGHT NOW』と、タイトルの最後が"!?"と疑問形になっているアルバム『GREATEST HITS!?』がリリースされますね。

U-tan:疑問形が俺らっぽいでしょ。

●言い切らないというね(笑)。この『GREATEST HITS!?』はベストアルバムと呼んでいいんですか? 資料には"ALBUM"と表記されていますが。

U-tan:ベストみたいなアルバムです。

Tanny:平たく言うとベストです。

U-tan:要するにベストですね。

●どないやねん。

U-tan:最近、俺らよくアジアとかの海外に行くんですよ。

●そうですね。去年7月にリリースしたDVD『8 balls struggle ~BACK 4 GOOD TOUR~CHINA TOUR 2011~』はまさに中国ツアーの模様が収録されていたりして。

U-tan:そのときに「この曲どれに入っとんねん?」と訊かれるんです。でも今までアルバムも7枚出してるし、シングルやミニアルバムを含めたら持っていけないと。だったら名刺的な1枚というか、俺らの歴史を垣間見れるようなアルバムがええなと。「そういうのが海外に行くときに1枚あればいいよな」と話をしてたんですよ。

Tanny:だから現場主体の考え方ですよね。

U-tan:知ってる人も知らん人もわかりやすい1枚というか。っていうふうに考えたら「それって…ベストやんな?」となって。でも「待てよ? 結成13周年でベスト出してるバンドおらんぞ?」と。

●区切り悪いもんね。

U-tan:「だったらベスト的なアルバムでいいんちゃう?」という結論になったんです。要するにベストなんですけど。

●だから作品の説明がボヤッとしてるのか。

U-tan:まあ13周年なんですけど、KAWAJINが抜けてSUNEが入って、俺らの中ではようやく今、軌道に乗った感じがあるんです。新しい節目というか。

Tanny:要するに原点回帰なんです。

U-tan:だからそれも踏まえて、『GREATEST HITS!?』にはSUNEの叩いた曲が1曲だけ最後に入ってるんですけど(M-25「Flyng high」)、まあそれもドラマチックでいいかなと。

●なるほど。

Tanny:決定的に「15周年や!」「20周年じゃい!」みたいなタイミングではないんですけど、『GREATEST HITS!?』のような作品を出す必要のある要素が何個か重なったんですよね。

●さっき話にありましたけどKAWAJINが抜けて、SUNEくんが加入してからもう2年になるんですね。SUNEくんはもう慣れてきた? 「こいつら余裕」みたいな感じ?

SUNE:いやいや、『GREATEST HITS!?』は25曲入ってますけど、僕が叩いてるのは1曲だけですからね。僕の叩いた曲の数がアルバムの半分くらいになってきたらまた発言力も変わってくると思うんですけど。

●ということは、まだ1/25しか発言力持ってないんですか。

SUNE:そういうことですね(笑)。でも最近はほんまに楽しくやらせてもらってます。雰囲気がすごくいいな~と思ってます。

Makkin:お前、距離感間違えたらアカンで?

SUNE:あ、そうですよね。

Makkin:ある一線を越えてきたら終わりやで?

SUNE:はい。すんません。

●バンドの雰囲気がすごくいいというのは?

SUNE:僕が勝手に思ってるだけです。

一同:アハハハハハハ(笑)。

●そのベスト的なアルバム『GREATEST HITS!?』ですけど、選曲は大変じゃなかったですか?

U-tan:でも"海外にライブしに行ったときに持って行く名刺的な1枚"という軸があったので。言うたら今まで出した曲は全部スタメンなんですけど、その中でも色んな色を持ってて、ライブハウスという空間で元気になれるポジティブな力を持った曲でっていう。

●確かにライブで映える曲が収録されていますね。

Tanny:海外に行ってなかったら作らへんかったかもしれへんな。

U-tan:そうやな。

Tanny:現実問題として、海外に行ったら何か爪痕を残したいんですけど、今まで出したCDの枚数多いし、海外の人らって僕らの今までの13年とか知らないじゃないですか。ただの新人と同じっていう。そこで何も渡されへんっていうのはすごいストレスだったんです。

●なるほど。アルバム『GREATEST HITS!?』と一緒にシングルを出そうというのは当初から決めていたんですか?

U-tan:シングルが先やったんですよ。まずシングルを出そうというのを決めてて、そこから『GREATEST HITS!?』の構想が出てきたんです。

●シングル曲「RIGHT NOW」は最近作ったんですか?

U-tan:いや、実はショートチューンアルバム『It's shoooort time!!』(2011年7月)を作る前からあったんですよ。で、「RIGHT NOW」も下手したら短くなってた可能性があったんです。

一同:アハハハハハ(笑)。

Tanny:1回入りかけたもんな。片足つっこんでた(笑)。

U-tan:1分くらいのショートバージョンにアレンジしてみたんです。そこで「これちょっと1分で収まらへんぞ」となって置いてたんですよ。で、『It's shoooort time!!』の制作が終わった段階で、漠然と次のアルバムに向けて新曲を3曲くらい作ってたんですけど、その中の1曲が「RIGHT NOW」で、今回シングルになったんです。

●GOOD4NOTHINGは以前からメロディのキャッチーさに定評があると勝手に言いふらしてるんですが、「RIGHT NOW」は独特なキャッチーさがありますね。もちろんポップではあるんだけど、ポップというより全体的にキャッチーな印象があるというか。メロディの展開もベタではないんですけど、不思議な特徴がある。

U-tan:クセなんでしょうね。最近僕もちょっとわかるようになってきたんですよ。

●わかるようになってきた? 何が?

U-tan:よく僕ら「GOOD4節」とか言われるんですけど、それが何なのか自分らでもよくわからへんかったんです。

●わからなかったんだ。

U-tan:わからなかったです。自分らがいいメロディを作ってバンドでガッと合わせて「あ、ええ曲になった」という感覚しかなかったんです。でも最近、なんとなく持って行き方というか、「あ、このクセが俺らの特徴なんかな」みたいな感じがしていて。

●クセというのはなんとなくわかるんですけど、別に「またこれか」という感じはまったくなくて。"方法論"というより"特性"みたいな気がするんですよね。何なんでしょうね。

Makkin:『It's shoooort time!!』を経ての進化じゃないですか。

U-tan:それもあるんかなあ。

Makkin:『It's shoooort time!!』でネタ全部出し切ってカラッカラになって(笑)、そこで壁をぶち破ったんとちゃう?

●ハハハ(笑)。

Tanny:バンドのトータルの雰囲気もあるんちゃうかな。そのときの俺らの雰囲気が良かったから、曲としてキャッチーになってるというか。例えばSlipknotって見た目もグロいし、地獄みたいなデス声で地獄みたいなこと歌ってますけど、俺はあれもキャッチーやと思うんですよ。メロディも常にメジャーコードじゃないのに全体的にキャッチーに聴こえるのは、身から出たもんであったりすると思う。

●うんうん。さっき新曲を3曲くらい作ったと言ってましたけど、「RIGHT NOW」をシングルにしたのは自分たち的にもパンチを感じたから?

U-tan:うん。パッと聴いて「おおっ!」って。俺らの色が出てるし、ポジティブやし。で、この曲の速度も俺ら的には初めてなんですよ。

●あ、そうなんだ。

U-tan:俺ら基本的にめっちゃ速いんですよ。もしくはもうちょっとミドルか。でも「RIGHT NOW」くらいの速度の曲って今までになくて。

●BPMはどれくらいなんですか?

SUNE:184BPMです。

Makkin:ジャンプするには滞空時間が長いという。

●ああ~、はいはい。

Tanny:だから演奏的には最初ちょっと引っ張られたよな。

U-tan:うん、難しかった。

Tanny:でもハマッたらめっちゃ気持ちええんです。

●SUNEくんはどうだったんですか?

SUNE:この曲、ドラム的にはめっちゃ刻んでるんですよ。要するにめっちゃ速いんです。でも前の3人の弦はすごく緩やかやから、難しいんですよね。

U-tan:それがうまいこと乗ったら気持ちええんやけどな。

SUNE:そうそう。前3人の緩やかなビートとドラムのビートがピタッと合ったらめっちゃ気持ちいいんですよ。もう突き抜ける感じというか。

●それとカップリングはM-2「DON'T STOP ME NOW」(Queenのカヴァー)ですが、大胆なアレンジだし思いっきり遊んでいる感じがして。こういうのいいですね。

Makkin:でも実は、構成は全然変えてないんですよ。速くして、コーラスで俺らっぽい感じを出して。

U-tan:こういうのやると勉强になるよな。

Makkin:コードとか変なの使ってるもんな。俺らでは絶対にないようなコード進行使ってるし。

●そうか、構成は一緒なのか。でも原曲と印象が全然違うかった。なぜこの曲をカヴァーしようと?

U-tan:昔、何曲かカヴァーさせてもらってたんですけど、最近はあまりやってなかったからということで。選曲については、みんな知ってて、キャッチーで、あまりみんながやってないところ、っていう風に考えていったんです。

Makkin:でも曲を選ぶのめちゃくちゃ苦労しました。最初にものすごい数の曲をリストアップしたんですよ。

●そうだったのか。

U-tan:そこからさっき言った「みんな知ってて」とか「キャッチーで」みたいに条件を色々と設けて、その条件をクリアしたのが「DON'T STOP ME NOW」やったんですよね。他にも色々とカヴァーの候補はあったんですけど、自己満足になったらアカンなと思ってたんですよ。いい曲やけどあまり知られてないような曲を「俺らこんなのも好きやで」ってカヴァーするのは、アルバムとかだったらアリなんですけど、シングルで出すもんやからまずみんなが知ってる曲じゃないとアカンなと思ってて。

●なるほど。カヴァーは難しかった?

U-tan:なんかね、Queenは他の曲もそうなんですけど、オーケストラみたいな作りなんですよ。第一章があって第二章があって、という。それが難しかった。

Tanny:物語みたいにな。俺らが言うところの"Aメロ~Bメロ~サビ~間奏~Aメロ…"みたいな綺麗な流れが全然なくて、なんかウネウネしてるんですよ。でもそれが絶妙なバランスでまとまってて。

U-tan:大変やもんな、コードが。勉强になりましたね。

●で、3/1からは"RIGHT NOW TOUR"が始まりますが、このツアーでまた海外にも行くらしいですね。

U-tan:そうですね。4/1の神戸が終わった後、このツアーの延長線でアジアに行きます。で、また日本に戻ってきて5/18からはワンマンツアーになります。中国と、今回は東南アジアの方も行きたいなと思ってて。現段階ではまだどこまで行けるかわからないんですけど、マレーシアとかシンガポールとか。

●シンガポールはあると聞いたことがありますが、ライブハウスとかあるんですか?

U-tan:あるんですよ。MySpaceが始まったころ、東南アジアから「ライブしに来てくれ」っていうメールが結構入ったんです。「めっちゃ好きやで」とか。

●あ、そうなんだ。

U-tan:それが2006~7年頃やったから、きっと今はいい感じで音楽シーンができてると思います。

●海外はもう恒例になってきていますね。

Makkin:続けないとね。1回行っただけじゃ意味がないというか。

U-tan:やっぱりあの感覚は、ああいうところじゃないと感じられへんっていうか。言葉も通じひんし。まさに「はじめまして」のところで、演奏と歌と表情と身体全部を使って例えば「RIGHT NOW」を伝えるとか。日本やったら「RIGHT NOW」の曲も聴いて、GOOD4NOTHINGのバンドの雰囲気も知っててライブハウスに来る人が多いじゃないですか。

●そうですね。

U-tan:そこでひとつのライブを作るのもすごいことなんですけど、海外はそうじゃなくて、ほんまに挑戦ですね。演者としての。

●海外でやることはGOOD4NOTHINGにとって必要な刺激だと。

U-tan:そうですね。

●GOOD4NOTHINGのライブはどんどん変わってきましたよね。最近は特にほどよく肩の力が抜けたいいテンションで、人間性が見えるライブをやっているように感じるんです。

U-tan:僕らの中では、やっぱり人間性が出てるライブっていうのが核にあるんですけど、俺の中では常に"パフォーマンス"と"演奏力"の2つが天秤の上に乗っている感覚があるんですよね。一方が上がったら一方が下がるとか、その繰り返しなんですよね。その両方が1つになったときのライブってすごいものになると思うんですよね。

●うんうん。

Tanny:例えばバーカウンターで酒をさばいてる姉ちゃんとか、PAさんとかステージの袖で腕組んでる俺らのスタッフとか、みんなを巻き込んで「今日は最高やった」と言えるのがたぶん最高のライブやし。

●GOOD4NOTHINGのライブは、メロディックシーンの他のバンドと印象があまりカブらないんですよね。どちらかというと「モッシュさせてなんぼ」みたいな方向に振り切れるか、もしくはメッセージ性で勝負するか…大きくはその2つに分かれるような気がするんですけど、GOOD4NOTHINGのライブはどちらでもないような気がするんです。

U-tan:例えばメッセージ性で勝負するとなると、海外では通用しないんですよ。言葉が通じひんから。

●あ、そうか。

U-tan:だからたぶん俺らは海外で学んだんやと思うんですよね。ギター弾くのも身体を使って弾かなあかん。じゃないと伝わらないんですよ。でもそれをやることによって演奏が乱れる。それをずっと繰り返してきてて。

Tanny:活動スタイルがちょっと変わってきてるから、見ているものも違うし。だから他のバンドとあまり印象がカブらないのかもしれないですね。

●それはさっき「RIGHT NOW」の話で言っていた"キャッチーさ"にも通ずるのかもしれないですね。海外だと言葉が通じないから"音楽の持つ力=キャッチーさ"で勝負しないといけないという。

U-tan:確かにそうかもしれないですね。やっぱり初めて観る人にでも通用する表現力、歌唱力、演奏力、パフォーマンス力、それと楽曲…全部を兼ね備えたバンドになりたいですね。そういうライブがしたいし。

●うんうん。

U-tan:で、その核にあるのが俺らの人間性というか。だから俺らしか出せないものをもっともっと磨いていければいいなって思います。

interview:Takeshi.Yamanaka

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