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KO-JI ZERO THREE(GNz-WORD)× HIROKI(Dragon Ash)

SPECIAL TALK SESSION:KO-JI ZERO THREE × HIROKI

187_KOJI_HIROKIストリートシーンを中心に活動し、“LOUD PARK”や“京都大作戦”など大型フェス出演や数々のライブ、メンバー個々の多岐にわたる活動など、タフな経験を積み重ねてきたGNz-WORD。彼らが昨年ライブハウス限定でリリースしたシングル『DemonstratioN』は、自分たち自身を見つめ直して制作した原点回帰的作品であり、自身のターニングポイントとなった。同シングルに詰め込まれたピュアな想いと覚悟は、Dragon AshのG.HIROKIをプロデューサーに迎えるきっかけとなり、GNz-WORDのポテンシャルを最大限まで引き出したミニアルバム『Switching Win Back』のリリースへと繋がった。今月号では、次代のラウドシーンの最重要人物であるGNz-WORDのフロントマンKO-JI ZERO THREEと、プロデューサーを務めたDragon Ash G.HIROKIのスペシャル対談を敢行。GNz-WORDの魅力に迫る。

「すごくコアなことをする必要性はないと思うけど、“自分たちが培ってきたものをここで一度全部まとめてみたらどうなるんだろう?”と考えた」(KOJI)

「“だったらかっこいいことをやって野たれ死んだ方がマシだ”っていう精神こそが、カウンターミュージックとしてはいちばん大事なこと」(HIROKI)

●GNz-WORDのニューミニアルバム『Switching Win Back』は、HIROKIさんが全面プロデュースされたそうですが、どういう繋がりなんですか?

KO-JI:まず、僕とケンジ(Dragon Ash Vo./G.Kj)が友達になって。音楽をやるとかではなく、普通に友達になって、そこから曲を作ってもらったりして。HIROKIさんたちとはDragon Ashの『MIXTURE』(9thフルアルバム)に収録されていた「ROCK BAND」という曲にフィーチャリングで呼んでもらって、そのツアーに参加したときですね。

HIROKI:俺たちの全公演に来てくれたんですよ。

●え? ゲスト的な感じで?

HIROKI:シングルで切ってるから、ツアーでシングル曲をやらないと結構気まずいじゃないですか。だから1本だけじゃなくて、KO-JIが「ツアー全公演行く」と言ってくれて、本当に全部来てくれたんですよ。そういう繋がりがすごくて。俺が今回やろうと思ったのは、GNz-WORDの『DemonstratioN』(2012年10月ライブハウス限定リリース)というシングルを聴いたときに、自分のモードの中で“この音楽をやってるんだったら(プロデュースを)やりたい”と思ったんです。ちょっと前のGNz-WORDは、もっとハードコア的だったり、もしくはもっとキャッチーだったりしたんだけど、そのシングルはどストライクだったから「じゃあやらせてよ」と。でもプロデュースなんておこがましいというか、お互いアーティストで対等な付き合いだし、むしろ俺らはツアーでもお世話になってる方で。一緒に飲んでいるときに「いろいろやっていこうと思うんだけど、障害も多くて大変だ」という話も聞いていたので、Dragon Ashとしての恩返しも含めて「やりましょう」と。

●『DemonstratioN』がきっかけだったんですね。

HIROKI:今まででいちばんかっこいいと思った。GNz-WORDのハードコアな部分はもちろんかっこいいと思うけど、俺は結構ビジネスライクなところもある人間なんです。コアなものはコアなものでやるけど、ビジネス的に考えてもかっこいいし、“これは売れるかもしんない”って。ごめんね、今だから言うけど(笑)。

KO-JI:全然! ありがとうございます!

HIROKI:今の時代って、マスなのかストリートなのかっていうところで、ストリートでもすごく盛り上がってるじゃないですか。そのストリートの中のキャッチーな定義で言うならば、これはどストライクでメインになれる音楽をやっていると、そのシングルを聴いて思ったから。それがいちばんデカい。本当に下世話(笑)。でも俺は金をもらってないから下世話じゃないと思ってる(笑)。

●お金もらってないんですか?

HIROKI:うん、趣味。だって最初から「プロデュースするから金くれよ」とか嫌じゃないですか。それがストリートじゃない。だから「やらせろや」っつって、「売れたから金やるわ」って言ってくれるのを待つ(笑)。「焼き肉2回でいいか?」って言われたらそれでもいいですけど(笑)。まあ、俺たちはそういう関係じゃないし、あくまで友達だから。でもプロデューサー目線で言っても、ビジネスライク的に言っても、日本のロックシーンというところで言っても、今のGNz-WORDはいいねって思う。

KO-JI:僕らははじめ“ハードコア”というコアなシーンでやっていて、やり始めたときはそれでご飯を食べようとか、有名人になりたいとかいう意識もなく、ただ単に衝動だけだったんです。その曲がイケてようがイケてなかろうが、自分たちがいいと思えばOKだった。でも年齢も重ねてきて、今のメンバーとずっと音楽をやってきて、どうせだったらこいつらとずっと音楽を続けたいなと。

●ああ〜、なるほど。

KO-JI:でもずっと続けようと思ったら、ある意味ビジネス的な部分もないと厳しいじゃないですか。それをひしひしと感じていて。じゃあ“売れる音楽ってどんなもんなんだろう?”と。ハードコア以外やったこともなかったので、模索しながら変えていったんです。それが『DemonstratioN』の前に出した3rdアルバム『Elephant』。枚数的には結構良かったんですけど、それほど世の中を騒がせもしなかったし、ファンの人たちだけが喜んでくれて。今『Elephant』の曲をライブでやっていてももちろん嫌いじゃないし、間違っていたとも思わないんですけど、今から考えたら変に媚びてしまっていた部分があったのかなと。それが正直、僕には似合わんなと思って。それでどうしたらいいんやろう? って考えながら、スタジオで遊びでシャウトしていたら、メンバーが「やっぱりKO-JIはシャウトがかっこいい」って感じになって。『Elephant』では敢えて一切やってなかったんですけど。

●『Elephant』は綺麗に歌うことを意識していたと。

KO-JI:でも、すごくコアなことをする必要性はないと思うけど、“自分たちが培ってきたものをここで一度全部まとめてみたらどうなるんだろう?”と考えたときにM-4「ギラギラ」(『DemonstratioN』にも収録)のAメロとか作ってて。がんがんシャウトしているだけだったら最初の頃に戻るだけだから、前回のアルバムでやったポップな要素を要所要所に入れていったら、『DemonstratioN』ができたんです。

HIROKI:KO-JIはいろいろ思い悩んだ結果のプロセスだって言ってるけど、たぶん腹を括ったんだよね。俺はその腹を括った感がグッときた。色々試しながら「これでいいのか?」と言っていたKO-JIが、「俺はかっこいいことだけやればいいじゃん」となった。そのバランス感覚が今はすごくいい。

●バランス感覚。確かに。

KO-JI:『DemonstratioN』を流通も通さずライブ会場限定にしたのは、“そんなんもういいや”って思ったんです。ライブでやって、観てくれた人がいいと思って買って聴いてくれたら、それだけでいい。その先もそれでいいくらいに思ったんです。作って、会場に置いて、ドサ回りでもいいからぐるぐるとツアーを回って…時間がかかってもそうしようと。だからシングルですけど、GNz-WORD初のデモCDなんです。デモテープを作ったときと同じような気持ちというか。そしたら、ファンの人も周りの人も「GNz-WORDがこんなの作った!」っていう空気感になってくれて。僕らの中でも“そうなんかなぁ”ってなって、逆にみんなに教えてもらったというか。周りの人に「お前らはそれやねん」って言ってもらえたような。

HIROKI:「そこが男前やねん」っていうね(笑)。

KO-JI:じゃあそれを突き詰めたら、僕たちがやっていきたいことややりたかったこと全部がミックスできるのかなと。本当はもっと早くHIROKIさんとやれたらいいなと思ってたんですけど、逆にこのタイミングだからよかったのかなっていうのも今は思うし。

●今回のプロデュースを通して、客観的にこのバンドの魅力ってどういうところにあると思いますか?

HIROKI:今時このオルタナというか、カウンターミュージックを真面目にやっている奴いないよね(笑)。俺たちはロックがビジネスになるって思われていない時代からやっているんだけど、「ビジネスになる」って言った瞬間に下世話なものがいっぱい出てくるわけですよ。今の世の中でラウドミュージックって言ったらONE OK ROCKやSiMとかしかいねえって思われていて。彼らは素晴らしいと思うけど、それに付随してクソみたいな奴が出てくるんだけど、今それにいちばん近い辺りのGNz-WORDが、いちばんピュアにやっているっていうのがいいんじゃないかなと。そういう下世話な計算が1ミリもできない奴らだから、そういうことは俺がするんだけど(笑)。それができないからこそ、本物の音楽が作れるし、かっこいい音楽が作れているんだと思う。でもその手法が下世話じゃないから伝わり辛いっていうだけ。この先、自分たちでそれを整理できるようになれば本物になれるかなって。そこがメンバーみんなに会ってみて思ったことですね。バカ正直なくらい、好きなもんに真面目な奴らなんです。愛すべき奴ら。

●なるほど。

HIROKI:しょせんロックバンドって趣味の延長でしかないものじゃないですか。ストリートで好きにやっている奴もいるし、それで金を稼げる奴もいるけど、みんな全く変わんなくて。こんなことで飯を食えてるのが気持ち悪いくらい。でも、その精神っていうのは腹を括ってるかどうかで、売れるために何かをするっていうのはカウンターミュージックとしては絶対にやっちゃいけないこと。その精神がわかった瞬間に、いきなり強みがガツンと出てくる。それが今のGNz-WORDだと思います。“だったらかっこいいことをやって野たれ死んだ方がマシだ”っていう精神こそが、カウンターミュージックとしてはいちばん大事なことだと思います。その代わり、下世話なことを俺が整理する(笑)。

●ハハハ(笑)。今はラウド界隈が盛り上がってますけど、今作を聴いて“こんなに音源から人間味が伝わってくるラウドミュージックってあまりないな”と思ったんです。体温を感じるというか。

KO-JI:それだけは意識しましたね。あんまりキラキラしたことをやってしまうと、ほんまに金太郎飴みたいになってしまうんで。「○○っぽい」ってなってしまうと思うし、僕の中で絶対的にいいバンドって、そのバンドにしかない感を持っていると思うんです。Dragon Ashだって、曲を聴いたら絶対にDragon Ashだってわかるし、そうじゃないとあかんと思う。

●次の作品もHIROKIさんが関わるかもしれないんですか?

HIROKI:そうですねぇ。

KO-JI:じゃあやってもらいますよ、そんなこと言ったら(笑)。

●お金払ってへんのに(笑)。

KO-JI:前にお好み焼きおごってるんで(笑)。

HIROKI:あのお好み焼きめっちゃ美味かった。たぶん世界一美味いお好み焼き屋です。

KO-JI:良かったらまた行きましょう。

HIROKI:こういうことのためにお金を稼いでいるみたいなもんだから。金を稼ぐときは金を稼ぐし、これは金のいらない仕事じゃないかと思う。「こんなかっこいいバンドをプロデュースしたんだぜ」っていうのがもう報酬じゃん。

KO-JI:ありがとうございます!

HIROKI:だから売れてよ(笑)。「あのタイミングでGNz-WORDをプロデュースしたのは俺だぞ」って言わせてほしいね。それが商業ビジネスとは違うところだし。自分の心を満たすのは金ではなくて、音楽っていうのはいいところですね。

KO-JI:それが全てですよね。そう思ってもらえるかどうか。

HIROKI:もともとビジネスライクじゃないんだからさ。絵描きとか音楽家もそうだけど、お金を持ってる奴が気に入った奴に「お前ら最高だぜ」って言って投資するのは自己満足じゃん。でもそれで本当に素晴らしいものが生まれているわけで。いわばロック界では先輩になるけど、イケてると思えるんならそれでいい。俺をけちょんけちょんに踏み台にして、のし上がってくれればそれでいいっていう。そういう図式があった方がいいよね。

●いいですね。なんかこの関係がちょっと羨ましいです。依存しているわけじゃなくて、深い所が繋がっている感じ。

HIROKI:俺が勝手に惚れて、俺が勝手にしているっていう(笑)。

KO-JI:こっちはそう言ってもらえる意味と価値を出さないとっていう。それはHIROKIさんだけじゃなくて、ファンの人もきっとそうだと思うんです。僕らがもっともっと売れたときに「ほら、言ったやん! 私は前からいいと思ってた」くらいに思ってもらえるようになりたいです。
interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子

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