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鈴木星河(ピヨピヨサーカス)

天性の歌声とポップセンスが、溢れ出した創造性と遊び心と共に奏でるハーモニー

AP_鈴木星河mainアーティストと音楽関係者を繋ぐバックアップサイト・音場-otono VA-が主催するコンテスト“LIFETIME FESTIVAL 2013”。今年2月の予選から6/14の決勝戦までを見事に勝ち抜き、優勝を果たしたのが鈴木星河(すずきせいか)だ。ソロ名義で参戦しながらも勝ち進むごとにメンバーが増え、最終的には5人組のバンドになったというエピソードも面白い。ブラックミュージックをルーツにしたAORサウンドと、遊び心に溢れたエンタテインメント色の強いライブのギャップもインパクト抜群。今回の優勝を機に、“ピヨピヨサーカス”という名前でバンドとして新たなスタートを切る5人に話を訊いた。

 

 

「メンバーが増えるに従って、どんどんおかしくなっていって…(笑)。音楽は良い感じだから、“(格好は)もっと変なことをしようよ”っていう」

●まずは優勝おめでとうございます!

全員:ありがとうございます!

●最初の予選には2人組で参加していたのが、最終的には5人編成になっていたということですが…。

星河:そうなんですよ(笑)。最初は僕とLD(リーダー)の2人で参加したんですけど、だんだんパワーアップしていって…。勝ち上がった次のステージではBoriが加わって、3人になったんです。その次の準決勝であと2人(IMAGOとホスティ)を誘って、今の5人になりました。

●勝ち進むごとにメンバーが増えていったと。

星河:最初は1人で出る予定だったんですけど、大会の規定で2人以上じゃないと参加できなかったんですよ。それで、まずはギターのLDを呼んで。そしたら「もっと面白い感じで見せたいな」と思うようになって、自分の知り合いや音楽仲間を誘っていきました。

LD:僕は星河と一緒にバンドをやっていたことがあって、前から仲良くしていたんです。誕生日の翌日に(星河から)電話がかかってきて、「大会に出るから一緒に出てよ」と言われたのが1週間前で…。しかも誕生日の祝福かと思ったら、違うっていう(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

●メンバー同士のつながりはあったんですか?

ホスティ:自分も星河とLDと一緒にバンドをやっていたことがあって、その後にLDとIMAGOとも一緒にやっていたんですよ。そっちの活動が沈み気味になった時にちょうど「バンド形式でやろうと思っている」ということで、星河に誘われたんです。誘われて集まってみたら、IMAGOもいて…という感じですね(笑)。

●Boriくんとはどういうつながりが?

星河:Boriとは音楽専門学校が同じだったので、僕から「コーラスをやらない?」と誘いました。

Bori:星河は音楽的な素養もすごいと思うし、曲を聴かせてもらったら好きだったんです。だから誘ってもらった時は、うれしかったですね。

●音楽的背景や曲の良さに惹かれたところがある。

LD:曲は僕もすごく好きですね。あと、星河から教えてもらったことも多くて。ブラックミュージックを教えてもらって、自分も好きになったりしたんです。

●音源を聴いてみると、R&BやソウルなどのブラックミュージックをルーツにしたAOR的なサウンドになっていますよね。若い世代のバンドで、こういう音をやっている人は珍しい気がします。

星河:そうなんですよ。だからこそ、やりたいなと思って。他の人とは違ったことをしたいという気持ちもあるし、自分の中にはマイノリティな部分があるのかな。

IMAGO:僕はここでやっているようなジャンルの音を全くやったことがなかったので、すごく新鮮でしたね。

●星河くんはポップパンクのバンドに以前いたそうですが、今のサウンドとは全然違いますよね。

星河:ソロになってからは、バンド時代と全然違う音楽性でやっていて。好きな音楽はたくさんあるので、それらを全て自分の中で消化して形にした音楽を今はやっています。パンクやロックもルーツにはなっているんですけど、今はAOR的な要素が強いですね。

●元々、ブラックミュージックやAORは好きだったんですか?

星河:バンドをやめてから「たくさん音楽を聴かなきゃいけないな」と思って、シンガーソングライターや打ち込み系の音楽も聴くようになって。そこでコード進行の重要性を知ったんです。自分の中でその部分を突き詰めていったら、AORやブルースのコード進行が自分は好きなんだなと気付いて…今に至る感じですね。

●色んな音楽を勉強する内に気付いたと。

星河:勉強として色々と聴いていく内に、好きになった感じですね。でも今思えば、子どもの頃に聴いていた音楽がカーペンターズとかだったりして。基本的なコード進行を元に、歌を中心にした曲が好きだったんです。自分の耳に一番しっくりくる音楽っていうのは、子どもの頃好きだったものにルーツがあるのかな。

●どの曲にも共通するのが、“ポップ”というところだと感じました。

星河:メロディを重視しているので、ポップになるというか。どんなに激しいサウンドをやっていても、歌が際立っている曲が一番好きなんです。だから、そうさせるためのアレンジを考えるのも好きですね。

●目指す音楽の具体的なイメージはある?

星河:「こういうものにしたい」というこだわりは、あまりないんですよね。「シンガーソングライターっぽくしよう」とか「ロックっぽくしよう」ということは考えていなくて。コードとメロディがしっかりしていれば、どんなアレンジになっても「良い曲は良い曲だ」っていう定義が自分の中にあるんです。まず良い曲を作ってきた上で、「これはバンドっぽいアレンジにもできるね」という感じで形にしていきます。「こういう曲だったら、こういうアレンジも面白いんじゃないかな」という感じで、曲が求めるものに応えるだけというか。

●そこでジャンルやスタイルにはこだわらない。

LD:このバンドはみんな、何かにこだわったりはしないですね。

星河:単純に良い曲ができれば良いし、良いライブができれば良いし、楽しければ良いっていう感じなんです。

●そういう感覚だから、メンバーもどんどん増えていったと(笑)。

星河:みんなで「楽しくやろうよ」みたいな感じでやっていたら、どんどん良い音楽が生まれてきたというか。

●話を最初に戻すと、今回のコンテストに参加した時点では“鈴木星河”のソロ名義だったわけですよね。

星河:自分はずっとバンドをやってきて、メンバーの脱退や自分自身の脱退も経験していて。そういう中でDTMを使って全部1人で作れるようになりたいなということで色んな勉強をして、ソロのシンガーソングライターになったんですよ。なので今回のコンテストに参加した時も、名義はソロになっていたんですけど…。

LD:まさかこんなことになるとは…誰も予想していなかったです(笑)。

一同:ハハハ(笑)。

●バンドをやりたいという気持ちはあったんですか?

星河:音源は打ち込みを基本にしてバンドの音も混ぜつつ、より良い音を極めたいという気持ちがあって。でもライブはバンドスタイルでやることに、こだわりがあるんですよ。やっぱりライブはバンドで魅せたいから。

●そもそも今回の“LIFETIME FESTIVAL 2013”に出ようと思った理由とは?

星河:最初は単純にライブハウスとか、人が観ている前で歌いたいという気持ちからでしたね。人前で歌って、自分の音楽を聴かせたいという、それだけの理由でした。「大会に出る!」という気負いもあまりなくて、「久しぶりに人前で歌いたいな」というだけで。でも勝ち進んでいく内に、「自分たちはもっと色んな見せ方ができるんじゃないか?」と思うようになってきたんですよ。今回の大会がすごく成長させてくれたと思います。

●気負いがなかったことが、逆に優勝という結果につながったのかもしれませんね。

LD:(星河から)電話がかかってきた時も、「久々にライブハウスでやりたいから一緒に出ようよ」と言われただけなんです。「絶対に優勝するから!」みたいなのは全くなくて、すごくラフな感じでしたね。

星河:そうやって強制的な感じになると、音楽を楽しめないから。今回は楽しみながら勝たせてもらえたので、本当に感謝しています。

●ここまでの話を聞くと、みんなで一緒に楽しみながらやることを最も重視しているのがわかります。

星河:それが一番伝わると思うから。バンドが楽しんでやっているのがステージ上から伝われば、観てくれているお客さんたちも楽しいと思うんですよ。少し演奏でミスしようが、歌がズレていようが、楽しんでいれば伝わるというか。そう考えたら強制的な感じで「勝とうぜ!」というよりも、「みんなで楽しんでやろう」というほうが絶対に良い音楽ができると思うんです。僕らが目指しているのは、そういうところですね。

●観ている側も楽しくなるようなライブが目標。

LD:僕らのライブは音楽だけじゃないんですよ。今回の決勝戦もエンタテインメント色の強い感じでやったんです。1曲削ってまで、MCを長くしたりして(笑)。

星河:音楽もすごく重要なんですけど、それと同じくらいMCだったりエンタテインメントの要素を大事にしているんです。音楽をやっていない時でも魅せられるのが、このバンドの長所だと思いますね。

●そういう意味で、コーラスとパフォーマンス担当のBoriくんがいる?

Bori:曲をバリバリ作れるわけでもない自分に何ができるかと考えた時に、「MCを頑張ろう」となったんです。僕は、観ている人に笑ってほしいんですよ。だから決勝戦ではすごくデカいアフロのカツラをかぶったり、みんなでピエロのコスプレをしたりもして。

IMAGO:リハ後にお揃いのサングラスを買いに行って、みんなで着けたりもしました(笑)。

●衣装も含めて、楽しませようとしているんですね。

星河:衣装も合わせたりするし、毎回のライブで何か面白いことを考えるようにはしていますね。メンバーも楽しめているんだろうなと思うし、少し照れがある感じも観ている側からは面白いんじゃないかな(笑)。

●今回のコンテストに参加した当初から、そういうスタンスだったんですか?

LD:最初に2人で参加した時は普通の私服でしたね。

星河:そこからメンバーが増えるに従って、どんどんおかしくなっていって…(笑)。音楽は良い感じだから、「(格好は)もっと変なことをしようよ」っていう。

●サウンドからは全く想像できないくらい、見た目とのギャップがある。

星河:めちゃくちゃなんですよね(笑)。“よくわからないけど、良いんじゃないの?”っていう…。

●そんな悪ノリみたいな感じで優勝しちゃったと(笑)。

星河:優勝しちゃいました(笑)。でもストイックになりすぎてもしょうがないし、そういうのはステージでもにじみ出ると思うんですよ。顔もこわばるだろうし、それによって音楽が楽しめなくなるのは絶対にイヤなんです。最低限、音楽は楽しみながら上にあがっていきたいなと思っています。

●この5人でのバンド名も決まったんですよね。

星河:“ピヨピヨサーカス”です。

LD:バンド名までおかしくなりました…。

一同:ハハハ(笑)。

●なぜ、そんな名前に…?

星河:“サーカス”っぽい感じでライブを見せたいなと思っていたので、その言葉は絶対に入れたくて。でもあまりカッコつけたくなくて、気の抜けるワードを足そうと考えた時に“ピヨピヨ”が浮かんだんです(笑)。それで“ピヨピヨサーカス”になりました。

●あえて自分たちでも気の抜ける名前にした(笑)。

星河:みんな真面目なので、そこから一皮むけて“コミックバンド”くらいにまでなれればいいんですけどね(笑)。

●いっそ、そのくらい振り切ってしまいたいと。

IMAGO:全力で楽しみたいなと思っています。僕はモノマネが得意なので、台湾でも挑戦してみたいなと。アナゴさんにマスオさん、あとはタラちゃんとか…。

●台湾の人が『サザエさん』を知っていたらいいですね(笑)。今回の優勝特典で台湾ツアーも決まっていたり、リリースの予定もあったりと、自分たちでも今後の活動が楽しみなんじゃないですか?

星河:自主制作でシングルを3枚作ってから、フルアルバムを作って、自分たち主催のイベントもしてみたいと思っています。PVも作ろうと思っていますし、今年の後半は予定が詰まっていますね。今回の優勝をキッカケに良いスタートが切れそうな感じです。

ホスティ:自分は“ワクワクしていたい”という気持ちが常にあって。このバンドでは本当に自由にやらせてもらっているし、その中で「どうやったらお客さんの反応が良くなるか?」とか「どうやって自分のドラムで星河の声を活かして曲全体を良くしていくか?」とか考えるのが楽しいんです。そういうことや台湾へツアーに行くことも含めて、今はワクワクできている。そういうワクワク感を今後も持ち続けていきたいですね。

Interview:IMAI

AP_鈴木星河sub

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