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NINE IDEAS

バイタリティ溢れるメロディックパンクバンド NINE IDEASがシーンに風穴を開ける

豊かな表現力を内包したメロディックサウンドと大胆すぎる行動力を武器に、AUTHORITY ZEROのジャパンツアーサポートなどを含む数多くの経験でメキメキと実力を付けてきたNINE IDEAS。

2011年に入ってからもその勢いはとどまることを知らず、6月には何のツテもない状態からUSツアーを敢行。待望の1stフルアルバム『Thanks Giving』のマスタリングではNOFX、NO USE FOR A NAME、LAGWAGONなどで有名なJason Livemore氏を起用。

D.I.Y.を地で行く彼らのバイタリティの核、Ba./Vo.Taroにその想いを訊いた。

Interview

「アメリカに行って"何をやってもそれでかっこいいと思ってくれる人がいればいいんだ"っていう確信が持てたんです」

●1stミニアルバム『Rock the Kids』を昨年5月にリリースし、去年から今年にかけてライブをしまくっていたと思うんですけど、今年は初のアメリカツアーにも行ったんですよね?

Taro:そうです。今年の6月に行ってきて。もうびっくりするぐらい楽しんできました。

●どういう理由でアメリカに行ったんですか?

Taro:バンドの幅を広げたいというか武者修行的な意味合いと、将来的には海外も視野に入れて活動していきたいというのがあって。その足掛かりを掴みたかったんです。

●もともと海外での活動は選択肢としてあったと。

Taro:そうですね。いちばん最初にNINE IDEASを組む段階のときから、将来的にはアメリカとかイギリスとか、アジアも狙って活動していきたいという考えていました。

●何故そう思ったんでしょうか?

Taro:そういうバンドがもっと増えていかないと、日本の音楽シーンはより閉鎖的になっていくのかなという想いもあって、日本の外には絶対出ようと思っていたんです。実際に行ってみると、日本と比べてアメリカはもっと自由だったんです。制約が無い分、演奏も自由だから発想力が豊かなんですよね。そういった意味でも日本には無い要素をすごく感じることができたし、すごく刺激的でした。

●ライブは何箇所でやったんですか?

Taro:とは言っても3箇所だけなんですけど。

●何かツテがあったんですか?

Taro:MySpaceでイベンターを探して…。

●え? MySpace? 要するにツテ無し?

Taro:そうです。「ロス近郊で何箇所かライブを打ってほしい」とメールでお願いしたんです。

●すごいなぁ。

Taro:でも怪しいなと思ったので、1箇所だけ自分たちで決めておいたんですよ。ライブハウスに直接交渉して。

●ふむふむ。

Taro:それでアメリカに着いたら、案の定そのイベンターが飛んで。"まあ1箇所だけでもライブできればいいかな"という気持ちでライブをやったんです。それでそこのライブハウスのスタッフとかに「今日は1箇所の為だけにアメリカに来たんだ」とか話していたら、「俺たちが今からツアー入れてやる」ってみんな電話をかけ始めて。それでパパパッと決まって、5本ぐらいライブが入ったんですけどやっぱりアメリカは適当なので、2本は当日になって「やっぱり今日ごめん」みたいな感じで。結局3本になったんですよね。

●適当ですね(笑)。

Taro:そうなんですよ(笑)。でもそういうのも、アメリカの音楽シーンのすごく良いところなんだろうなって思うんです。いきなり「全然出てもいいよ」って言うことすら、日本だったら絶対できないですよね。「もう決まっているからダメ」となると思うんです。

●確かに。

Taro:そういうところは新鮮だったし、すごくいいなと思いました。

●アメリカツアーの経験はバンドにとってプラスだった?

Taro:プラスでした。今まで活動してきた中で悩んだこともあったんですけど、アメリカに行って"何をやってもそれでかっこいいと思ってくれる人がいればいいんだ"っていう確信が持てたんです。楽しければいいんだという精神を再発見できたというか。

●いい経験だったんですね。今回1stフルアルバム『Thanks Giving』が発売になりましたが、これはいつから作り始めていたんですか?

Taro:レコーディングを始めたのは去年の12月ですね。

●え? めっちゃ時間かかってますね。

Taro:今回はゆっくり録っていこうという考えがあったんです。結局終わったのが7月で。ちょうどそのタイミングで11月に出そうという話になって。

●何故ゆっくり録ろうと?

Taro:前作は1週間くらいで録ったんですけど、出来上がった瞬間がいちばん満足度が高くて、その後"もっとこうすれば良かった"という考えがどんどん出てきて。それは当然のことかもしれないですけど、でも今回はそういうことを極力減らしたかったし、もっと満足出来る作品を作りたいという気持ちがあって。

●1stフルアルバムだし、モチベーションというか意気込み的にも期するものがあった?

Taro:そうですね。"アルバム"というだけあって、本当にそのバンドの大きい1ページになるじゃないですか。なのでそこで後悔をしたくなかったし、ひとつのパッケージなので、全曲ちゃんと聴いてもらいたいという想いがあったんです。そう考えると1週間という期間は短すぎるし、だったら回数を分けて録ろうという形になったんです。結果としてはそれで良かったと思います。

●ところで、こないだ渋谷eggmanでライブを観せてもらったんですが、TaroさんのMCがすごく感情的というか、ポリティカルというか…ある意味、毒というか(笑)。

Taro:あのときは毒を吐いてましたね(笑)。

●ハハハ(笑)。僕はライブを観る前に今作を聴いていたんですけど、NINE IDEASは基本的にはポップで明るい音楽性のバンドだという認識だったんです。

Taro:そうですね。音楽的にはポップパンクというか。

●だからあのライブのMCのような、ああいった精神性というか人柄はちょっと想像していなかったんですよね。

Taro:今、自分が思っていることを曲であったりライブで表現して、そこで何かひとつでもちょっと賛同してくれたり、ひとりでも何か気付いてくれたり、そういうことを感化させるのはたぶんバンドマンにとって必要なところだと思うんです。そういったメッセージは今後、今まで以上に出していきたいなと思っていて。

●現時点ではそういった精神性を音楽にはあまり出していない?

Taro:うーん、そうですね。このアルバムでいうとM-2「Don't want lies anymore」とM-3「Get Some Emotion」ぐらいですかね。しっかりとしたメッセージ性を出しているというのは。

●うんうん。

Taro:例えば自分が心の中でモヤモヤと感じていたことをバンドがステージで言ってくれたら気持ちいいじゃないですか。音楽というのはそういうツールでもあると思うんですけど、実はメッセージ性や思ったことをより出していこうと思い始めたのもけっこう最近で。

●あ、そうなんですか。何かきっかけがあったんですか?

Taro:つい先日のことなんですけど、"AIR JAM 2011"でBRAHMANのTOSHI-LOWさんのMCを聞いて。おこがましいですけど僕が言いたいことをそのまま言ってくれている様な気がしたし、あれが何年経ってもブレないバンドの姿なんだろうなと思ったんです。僕はたまに躊躇するときもあるんですよ。震災以降、色々と話したいことが増えてきて、でもそれはけっこう繊細なことだし、そういう意見を出したら当然反対もあれば賛成もある。そこで変な揉め事があるのも嫌だし、伝えるべきか伝えないべきかすごく悩んだ時期もあって。

●誰しもがそういう想いはありますよね。

Taro:だからBRAHMANのライブを観たときに、何でもっと自分の言いたいことを言えなかったんだろうってすごく感じて。今まで僕はかなりオブラートに包んで表現していたんです。でも自分のライブのときぐらい自分の言いたいことを言わなくちゃと思ったんですよね。渋谷eggmanはその直後のライブだったので、たぶん気持ちが高まり過ぎていたんでしょうね(笑)。

●ハハハ(笑)。そういうことか。

Taro:だから今後はもっと音楽に精神性が出てくると思います。

●なるほど。Taroさんは曲を作るときに何をイメージしてるんですか?

Taro:特に何かをイメージするわけではなくて、感覚的に鼻歌から作ることが多いんですよね。

●ギターとかを持つわけでもなく?

Taro:ギターを持って"さあ作ろう!"というのがあまり無くて、車を運転しているときやお風呂に入っているときに自然に出てきた鼻歌で「このメロディいいな」と思うと、ギターでコードを拾ってそこから作り出すんですよ。あ、今回のアルバムはほとんどお風呂の中で作ったメロディですね。

●え? お風呂発のアルバムということ?

Taro:はい。ほぼお風呂発のアルバムです(笑)。

●今作は色んなテンションというか色んな曲調の曲があるじゃないですか。ということは…お風呂の中でちょっと悲しい気持ちになったり、急に楽しくなったり、怒ったりしてるんですか?

Taro:そうです。

●情緒不安定か! (笑)

Taro:アハハハ(笑)。お風呂に入ると変に頭がハイになっているときとかあるんですよ。そこで何か口ずさんで、楽しいときはM-8「How much you love me」のようなメロディが出てくるんです。

●そのときの気分にメロディが左右されるということ?

Taro:そうですね。僕はお婆ちゃんっ子だったんですけど、そのお婆ちゃんが亡くなってめちゃくちゃヘコんでいるときに、鼻歌からピアノでコードを取って作った曲がM-13「I need tomorrow」で。

●ああ~、そういう経緯がある曲なんですね。その話はこの曲を聴けばすごく納得できる。

Taro:だからその時々の感情や気分から作り出しているというか。急にふっと出てきたメロディの方がいい曲だったりもするし。

●でもそれだと、作った時期によって曲調とかに偏りが出てきそうな気がしますけど。

Taro:だから今作は昔に作った曲も入れているんです。M-11「Sometimes Look At Me」は、僕が高校生の頃の曲なんですよ。

●あ、そうなんですか。

Taro:もともと僕が別のバンドを組んでいたときにやっていた曲で、G.Katsuhikoが当時その曲を聴いて「あの人とバンドやりたい」とずっと思っていたみたいで。それで今回、「この曲やる?」って訊いたら「やりたい!」って言うので。

●今のNINE IDEASのきっかけにもなっている曲なんですね。リリース後はツアーがあるわけですが、何本ぐらい予定しているんですか?

Taro:40~50本ぐらいは考えています。国内を50本ぐらいまわった後に、もう1回海外に行こうかなと思っていて。JAPAN TOURとWORLD TOURと分けて、また帰ってきてから日本ツアーをやって…。

●来年もライブしまくりですね(笑)。

Taro:しまくりです(笑)。

●仕事とかどうするんですか?

Taro:そこが最大の悩みなんですよ。どうしましょう?

●知らんわ(笑)。色々と話を聞いていて思ったんですけど、NINE IDEASは今まで経験したことの無いことにチャレンジしたいという意識が強いんですね。

Taro:そうですね。新しいことをやりたいです。今回はアメリカは少しにして、イギリスの方も行きたいなと思っていて。ヨーロッパは未経験の地ですからね。常々新しいことをしていきたいんです。他のバンドがしないことをやっていきたいとも思うし。

●音楽に人生を捧げてますね。

Taro:本当にそうですね。なかなかできないことをやろうと思っています。

interview:Takeshi.Yamanaka
edit:HiGUMA

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