音楽メディア・フリーマガジン

THE LOCAL ART

バンド史上最も激しいサウンドとメッセージが突き刺さる

 THE LOCAL ARTが前作『KiBOU』から約1年ぶりに、ニューアルバム『MUSIC』をリリースする。

年間100本近いライブを通じて強靭さを増したサウンドは、今までで最も激しいものとなった。だがそれ以上に今作で強烈なインパクトを残すのは、岡田(Vo./Dr.)による歌詞だ。社会や音楽業界に対するクリティカルな言葉と毒を孕んだ今作の歌詞は、胸をすく痛快さとリスナーを突き動かすポジティブさも兼ね備えている。

彼らが辿り着いた自分たちだけの言葉と音楽は、言いたいことも言えない閉塞感に満ちた今という時代にこそ希求されるものかもしれない。

Interview

「ライブも面白いし、曲作りで悩んだりしても出来上がった時にはすごく良いと思える。本当に、音楽が面白いっていうことでしかないかな」

●今作『MUSIC』では1曲目の「ハジマリ」からいきなり"クソメジャークソポップス"と歌っていたり、"ここまで言っていいの?"と思うようなストレートな言葉が目立つ気がします。

岡田:自分が今言いたいことを歌詞にして、とりあえず書きなぐった感じですね。誰でも歌えるような歌は、他のヤツがやればいいと思ったんです。「がんばれ」とか「大丈夫」だとかキレイ事は他の誰かが勝手にやってくれるから、自分があえてそういうことを歌わなくてもいいかなって。

●M-4「フリーダム」の"つぶせつぶせメディアごとつぶせ"という歌詞やM-8「リプレイ」の"音楽業界ほとんどがクソ野郎で賑わってる"とか、自分たちが少なからず関わっているところへの怒りも包み隠さず出しているのがすごいなと。

岡田:こんなことを歌ったら、自分たちは雑誌やCDショップから干されると思っていたんですよ。だけど案外「すごく良い!」と言ってくれる人が結構いてくれて、"みんなも思っていることなんだな"って安心しましたね。みんなも会社の理不尽さとかで苦労しているんだなとわかって、"俺もアンタも一緒じゃん!"と思えたんです。

●頭の中で思ってはいても実際、口にするのは難しかったりしますよね。

岡田:最初は自分もビビっていたところがあったし、たぶん5年前だったらやれなかったことだと思う。でも今は良い意味で、どうでもよくなっちゃったんですよ。例えばリリースを拒否されたなら会場限定で出せばいいだけだし、メディアに干されたなら自分で雑誌を作ればいい。実際にそういうこともやってきたし、今はそういうノリだから何も怖くないっていうのはあります。

●それはメンバー全員が同じ心境なんでしょうか?
横内:僕らも普段から感じていることなんですけど、まさか(岡田が)実際に言うとは思っていなくて(笑)。 今作の曲を最初に聴いた時はビックリしたし、"大丈夫かな?"とは思いましたね。

●メンバーですら、ちょっと驚いた(笑)。
横内:でも自分たちの演奏に乗せて聴いてみたら、意外と気にならなくて。周りのスタッフも「良いじゃん!」と言ってくれたので、やっぱり好きなことをやるのが一番自然なんだという結論に至りましたね。

稲垣:やってみてダメだったらやめればいいし、とりあえずやってみようという感じでした。

岡田:メジャーを離れてから、メンバー全員が吹っ切れたんですよ。そこから"やりたいことをやろう"ということで突き詰めていったら、僕の歌詞もこうなっちゃいました(笑)。確かにみんながタブーとしているようなことばかり歌っているけど、本当はタブーでも何でもなくて。僕はただ日常に溢れていることを歌っているだけなので、逆に自信を持って「これのどこがいけないの?」って言えるんです。

●メジャーを離れてから吹っ切れた。

岡田:メジャーと契約が切れてから、色々と変わりましたね。当時一緒にやっていたチームとも離れたので、最初はすごく取り残されたような気になって。でもメジャーじゃなくても関係なく応援してくれるお客さんたちをライブで見た時にメンバー全員が吹っ切れて、やりたいことをやろうと思えたんです。

●お客さんがキッカケになって、吹っ切ることができたんですね。

岡田:昔はそんなことを気にかけてもいなかったけど、お客さんも1人ひとりに色んな人生がある中で自分の時間を分けてくれているんだと気付いたんです。メジャーを離れてから本当にメンバーとお客さんだけになったことで、"こいつらのために良い音源を作って、良いライブをしよう"と思えたのは大きかったですね。

大野:今でもついてきてくれているお客さんに対して、すごく良いものを出していきたい想いが強くなった。楽曲に対しても"どんどん超えていこう"という気持ちが強くなって、より良いものを作ろうとする姿勢がすごく向上したんです。

●お客さんのことも考えながら自分たちがやりたいことを突き詰めることで、前作を上回るものを作っていくというか。

大野:余計なことを考えていた時期もあったんですけど、今は本当にそれを素直にやれているなって自分でも思います。だからこそ、前よりも良いものができているわけで。

岡田:今はすごく自由にやれているし、自分の生活があった上で音楽があると思えるんです。本当に良いところにいるし、自然体になった感じがしますね。今思えば逆にメジャー時代は幻だったんじゃないかと思うくらいだし、単にあそこは自分たちの居場所じゃなかったんだなと思いますね。

●そういう心境に至ったから、今回のような歌詞も書けたんでしょうね。

岡田:メジャー時代に、スタッフから「お前の歌詞はクソだ」みたいなことをよく言われていたんです。実際にどんなつもりで言っていたかはわからないけど、そこまで言うことで「お前の歌詞は特別なんだ」ということを教えてくれていたのかもしれないと今は思えていて。自分にしか言えないことや思い付かないことを模索していく中で、自分が言いたいことをやっと見つけられた。その時に自分の強みは歌詞だと思えたし、自分にしか言えないことを遂に書けるようになったと思いましたね。

●社会や現状に対する不満を歌っている曲も、ただの言いっぱなしでは終わっていない。

岡田:やっぱり日々生きていく上でイライラすることや理不尽なことにもたくさん出会うと思うんですけど、その1つひとつや音楽と向き合うことの中で言いたいことが出てきたんです。ただの愚痴になっちゃうのは嫌だったし、そんなしょうもない物事の先にもきっとマシなものが待っていると僕は信じたいから。

●だからM-3「ギフト」の歌詞に"突き刺されもっともっと"とある通り、聴いている人の耳に刺さる言葉が書けているんでしょうね。

岡田:右から左に抜けるような音楽は作りたくないと思っていたし、逆に聴いていて「クドいな」と思わせるようなものも避けたかった。そういう中で、言葉が研ぎ澄まされていったのかもしれないですね。

大野:サウンド面でも"どこか引っかかるように、突き刺さるように"ということを常に考えながら作っているんです。やっぱりリアルなものを作りたいし、自分が良いと思えるものを聴く人にも突き刺したいんですよね。
横内:でも自分が本当にカッコ良いと思えるものって、なかなか形にできないんですよね。作品ごとに自分がカッコ良いと思うレベルは上がっていくけど、毎回それを超えていかないと納得できなくなってしまう。しかもこれだけリリースしているとそう簡単にはいかなくなってくるので、アレンジにも時間がかかるし大変なんです。

●苦しいけど、そこを超えた時の達成感が大きいから面白くもあるんじゃないですか?

大野:前の作品を超えたいと思うから、どんどん作品を作っているのかもしれないです。今作も良いものができたから自信にはなるんですけど、"次を作るのが怖いな"とも思ったりして(笑)。そうやって続けていくこと自体は、やっぱり面白いんですけどね。

岡田:自分が納得するということも重要ではあるけど、やっぱり僕は応援してくれている人たちをガッカリさせたくないという想いが一番大きいですね。

●そういうメッセージを込めたのが、「ギフト」でしょうか?

岡田:応援してくれている人たちに向けて贈った曲なので、タイトルも「ギフト」にしたんです。自分の本心を歌っている曲だし、こういう歌もやっと書けるようになったなという感じですね。

●今作は言葉も強烈ですが、サウンドも今までで一番激しい感じがします。

岡田:激しくしたかったんですよ。色んなバンドのアルバムを聴いていると、だいたい3~4枚目くらいからだんだん落ち着いてくる傾向にあるんです。自分たちがそう思われるのは絶対に嫌だから、激しい曲をたくさん選んだ感じですね。

稲垣:収録曲に関しては岡田が持ってきたものを聴いて「今回も激しくて良いね!」「この勢い良いよ!」とか言いながら、すぐに決まりましたね(笑)。

●実際に収録した以外にも曲はあったんですか?

岡田:自分の中では他にも候補曲はあったんですけど、メンバーのところまで持って行ったのは今回の収録曲だけですね。あんまり良くないものを持って行っても、みんな「うーん」とか言って終わっちゃうだけだから。

●そこはメンバーと"カッコ良い"と思う感覚を共有できているからなんでしょうね。

岡田:10年近く一緒にいるんで、訊かなくてもわかるというか。ドラム以外のアレンジは、みんなに任せているんですよ。それぞれがカッコ良いと思うものを考えてくるので、絶対良くなるに決まっているんですよね。

稲垣:岡田が曲を持って来た段階で、大まかなイメージは確認するんです。それを各自が家に持って帰って、フレーズを付けてくる。それをまたスタジオに集まって、全員で聴いたら「うん、カッコ良い。バッチリだ!」となるんですよ。

●ずっと一緒にやっている4人だからこそ、お互いのセンスへの信頼感もある。

岡田:今回は特に"このメンバーじゃないとできなかっただろうな"って思えるアルバムですね。他の人に入って弾いてもらおうと言っても、できないと思います。

●今作のタイトルを『MUSIC』にしたのも、このメンバーと一緒にまっすぐ音楽と向き合えたからでは?

岡田:音楽って最高だけど、一番何だかわからないものでもあって。音楽がなくても飯を食って寝るところさえあれば生きて行けるはずのに、自分たちにとってはないと困るものなんですよね。時には葛藤することもあるんですけど、やっぱりライブをやったら"音楽って最高だな"ってなれるのはすごいことだと思うんです。だから"俺たちは死ぬまで、これをやってやる!"という意味を込めてタイトルを『MUSIC』にしました。

●辛いこともある分、楽しい瞬間もあるからやれるんでしょうね。

稲垣:今こんなにも楽しいのに、今後はライブをやらないっていうことが僕らには想像できないんですよ。

岡田:今は音楽に対して、辛いことは1つもないんです。メジャーでやっていた頃は、音楽を仕事に感じてしまう瞬間が結構あって。逆に今は嫌なことが1つもなくやれているから楽しいし、続けられるんでしょうね。
横内:普段は働いているんですけど、今の方が楽な気はします。メジャーの頃は音楽をやることも含めて全部が仕事になってしまっていたから、つまらなくなって。今は自然体でやれているから良いんじゃないかな。

大野:ライブをやっても面白いし、曲作りで悩んだりしても出来上がった時にはすごく良いと思える。本当に、音楽が面白いっていうことでしかないかな。「俺らは好きなことをやっているな」って思えるし、そんな自分が好きですね(笑)。

Interview:IMAI
Assistant:HiGUMA

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