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nano.RIPE

夜が明ける前に、夢が覚める前に、彼らが放つ光はその先へ届く

187_nano_main「どれがリードトラックでもおかしくない」と評されるほど、過去の作品でも常に珠玉の名曲を生み出してきたnano.RIPE。彼らの通算11枚目となるニューシングル『サンカクep』は、その高精度な楽曲群から選び抜かれた新たなキラーチューンを収めたトリプルA面シングルとなっている。TVアニメ 『はたらく魔王さま!』 のエンディング主題歌 「月花」 に、 同アニメのスペシャルエンディング主題歌 「スターチャート」 、さらにはメランコリックなアッパーチューン 「ツマビクヒトリ」 といずれ劣らぬ3曲を収録。夜・星・月というキーとなるモチーフを3曲に凝縮し、自分たちが今持ちうる全力を遺憾なく発揮した渾身の1枚だ。5月に東京で行われた3本のワンマンライブは全てSOLD OUT。新メンバーにDr.青山友樹も加わり、勢いが止まらない新生・nano.RIPEが放つ強烈な輝きはさらなる高みへと4人を導くだろう。

「あたしがいつも歌っている“夜”とか“月“とか“星”っていうテーマがギュッと詰まった3曲が集まった感じはありますね」(Vo./G.きみコ)

●今作から新メンバーにDr.青山友樹さんが加わっていますが、いつ頃から参加していたんですか?

きみコ:初めて一緒にライブをやったのは、今年2/8の渋谷O-Crestですね。やっぱり正式メンバー4人でやりたいという気持ちがあって、次にサポートで参加してもらう人は最初から正式加入を前提にするつもりで探していたんです。ドラムのプレイも良かったんですけど、好みや性格という部分でも一緒にやれそうだなという感覚があった上での初ライブでした。

●もうメンバー内にも溶け込めている?

きみコ:音に関しては神経質なくらい細かいんですけど、性格は良くも悪くも適当というか(笑)。大雑把なところが(G.ササキ)ジュンと合っているし、ツアーの移動中や呑んでいる時の空気感がすごくnano.RIPEに合っているなと。まだ3ヶ月くらいなんですけど、もう1年くらい一緒にやっているような気分でいますね。

●その新メンバーでまわってきた『影踏み』のリリースツアー・ファイナルとして、「かえりみち 96(クロ)」と「かえりみち 46(シロ)」というワンマン・2デイズを5/2と5/3に行ったんですよね。自分たちの曲をクロとシロに分けて、全く違うセットリストで2日間のライブを行ったということですが、どんな感じでした?

きみコ:セットリストを組む段階で、メンバー間でもどの曲がクロでどの曲がシロかという(認識の)違いがあるのが面白かったですね。最初にこの企画を考えた時はクロの曲が多すぎて、シロの日は成り立たないんじゃないかと心配していたんですよ。でも実際に振り分けてみたら、シロのほうが逆に多かったんです。それが自分的にはビックリしました。暗い曲ばかり書いていると思っていたけど、意外と希望を歌っていたんだなって。

●nano.RIPEの曲は一見ダークに見えても、最終的には希望に繋がっている感じがします。

きみコ:クロだと思う曲の中にも、ちゃんと先に光が見えるものを毎回入れられていたのかなって思いました。だから、クロの日も暗くならなかったんだなと。クロの日はもっと(会場の空気が)どよ〜んとするかなと思っていたら、意外と冒頭から盛り上がったんです。楽屋でセットリストをメンバーと見ながら「前半、大丈夫かな? 暗すぎないかな?」とか話していたんですけど、全然そんなことはなくて。お客さんのパワーも確実にアップしているなということを改めて感じましたね。

●実際、きみコさん自身も生活の中で精神的に落ちてしまうことが減っていたりは…?

きみコ:それはもう…きみコである以上、浮き沈みは激しいです(笑)。

●ハハハ(笑)。

きみコ:ついこの間もジュンに「めんどくさい!」と言われました(笑)。でも落ち込む時期って、あたしにとってはすごく必要だなと思っていて。

●というのは?

きみコ:たとえば去年の春〜夏にかけての時期は精神的にすごく安定していたんですけど、歌詞が全然書けなくて。書けても、どこか薄っぺらい感じがしたんです。でも逆に落ち込めば落ち込むほど、良い歌詞が書ける時期もあったりする。歌にすることによって、そこから脱することができるっていうか。そういうサイクルがあるんですよね。だからジュンには「めんどくさい!」と言われるんですけど、“この間落ち込んだこともちゃんと曲にするから”と思っています(笑)。

●ある意味、音楽に救われているというか。

きみコ:そうですね。もう全部投げ出して逃げ出したいっていうくらいまで落ちた時、そこから救ってくれたのが音楽だったことに自分でもビックリしたんです。自分で作った曲を歌うことで、そこから這い上がることができたというのがすごく不思議で。あたしにとって、音楽がそういうものになれているんだなと実感できました。

●それは最近のこと?

きみコ:本当に、ついこの間です(笑)。たぶんワンマンの2デイズが終わって、落ちたんだと思います。いったんホッとして、風邪もひいたりして。そこで張り詰めていたものが切れたみたいな感じかな。

●でもブログを見ると今はそこからも復活して、最近では言葉が溢れ出しているとか…。

きみコ:新しいドラム(青山)がまだ入りたてというのもあって、2デイズに備えて40曲くらいを一気に覚えなくちゃいけなかったんです。だから新曲の制作が全然できていなくて、(制作欲が)溜まりに溜まっていたんですよ。それで2デイズが終わってから作り始めたら、もう言葉が溢れ出してきて…。「早く曲を送って」とメンバーも急かしつつ、今はすごいペースで作っています。

●メンバーの作曲ペースが間に合わないくらい、歌詞が生まれている。

きみコ:実は昨日の内に3曲くらい新曲を送るとジュンが言っていたので、家で歌詞を書きながら待っていたんですよ。でも結局送られて来なくて、あたしが今日出かけた瞬間に「今送ったよ」という電話がかかってきて。「もう出かけちゃったよ」と言ったら、「出かけていないで早く歌詞を乗せてよ」と言われたんです。

●強気ですね!

きみコ:最近は何か強気なんですよ。昨日はあたしがおとなしく待っていたのに、「何だろう? このダメな男に振り回されている女みたいな感じは…」っていう(笑)。

●ジュンくんは、それだけ良い曲ができたという自信があるんでしょうね(笑)。実際、今回の『サンカクep』は3曲ともジュンくんの曲なわけで。

きみコ:今回はやられましたね。いつも(シングルだと)1曲はあたしの曲が入っていたんですけど、今回は完敗でした。

●候補曲自体はもっとあったんでしょうか?

きみコ:今回はシングルを出すにあたって作った曲というわけではなく、今までずっと作り貯めてきたプリプロ曲の中から選んだんですよ。その中でも文句なしに、この3曲という感じでした。

●“ep”という形になったのは、3曲とも甲乙つけがたかったから?

きみコ:曲が全部出揃った時に、「どれが表題曲という感じでもないね」という話になって。だったらもうトリプルA面みたいな形にしてみようということで、挑戦的な意味も含めて『サンカクep』にしました。…“ep”の意味はあんまりよくわかっていないんですけど(笑)。

●ハハハ(笑)。良い曲が出揃ったから、この形態になったと。今回はM-2「月花」がTVアニメ『はたらく魔王さま!』のエンディング主題歌になっているんですよね。

きみコ:タイアップなんですけど、すごく自由度が高かったというか。「nano.RIPEの好きなように書いて下さい」という感じのオファーを頂いたんです。だから書き下ろしというよりも、ストックの中からイメージに合うものを選ばせてもらいました。

●歌詞もアニメの内容と直接リンクしてはいない?

きみコ:「歌詞の内容も自由に」と言って頂いたんですよ。原作のライトノベルは何冊か読ませてもらったんですけど、どんな作品なのか知るために読んだ感じで、歌詞に反映させるわけではなくて。だから最初は“本当に大丈夫かな?”と思ったんですけど、アニメを見てみたらエンディングテーマが流れてきた時の雰囲気にすごく合っていたので良かったです。

●曲自体はいつ頃からあったんですか?

きみコ:「月花」は去年の5月頃にジュンからデモが送られてきていたんですけど、手は付けていなくて。あたしは歌詞を乗せる曲がなくなると、貯めてあるデモのストックを探して「こんな良い曲があったんだ」というところから歌詞を書き始めたりすることが結構あるんですよ。「月花」も確かそんな感じで見つけて「こんなテンポでこういう感じの曲って、そういえばなかったな」というところから、去年の末くらいに歌詞を乗せましたね。

●今までになかったタイプの曲調?

きみコ:今まではオープニングテーマしかやったことがなかったので、アニメでnano.RIPEを知ってくれた方は「ハナノイロ」や「面影ワープ」みたいな(アップテンポな)曲のイメージが強いと思うんですよ。今回は初のエンディング主題歌というのもあってミドルテンポの優しい感じの曲を選んだので、「こういう曲もあるんだ」っていうのは新たな一面として見せられたんじゃないかな。

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●M-1「スターチャート」も、同アニメのスペシャルエンディング曲だそうですが。

きみコ:この曲は第5話のエンディングになっているんです。個人的にすごく好きなタイプの曲だったので、ジュンからデモが送られてきてすぐに歌詞を書き始めて、2〜3日中には書き上げていましたね。

●すぐに歌詞が書きたいくらい気に入ったと。

きみコ:ちょうど(2012年11月に)ノドを手術する前あたりに作っていたんですけど、自分でも気に入りすぎてしまって。手術が終わって声が出せるようになったら、この曲を一番最初に歌いたいという想いで歌詞も書いたんです。そのくらい思い入れの深い曲ですね。

●そして今作ではM-3「ツマビクヒトリ」がMVになっているわけですが、この曲で撮った理由とは?

きみコ:最初は「スターチャート」で撮るという話もあったんですけど、「それだと今までのnano.RIPEっぽいものになりそうだね」という話になって。せっかくだから新しいことをしようということで、「ツマビクヒトリ」になったんです。今回は『リアルワールド』の時からジャケットのデザインを担当して頂いている木山(健司)さんに、初めてMVを撮って頂いて。「木山さんのイメージで作って下さい」とお願いして、ああいう仕上がりになりました。

●このMVできみコさんの表情が険しいのは、曲のイメージから?

きみコ:この曲に対する、あたしのイメージがそういう感じだったんですよね。「ツマビクヒトリ」は仮タイトルがそのまま採用になったんですけど、タイトル通り1人ぼっちで部屋で曲を作っている姿をそのまま歌にしたような曲で。内容もすごく暗いんですけど、どこかに希望はあってほしいなというくらいで、本当にちょっとしか光が見えないような曲なんです。それがああいう表情として出たのかなと。

●そういうことだったんですね。この曲は言葉選びも今までにない感じがしました。

きみコ:この曲は言葉選びでかなり悩みましたね。あたしは今まで日常会話で使う言葉を意識して歌詞を書いてきたんですけど、今回は一度も使ったことがない言葉を入れてみたりして。韻も踏んだりして、新しい挑戦をしてみました。

●韻を踏んでいる「あまねく」や「たなびく」という言葉は、日常生活であまり使わない言葉ですよね。

きみコ:そういう言葉ばかりの歌って結局は何を歌っているのかよくわからない感じになっちゃうので、あんまり好きじゃなくて。でも今回はせっかくだから言葉遊びも含めて、今の自分がやれるところまでやってみようという気持ちで書いてみました。

●そういう挑戦をしてみようと思った理由とは?

きみコ:Aメロの「つま弾く」や「散りゆく」という部分でメロディがリフレインするあたりが、最初にジュンから曲をもらった時に印象的だったんです。そこでせっかくだから全体的に韻を踏もうっていうことになりました。

●ジュンくんが持ってきた瞬間に、良い曲だという感覚はあった?

きみコ:ジュンは「よしやるぞ!」っていう時に打ち込んで、何曲かまとめて送ってくるんですよ。その中であたしが“この曲は良い”と思ったものからどんどん歌詞を書いていくんですけど、これはもう真っ先に手を付けましたね。これが今回の3曲では一番最近できた曲です。

●トリプルA面ということで、曲順はどうやって決めたんですか?

きみコ:そこは悩みましたね。エンディング主題歌の「月花」か、MV曲の「ツマビクヒトリ」が1曲目になるのが普通かなと考えたりもして…。

●結果的に「スターチャート」が1曲目なわけですが。

きみコ:この3曲の時間軸はどれもだいたい夜から夜明けくらいのイメージなんですけど、「スターチャート」がわりとハッピーな歌詞なのに対して、「月花」が大雑把に言うと失恋ソングで、「ツマビクヒトリ」は1人ぼっちな感じで、だんだん不幸になっていくというか…(笑)。

●そんな悲しい流れ!? (笑)。

きみコ:そういうストーリーが実はあったりして(笑)。でも、そこからまた「スターチャート」に戻っていくんです。

●3曲で一連の流れになっていると。

きみコ:あと、今回はあたしがいつも歌っている“夜”とか“月“とか“星”っていうテーマがギュッと詰まった3曲が集まった感じはありますね。

●そんな3曲を集めた今作に『サンカクep』と名付けたことの想いとは?

きみコ:『〜ep』が先に決まっていたので、その前にどんな言葉を持ってくるかをずっと考えていたんです。そういう時に、(発売する)5月って“春の大三角形”がきれいに見える時期だなと気付いて。この3曲はnano.RIPEからみんなに贈る“春の大三角形”なんだという意味で、『サンカクep』と付けました。3曲それぞれが1個の点として成り立っていて、“3つの点を繋いだら、夜が明ける気がした。”というキャッチコピーもそこからですね。

●そういう意味だったんですね。

きみコ:あと、“スターチャート”って星座早見盤のことで、実は今回のジャケットはそれをモチーフにしてあるんです。だから、(星座早見盤の)円形に繰り抜かれている部分には“春の大三角形”がちゃんと入っていて。

●ジャケットにも意図が反映されていると。そういう部分へのこだわりも含めて、自分たちでも満足できる良い作品になったんじゃないですか?

きみコ:本当に“トリプルA面”と自信を持って言える作品になりましたね。色々と経験してきたことや新たな挑戦も入れられたし、これが今のnano.RIPEの全力だと言える3曲じゃないかなって。今作をnano.RIPEからの“春の大三角形”として、みんなの部屋に届けられたらと思います。

Interview:IMAI

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