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heidi.

結成5周年の節目を超え、さらなる一歩を踏み出した彼らの覚悟がここに示されている

通算5枚目のフルアルバム『アルファ』を9/19にリリースすると発表したheidi.が、それに先立ってシングル『曇り空には恋模様』を緊急発売した。今年2月にはバンド結成5周年の節目を記念したベストアルバムもリリースし、さらなる一歩を踏み出そうとしている彼ら。その決意と覚悟を表すかのように、今作の表題曲ではこれまでのファンを驚かせるような新しい試みが盛り込まれている。だが、そんな中でも決してブレることがないのはバンドの軸であるメロディと歌だ。新作への期待を増すニューシングルについて、リーダーのG.ナオに話を訊いた。

「プロデューサーを入れるということ自体にも、今までの一歩先に行ってみようという意図があって。それが吉と出るか凶と出るかなんて、やってみなきゃわからない」

●今年2月にベスト盤『回想 heidi. Indies BEST』を発表されたわけですが、そこで1つの区切りを付けたことでの影響はあったんでしょうか?

ナオ:ベスト盤を出してツアーをしたことが、ライブだったり表に出る活動に関して与えた影響は大きかったと思います。メンバーの意識も変わったと思うし、その先を見据えてという点では全員が何かしら感じるものがあったツアーなんじゃないかな。

●リリースツアーの影響が大きかったと。

ナオ:ステージでのパフォーマンスやライブに対する意識の持ち方だとか、言ってみれば根本の部分に影響があって。基本に立ち返った上で、それぞれが自分の中で意識を上に持って行く感じというか。実際にそういう話し合いもしましたし、今でもよくやっています。

●元々、バンド内でよく話し合いをしていた?

ナオ:今までもあったんですけど、ツアーを終えてからのほうが頻繁になりましたね。これから先どうやって新たに自分たちを観てくれる人たちを増やしていくか、その人たちにどうやってアピールしていくのかといった話が中心でした。もちろん曲作りの面でも意識してはいるんですけど、やっぱりライブっていうところを意識するようになったツアーでしたね。

●異なるジャンルのバンドと対バンする自主企画“東京ラララ”シリーズも、新しい人たちに観て欲しいという想いから?

ナオ:それもありますし、単純に“自分たちがいるフィールド以外のバンドと一緒にやったらどうなるのかな?”っていう興味もあって。カテゴリーに囚われたくはないっていう気持ちもあったので、実験ではないですけど、自分たちに今どれだけできるのかを試す場というか。自分たちの可能性みたいなものを色々な部分から見てみたかったので、やってみた感じですね。

●実際にやってみての感覚はどうでした?

ナオ:そこで俺が思ったのは、“ジャンルとかは関係ないな”っていうことだったんです。俺ら自身も歩み寄りにくいジャンルだとは思うんですけど、その時に対バンしたThe ROOTLESSからはまた新たにイベントへ誘ってもらったりして。単純に“良ければ良いし、悪ければ悪いっていうだけのことなのかな”っていう一種、悟りの境地に入ってしまっています(笑)。

●今まで活動してきたシーンにも縛られることなく、動けるようになってきた。

ナオ:でも別にヴィジュアル系とはやらないとか言うわけじゃなくて、今年はたまたま違うジャンルのバンドとやる機会が多くなったというだけで。メンバーとも話していたんですけど、新鮮味はやっぱりありますよね。その新鮮味というものがすごく大切なんだろうなと思いました。単純に刺激にもなりますし、そういう人たちと話すことでまた違った考え方や世界観が自分たちの中に作られていくのかなと。

●異なるジャンルと対バンすることが刺激にもなる。

ナオ:それは俺らだけじゃなくて、対バン相手の方たちも同じようなことを言っていましたね。だから、みんな一緒なのかなって。

●ヴィジュアル系に限ったことではなく、近年はジャンルやシーンが細分化されて、その中の相手としか対バンをしないという状況にもなっている気がします。

ナオ:そのへんは俺も感じているところだったので、今回を1つの取っ掛かりとして徐々に規模感も大きくしつつ、またやれたらいいなと思いますね。そういうイベントをやったことも手伝ってか、色んな音楽を探す感じで新たに観たり聴いたりすることも多くなったんですよ。

●それが自分たちの楽曲にも反映されていたりする?

ナオ:全くないとは言わないですけど結局、自分は自分なので。あんまり影響を受けすぎて自分たちの個性が薄れていってしまうのもダメなので、良いところは取り入れつつ根本はなるべく変えないようにしています。

●軸さえブレなければ、良いものはどんどん取り入れていくとは以前もおっしゃられていました。

ナオ:そこは基本的な自分たちのスタンスとして、ずっと変わっていないところかな。

●そういう意味で今回のタイトル曲「曇り空には恋模様」は、今までのファンからしたらビックリするような変化だと思うのですが。

ナオ:聞こえ方はだいぶ違うのかなと、自分でも思います。でもメロディだったり、基本的な部分は変わっていないんですよね。

●音作りやアレンジ面で変わっただけというか。

ナオ:そのあたりで変わったように聞こえるのかなと思います。今回のシングルとアルバム制作から初めてプロデューサーが入ったので、どちらかと言うとその方の趣味が出ている部分もあるんです。今までやったことがなかったし、誰かに一度ゆだねてみるという経験も必要だったりするのかなというのもあって。そこでアルバムを出す前に“今回はこんな感じになっていますよ”という意味も込めて、この曲をシングルカットした感じですね。

●プロデューサーを初めて入れて制作する中で、アレンジや音作りでの違和感はなかった?

ナオ:いやいや、ありましたよ(笑)。それはもう大変だったんですけど…。基本的に俺は余計なものはいらないと考えるタイプなので、シンセとかは入れる必要がないと思っていたんです。でもそういう感じで作っていくといつもの俺らになっちゃうし、何を優先するべきなのかというところでの葛藤はありました。

●「曇り空には恋模様」はシンセの音が印象的ですが、そこもプロデューサーのアイデアだったと。

ナオ:そういうアレンジ面での肉付けをした時の聞こえ方を考えて、フレーズの入れ替えを話し合ったりすることが今回は多かったですね。曲の構成とかも、原曲とは多少違う感じになっていたりして。

●原曲はどんなイメージだったんですか?

ナオ:元々は爽やかなギターロックというイメージで作ってきたんです。そこからソリッド感がなくなった分、穏やかな印象というか聴きやすい感じにはなったと思います。プロデューサー的にはそれが狙いだったみたいなんですけど、結果的に自分の中にあったイメージからは色々と変わっていった作品ですね。でもシンセが入ったと言っても歌に差支えがない範囲なので、そういう感じだったらこういう手法もありなのかなと。

●何事も1回やってみないとわからないですからね。

ナオ:そうなんですよ! 結局は俺らの中で良いか悪いかよりも、聴いてくれた人の反応を実感してみないと何とも言えない部分があるので。それこそ“実験”というか、そういう要素が今回は強いですね。

●ベスト盤で区切りを付けたところから、もう一歩先を目指すための実験というか。

ナオ:プロデューサーを入れるということ自体にも、今までセルフプロデュースをしてきたところの一歩先に行ってみようという意図があって。それが吉と出るか凶と出るかなんてやってみなきゃわからないし、とにかく今回はこういう形でやってみましょうということでした。

●カップリング曲にもそういう意図が出ている?

ナオ:カップリングの2曲に関しては以前に録ってあったものなので、今作でプロデューサーが関わったのは表題曲だけですね。実は今までにもシングルを出そうと考えたタイミングが何度かあって、その時々でレコーディングしていた中の2曲という感じです。

●元々、今作用に作った曲ではないと。

ナオ:今回のシングルは本当に、急に決まった感じなんですよ。でもせっかく出すなら1曲だけじゃなくて、今までに録ってある中から2曲入れようという感じでした。だから、この組み合わせ自体に深い意味はなくて。

●表題曲はイメージの変化が大きいだけに、今までのheidi.らしさが出ているカップリングの2曲でバランスを取ったのかなと思いました。

ナオ:このCDを買った人にはそういう感じで聴いてもらえるかもしれないですけど、今の段階(※取材は8月中旬)ではタイトル曲だけを無料配信している状況なので…。もちろんCDを買ってカップリング曲まで好きだったら、アルバムにも興味を持ってもらえるでしょうけどね。自分たちとしては特にタイトル曲を聴いて欲しいというところはありつつ、全てがアルバムに向けての布石という感覚が俺の中にはあるんです。

●今回、表題曲を先行配信したのは、反響が気になってのことかなと思ったんですが。

ナオ:それもありつつ、ここでもやっぱり今までと同じやり方をしてもしょうがないという気持ちがあって。作品を作る過程から既に今までとは違うので、売り方も今までとは違うような感じにしたいという想いがあったんです。それによって少しでも話題になるのであれば、そういう手法を取っても良いんじゃないかなと。

●ちょっと興味を持っている程度の人も無料配信なら聴きやすいし、それによって間口も広がる。

ナオ:まず聴いてもらわないことには、何も始まらないというのがあるので。仮にそれによってセールスが落ちたとしても、聴いてくれる人が増えたのなら良いかなと。そうは言っても、ちゃんとCDも買って欲しいんですけどね(笑)。3曲入りにしては値段設定も低いと思うので、手を出しやすいんじゃないかな。

●次に出るアルバムは、今回の表題曲のイメージに近かったりする?

ナオ:そういうわけではないですね。曲を作る上での傾向は特に変わっていないので、曲そのものからアルバムはイメージできないと思います。でも音の感じとしては通じる部分もあるから、今作を聴いてアルバムへの期待感を持って欲しいという気持ちはあって。

●1枚の作品として、今回のシングルはどんなものになったと思いますか?

ナオ:俺らが一番耳に入って欲しいと考えている部分は出せていると思うんです。今までの曲とは聞こえ方が違うのでこれまでのファンの人たちがどう反応するかはまだわからないんですけど、初めて聴いてくれる人たちにとってはすんなり入っていきやすい曲なんじゃないかな。先入観なく聴いてもらえる1枚になったと思います。

●新たなリスナーへと間口を広げる作品というか。

ナオ:曲そのものとして聴いてもらう分には、“自分たちはこういう音楽をやっています”というものをよりわかりやすい形で提示できている作品だと思っていて。今作のイメージを持ってアルバムを聴いてもらったら、また別の驚きもあると思います。そのへんは期待してもらっても良いんじゃないかな。

●反響がまだ見えない分、自分たちとしても楽しみなところはあるんじゃないですか?

ナオ:逆に不安でもありますけどね(笑)。でもやっぱり“同じことをしていても…”という気持ちはあるので、実際にアルバムをリリースしてツアーをまわっていく中でどういう形になっていくのか、楽しみと不安が半々にあって。そのへんも楽しんでやっていけたら良いかなと思っています。

Interview:IMAI

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