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sfpr

全てが終わった後の世界へ新たな光を射しこむように鳴り響くのは こんな音楽なのかもしれない

FACTを擁するmaximum10が突如、新たなバンドのリリースを発表した。その名は、sfpr。

2012年の幕開けと共にリリースされるのが、彼らの1stアルバム『apocalypse』だ。そして、そこには誰も聴いたことのない音楽が満ち溢れていた。ロックとエレクトロミュージック両方の要素を持ち合わせながら、そのどちらにも収まらない音楽性はまさにノンジャンルと言うほかない。一聴しただけでは洋楽かと思うくらいのクオリティとメロディだが、耳を澄ませてみれば歌詞は日本語がメインのようだ。ファンキーにうねるベースは、ブラックミュージックの素養も感じさせる。多種多様な音楽を消化・吸収して自分たち独自の音へと昇華させているところには素養だけではない、卓越した技術と天賦の才能を感じずにはいられない。いったい、sfprとは何者なのか?

プレスリリースの資料には“SG(Ba./Vo.)とFZ(G./Vo./Prog.)の2人からなるバンド”という情報だけで、2人の経歴や素性は一切明かされていない。謎のヴェールに包まれた彼らの存在感もまた、この音楽が持つ捉えどころのない摩訶不思議な魅力を象徴しているかのようだ。実際に2人から話を訊くと、共に普段は他アーティストへのプロデュース業や楽曲提供の仕事を中心に行なっている人物たちだということがわかった。「お互いに関わっているアーティストの曲を聴いていて、“この人は間違いないな”っていう感覚があった」(SG)という両者が実際に出会い、共に創作活動をしようと話したのはもう3年以上も前のことだという。そこから互いに曲を作り貯めるなど水面下での活動がしばらく続いた後、状況を一変させる1つ目のキッカケが2010年11月に起こる。

Katy PerryやBritney Spearsなどとの仕事で知られる、アメリカの実力派プロデューサーKool KojakとAmmoとのソングライティング・セッション。「2人が来日する1週間くらい前に話をもらって、全くゼロの状態から曲をスタジオで一緒に作っていった」(SG)。そんな状況の中、わずか2日間で今作にも収録されるM-7「turn new border」とM-8「air」を完成させた彼ら。「この2曲を作ったところから加速度的にスピードが上がっていった」というFZの言葉は、生音メインで構成されたオープニングチューン「awakening and riot!!」がトラックカウントの切り替わりと同時に加速していく様を想起させる。最初はバンド感が強いサウンドだったところからプロデューサー2人の影響も受けつつエレクトロ寄りになり、さらに「エレクトロっぽかったはずの曲が、最終的には一番バンドっぽくなったりもした」(FZ)。

sfprの変化はソングライティング・セッション後も止まることなく続いていく。「お互いのデモを聴いている内に“ここをこうしたほうがもっとヤバくなっていくんじゃないか?”っていうアイデアも出てきた」(SG)という2つの才能の交差はレコーディング中にも度重なり、当初描いていたビジョンを次々と更新していった。その中から第2のキッカケも生まれてくる。それはM-3「feeder ft.hitomi」、M-4「bring down your flags!!」、M-5「wish」というオリジナル感の強い楽曲の誕生によるものだ。特に「wish」では「工場の音だけでリズムを作ってみようというアイデアが最初に出た」ところからライブでの再現性を度外視して、「“普通のバンドでは出来ないことをやろう”っていうのがキーワードになった」(共にFZ)。奇天烈にも思えるアイデアから“sfpr”でしかない音が生まれ、彼らの進むべき道筋が遂に照らし出された。

『黙示録』を意味するタイトルのとおり、今作には少しダークなムードが漂っている。「wish」で「頭の中に映像が浮かんだ」(FZ)ところから、映画のようなイメージで曲順の流れにもこだわって構築されたことで世界観が統一されているのだ。4曲に1曲の割合で現れる美しい5つのバラードに「awakening and riot!!」=人、「wish」=人造物、M-9「snow, forest, clock」=時間、M-13「warseeds」=戦争、M-17「Mark Prays►Monster.」=自然というコンセプトを与えたことでもアルバムとしての統一感を増している。そしてSGが「音の説明という部分が大きい」と言う哲学性すら感じさせる歌詞。…こう書くとまるで重厚な大作のように思うかもしれないが、単純にメロディだけを聴くと高水準なポップスにもなりえるようなキャッチーさも合せ持っていることも忘れてはいけない。「ポップな曲が大好きだから。ただ複雑な演奏で暗い曲というよりも、そういう中にも救いがあるものになっているんじゃないかな」(FZ)。

“救い”をイメージしたというラストの「Mark Prays►Monster.」は、長い雨が止んで光が射す情景を喚起させる。2010年代を迎え、ありとあらゆることがやり尽くされ“新しいものなんて何もない”と思われている時代。ある意味で“終わっている”と言えるほどの閉塞状況にある現在の音楽シーンに、sfprというバンドはmaximum10のスタッフも含めたチームで生み出した自分たちだけの音で新たな光を射し込もうとしている。「作った時期はバラバラだけど、最後に曲を並べてみた時に“こんなことが起こりうるのか”というくらいしっくりきた」(FZ)という今作。ある意味、ここでは奇跡が起こっているのかもしれない。ありえないことを体験した時、人は本当に心揺さぶられ感動する。そんな音との出会いが、この『apocalypse』というアルバムには待ち受けているのだから。

Text&Interview:IMAI

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