音楽メディア・フリーマガジン

NUBO

バンドを楽しみ、ライブを楽しむために紡いだ音楽は、強い説得力と確かな存在感を放つ

PHOTO_NUBO01様々なジャンルを飲み込み、強固なグルーヴに乗せて人間味のあるメッセージを発し続けてきたNUBO。CDデビュー以来、一瞬も立ち止まらずにリリースとツアーを重ねてきた彼らが、2011年10月にリリースした2ndアルバム『Warmth』以来、約1年7ヶ月ぶりの新作を完成させた。リリースのなかった2012年、自分たちを改めて見つめ直した結果、ありのままの自分を受け入れて、よりナチュラルに、そして今まで以上に自分たちらしさを音楽へと昇華させた彼ら。そんな5人がバンドを楽しみ、ライブを楽しむために紡いだ3曲は、強い説得力と確かな存在感を放っている。5人がそれぞれ人間として成長し、バンドとしてよりタフになったNUBOはこれからますますおもしろくなるに違いない。

 

INTERVIEW #1
「特にリリースは考えずに曲を作っていったんです。すごくシンプルな動機というか、“ライブで新しい曲をやりたいから作る”という感じ」

●約1年7ヶ月ぶりのリリースですが、前作『Warmth』(2011年10月)のツアー以降もたくさんライブをしていたんですよね。色んなバンドと共同企画をしたりとか。

Wakai:それまでは自分たちの制作とツアーで手一杯で、誘われても断りまくっていたんですよ。だから誰かのツアーに出たりとか、イベントを企画したりもしたくて、『Warmth』のツアー以降はそういう活動が中心でした。すごく充実していましたね。

●リリースの間隔を空けるというのは意図的なものだったんですか?

Wakai:そうですね。それまでは結構突っ走り過ぎていて、一度落ち着かないと次の音源や活動に進めない感じがしちゃったというか。「一回落ち着こう」みたいな。アルバムのツアーが終わった頃にそういうことを考え始めたんです。

●1stミニアルバム『花咲く バイ・ザ・ミュージック』をリリースしたのが2007年9月で、前作のツアーが終わったのは2012年1月ですから、4年強は突っ走っていたと。

一同:そうですね。

●リリースの期間を空けたことはどうだったですか? それまで本当に突っ走っていて、取材のたびに「いつ作品作っていたんですか?」と訊いてきましたけど(笑)。

tommy:前々からできなかったけどやりたかったこと…それは他のバンドとの企画イベントや、先輩バンドと一緒にやれるような機会を作ったり…ができたことが、2012年でいちばん大きな意味があったことだったんです。前はツアーをやっているときから次のリリースのタイミングとか全部決めていて、そのスケジュールに従ってやっていたんですけど、そこが一切なかったので『Warmth』のツアーもファイナルに向けてすごく集中できたんです。ツアーの後も、フラットに“バンドとしてどうなりたいのか?”ということを改めて考えるきっかけになったと思います。

●これからまた突っ走るために、どう考えてどうやっていけばいいのか。

tommy:そうですね。どういう走り方をしていけばいいのか? とか、どこに向かって走っていけばいいのか? ということも含めて。そういうことを今まで以上に考えることができたんです。まだその答えは出ていない気もするんですけど、考えていきたいなというところには立てたと思います。

●アルバムのツアー以降で何か印象に残っていることはありますか?

K-zoo:2012年は僕らが所属しているレーベル・BADASSにG-FREAK FACTORYが入ったことが大きかったですね。

一同:ああ〜。

K-zoo:そのこと自体はすごく意外でもあったし、でもすごく嬉しかった。“対バンしづらくなったらどうしよう?”と思ったりとか(笑)。でも、それがきっかけでレコーディングの現場に遊びに行かせてもらったりもして。G-FREAK FACTORYはライブにものすごく憧れていて、そういう目で見てきたんですけど、レコーディングとかでまた違う部分を見ることができたりもして。距離感が近くなったことで、いい意味でまたあのバンドの見え方が違ってきたんです。そういう刺激を受けて、自分たちのライブやバンドとしての考え方に還元できる部分があるという実感がすごくあって。それはバンドに関することだけじゃなくて、音楽と普段の生活面との紐付け方だったりとかも含めて。それによって、以前よりもすごくフラットになれた感じがあるんです。だからあの人たちの影響はすごく大きいですね。

tommy:すごく刺激になりますね。個人的には変な感じもするんです。俺はG-FREAK FACTORYにずっと憧れてきて、彼らのライブを観てバンドをやりたいと思った人間なので、同じレーベルになって「歌詞書けないですよね」って茂木さんと電話で話したりするようになるなんて思ってもみなくて(笑)。すごく幸せなことなんですけど。

●今回のシングルはいつごろから準備を始めたんですか?

tommy:去年の1月にアルバムのツアーが終わって、「次に何をする?」と考えたとき、2012年は結成10周年だったので「10周年のイベントを地元横浜で6月にやろう」ということになったんです。そこに合わせて新曲とか発表できたらいいなと思って、ちょこちょこ作り始めて。ちょうど1年前くらいから、特にリリースは考えずに曲を作っていったんです。すごくシンプルな動機というか、“ライブで新しい曲をやりたいから作る”という感じ。そういう感覚は久しぶりだったので、かなり新鮮だったんです。

Wakai:今までは1つ作品を出してツアーをまわっている頃には「次はこうしたい」みたいなアイディアとか「こういうところが足りない」みたいな課題とかが出てきて、それが次の曲作りに直結していたんです。でも今回は本当にフラットにというか、楽曲のアイディアやきっかけを探すことも含めての期間が欲しかった。「次はこれだ!」というものが明確にあったらもっと早い段階でリリースしたのかもしれないですけど、そうじゃなくて、1つのことを試してみて、また別の新しいものを試してみる、みたいな感じで。そういうことは今までできていなかったんですよね。

●曲を作るときに自分と向き合うというか。

tommy:それも音楽的な要素として「次はこうしたい」とか…例えば「もっとラテンっぽい感じで」とか「もっとパンクな感じに」とか…そういう発想は曲作りをする上では一切出てこなくて。だからこそやりたかった作り方にチャレンジすることができたんです。

●やりたかった作り方とは?

tommy:例えば詞先で曲を作ってみたり。今まではほぼなかったんですけど、今作のM-2「風の伜」はサブが歌詞を書いたんです。まず最初にサブが歌詞を持ってきて、そこから曲として完成させた曲で。

●詞先で作ってみたかった?

tommy:そうですね。それはなぜかというと、個人的に俺がリスナーとして好きな曲って大概歌詞から先に作っているんですよ。そういう曲って構成がちょっと歪になっていたりとかもするんですけど、でも歌詞先行特有の力があるのかなと思っていて。

●うん、ありますね。

tommy:でも今まで作っていた曲先の作り方だとそこを楽しめないというか。曲の流れももちろん大事なんですけど、そうじゃなくて、例えちょっと歪になっても歌詞が残るような曲を作りたかったんです。で、俺は書けなかったんですけど(笑)。

●あ、tommyも詞先で書いてみたんですね。

tommy:何曲分か歌詞を書いてWakaiにメールで送ったんですよ。そしたらすごくやわらかく「よくわかんない」って返事が返ってきました。

一同:ハハハハ(笑)。

Wakai:何曲かメロディまで付けてみたんですけど、結果として形にはなりませんでしたね(笑)。

tommy:だからサブにやってもらいました。

 

INTERVIEW #2
「音楽的な部分ではないところで“NUBOっぽい”と言ってもらえることが、自分たちも嬉しかったんです」

●今作は音楽の生み方として新しいチャレンジができたんですね。

tommy:そうですね。締切がない状態だったので、色んなことができました。それで結果的に曲になったものもあればならなかったものもありますけど、そこで可能性をすごく感じたんです。

Wakai:寄り道をしたのかもしれないけど、それがいい寄り道だったんです。

●それは『Warmth』の頃からなんとなく感じていたんですけど、NUBOというバンドの音楽的な部分での個性は『Warmth』で完成したと感じていて。

サブ:まだまだですけどね。

tommy:色んなことができるっていうことを表現したいわけじゃないから、必要であれば新しい要素は勝手に入ってくるし、自分たちが持っているものを勝手に使うだろうし。そんなつもりはなかったんですけど、捉え方を間違えてしまうと、色んなことができること自体が存在意義になってしまうとつまんないと思うんです。

●うん。そうですね。

tommy:そういうことを前よりは意識しているのかなって思います。

サブ:強いものを残すには、説得力がないとダメじゃないですか。そいつ自身じゃないと出ないものというか。それを形から固めることができる人もいるかもしれないですけど、「音楽的にこういう作品にしたい」という動機で作ると、説得力がすごく減りそうな気がするんです。

●ライブバンドはそうだと思う。

サブ:ライブもそうだと思うんです。人間力みたいなものを上げていくことしか最近は考えていないかな。

tommy:うん。

●そういう意味では、シングル曲の「ナイモノバカリ」はすごくtommyらしいというか、聴いていると“tommyってこういう奴だな”ってすごく思う。

Wakai:まさに(笑)。

●tommyは昔からこういうことを歌ってきたと思うんですけど、シンプルになりましたよね?

サブ:そうなんですよ。

tommy:茂木さんといっぱい話したことがデカくて。茂木さんが誰かに「例えば子供でもわかるような歌詞があってもいいんじゃない?」と言われたことがあるらしくて、その話を俺が作詞で悩んでいるときにしてくれたんです。今までの俺は、歌詞を書く上では付け足していく作業が多かったんです。こういうことを伝えたいけど真っ直ぐに言うと伝わりにくいからちょっと変化球っぽく書いてみる、とか。

●うんうん。

tommy:普通では言わないような表現にしてみたりとか。自分ではそういうことを結構考えながら歌詞を書いていたんですけど、そこの考え方が少し楽になったんです。自分の中の直球をそのまま出してあげて、その周りを説明することはなるべくしゃべっている言葉に近いというか、普通に話しているような感じになればいいなと最近思うようになって。だからシンプルというか、簡単になればいいなと。

●削る作業ということ?

tommy:削ったりもそうだし、最初に出てきたものを大切にするとか。「ナイモノバカリ」も、サビが最初に出てきてそこから膨らませたんです。

●感覚的なものを大切にしようと。

tommy:そうですね。書いていくとそこがわからなくなって、結果的にまとまらないことも多かったんですけど、最初に出てきたものを活かしながら、周りの言葉も簡潔にする。更にライブでも歌詞が聴き取れたらいいなという想いもすごくあったんです。

●うんうん。

tommy:英語だったら余計にそうですけど、ライブだったら歌詞で何を言っているか大体がわからないんですよね。ライブハウスのあの環境下で、しかも動いたり暴れたりしながら聴こえてくる言葉って意外とわからないと思うんです。その後、家に帰って歌詞カードを見て「こういうこと歌っていたのか」と発見する良さもあると思うんですけど、でもライブハウスでもMCとかじゃなくて、歌詞としてその場で伝えるためにはやっぱり簡単にするしかないなって。

●理由は自分でもよくわからないんですけど、「ナイモノバカリ」からはNUBOらしさを感じたんですよね。

サブ:人なつっこいですよね。

●そうそう、人なつっこい。NUBOはいい意味でフロントマンのtommyの人間性や精神性が色濃く出ているバンドだと思うんですけど、tommyが持っている人なつっこさを「ナイモノバカリ」からは感じる。この曲を表題曲にした理由は?

K-zoo:この曲はライブでもちょっとやってみたりもしていたんです。自分たちが思っているこの曲に対する印象ももちろんですけど、人がこの曲に対してどういう印象を持つのか? ということにも興味があって。「ナイモノバカリ」のビート感はジャンル的に限定するものでもないし、曲自体もシンプルじゃないですか。それでも「今までこういうことやって来なかったよね」と言われたことが結構多かったんです。それが僕の中では結構デカくて。逆にさっき言ってもらったように「NUBOっぽくてすごくいい曲だよね」と言われることもあって。音楽的な部分ではないところで「NUBOっぽい」と言ってもらえることが、自分たちも嬉しかったんです。

●なるほど。

K-zoo:そういう部分で、この曲をシングルで勝負するのもおもしろいなと思えたんです。

tommy:「NUBOっぽくてすごくいい曲だ」と言ってくれたのは、OVER ARM TROWのDr.英司なんです。だから英司が決めました。「英司が言うなら間違いないだろう」と。

一同:ハハハハハ(笑)。

tommy:でも本当にあいつが言ってくれたのは大きくて。俺たちのことをよく知ってる仲間ですからね。

PHOTO_NUBO02

INTERVIEW #3
「“話題になるために書いたんじゃないか”とか言われるのがすごく嫌だったんです。でも、そんなことを言ってられる状況でもないかなって」

●サブくんが歌詞を書いたという「風の伜」ですが、どういう経緯でサブくんが歌詞を書くことになったんですか?

Wakai:実はサブから「書いてる」みたいな話は前からあったんです。tommyの歌詞に対するアイディアもサブから出てくることも多かったし。だから自然に「じゃあ書いてみてよ」みたいな流れになって。

tommy:歌詞がなかなか書けない俺的には「助かった!」みたいな話です(笑)。

●資料のライナーノーツによると「風の伜」は「原発の歌を書いてみました」とのことですが。

サブ:地震があって、原発の事故があったじゃないですか。この曲の歌詞を書いたのは地震があってからしばらく経ったときだったんですけど、そういうメッセージを発信していかなきゃって思ったんです。自分の中で思っていたりしても、どれだけ正しいことを考えていたとしても、言わなかったら結局何にもならないじゃないですか。

●はい。

サブ:立場的にはバンドをやらしてもらっているので、発信することができるのであれば、曲にするべきかなって。やっとそういう風に思えるようになったというか。

●「やっとそういう風に思えるようになった」という発言から考えると、以前は「自分が発信するなんておこがましい」と思っていたということ?

サブ:まさにそうです。それもあるし、みんながTwitterとかで色んなことをつぶやくようになって、ネットで調べればすぐに知識が手に入るじゃないですか。だから“話題になるために書いたんじゃないか”とか言われるのがすごく嫌だったんです。でも、そんなことを言ってられる状況でもないかなって。

●作詞クレジットを見る前にこの曲を聴いて、歌詞は絶対にサブくんが書いたと思ったんですよ。男臭さや、背中で風を受ける感じとか。

一同:ハハハ(笑)。

●“聴け風の声”とか“風の子らよ”っていう表現もすごく豊かだし。いい曲ですね。

サブ:風って原発事故ですごく大きなテーマになったと思っていて。チェルノブイリって被害の範囲が広いじゃないですか。でも福島第一原発の事故は、東の海側に放射能が流れていったんです。それはそれで問題ですけど、偏西風があることによって目に見える被害は思ったよりは小さかったと言われているんです。もちろん被害を受けて未だに人が住めない場所もありますけど、そういうこともあって、風をモチーフにしたんです。

●どういうシチュエーションで歌詞を書くんですか?

サブ:どこか行きますね。

tommy:へぇ〜、そうなんだ。

●あ、家ではないんですね。

サブ:僕の家、ぐっちゃぐちゃなんですよ。何もやる気がわかないというか。僕の住んでいる地域は地震のときは震度4くらい揺れたんですけど、色んなものを積み上げていたのが揺れでだいたい万遍なく平らになって、その後まったく片付けてないんです。

●2年以上部屋を片付けていないと。ひどいな。

サブ:だから気分転換するために外に出て、喫茶店とかでネタ帳をひろげて、コーヒーを頼んで書きます。上島珈琲店の率が高いです。

●「ナイモノバカリ」はtommyっぽさをすごく感じたんですけど、「風の伜」はすごくサブくんっぽい曲ですよね。シンプルなんだけどすごく強いメッセージが込められていて。

tommy:いい曲ですよね。すごく好きです。

●M-3「allegory」はどういう経緯でできた曲なんですか?

tommy:この曲は何か具体的なテーマがあったわけじゃなくて、クサい言い方ですけど「あなたが必要です」ということを、どんな言い方をしたら嫌味なく伝わるかなって考えたんです。今、他の曲も書いたりしているんですけど、すごく簡単に言ってしまうとそんな感じのことを最近よく考えていて。

●そういうことを考えるようになったのは、何か理由というかきっかけがあるんですか?

tommy:「自殺」と言うとすごく端的になってしまうんですけど、そういう人が知り合いにいたこともあったし。そこでいちばん何がショックだったかなと覚えている記憶を辿ってみると、自分のことに嫌いになって自殺したり人を傷つけたり喧嘩したり…そういうことが俺はすごく残念だなと思うんです。そういう残念な想いをこれ以上したくないと思ったとき、そういう人に「あなたが必要です」と伝えたかったんです。

●さっき言ってましたけど、この曲のテーマとしてそういうことをピックアップしたわけじゃなくて、最近漠然とそういうことを考えていて、その発露のひとつして「allegory」になったと。

tommy:そうです。だからたぶん、俺がこれから書いていく歌詞はしばらくこういうことを歌った曲が多くなると思います。今まで歌ってきた自分のこととか大きなことというより、言ってみれば“大事な友達に対して”みたいな感じで、限定して書いたというか。

●なるほど。

tommy:俺は考え方がひねくれているわけじゃないし、むしろものすごく普通だと思うんです。アーティストとしては残念なんですけど、一般的というか平均的な人間というか。

●お。それは「ナイモノバカリ」で歌っていることですね。

tommy:なので、逆に俺がどれだけ伝えたい対象を絞って書いたとしても、それはマジョリティにはならないだろうなとも思っているんです。そこに対してひねくれようとはもう思わないし、そこに対して誠実に書けばいいのかなって。

●確かにtommyはひねくれてないですね。

tommy:うん。たぶん普通ですね。一成とかに比べれば全然常識的だと思います。

●確かに。

一成:ヘヘヘ(笑)。

tommy:それがコンプレックスでもあるんです。ロックスターになれないというか。別に暗い過去があるわけでもないし。

●そういうことを自覚したのはいつ頃からですか?

tommy:5年くらい前ですかね。その頃の方がすごくコンプレックスに感じていて、歌詞にも普通な部分を出したくないと思っていたし。すごくしょうもないことなんですけど、アーティストっぽい人と会ったときとか、普通であることがすごく嫌になるというか。

●わかるわかる。

tommy:そう思っていることも口に出したくなかったし。でもここ1〜2年は、そういうことが幸せだと思えることもたくさんあるし、そういう人だからこそ書けることも言えることもあると思えるようになったんです。昔コンプレックスに感じていた気持ちもわかりながら、今はそのことも含めて表現しようと。

●なるほど。そういう変化はいいことですね。

tommy:きっといいことだと思います。それによって書きたいことが書きやすくなったというか。

●tommyはいつも歌詞で悩んだと言ってますけど、なぜそんなにいつも苦労するんですか?

tommy:“どう人に見られるか”ということを気にしていたんです。まだCDを出す前、歌詞を書き始めた頃がいちばんそういう気持ちが強くて、作品を出すごとに人目を気にすることはどんどん減っているんですけどね。人目を気にしたりとか、“いい歌詞を書こう”みたいな気持ちは。

●なるほど。

tommy:かっこつけていたんですね。そういうところから、どんどん自分の言葉で書こうという意識になってきましたね。今も歌詞は悩んでいますけど(笑)、昔よりは書きたいことが浮かんだときにさっと書けるようになりました。

 

INTERVIEW #4
「色んな場所で色んな人たちと色んな楽しいことをやっていけるっていうのが、俺たちが目指すところ」

●あともう1つ気になったことがあったんですが、特に「ナイモノバカリ」と「風の伜」について、一成くんのヴォーカルがすごく特徴的で。曲のパワーが増幅するよな力強さがあるというか、男臭いコーラスというか。

一成:はい。

●今回はどういう想いで歌ったんですか?

一成:上手く歌えないので思い切っていこうと。それだけです。何て言うか…わかんないけど…あっ(※虫が顔にたかる)。

一同:アハハハハハハ(爆笑)。

●天才だな(笑)。

一成:今までは上手く歌おうとしていたんですよ。でもtommyみたいに綺麗に歌えないっていうことは理解したというか納得して。俺にできることは真っ直ぐっていうか、いつでも限界まで出していたいんです。

●常に120%でいたいと。ギリギリで。

一成:そうすれば何か伝わるかなと思って。俺も人のライブとか観ていて、そういう人に魅力を感じるし。それをCDで表現できたらいいなと思って。

●その発言から、なんか今後の一成くんはおもしろくなりそうな予感がする。

一成:あ、そっすか? いい意味でフリーダムになりました。

●うんうん。

サブ:最近の一成はいいんですよね。

tommy:さっきサブが言っていましたけど、音源でもライブでも人が出ること。そういう意味では、今の一成としては正解なのかなって思うんです。これもバンド仲間から言われたことなんですけど、例えば5人のバンドだとして、綺麗な五角形のバランスだったらそれはすごく力のあるバンドになると思うんです。でも必ずしもそうじゃなくてもいいのかなって。五角形の中で一成だけボーンと変な方向にはみ出していても、そういう風な存在に一成がなれるのであれば、このバンドはたぶんもっとおもしろくなるだろうし。

●そうでしょうね。

tommy:きっと今までは彼なりに色々と気を遣っていた部分もあったと思うんですけど、例えどんな曲でも一成は一成でいられたらOKなんだと思うんです。俺たちがすごく静かなバラードを作ったりとか、今までと違う表現のライブをすることがあったとしたら、その曲に色を付けるのは一成以外の4人でいいと思っているんです。一成がいつもブレなければ、バンドとして何をやってもブレないという“芯”に繋がるとも思うんです。

●うんうん。

tommy:今回は「全部変えないで」って俺は言ったんですけど、その方が魅力が出ると思うんですよね。だから最近は勝手に泳がせてます(笑)。だから考え方が変わりました。

●今後一成くんは重要人物ですね。危険人物でもありますけど。

一成:はい。

●そしてリリース後のツアーですが、今までと比べて本数が少ないですけど、色んなバンドと絡みまくる感じですね。

tommy:去年10周年の自主企画イベントをやったと言いましたけど、それが俺らにとってすごく意味があったんですよね。“TURKEY DAY”というイベント名なんですけど、それは“感謝祭”という意味で、今までお世話になった人に「ありがとう」という気持ちを込めたイベントなんです。その意味合いをツアーに込めたいと思ったとき、どういうやり方があるかなと考えて。で、自分たちがすごく好きなバンドと共同企画という形を取って、今回のツアーはいわゆるレコ発ではなくて、自主企画イベントの延長としてやることにしたんです。

●今までとはかなり趣が違いますね。
K-zoo:僕個人的にもそうだし、バンドとしてもそうなんですけど、ツアーは“音源を出しました”という理由だけでやるんじゃなくて、何かを発信したいんです。「こんないい曲ができました」ってツアーをやるんじゃなくて、「こういう音源を持って誰とこういうことをやりたい」という発信がしたいという想いが強くて。だから今までよりは本数が少ないですけど、今の自分たちに合ったスタンスの中で、自分たちがやりたい人たちとこういうことをやってみるというか。でも、まだまだいっぱい誘いたいバンドもいるんですよ。だからツアーが終わった後も、同じ温度感でライブを続けていくつもりなんです。

tommy:リリースしたからレコ発をする、という考え方を一回捨てることができたのも、去年のリリースがない時期があったからなんです。

●そこで“そもそもライブは何のためにやるのか?”という自問があったと。

tommy:そうなんです。そこでK-zooが言ったように、ツアーが終わっても色んな場所で色んな人たちと色んな楽しいことをやっていくというスタンスは変えないつもりなんです。たくさんの本数をやるからライブバンドなんじゃなくて、色んな場所で色んな人たちと色んな楽しいことをやっていけるっていうのが、俺たちが目指すところというか。

●楽しみですね。一成くんはどうですか?

一成:これからだんだん大人になっていくので、その様子を観に来てください。

interview:Takeshi.Yamanaka

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj