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Poet-type.M

帰る場所のない美しさは煌めく音へと姿を変え、長い序章に終わりを告げる

_DSC1732門田匡陽のソロプロジェクト“Poet-type.M(ポエトタイプドットエム)”が、1stフルアルバムを遂に完成させた。かつて彼が創り出してきたBURGER NUDSの『LOW NAME』や、Good Dog Happy Menの『Most beautiful in the world』という名作たち。世界を変えられると錯覚できるほどの高揚感に包まれながら制作した当時の感覚に近い、純真無垢なる創造性がこの『White White White』というアルバムには漂っている。“帰る場所のない美しさの翻訳”という原点に立ち返り、長い序章に終わりを告げる新たな名作の誕生だ。

 

●今回の『White White White』は2年半ぶりの作品リリースになりますが、当初は去年の秋頃にソロ名義での新作を発表する予定だったんですよね?

門田:去年の夏にレコーディングはしていたんだけど、その作品にはBURGER NUDSやGood Dog Happy Men(以下グッドドッグ)の曲もいくつか入れようという話があって。でもいざ曲に向き合うと、「これはやっちゃダメだな」と思ったんだよね。

●とはいえ、ソロでのライブではそういった過去の曲もやっていたわけですが。

門田:俺も最初はライブでやっている延長で考えていて、「今の自分なら良いものができるかもしれない」と思ったんだよね。でもいざ録ってみたら全然良くなかったので、「これはダメだな」と。レコーディングするのなら、何か新しい側面が見えない限りはやるべきじゃなかったんですよ。

●昔の曲を単純にコピーするだけなら意味がない。

門田:俺の中ではBURGER NUDSからグッドドッグを経て今に至るまで、どの曲も終わっていないんだよね。レコーディングするにあたって再び曲と向き合った時に初めて、そのことに気付いた。そういう曲を今再びレコーディングするということは、一度死んだことにしてしまうようなもので。それに対して、自分の心の中ですごく抵抗があったんだと思う。

●自分の中では今まで作った曲がどれも完結しないまま、生き続けているというか。

門田:ひょっとしたら『the GOLDENBELLCITY』(グッドドッグの1stフルアルバム)の時に作った世界観が今も自分の音楽を作る上でなだらかに続いていて、俺はまだそこにいるのかもしれない。「そこにいない」っていう可能性を作りたくなかったんだよね。(グッドドッグの『the GOLDENBELLCITY ep2』に収録されている)「Twice Birds' Singing」の鳥は今もどこかで飛んでいるのかもしれないし、(BURGER NUDSのシングル『自己暗示の日』に収録されている)「タネリ」の主人公は今も少年のままなのかもしれない。それを1回殺してしまうことになるのがすごくつらかった。

●そこで、予定していたアルバム制作が頓挫した?

門田:既に企画自体は動き始めちゃっていたから、どうしようかと本当に迷って。でも「これは音楽になっていない」と思ったので、結果的に前のレーベルにはすごく迷惑をかけてしまったんだけど、もう無理だと伝えたんだよね。その時の体験が元で体調を崩して、イベント出演をキャンセルしちゃったりとかもして…それがちょうど1年くらい前のことかな。

●当時は苦しい時間を過ごしていたんですね。

門田:音楽をやることでこんなにも苦痛を感じることがあるんだというのが、自分にとってはカルチャーショックだった。今までは音楽をやっていて楽しくないことなんて一度もなかったから。普通のミュージシャンならこの歳になるまでに「音楽が面白くなってきたな。もうやめちまおうかな」みたいなことを一度は考えると思うんだけど、俺はその時に初めて音楽をやっていて「つらい」と感じたんだよね。

●そこから、Poet-type.Mを始めた経緯とは?

門田:去年の後半は外をボーッと歩きながら、色んなことを考える時間が多くて。たとえば夕暮れ時に川辺を歩いていたらウルッとなるくらい気持ちが浄化されたりすることがあって、「俺はこういうものを何とか音楽にできないかなと思っていたんだよな」って思い出したというか。グッドドッグの『Most beautiful in the world』とかを作っている時のテンションって、そういう“帰る場所のない美しさの翻訳”だったんだよね。

●そういうことはPoet-type.Mの公式サイトでも宣言されていましたね。

門田:明確なキッカケはないんだけど、そういう日々の積み重ねでまた“居場所のない美しさ”を大事にできるようになったのが大きかった。それってすごくファジーなものなんだけど、そのファジーなものを形にすることに人生をかけてみようかなって思えたというか。

●逆に、ファジーだからこそ形にする意味がある。

門田:そう。それにファジーだから、ファンタジーを織り込めるんだよね。そこが俺にとっては大事なことで。日記を歌っているわけではないから、1曲1曲の細かい意味なんて俺には正直どうでもいい。それよりも歌やメロディや詩にはしていない何かしらの“行間”があって、そこにロマンがあればいいなって思う。「俺はファジーなものに惹かれているんだな」ということに改めて気付かされたのかな。

●本名の“門田匡陽”から名義をPoet-type.Mに変えたことでも、新しい気持ちになれたのでは?

門田:やっぱり“門田匡陽”って生々しいんだよね。だから、もう少し記号化したいとは思っていて。直訳すると「M型吟遊詩人」っていう意味なんだけど、自分の中では「ゼンマイ仕掛けの詩人」というイメージで。この名前自体が「ファジーな中にこそファンタジーを詰め込める」っていうことを代弁してくれていると思う。この名前はニューヨークへ旅行している時に考えたんだけど。

●今年3月にニューヨーク旅行に行ったんですよね。

門田:今回のレコーディングに入る前に自分を一度フラットにしたかったというのと、確信を持ちたいという想いもあったかな。長年ニューヨークには行きたいと思っていたから、1回それを肌で感じてみたいなと。どうせなら向こうでライブもやってみたいなということで、ギターを持って行って。

●実際にライブしたんですか?

門田:うん。向こうのライブハウスって、土日は昼間がオープンマイクで飛び入り参加できるところが多くて。だから素人みたいなヒドいのが出てきたと思ったら、その次にはものすごく上手い人がやったりもする。そういう環境でやるのはすごく新鮮だったし、楽しかったな。

●今作を作るために必要な期間だった?

門田:実際に向こうに行ったからできた曲もいっぱいあるし、すごく良い刺激になったね。旅行前の時点では、Poet-type.Mの曲はまだ2曲くらいしかなかったから。

●その2曲とは?

門田:M-4「調律するかのように (Over The Rainbow)」とM-6「祈り (It′s show time)」だね。

●「祈り (It′s show time)」は以前にライブでもやられていましたよね?

門田:やっていたね。“It′s show time”っていうのはブロードウェイでは1種の挨拶みたいな言葉で、その楽しい雰囲気が印象に残っていて。この曲もパッと聴いた感じは明るく聴こえるだろうだけど、実は自分としては寂しさとか切なさみたいな気持ちを意図しているんだよね。今回は“悲しみ”をちゃんと音にしてみようというのが、自分の中で大きなテーマになっていたというか。

●“悲しみ”が今作のテーマだった?

門田:実はどの曲も、悲しみを乗り越えられた人と乗り越えられなかった人の音楽なんだよね。でも暗い感じにするんじゃなくて、“美しい悲しみ”というか。寂しさや悲しさという感情が俺はすごく好きで、そこにすごく憑かれている感があって。そのメランコリー感に向けて、今回は全曲やりたいなと思っていた。

●共通するテーマもありつつ、今回は全曲に副題が付いていることでも統一感や物語性を感じられます。

門田:今回は本タイトルと副題を合わせて、2つで初めて1つの意味を成すように作っていて。たとえばM-8「長い序章の終わり (Law Name)」の副題はBURGER NUDSの1stミニアルバム『LOW NAME』から取っているんだけど、“LOW”をあえて“Law”(法律)に変えることで“守るべき名前”という意味合いに変えている。それによって、「BURGER NUDSから始まった俺の音楽人生の、長い序章を今ようやく笑顔で終われるな」っていう気持ちを表しているんだよね。

●今作が1つの区切りにもなっている。M-2「何もかも越えて、吐き気がする (Down To Heaven)」は、他の曲とは少し雰囲気が違うように感じました。

門田:この曲は去年の自分が一番ダメな時期に作った曲だったから、正直やりたくなかったんだよね。収録するかどうか最後の最期まで悩んだけど、作品にとってプラスになるかマイナスになるかではなく、自分がけじめを付けられるかどうかというふうに考えて入れました。

●作品化することで自分自身にけじめをつけた?

門田:この曲は去年の俺の象徴なんだよね。それにここでやっておかないと、次の作品には絶対に持ち越せない曲だから。このレコーディングに関してはドラムの水野(雅昭)とギターのナラやん(楢原英介)には弾き語りのデモを渡しただけで、当日までは音を合わせたりもしなかった。そのくらいの感じじゃないとこの曲には向き合えなかったし、そういう意味で2人がいなかったらできなかったと思う。

●実際に録音したことで見えたこともあるのでは?

門田:レコーディング当日まで俺はほぼ聴いていなかったし、メンバーもイメージがよくわかっていないから一緒に演奏しても最初はまとまらなくて。でも3テイク目くらいでこれ(実際の収録テイク)が録れて、そこで歌詞についても全てクリアに見えたというか。どう歌えばいいのかということもすごくクリアになった。最初はこの曲が入っていないほうが作品としてはまとまるかなと思っていたんだけど、録り終えて聴いてみるとこれもすごく『White White White』っぽいんだよね。

●結果的にアルバムの雰囲気にも調和している。

門田:また違った意味合いの『White White White』っぽさがあるというか。何の皮肉もなく「清く、正しく、美しく」という意味で『White White White』というタイトルにしたんだけど、この曲を入れたことで違った側面や奥行きが出たというふうにも捉えられるかなと。

●タイトルは「清く、正しく、美しく」という意味?

門田:これは音楽家としてのアティテュードというか。だんだん音楽がドス黒いことに巻き込まれていっているということに対して、俺は「清く、正しく、美しく」ただの音楽家として死ぬまでいたいなっていう。そういう世の中のことには一切関わりたくないという、ある意味での宣言でもある。

●“美しさの翻訳”だけに専念するというのは、純然たる音楽家としては1つの正しいあり方なのかなと。

門田:自分が信じるミュージシャン像を守って生きていくのか、それともその時その時で色んなことに首を突っ込んで世の中とユナイトしていくのかっていう二択だと思っていて。自分がどちらかと考えたら、俺はもうフルスイングで前者なんだよね(笑)。

Interview:IMAI
Photo:Takanori Abe

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