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それでも世界が続くなら

それでも世界が続くなら…この後に、あなたならどういう言葉を繋げますか?

PHOTO_それせか2011年、篠塚将行を中心に活動をスタートさせたそれでも世界が続くなら。失うことを肯定し、現実を直視した言葉を歌い、感情を乗せて楽器を鳴らす彼らは、今まで2枚のアルバム『彼女の歌はきっと死なない』と『この世界を僕は許さない』をリリースし、音楽ファンを中心にたくさんの注目を集めてきた。そんな彼らが、この9月にメジャーからアルバム『僕は君に武器を渡したい』をリリースする。悲痛なる叫びにも似た彼らの音楽は、ある者には唯一無二の優しい歌に聴こえ、そしてある者にはどこまでも痛々しく聴こえることだろう。今回は、音楽を辞めようとしてバンドを組み、自らの意志で曲を書き、自らの想いで歌う篠塚将行に、3枚目に至るまでの話を訊いた。

 

 

「僕はとっくに満足しているんです。貰いすぎなんです。これ以上何も望んでいないし、メジャーなんて分不相応だし。だったらもう、聴いてくれる人とかに誠実でいたりとか、全部あげたいんです。歌すらも」

●過去に出した2枚の作品のタイトルは、“それでも世界が続くなら”というバンド名に続く言葉として理解しているんです。要するに1枚目は“それでも世界が続くなら、彼女の歌はきっと死なない。”で、2枚目は“それでも世界が続くなら、この世界を僕は許さない。”だと。

篠塚:はい。

●で、今回は“それでも世界が続くなら、僕は君に武器を渡したい。”となる。この文章を3つ時系列に並べたとき、少しバンドが前に進んでいるような気がしたんです。

篠塚:ああ〜、なるほど。僕としては、作品のタイトルは大喜利だと思っていて。「それでも世界が続くなら(    )」の( )に入れる文章を考えなさい、みたいな。

●作品を作ったタイミングでそういう考察があると。

篠塚:そうですね。笑いの取れない大喜利っていうか。だから「前に進んでいる」と言われて嬉しかったんですけど、そういう自覚はないんですよ。自覚はないんですけど、たぶん前に進んでいるんでしょうね。1枚目を『彼女の歌はきっと死なない』というタイトルにしたのは…CMか何かで、有名なアーティストの曲を女の子が鼻歌で歌っているシーンをたまたま観たんです。それで自分でも全然わけがわかんないんですけど、感動しちゃって。そのちょっと後に1枚目を作ったんですけど、女の子がずっと鼻歌で歌っている方が、俺が歌うよりもいいなと思ってて(笑)。僕なんかが“俺はこう思ってるんだ”と歌うよりも、女の子が鼻歌で歌う方がもっと深く曲をわかっているような感じがしたんですね。鼻歌で歌っている女の子の絵面を見て、“俺なんか全部わかっているつもりだったけど全然わかってねぇな”って。

●なるほど。

篠塚:1枚目の『彼女の歌はきっと死なない』というアルバムで、僕はこのバンド自体を辞めようと思っていたんです。辞めるために作ったアルバムだった。全部わかっているようでなにもわかっていない俺らみたいなミュージシャン気取りの歌なんてどんどん消えていくだろうけど、何もわかっていないようで全部わかっている女の子が鼻歌で歌う方が、音楽は残っていくだろうなって。だから“できることならば、俺も消費されないような歌を歌えるようになりたかったな。これでバンドを辞めよう”って思いながら1枚目を作ったんです。

●だから『彼女の歌はきっと死なない』というタイトルになったのか。

篠塚:でも、1枚目を出して、辞めようと思っていたけどこのバンドは辞めなくなっちゃったんです。当初からしたら大幅に予定が狂ったわけですよ(笑)。

●そうですね(笑)。

篠塚:「じゃあもう1枚だけ出そう」と。そうなったとき、じゃあいっそのこと嫌いになってほしいと。もう辞められないから嫌いになってくれと。そのために、自分のいちばん嫌なところを出そうと思ったんです。でも、人間が人間のことを許すとか許さないとか、本来はすごくおこがましい話だと思うんです。そう思ってはいるんですが、僕の中では許さないこともあって。例えばいじめとかで、誰かが誰かをすごくいじめていた。でもいじめていた方はその後更生したら、「あの人はこういう風に更生して真面目になったんですよ。素晴らしいですね」みたいな話ってよくあるじゃないですか。

●はい。よくありますね。

篠塚:でも僕は許せないんです。自分がいじめられていたからかもしれないですけど「いじめられた方は一生覚えてるよ」って。更生したことはいいことですけど、いじめた奴が更生したかどうかは、いじめられた奴には少なくとも関係のない話で。

●はいはい。

篠塚:美談にするのは簡単なんですよ。それに、誰かのことをずっと許さないことってすごく疲れることでもあるし、楽になるから許してしまいたいんです。どうでもいいし。僕もどうでもいいと思っているし。でも、そうやってみんながなし崩し的に誰かを許しているのは嫌だから、俺がいちばんみんなに嫌われることを言おうと。それが「許さない」だったんです。「俺はその人のことを一生許さないよ」って。でも、いじめたことは許さないし、それはずっと消えないけど、でもいじめた奴とも友達になりたいなって思うんです。許さない上で、仲良くしたい。

●それで『この世界を僕は許さない』というタイトルになった。

篠塚:音楽って、好きな人が好きなように聴いて、選ぶものじゃないですか。僕らはたくさんのバンドのうちの1つだから、日本中の人に好かれようなんて思ってないし。かと言って、僕は特別な音楽をやっているつもりもないんです。いたって普通のことをやっている。普通に友達とバンドを組んで、普通に弾いて、普通に8ビートが鳴って、思っていることをそのまま歌って、着の身着のままライブをやって。そういう人があまりいないから珍しがられていると思うんです。バンドを始めると、みんなオリジナリティを追求しようとするじゃないですか。それは「他にいない」ってなった方が、みんなに自分の存在価値が承認されたような気になるからだと思うんです。

●唯一のオリジナリティ、みたいな。

篠塚:そうそう。でも僕はアマチュア指向だから“唯一無二”みたいなものがちゃんちゃらおかしいっていうか、恥ずかしいっていうか。否定しているわけじゃなくて、そういう方がいるのは全然よくて嫌いじゃないんですけど、自分がやると恥ずかしいっていうか「俺はバカか」って思う(笑)。僕は声も綺麗じゃないし、見た目も良くないし、才能もないし、歌っていることは普通だし。才能がないからこういう音楽しかできないんですよ。「こういうことがしたいからこういうコンセプトで…」とかじゃないんです。こうなっちゃっただけ。しょうがないんですよね。僕はこのままやるしかないんです。

●それでも世界が続くならというバンドの音楽を普通とは思わないんですけど、でも、自分の中で生まれたものを、できるだけフィルターを通さずに鳴らそうとしているバンドだと思うんです。そういう意味で、普通ではないと思う。

篠塚:それは僕がやろうとしていることそのままです。僕は具体的に何をしているかというと、すべてのフィルターを外すことだけを考えているんです。それはバンドもそうだし、自分の生活もそうで。

●やっぱりそうだったんですね。

篠塚:昔の事務所の社長に「中学生の作文みたいな歌詞だな」って言われたことがあるんですけど、本当にそうなんですよね。かっこいいことができる才能があったらそういう人になっていたかもしれないけど、僕はかっこよくないし、いじめたられてもいたから、誰かに好かれる必要がないっていうか。フィルターが要らないんです。フィルターをいっぱいかけちゃったら、それは不誠実だと思うんです。

●なるほど。誠実ではない。

篠塚:好きになってくれた人に対して「ごめん、それは創作なんだ」って言うのは駄目だと思うんです。逆に「あいつのこういうところ嫌い」と言われたとしても「それは創作だから、俺自身じゃないし」って逃げることもできる。綺麗に創作ができるんだったらどんどんやればいいと思うけど、できないのに創作をやろうとしたら完全な三文芝居になるんですよ。僕じゃない誰かになろうとしたら、めっちゃ偽者になるんです。

●その“誠実たらん”とする姿勢はこのバンドの核になっていますよね。そういう姿勢で活動を続けてきて、3枚目のアルバムに『僕は君に武器を渡したい』というタイトルを付けたことは、バンドのベクトルが開けたからだと思うんです。誠実に音楽をやるその姿勢こそが、バンドが持っている武器であり、それを聴き手に渡そうと思えたというか。

篠塚:僕はメジャーに対して偏見を持っていたんですよ。変に音楽を変えられたり「ポップにしろ」と言われたりするのかなって。でも実際は全然そんなことなくて、今作に関しても好きなように作らせてもらって。だからおもしろいなって。俺たちみたいな箸にも棒にも引っ掛からないつもりでいたバンドが、メジャーデビューすることになって“なんかごめん”って思ってるんです。俺らなんかがメジャーの1枠を使ってごめんねって。

●そこまで思わなくていいと思うけど(笑)。

篠塚:必死こいても俺らなんかは絶対に生き残れないだろうし。だからこのタイトルにしたんです。アルバムを作るとき、今度こそこれで最後かもしれない。メジャーで出すのも1回こっきりかもしれない。僕は好きな友達とバンドを組んでいれば幸せなんですよ。逆にバンドを組んだから友達ができたくらいのノリなんです。だから僕はとっくに満足しているんです。貰いすぎなんです。これ以上何も望んでいないし、メジャーなんて分不相応だし。だったらもう、聴いてくれる人とかに誠実でいたりとか、全部あげたいんです。歌すらも。

●なるほど。

篠塚:好きでも嫌いでもなんでもいいから、もうあげるよって。でも、そこで“何をあげようかな?”と考えたんです。最初は“楽器”かなと思ったんですよ。武器じゃなくて。

●僕は君に楽器を渡したい…なるほど。

篠塚:「俺が歌ってるんだからお前も歌えよ」って。でもね、楽器じゃ駄目なんですよ。きっと音楽をやりたいんだったらとっくにやってるだろうし、楽器を持ったからといって…俺は楽器を持ったから友達ができたし楽しかったけど…強くなれるわけでもないし。

●うん。

篠塚:歌を歌ったから強くなれたという実感はまだないんです…これからなれたらいいなとは思っているんですけど。それで、こういう時代だからこそ、盾とか防具みたいな自分を守るものを渡せたらいいかなと。でも、守って殻に閉じこもっても結局は自分がいちばん痛いんだよなって。

●うんうん。

篠塚:じゃあ、僕が武器を作ったらきっと殺傷能力がすごく低い武器になるだろうから、武器を渡そうと。結局、僕は何をやってもショボイんですよ。でもショボイから、僕が作る程度の武器だったら渡しちゃおうと。間違ってメジャーデビューしちゃったアマチュアイズムのバンドがちょっと武器を作って渡しても、それで何も守れないかもしれないし、振り回したところで危なくなんてなくて。でも、自衛のための武器にはなるんじゃないかなって。持ってるだけで「近寄らないで!」って言える勇気が湧くものになるんじゃないかなって。勝つためじゃなくて、負けないための武器っていうか。そういうくらいのものがちょうどいいんじゃないかなって。僕らみたいなアマチュアイズムのミュージシャンができることって、それくらいかな。

●今回『僕は君に武器を渡したい』というタイトルになったのは、しのくんやメンバーがこのバンドをやっていく上で、聴いてくれる人の存在が1枚目や2枚目と比べて大きくなってきた証明なのかなって。

篠塚:ああ〜、そうですね。確かにこのバンドを始めたときはゼロでした。前のバンド…ドイツオレンジを解散したとき、みんなが「辞めた方がいいよ」みたいな雰囲気だったんです。当時、脱退していったメンバー2人と、地元のライブハウスの店長だけが「しの、音楽やれよ」と言ってくれたんですけど、後はみんな僕が音楽を続けると思ってなかっただろうし。

●そうだったんですね。

篠塚:このバンドが始まったときも「こんなのはしのくんのバンドじゃない」とか言ってくる人もいたし、みんなそんな感じで。今のメンバーは、琢磨なんて楽器を弾いたことがなかったし、菅澤はもともと別のバンドでヴォーカルだったし、栗原はドラムが下手だったし、僕も声が良いわけでもないし。だから劣等生の集まりですよね(笑)。だから聴いてくれる人がいないっていうか、ゼロからどころかマイナスからのスタートですよね。やるだけで誰かに文句を言われる、みたいな。でもこのバンドをやりたかったんです。僕は、音楽は上手くできなかったけど、友達とバンドを組んで、一生懸命曲を作って、下手くそでもいいから自分の意志で歌う。それが誰かから“いい”と思われなくてもいいやと思えたんです。それで1枚作品を作ってリリースしたら、メンバーも喜ぶだろうなって。「俺たちもCD出せたな」って笑えればいいやって。それが僕の中でのゴールだったんです。だから…今はボーナスステージなんです(笑)。

●ハハハ(笑)。でも今の話を聞いてすごく合点がいったんですけど、それでも世界が続くならの音楽は、すごく遺書っぽいんですよね。

篠塚:ああ〜。

●なんか、どの曲も“死”が前提になっている気がする。

篠塚:それ、本当にそうですね。曲を作るとき“これが人生で最後になるかも”という意識で作っているんです。98%はそうかな。後の2%は、2曲同時に作ってる場合くらい。だからほぼ全部の曲を“人生の最後の曲だ”と思って作ってますね。うん。それが誠実であることだと思うんです。

interview:Takeshi.Yamanaka

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