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RUSH BALL 15th

SPECIAL LIVE REPORT:RUSH BALL 15th

【8/31】BRAHMAN、[Champagne]、Dragon Ash、dustbox、EGO-WRAPPIN'、the HIATUS、KEN YOKOYAMA、POTSHOT、SiM、TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA  [OPENING ACT]The Flickers

〈ATMC〉 快速東京、きのこ帝国、パスピエ、AIR SWELL、group_inou、Keishi Tanaka、Kidori Kidori、The Mirraz、 MY FIRST STORY、Sawagi、onion night

【9/1】サカナクション、ストレイテナー、9mm Parabellum Bullet、ACIDMAN、avengers in sci-fi、THE BAWDIES、BIGMAMA、FRONTIER BACKYARD、POLYSICS、the telephones
[OPENING ACT]Czecho No Republic

〈ATMC〉キュウソネコカミ、グッドモーニングアメリカ、DE DE MOUSE、GOOD ON THE REEL、KANA-BOON、KEYTALK、LOSTAGE、THE NOVEMBERS、THE ORAL CIGARETTES、SEBASTIAN X

 

心配された台風も直前に低気圧に変わり、幾万人のロックキッズたちが歓喜を胸に抱き迎えた“RUSH BALL 15th”。15周年という節目の今年は、なんと豪華2daysでの開催。発足当初から共に歩んできた仲間たちから、次代の音楽シーンを担うであろう若手アーティストまで様々な面子が勢揃いし、数々の名場面を生み出した。

8/31 REPORT

G.SHOW-HATEとBa.SINが気合い一閃。キラーチューン「KiLLiNG ME」で狂乱の幕を切って落としたSiM。観客のテンションはいきなりMAX。「Blah Blah Blah」のリズムがオーディエンスを揺らし、「IHateU」「Amy」と息をつく暇もなく暴れさせ、「FUCK iT ALL」では全員でジャンプ。最後は定番の「JACK.B」。客席エリアに降りて歌うVo.MAHに向け、たくさんの腕が振り上げられる。若きカリスマに対し、全オーディエンスから渾身のリスペクトが注がれた。

dustboxは「Right Now」でスタート。G./Vo.SUGAが「RUSH BALL!!」と叫び、スタンディングエリアはダイヴの嵐。全力で暴れ、叫び、笑う。「Try My Luck」では最高の瞬間をその場に居合わせた全員が共有。群を抜くメロディが気持ち良いほど空に響き渡り、最後は「Tomorrow」。名曲を惜しげも無く連射し、3人は汗だくの笑顔でステージを後にした。

MY FIRST STORYは、強烈な存在感を放つヴォーカルと硬質でメタリックなサウンドを武器に激しいステージを繰り広げ、ATMCが凄まじい興奮に包まれる。「SiMに負けないくらい大きなサークルを作ってくれ!」とVo.Hiroが煽り、サークルモッシュが発生。身体をぶつけあい、腕を振り上げ、歌う。まさにライブハウスと化したATMC。最後の「最終回STORY」まで、5人は全力で駆け抜けた。

まさかPOTSHOTのライブを再び観ることができるとは! 超久々に観た彼らのライブは「最高!」のひと言。心地よいリズムと伸びやかなホーン、そしてVo.RYOJIのあのヴォーカル。スカパンクを思う存分楽しんでいる会場には、新旧のスカパンクファンが入り乱れていてなんだか感慨深い。会場の至るところでスカダンスの華が咲き乱れ、RYOJIが「生きてたら20周年で会おうぜ!」と言って贅沢なセットで最後までガンガン盛り上げる。やっぱりスカパンクの一体感は格別だ。

オーセンティックなスカで観客を魅了するTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA。“音で人の気持ちを動かす”ということに特化した彼らのライブは、いつの間にか全員を巻き込んでいた。1曲目から会場はスカパラ一色に染まり、EGO-WRAPPIN'の中納が登場しての「くちばしにチェリー」、そして「DIAMOND IN YOUR HEART」にゲスト参加したthe HIATUSの細美というサプライズに熱狂。音楽が持つ力を見せつけたライブだった。

「初期衝動」で会場の空気を一変させたBRAHMAN。爆発的な興奮の声が飛び交う中でEGO-WRAPPIN'の2人と共に「WE ARE HERE」を披露。その後はもうもうと土煙が立つほどの狂乱が続き、客席に降り立ったVo.TOSHI-LOWの「変わらない日常、変わらない世界、変わらない自分、変えるのは俺たち」という言葉にオーディエンスはたくさんの拳を突き上げ、ダイヴとモッシュで熱い想いを返した。さすがBRAHMAN、圧巻のライブだった。

客席からたくさんの日の丸がステージに掲げられ、KEN YOKOHAMAが日本国旗を肩にかけて登場。「強く願うこと」と言って始めた「Believer」、“一緒に歌ってほしい”という想いを込めてマイクを客席エリアに投げ込んだ「Let The Beat Carry On」…彼の一挙手一投足から、その強靭なサウンドと言葉1つ1つから強い意志を感じさせる、これぞリアルパンクスのライブ。意志と想いを込めたステージは胸の奥底まで深く突き刺さった。

ロックを芸術的な高みまで昇華させたthe HIATUS。Vo./G.細美が原発事故とこれからの日本への想いを話す。その想いはオーディエンス1人1人に響き、会場各所から大きな歓声と拍手が起こる。メンバーそれぞれの音がステージの上で高次元の化学反応を起こす彼らのライブ。「革命の歌を作りました」と「Horse Riding」をスタートさせ、暗くなっていく空と反比例的に会場の熱は高くなる。最後は「紺碧の夜に」。様々な情景を描き出したその世界に観客は最後まで酔いしれた。

「Waitress, Waitress!」からスタートした[Champagne]。タイトでグルーヴィーなリズム、大胆なアレンジ。「今日はお前らと踊りに来ました!」というVo./G.川上の声を皮切りに会場の興奮は爆発。「他の出演者は全部先輩。でも俺たちはロックバンドなので、挑んでいこうと思います」と言ったその言葉に偽りはなく、キレのあるステージでオーディエンスをおもしろいほど暴れさせる。最後は、去年の“RUSH BALL”で生まれたという「Starrrrrrr」で締め。“RUSH BALL”と共に歩み、“RUSH BALL”と共に成長してきた彼らの想いがビシビシと伝わってきた。

そしていよいよトリ、Dragon Ashの登場だ。「俺はバカヤローだから、これしかねぇんだよ。もしお前らの中にこれしかねぇって奴が居たら…飛び跳ねろ!」というKJの言葉に、オーディエンスは全力で応え、叫び、飛び跳ねる。1日の疲れも、そして心配された台風も吹っ飛ばすほどの興奮が会場に充満する。「俺はお前らの前で歌うのが1つの存在証明だ」とKJが言って「Here I Am」、大きな一体感を生んだ「AMBITIOUS」と、次から次へと狂乱を作り出す様は圧巻。人が暴れ、宙を舞うという狂騒の渦の中心にはKJの歌があった。アンコールの「Viva la revolution」ではこの日いちばんの盛り上がり。“音楽で何かが変わるかもしれない”…そう思わせてくれた瞬間だった。

TEXT:Takeshi.Yamanaka

 

まずはオープニングアクトのThe Flickers。「black light」でビートの効いた重低音と鋭いリフで攻め、続いて「white heat」で疾走感溢れる爽やかなメロディーを響かせる。対照的な2曲を並べたところで、定番のライブナンバー「non-fiction」! エモーショナルな歌とエレクトロサウンドで会場を踊らせた。

ATMC一番手の快速東京は、暑苦しいロックンロールをブチかます。スラリと伸びた手足を活かしたVo.福田のダンスは、何とも様になっていてクール。特徴的な歌い方や、甲高く色気がある声。それは“忌野清志郎の若い頃は、こんな感じだったのではないか”と思わせるほど、ロックスター然とした姿だった。

いきなり「ウォー!」とすさまじいシンガロングを響かせたAIR SWELL。エフェクトの効いたG./Vo.hamakenの声と、Ba./Cho.Taisukeのチョッパーテクニックに酔いしれる。「いい子ぶるのは終わりにしようぜ。everybody!」という挑発的な言葉に違わず、自信に満ちた堂々たるステージを見せてくれた。

ホーンの伸びやかなロングトーンから始まった、EGO-WRAPPIN'のステージ。Vo.中納が「私たちを初めて観るヤングジェネレーションもいると思うけど、仲良くしてね!」と告げていたが、ホーンやコントラバスによるアダルティーな楽曲は、なるほど若い世代ではなかなか出せない魅力だ。特に「サイコアナルシス」は“これぞエゴラッピン”と叫びたくなるような昭和歌謡的メロディーのムード溢れる一曲。ラストは「GO ACTION」でフィニッシュ! サビの部分で中納が「楽しかった ただそれだけでいいのよ!」と叫んでいたが、まさにその通り、何も考えず純粋に音だけでワクワク・ゾクゾクするという感覚を楽しんだ。

“音を楽しむ”と言えば、Sawagiのライブもそうだ。毎回、オーディエンスを無心に踊らせる彼ら、初っ端から「Michelle」で、衝撃的なインダストリアルサウンドを叩き込む。次いでの「MOTOR POOL IS NOT DEAD」は、音源だとその美しいメロディーに惹かれる曲だったが、今日のステージでは重低音が効いていてよりいっそう観客を煽る。インストで歌詞がないこと、そしてリフレインを多用することでダイレクトに音が身体に入ってきて、とても純粋に音に触れているような感覚になる。曲の繋ぎ方も絶妙で、途切れることなく踊り続けた。

Kidori Kidoriは、トレードマークのドットシャツをまとい登場。まずはライブでも人気の定番曲「NUKE?」からスタート。オーディエンスの熱気が充満したところで「熱中症には気をつけて。“気をつけて”を英語で言うと?」、Vo./G.マッシュがそう前置きしてからの「Watch Out!!!」! おどろおどろしい雰囲気と不穏なベースラインが妙に頭に残る一曲だが、不思議と暗い感じではない。不気味ではあるのだが、リズミカルでちょっと楽しくなるようなノリが楽しい。

初めてパスピエの音源を聴いた際は、その技術力の高さに感動したが、ライブでも彼らの演奏はバツグンの安定感を誇っていた。リズム隊が寸分のズレもない完璧なビートを刻んでいる様は、もはや圧巻の一言。そして特筆すべきは彼らのパフォーマンス。音も動きもアグレッシブで、G.三澤が背面ギターでも綺麗なサウンドを鳴らしていたことには衝撃を受けた。またバックグラウンドを支える男性陣の存在により、紅一点Vo.大胡田の華が際立っている。キュートな歌声と美しい立ち居振る舞いを脳裏に焼き付けた。

この日唯一の弾き語りだったKeishi Tanakaの出番。いくつかは英詞の曲で、“英詞+弾き語り”という組み合わせがなんとなく耳新しい。甘く柔らかい歌声で、リズミカルに楽しげに唄い上げる。やや風が強くなり、マイクにも風切り音が入るようになったころ、「風に弱い楽器に風に弱い髪型(笑)だけど、遠くまで歌が届けば良いなと思っています」と、はにかむ表情が素敵だ。激しい曲のバンドが多い中、優しく穏やかな、癒しの時間が流れる。

徐々に日も落ち、だんだんと会場の空気も変わってくる頃。きのこ帝国のシューゲイザーサウンドは、こんな時間帯にピッタリ。一瞬で意識を持っていかれる衝撃的な音も、夜の雰囲気がよく似合っていた。どこから響いてくるのか、とてつもない浮遊感を持つG./Vo.佐藤の声は、不思議なんて可愛らしい言葉では片付けられない底知れなさを感じる。また、G.あーちゃんがとても印象的で、神懸かった泣きのギターや、激しく掻き鳴らしながらも笑顔で動き回る彼女はシューゲイザーの持つイメージとはかけ離れていて、ボーカルとの対比が良い意味でギャップがあって面白い。

「前回出たときにいろんな人に褒められたので、次は大きなステージかと思っていたら、出演するまでに時間がかかりました」と開口一番Track.imaiが笑いを誘ったgroup_inouは、変態的までにアガるグルーブを生み出した。Mc.cpの変な動き(笑)とテンポの良いラップとが相まって、だんだんトランス状態になってくる。Track&Mcというスタイルは、この“RUSH BALL”の中でも少し異彩を放っていたが、トリッキーなライブ展開で観客の心を見事にキャッチしていた!

ATMCの初日のトリを飾ったのは、The Mirraz。3曲連続ノンストップでアッパーな曲を矢継ぎ早に繰り出したかと思うと、Vo./G.畠山が「どんどん行くぞ!」と宣言し、さらに勢いを加速させる。そのままキラーチューン「CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい」へ! オーディエンスはタガが外れたように、思い思いに暴れ回る! 誰かが動くたびに、人波がThe Mirrazに吸い寄せられるかのように前へ前へと詰めていく様子は圧巻。ステージ終了後も、アンコールを求める声が鳴り止まなかった。

初日のClosing Actは、邦楽ロックメインのパーティーイベント“onion night”によるDJタイム! TOTALFATやHEY-SMITHなど、ロック好きのツボを押えた選曲に思わずニヤリとする。最後までガッツリと盛り上げ、2日目へと繋いだのだった。

TEXT:森下恭子

BRAHMANDragon AshdustboxEGO

KEN YOKOYAMAPOTSiMthe HIATUS

スカパラChampagneTHe Flickers

 

9/1 REPORT

「只今より、全力でお前たちを潰しにかかります。よろしく」。そんな挑戦的な言葉を発したのは、THE ORAL CIGARETTESだ。計算し尽くされた音のギミックによって、洗練された楽曲が生み出されていく。曲だけでなく、彼らはMCもバツグンに良い。終盤、G.鈴木のギターの弦が切れたときのことだ。とっさに山中が自分のギターを渡し「オーラルシガレッツ初のピンボーカルスタイルをする」と言って切り抜けたのだ。これにはファンも大喜び。ハプニングさえもプラスに変える機転は、彼らの大きな武器だろう。

SEBASTIAN Xの歌はとにかくパワフル。暗雲を一気に晴らすような明るさを持ったVo.永原の歌声は、マイクがなくたっていちばん後ろのオーディエンスまで届くような力強さだ。“多幸感”という言葉は、SEBASTIAN Xのためにあるのではないかと思うくらい、暖かくて、幸せに満ちた曲たち。“ウォンアイニー 火の車 ストロベリー”と、なんてことはない言葉の羅列でさえも楽しくなるのは、彼女たちの持つ雰囲気があってこそだ。

初っ端からエッヂィなギターリフを突き刺してきた9mm Parabellum Bullet。荒々しくダイナミックなステージングや骨太かつ重厚なサウンドは、いつ観ても一切のブレがない。スカのリズムと歌謡曲的なメロディーが融合した「ハートに火をつけて」では、音の鋭さはそのままに、メロディアスなフレーズが心の琴線に触れる。そして、ここで最強のキラーチューン「Black Market Blues」! 腹の奥までバシバシ響く重低音が魂を揺さぶった。

ここでパーティーバンドの雄、FRONTIER BACKYARDの登場だ。「Wonderful World」「TWO」とキラッキラの眩しい太陽が似合う曲を繰り出すと、どんよりしていた雲間から、なんと徐々に光が差し出した! 「晴れたよー! ここからパーティーチューンいきましょう!」とVo.TGMXが煽れば、会場はさらにヒートアップ。カラフルなサウンドが耳に残る「Putting on BGMs」、まるで光が射し開けていくような希望に満ちた「hope」と、ハッピーなアンサンブルに包まれ気持ちが浮き立つような時間を過ごす。

スクリーンにミラーボールが映し出されると、the telephonesの独壇場! Vo./G./Syn.石毛が声高々に「サルのように踊ろうぜ!」と叫べば、一曲目「Monkey Discooooooo」! “1 2 3 4 3 2 1”とカウントを取ってからのサビのアガりようは、いつ観てもすさまじい。しかも、全編通してこのテンションのまま突っ走っちゃうのだ。最終的にはいつの間にか半裸になったSyn./Cowbell./Shriek.ノブが客席にダイブ!

“RUSH BALL”出演数歴代3位という記録を持つACIDMAN。「俺らは中堅だと呼ばれたくないし、ましてベテランだなんて言われたくない。いつまでも新人のつもりでやっていきたいと思います」。そう告げるVo./G.大木からは、にじみ出る貫禄や深みがありながらも、いつまでも挑戦者でありたいという気持ちが見えたような気がした。文字通り新しい世界の幕開けを思わせる「新世界」で締めくくった後は、まるで心が浄化されたかのような清々しさに包まれた。

THE BAWDIESは、ビシッとキメたスーツ姿で現れた。血湧き肉踊る音楽に感化され、考える前に身体が動き出す。「我々はこれだけ伝えにきました。ロックンロールという言葉だけ覚えてください」。そう言って、感情を爆発させたかのように激しく、アツいステージを見せる。ラストの「SING YOUR SONG」では、最初に比べて明らかに踊っている人が増えていた。初登場ながらも、オーディエンスのハートをしっかりとキャッチしたことだろう。

“RUSH BALL”とストレイテナーとは、もはや切っても切れない関係ではないだろうか。一曲目、まさかの「ROCKSTEADY」で、いきなり会場を熱狂の渦に叩き込む! 「DISCOGRAPHY」で一気に盛り上げたあとは、叙情的な旋律が美しい「SIX DAY WONDER」、そして新曲「シンデレラソング」! Bメロからサビに移り変わった瞬間の爆発力は、今後テナーの新たなライブアンセムになる勢いがあった。クライマックスは「Melodic Storm」の大合唱! 感動と興奮で震えっぱなしの最高なアクトに脱帽。

2011年の"RUSH BALL☆R"、2011年の本編、そして今日。思えば、私が“RUSH BALL”でBIGMAMAを観るときはいつも雨が降っていたが、彼らのステージでは雨粒さえも演出のように美しく見える。清涼感溢れるサウンドを紡ぐ夏のアンセム「alongside」、哀愁漂うメロディーと切ない歌詞が合わさった「秘密」など、観るたびに磨きがかかっていく楽曲で多くの人を惹き込んでいく彼らがトリを務める日も遠くないのかもしれない。そんな予感さえも感じる、すばらしいライブだった。

横一列に並ぶメンバーの前にラップトップがセットされると、ついにサカナクションが始まった。まずはDJスタイルで一曲目「ミュージック」へ。クラブ的なノリでオーディエンスが踊る中、突如舞台が暗転し、暫く辺りが暗闇に包まれる。そして再びライトアップされたステージには、バンドセットでスタンバイしたメンバーが! 二曲目「アイデンティティ」では打って変わってバンド感溢れるアンサンブルを聴かせた後、再びDJスタイルへと移り変わる。さらに「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』2013 VERSION」以降では、レーザーを使った演出が加わり、よりアーティスティックな空間に。 「ネイティブダンサー」でサビの“雪になって”の歌詞に合わせて、はらはらと雪が舞うかのように光を散らしたときは、思わず見とれてため息が出たほど。ラストは「夜の踊り子」で、誰もが“小学生みたいに”無邪気に飛び跳ね、屈託のない笑顔を浮かべていた。

TEXT:森下恭子

 

SEが鳴った瞬間から観客は腕を振り上げて大興奮、ステージにCzecho No Republicが登場して大歓声。「Call Her」からスタートし、5人は多彩なアレンジとキラキラした音でみんなのテンションを上げまくる。子供も音に乗って跳ねまわっている。彼らが誇るポップネスは、“RUSH BALL 15th”2日目の幕開けを華麗に飾り付けた。

avengers in sci-fiは、観る者の心を引き付ける強烈な引力が印象的。「The Planet Hope」「Homosapiens Experience」「Universe Universe」とダンサブルなキラーチューンを連発、雨をものともせずに会場のテンションは更に上がる。ロマンチックに輝きを放つ音は、降りしきる雨粒のようにオーディエンスに降りかかり、観客は歓喜する。

雨脚が強くなって35分押しで登場したPOLYSICSは、とにかくキレキレだった。限界まで削ぎ落としたストイックなステージに、ずぶ濡れになったオーディエンスは大喜び。誰にも真似のできないキャッチーなサウンドに、全員が我を忘れて暴れまくる。新曲「MEGA OVER DRIVE」でトリップさせた後、「ムチとホース」で更にテンションを限界まで上げ、「Buggie Technica」の超絶的アンサンブルで締め。3人の最高なアクトに、拍手がいつまでも鳴り止まなかった。

KEYTALKの4人が登場すると、ATMCを埋め尽くした観客から大歓声が起きる。ビートの効いた演奏とメンバー間の呼吸は抜群で、観客は雨を浴びながら飛び跳ねる。フィジカルが強くてアグレッシヴなライブはまさに肉食系。ロマンチシズムをメロディでコーティングし、思いっ切り暴れさせるステージに観客は盛り上がりっぱなし。「MABOROSHI SUMMER」からの「トラベリング」という締め括りで最後まで楽しませてくれた。

GOOD ON THE REELのVo.千野は、ステージに登場するなり大きく深呼吸するように腕を拡げた。彼が放つ言葉の1つ1つを、観客が人差し指で指し示していく。ステージと客席の絶妙な一体感は、彼らのポテンシャルの高さを物語っていた。繊細なのに強さを感じさせる歌と、身体の芯に共鳴して振動させるサウンド。最後の「シャワー」ではたくさんの手拍子に包まれ、千野はまるでコンダクターのように全身を使って音を操り、言葉を丁寧に吐き、オーディエンスの心を震わせた。

ATMCに続々と観客が詰めかける。Vo./G.ヤマサキが「インディーズバンド、キュウソネコカミじゃー!」と叫び、重厚かつ濃厚なエンタテインメントがスタート。「キュウソネコカミ」「サブカル女子」「DQNなりたい、40代で死にたい」と中毒性の高いナンバーに、客席はどんどん人が増え、まるでブレーキの壊れた暴走機関車の如く突っ走る。「お願いシェンロン」で筋斗雲(みたいなボード)を客の上に乗せてヤマサキが空を飛び、「ネコ踊る」で全力の締め。強烈なライブは観る者全員の記憶に刻まれた。

サウンドチェックのまま「このままやりましょう」とライブをスタートさせたのはLOSTAGE。ぎゅっとタイトに詰まったエネルギーを一気に放出させるような爆発力のあるステージはさすが。凶暴以外の何ものでもない爆音と、練り上げられた強靭なグルーヴは、観る者の心を身体を釘付けにする。Vo./Ba.五味が「僕たちにとってすごく大事な曲をやって帰ります」と最後は「GOOD LUCK」。まるで雲間から差し込む日光のように、ATMCにLOSTAGEのサウンドが降り注いだ。

Ba.たなしんが客席横の鉄塔によじ登って客席を盛り上げた後、「キャッチアンドリリース」でATMCにたくさんのダイヴを巻き起こしたグッドモーニングアメリカ。Vo./G.金廣の伸びやかな歌と心地よいロックサンドがオーディエンスの気持ちをアゲにアゲる。心に染み渡る「餞の詩」で聴かせた後、最後は「未来へのスパイラル」。たなしんのMCがあったために曲数は少なかったが、笑わせ、叫ばせ、踊らせ、暴れさせた贅沢なひとときにオーディエンスは大満足。

空が暗くなり、ATMCがクラブへと化した。それまでのロックバンドの流れを一瞬で変えたDE DE MOUSEは、我々を存分に踊らせ、楽しませた。打ち込み+生ドラムという編成で強力なグルーヴを作る彼らはまさに魔術師。「全然ロックじゃありませんが、僕の魂はロックだと思っています」というその言葉そのままに、音の1つ1つに想いが込められているのはその場に居た全員がわかっていた。最後の「milkyway planet」まで、クラウドを揺らし、オーディエンスの心を震わせたDE DE MOUSEは、まさにロックだった。

ATMCのトリを飾ったのはTHE NOVEMBERS。「Harem」からスタートしたそのステージは、出す音も放つ言葉も柔らかだけど、内包する強い“何か”を感じさせる。雲間に光る稲妻をバックに、彼らのライブは曲を重ねる毎に鋭さを増していき、いつの間にかエッヂィなサウンドの渦中に巻き込まれていた。そのストーリーテリングに舌を巻いていると、Vo./G.小林が「今日1日鳴ってきた音楽、これから鳴る音楽と、ここにいるあなたに捧げます。最後の曲です」と告げて「GIFT」。鋭さを携えつつも、懐の深い包み込むような轟音で見事ATMCトリを締め括った。

無数の花火が“RUSH BALL 15th”の大団円を告げた後、Closing ActとしてATMCに登場したKANA-BOON。続々と観客が詰めかける中、ザクザクと刻まれたリズムに乗せたキャッチーなメロディは、2日間暴れまくって疲れ切った身体にみるみると染みこんでいく。最後はVo./G.谷口が「チャーハンの歌」と言って「ないものねだり」。ATMCステージ最前から後ろまで万遍なく腕が上がり、みんなで大合唱して終演。見事 Closing Act を務め上げたKANA-BOONを、たくさんの笑顔が包んでいた。

TEXT:Takeshi.Yamanaka

9mm ACIDMANavengers BIGMAMA

Czeco FBYPOLY サカナクション

THE BAWDIES the telephones ストレイテナー

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